クリスは帝丹小学校の教室の黒板前に立っていた。
黒板には江戸川 クリスと名前が書かれている。
クリスはコナンと同じクラスを希望していたが、学校の都合で隣のクラスに編入することになってしまった。
「江戸川 クリスです。よろしく」
頭を下げるクリス。
「それじゃ、クリスさんはあそこね」
クリスは教諭が示した席に着く。
隣は醜い顔をした大柄な少年だった。
(こういうの無理めかも……)
クリスはそう思ったが、口にはしなかった。
「オデ、
「よ……よろしく」
(臭いわね、この子。一体、何日風呂に?)
「それじゃあ、十分後に授業始めるからな」
教諭はそう言って、教室を出て行った。
放課後。
クリスは帰路に就いていた。
「あ」
キッドがハングライダーで上空を飛行していることに気がつく。
「あの人またやってるよ」
どうでもいいけど──と呟くクリス。
バキュン!──と、どこからか銃声が聞こえてきた。
クリスは音がした方へ駆けつけた。
辺りを調べてみると、頭部から血を流して倒れている男性を見つけた。
「おじさん!」
クリスは男性に声をかけるが、既に事切れていた。
そして、死体のそばには拳銃が置かれていた。
スマホで百十番通報をするクリス。
しばらくして、警察がやってきた。
所轄署の刑事がクリスに確認する。
「それじゃあ、銃声が聞こえたから、駆けつけて確認したら、死体を発見したわけだね?」
「はい」
「そのとき、何か怪しいものとか見なかったかい?」
「いいえ、特に。それより刑事さん──」
「凶器もあることだし、自殺でいいよな?」
「あの、刑事さん」
クリスは刑事に声をかけるが、聞く耳を持ってくれなかった。
(クソ。お兄ちゃんの気持ちがわかったわ)
クリスは刑事の目を盗んでこっそり遺体を調べた。
「こらこら」
鑑識がクリスに気づき、その体を抱き上げた。
「あ!」
「お嬢ちゃん、死体に触っちゃいかん。死体には死亡推定時刻や死後硬直があってな、みだりに触るとそれらが崩れちまう」
(聡美じゃなきゃ触らせてもくれないのか)
「山川刑事、この子を送ってやってくれないですか?」
鑑識が刑事に訊ねた。
「お嬢ちゃん、我々警察が家まで送るよ。犯人が近くにいたら危ないからね」
クリスは刑事が乗ってきた覆面パトカーに押し込まれた。
刑事は運転席に座り、車を発進させようとする。
「いけない!」
「どうしたの?」
「コンタクトレンズを片方落としたみたい。死体の近くで。探させてくれますか?」
「死体には触らないでね」
クリスはパトカーから出ると、遺体の近くまでやってきた。
コンタクトレンズは遺体を調べるための口実であった。
(遺体に触れなきゃいいんでしょ?)
クリスは遺体をよく観察した。
後頭部に火傷の痕。
(これは!?)
「ねえ、おまわりさん!」
クリスが制服警官に声をかけた。
「どうしたの?」
「あの人の傷、おかしいよ」
「おかしいって?」
「うん。後頭部の傷の周りに火傷があるもん」
「それって、まさか!」
警察官が遺体を確認する。
「山川さん!」
刑事がやってくる。
「なんだ?」
「この遺体の傷、見て下さい」
「これは!?」
刑事は気づいた。後ろから撃たれたものだということに。
「お手柄だよ、君! 危うく自殺で処理するところだった」
「気づいてくれたのはこの子です」
クリスを示す警察官。
「そういえば、君の名前を聞いてなかったね」
「くど……じゃなくて、江戸川 クリス、探偵よ」