名探偵コナン〜新一の妹〜   作:桂ヒナギク

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27.見られちゃった

 帝丹小学校からの帰り道。クリスと加村が歩いている。

「今日も行っていいの?」

「ええ、もちろんよ」

「でも、お家の人に迷惑じゃない?」

「大丈夫よ」

 工藤邸に着く。

 二人は家に上がり、加村が脱衣所へ入っていった。

「さて」

 ドカーン!

 隣の阿笠邸から大爆発。

「なんだあ!?」

 クリスは阿笠邸に駆けつけた。

「おー、聡美か。すまんすまん。今、新一のために新しいメカを作ろうとして失敗してのう」

「あ……そう……」

「それより、なぜ工藤邸に? 毛利くんのところへ帰るんじゃないのか?」

「ああ、加村って子をお風呂に入れにね。彼、家に風呂ないし、貧乏で銭湯にも行けないっていうから」

「そうか」

「じゃ、実家戻るね」

 そこへマスクをつけた灰原がやってくる。

「灰原さん? 風邪?」

「ええ、そうよ。ゴホッ、ゴホッ」

「そういえば、今日見かけなかったわね。寝てなくて大丈夫?」

「優しいのね。大丈夫よ。それより……」

 灰原が聡美にカプセルを渡す。

「あなたが手に入れたアポトキシン4869の成分を解析して試しに作った解毒剤。うまく行けば、永久的に元の体に戻れるはずだから、試してみてちょうだい」

「ありがとう」

 クリスはカプセルをしまった。

「ちょっと、今すぐ試してほしいんだけど」

「ああ、今は無理」

 クリスはそう言うと、阿笠邸を出て工藤邸に戻った。

 工藤邸では、お風呂から出た加村がリビングで待っていた。

「どこ行ってたの?」

「うん、ちょっとね」

「じゃあ、オデは行くね。ありがとう」

 加村はそう言って、工藤邸を出て行く。

 クリスはカプセルを取り出し、水で飲んだ。

 そこへ加村が戻ってくる。

「か、加村くん!?」

 クリスが驚き戸惑っていると、その体がみるみる大きくなり、服がつんつるてんとなり、聡美の姿へと変貌した。

「え……?」

 口をポカーンと開けて呆然となる加村。

「あれ? 江戸川さんが大きく? あれ?」

 脳の理解が現象に追いついていなかった。

「あ……いや……」

 どうしよう? 聡美は思った。

「あ、あの、これには深い訳があって! 江戸川 クリスは存在しなくて、私は本当は高校生の工藤 聡美で……」

「江戸川さんが高校生?」

「そうなのよ。とある薬で小さくなってて」

「そんな薬があるんだ?」

「黙っててごめん」

「いいよ、別に」

「とりあえず、着替えて、それから加村くんのこと送るから」

 聡美はそう言うと、自室へ行って普段着に着替えた。

「じゃ、行きましょう」

 聡美は加村と家を出るて、彼の家へと向かって歩き出す。

「ねえ、お姉ちゃんのことなんて呼んだらいい?」

「聡美でいいわ」

「わかった、聡美お姉ちゃん」

(加村くんを見下ろすことになっちゃった)

「聡美お姉ちゃんは高校生活に戻るの?」

「うん、たぶんね」

「これからも、お風呂入りに行ってもいい?」

「それは構わないわ」

「お姉ちゃん、彼氏いるの?」

「は?」

「オデ、聡美お姉ちゃんに一目惚れしちゃって」

「あら、正直な子。でも、小学生じゃ恋愛の対象にならないわ」

「じゃあ、オデが大人になったら付き合ってくれる?」

(醜いから無理……だなんて言えないわね)

「そうねえ……、大人になったらね」

「あれ?」

「うん?」

「江戸川 クリスには兄が、コナンって男の子いたよね?」

「Need not to know.知る必要のないことよ」

「コナンも高校生なの?」

「それ以上詮索しないで」

「……………………」

 その時、サイレンを鳴らしたパトカーが、二人を追い越していった。その車は、米花公園の前で止まった。

「事件かな?」

 と、加村。

「あ……」

 目暮(めぐれ) 十三(じゅうぞう)警部が、パトカーから降りてくるのが見えた。

「目暮警部!」

 聡美は目暮に駆け寄った。

「ん?」

 振り返る目暮。

「おー! 聡美くんじゃないか! 暫くだね」

 うん、と加村を見る目暮。

「誰だね?」

「コナンくんの学校の子。子守り頼まれちゃって」

「そうか」

「で、殺人ですか?」

「うん? まあな。だが今回は探偵の手は要らんよ」

「どういうことですか?」

「犯人自ら電話で通報してきたんだ。人を殺したから米花公園に来てくれってな」

 聡美は公園内の様子を確認する。

「ああ、あの高木刑事と話している男性ですか?」

「そうだ」

「自首したんなら、確かに探偵は要らないね。それじゃあ」

 聡美は加村と合流して歩き出した。

 


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