名探偵コナン〜新一の妹〜   作:桂ヒナギク

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30.芸能人殺人事件

 聡美とコナンが歩道を歩いている。

「おめえ、小さくならないのかよ?」

「現物から解毒剤作ったみたいだからね。でもお兄ちゃんは有名で顔割れてるやめた方がいいよ」

 その時。

「ひったくりよ! 誰か、そいつを捕まえて!」

 その声に振り返ると、目出し帽を被った人物が、女性の持ち物を奪ってこちらに向かって駆けていた。

 聡美は迫り来るひったくり犯の側頭部に後ろ回し蹴りをお見舞い。

「ぐわ!」

 一撃でひったくり犯を気絶させた。

 聡美はひったくり犯の目出し帽を外した。

 そこへ被害者の女性が駆け寄ってくる。

「ありがとうございました」

 女性はひったくり犯からカバンを奪還(だっかん)する。

「あれ?」

 聡美は女性の顔に見覚えがあった。

「あのー、失礼ですが、女優の沖野(おきの) ヨーコさん?」

「はい、そうです」

 ヨーコがコナンに気づく。

「あ、コナンくんじゃない!」

「知ってるんですか?」

「ええ、前に巻き込まれた殺人事件で、あの眠りの小五郎と一緒に」

「そうなんですか」

「あなたは?」

「工藤 聡美と申します。高校生探偵として有名な新一の妹です」

「へえ。あ、それじゃあ、妹さんに頼んじゃおうかしら」

「頼み?」

「はい。実は——」

 ヨーコは語り出した。

 先日、ヨーコの知り合いで、SARDという音楽ユニットのボーカルが、入院中の病院の非常階段の踊り場から転落して亡くなるという事件があった。その事件は、警察の捜査は入ったものの、足を滑らせて転落したという事故ということで処理されていた。亡くなったボーカルは、ガンを患っており、治療のために入院していたのだ。一部ではガンに苦しんでの自殺なのではないかと噂されている。

「——ということなの」

「それって、坂宮(さかみや) (いずみ)さんのことですよね?」

「ええ。私、泉さんは何者かに殺されたんじゃないかって考えているんです」

「どうしてそう思うんです?」

「え? だって、亡くなった日より先の日にも、本人は予定を詰めていましたから。スケジュール帳にも、予定が書き込まれていたから、自殺とは考えにくいんですよ」

「でも、警察は事故死だと言ってるんですよね?」

「ええ。でも、納得いかなくて」

「そうですか」

「調べてくれるわよね?」

「それは構いませんけど」

「よかった。じゃあ、病院の場所、教えますね」

 聡美は病院名を教わった。

「じゃ、いい結果を待ってますね」

 ヨーコはそう言って去っていった。

「お兄ちゃん、私は病院に行くけど、ついてくる?」

「ああ」

 聡美とコナンは、坂宮 泉が亡くなった病院へと足を運んだ。

 転落した非常階段の踊り場を確認する。

 病院へ来る途中、所轄署の刑事課で聞いた話によると、転落時は雨が降った後で泥濘(ぬかる)んでいたために足を滑らして転落したということだ。

「ここから落ちたのか」

「そうみたい」

「だけど、彼女の身長じゃ柵を乗り越えない限り落下しないだろ。それに事故なら咄嗟に柵に掴まって転落を防ぐこともできるはずだ。自殺の可能性もあるな」

「自殺……」

(本当に自殺かしら?)

 聡美はコナンの出した自殺説を不審に思った。

プルルルル——コナンの持っている新一の携帯が鳴り響く。

 コナンは携帯を取ると、蝶ネクタイ型変声機を出そうとするが。

「あ! やべえ! 変声機忘れた!」

 聡美はコナンの新一用携帯を取り上げた。

「なにすんだよ?」

「いいからいいから」

 聡美は応答した。

「おう、蘭じゃねえか。どうしたんだ?」

 聡美は怪盗キッド直伝の声真似を利用して新一の声で話し出した。

 コナンは傍らで驚いている。

 


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