名探偵コナン〜新一の妹〜   作:桂ヒナギク

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24.クリス最初の事件

 クリスは帝丹小学校の教室の黒板前に立っていた。

 黒板には江戸川 クリスと名前が書かれている。

 クリスはコナンと同じクラスを希望していたが、学校の都合で隣のクラスに編入することになってしまった。

「江戸川 クリスです。よろしく」

 頭を下げるクリス。

「それじゃ、クリスさんはあそこね」

 クリスは教諭が示した席に着く。

 隣は醜い顔をした大柄な少年だった。

(こういうの無理めかも……)

 クリスはそう思ったが、口にはしなかった。

「オデ、加村(かむら) 義男(よしお)。よろしくな?」

「よ……よろしく」

(臭いわね、この子。一体、何日風呂に?)

「それじゃあ、十分後に授業始めるからな」

 教諭はそう言って、教室を出て行った。

 

 

 放課後。

 クリスは帰路に就いていた。

「あ」

 キッドがハングライダーで上空を飛行していることに気がつく。

「あの人またやってるよ」

どうでもいいけど──と呟くクリス。

バキュン!──と、どこからか銃声が聞こえてきた。

 クリスは音がした方へ駆けつけた。

 (わず)かだが、火薬の臭いと血の臭いがした。

 辺りを調べてみると、頭部から血を流して倒れている男性を見つけた。

「おじさん!」

 クリスは男性に声をかけるが、既に事切れていた。

 そして、死体のそばには拳銃が置かれていた。

 スマホで百十番通報をするクリス。

 しばらくして、警察がやってきた。

 所轄署の刑事がクリスに確認する。

「それじゃあ、銃声が聞こえたから、駆けつけて確認したら、死体を発見したわけだね?」

「はい」

「そのとき、何か怪しいものとか見なかったかい?」

「いいえ、特に。それより刑事さん──」

「凶器もあることだし、自殺でいいよな?」

「あの、刑事さん」

 クリスは刑事に声をかけるが、聞く耳を持ってくれなかった。

(クソ。お兄ちゃんの気持ちがわかったわ)

 クリスは刑事の目を盗んでこっそり遺体を調べた。

「こらこら」

 鑑識がクリスに気づき、その体を抱き上げた。

「あ!」

「お嬢ちゃん、死体に触っちゃいかん。死体には死亡推定時刻や死後硬直があってな、みだりに触るとそれらが崩れちまう」

(聡美じゃなきゃ触らせてもくれないのか)

「山川刑事、この子を送ってやってくれないですか?」

 鑑識が刑事に訊ねた。

「お嬢ちゃん、我々警察が家まで送るよ。犯人が近くにいたら危ないからね」

 クリスは刑事が乗ってきた覆面パトカーに押し込まれた。

 刑事は運転席に座り、車を発進させようとする。

「いけない!」

「どうしたの?」

「コンタクトレンズを片方落としたみたい。死体の近くで。探させてくれますか?」

「死体には触らないでね」

 クリスはパトカーから出ると、遺体の近くまでやってきた。

 コンタクトレンズは遺体を調べるための口実であった。

(遺体に触れなきゃいいんでしょ?)

 クリスは遺体をよく観察した。

 後頭部に火傷の痕。

(これは!?)

「ねえ、おまわりさん!」

 クリスが制服警官に声をかけた。

「どうしたの?」

「あの人の傷、おかしいよ」

「おかしいって?」

「うん。後頭部の傷の周りに火傷があるもん」

「それって、まさか!」

 警察官が遺体を確認する。

「山川さん!」

 刑事がやってくる。

「なんだ?」

「この遺体の傷、見て下さい」

「これは!?」

 刑事は気づいた。後ろから撃たれたものだということに。

「お手柄だよ、君! 危うく自殺で処理するところだった」

「気づいてくれたのはこの子です」

 クリスを示す警察官。

「そういえば、君の名前を聞いてなかったね」

「くど……じゃなくて、江戸川 クリス、探偵よ」

 


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