「ああ、爆破予告事件だろ? ニュースでやってたよ。だけど、犯人は俺じゃねえ」
「恨みがあるなら、私一人を狙えばいいですからね。となると、黛先生、あなたということになる」
「……………………」
黛は無言だ。
「黛先生?」
高木刑事がいう。
「黛さんは声帯を全摘出したんです」
「どうしてですか?」
「ガンに侵されていたんです」
黛が手話で伝えてくる。
僕はやってない。僕は無実だ
「目暮警部、彼はやってないと言ってます」
「聡美くん、君は手話もできるのかね?」
「はい」
「黛さん」
と、目暮警部が黛を見る。
「あなたは校長の奥さんと不倫をしていたそうですね?」
「あれは僕の意思じゃないんです。向こうが言い寄ってきて、だそうです」
「そうですか」
「僕は校長に申し訳ないことをしました。謝罪の気持ちで一杯です」
「岸辺さん、あなたは万引きを咎められたそうですが?」
「出来心だよ」
「いけませんな。出来心でも、ものを盗んでは」
聡美は考える。
この二人のどちらかが犯人なのだ、と。
「なあ、もう帰っていいか?」
と、その時だ。
「目暮警部!」
部下の刑事がやってくる。
「ば、爆弾が! 爆弾が発見されました!」
「なんだって!?」
「今、処理班が処理してますが」
「どこでだね?」
「車です。校舎内を探してもなかったものですから、安心してたのですが、まさか校長の車に仕掛けられているとはつゆ知らず」
ドカーン!──爆音が響いてくる。
爆発物処理班の解体作業も虚しく、爆弾は爆発し、車が炎上して処理班の一人が殉職した。
炎はすぐさま消防隊によって消し止められた。
遺体は粉微塵になっており、原形を保っていない。
その様子を見ていた犯人は、ニヤリとほくそ笑む。
(警察を一人殺した。次はあの女だ)
視線を感じた聡美は振り返るが、そこには誰もいない。
「ん?」
聡美が焦げたワイシャツのボタンを見つけて拾った。
(そういえば、あの人……)
聡美はワイシャツのボタンが取れていた、ある教師の手首を思い出す。
(これは証拠になるな)
聡美は焦げたワイシャツのボタンをポケットにしまった。
「目暮警部、爆弾なんですが、携帯電話と連動して爆発する仕掛けになっていたそうです」
そういうのは、高木刑事だ。
「うむ……」
「高木刑事!」
と、聡美。
「どうしたんだい?」
「あの、……………なんだけど、調べてもらえますか?」
「すぐに調べるよ!」
高木刑事は駆けていった。
それから暫くして、高木刑事が戻ってくる。
「聡美さん、調べてきたよ。君の睨んだ通り、爆発のあった時刻にあの人の発信履歴があったよ」
「ありがとうございます」
聡美は目暮警部に歩み寄った。
「目暮警部!」
その時、部下の刑事が慌てた様子でやってきた。
「なんだね?」
「校長先生が、殺害されました」
「何!?」
(なんだって!?)
聡美たちは遺体が発見された校長室へ向かった。
そこには、ナイフで胸を一突きされ、絶命している校長の姿が。
遺体が運び出され、鑑識作業が行われた。
鑑識の報告で、ナイフからは指紋が検出されなかった。
鑑識作業の終わった現場を、聡美が