「全員動かないで! これは殺人事件よ!」
周囲が騒ぎ出す。
「この中に犯人が? いやだ、怖い!」
食堂の容疑者が一堂に逃げて行った。
「あ……」
聡美は携帯で警察に通報する。
警察が到着し、捜査が始まった。
「毎回毎回、君は死神かね?」
と、目暮警部が言う。
「殺人事件なんて日常茶飯事でしょ」
「で? 被害者は?」
「清水 洋一、クラスメイトです」
遺体の前で合掌する目暮警部。
「あれ? 高木刑事は?」
「休暇を取って佐藤くんとデートだよ」
それより──と、続ける目暮警部。「容疑者は上がってるのかね?」
「私が安否を確認した時、大勢いたんですけど、全員逃げました」
「なんだと?」
「みんな怖いとかなんとか言って」
「まあ、無理もなかろう。自分の学校で殺人事件が起きたんだからな」
「あと、亡くなる間際に洋一くんからこんなメールが」
聡美は目暮警部にメールを見せた。
「ふむ……」
「洋一くんは青酸カリで亡くなったようですよ」
「青酸カリか。だが毒の瓶は発見されておらんぞ」
「とりあえず、司法解剖の結果を待ちましょう」
遺体が回収され、監察医と部下から目暮警部に連絡が入る。
「胃の内容物から青酸カリと共に溶けかかったカプセルが見つかったそうだ」
それから──と、続ける目暮警部。「部下の話によると、被害者は心臓病で薬を飲んでいたそうだ。その薬が毒とすり替わっていたのだろうな。しかし、被害者はなぜ命を狙われていたんだ?」
「前の高校で何か会ったんじゃないですかね?」
「前の高校?」
「洋一くん、転校生なんですよ。警察ならわかってると思ったのに」
「調査不足で悪かったな」
「さて、私は授業に戻るから、前の学校調べといて下さいよ」
聡美は食堂を出て教室に戻った。
「聡美」
と、蘭。
「清水くん、亡くなったんだって?」
「毒殺だよ」
「犯人はわかってるの?」
「外部犯かもしれないわ」
「帝丹の生徒じゃないの?」
「違うよ。今日、転校してきたばかりの生徒を誰が殺すの?」
「それもそうね」
チャイムが鳴り、教師が入ってくる。
教師は、洋一の件で、生徒たちを帰らせることにした。
学校を出た聡美は、その足で洋一の前の学校である江古田高校へ向かった。
江古田高校には、目暮警部がいた。
「目暮警部」
「おお、聡美くんか。学校はどうしたんだね?」
「洋一くんが亡くなったってことで、午後は休校になったんです」
「そうだったか」
「で? 捜査に進展は?」
「一応、容疑者が二人浮上したんだが、どっちが犯人なのかわからなくてな」
「容疑者について教えてもらえます?」
目暮警部は答える。
一人は
上妻はイジメで自殺した彼女のことで、その原因である洋一を恨んでいたという。十分、殺害の動機になり得る。
もう一人は、
二人とも、洋一が持病を抱えていることを知っている。