蘭は嬉しそうな顔をしていた。
「どうしたの?」
「昨日、新一に会ったの」
「え? 新一くんに?」
蘭と園子が話をしている。
「うん。でも、すぐに事件があるからっていなくなっちゃったけど」
「そうなんだ?」
蘭が聡美を見る。
「聡美の方は?」
「え?」
「新一に会った?」
「うん。昨日の事件の推理中にね」
(いつも会ってるよ。小さいけど)
聡美は内心そう思った。
チャイムが鳴り、朝礼が始まる。
……。
…………。
………………。
お昼休み、聡美は一人、教室で考え込んでいた。
頭の中は同級生の男子生徒、
洋一は聡美たちのクラスに転校して来た、
精悍な顔立ちゆえに、学年中の女子が洋一を取り囲んでいる。
どうしたものか……。
と、洋一を見てみると、彼と目が合う。
ドキドキと心臓の鼓動が高鳴る。
「聡美、顔赤いよ?」
と、心配そうに聡美を見る蘭。
「熱あるんじゃ?」
「洋一くんにお熱だよ」
「聡美、転校生の洋一くんのこと?」
「うん、惚れた」
洋一がこちらへやって来る。
「顔、赤いけど大丈夫かい? 熱があるんじゃ?」
聡美の額に、洋一がおでこをあてがう。
「大変だ! すぐに保健室行こう!」
洋一が聡美を保健室へ連れて行く。
「すみません、この子熱が……」
と、保健室に入るが、保健医は留守だった。
「(熱があるのはあなたのせいで……)」
「え、なんか言った?」
「う、ううん、何も?」
「とりあえず、横になってれば?」
「いや、大丈夫だから」
「でも……」
「本当、大丈夫だから。ありがとう」
「そういえば、名前、まだだったね。なんて言うの?」
「聡美、工藤 聡美」
「へえ。君があの有名な?」
「うん」
顎に拳を当てて考え込む洋一。
「連絡先教えて」
「うん」
聡美と洋一が連絡先を交換した。
「それじゃ、僕は」
洋一は去って行った。
一人残された聡美は、どうしたらいいか、わからなかった。
(いきなり連絡先を交換なんて)
保健医が入って来る。
「どうしたの?」
「あ、いえ……」
聡美は保健室を出た。
保健室を出たはいいが、しかし、行くあてがなかった。
グー──腹の虫が鳴く。
空腹に苛まれた聡美は、食堂へ向かった。
食堂内は騒がしかった。
「おい、工藤!」
上級生が聡美を呼んだ。
「何でしょう?……っ!?」
聡美は床に倒れている洋一に気づいた。
「洋一くん!?」
その体を確認する聡美。
洋一は絶命していた。
口元からはアーモンド臭がする。
「青酸カリ……」
と、その時、聡美の携帯がメールの着信を知らせる。
「こんな時に何よ?」
メールを確認すると、洋一からのだった。
僕は命を狙われている。僕にもしものことがあったら、その時は犯人を見つけてくれ。