米花町、工藤邸。
聡美は自分の部屋で推理小説を読んでいた。
「はーあ」
机を離れ、ベッドに横たわる。
時刻は既に三時を過ぎていた。
「寝よう」
聡美が眠りに就くのもつかの間、朝を迎えた。
「眠い……」
時刻は九時前。
「しまったー!」
遅刻である。
聡美は慌てて制服に着替えると、ダッシュで帝丹高校へ向かう。
帝丹高校の校門の前に、パトカーが止まっていて、蘭や園子が中に入れず立ち往生していた。
「どうしたの?」
「ああ、聡美。実は学校に爆破予告が届いたみたいで、生徒たち全員外に避難してるのよ」
ていうか──と、続ける園子。「あんた、遅刻?」
「三時まで推理小説読んでた」
「新一くんもそうだったわね」
聡美は現場にいた目暮警部に声をかけた。
「警部!」
「うん?」
振り返る目暮警部。
「おお! 聡美くん」
「爆弾は見つかったんですか?」
「今、爆発物処理班が捜索してるところだよ」
「爆破予告が届いたそうですね」
「これだよ」
目暮警部が聡美に爆破予告を見せる。
「これが、今朝、ポストに入っていたそうだ」
目暮警部に無線連絡が入る。
爆弾は発見されなかったようだ。
ふう、とため息をつく聡美。
「爆弾が出なくてよかったわ」
「刑事さん」
と、校長が目暮警部に声をかけた。
「なんですかな?」
「学校の運営は再開しても?」
「ああ、もう構いませんよ」
校長含め学校関係者は全員校内へ入っていく。
聡美は教室で爆破予告のことを考えていた。
犯人は割れたのだろうか。
「工藤 聡美!」
という教師の声も届かない。
「おい、工藤 聡美!」
「ほえ?」
「これを訳してみろ」
英語の時間だった。
聡美は黒板に書かれた日本語を英文に訳した。
「せ、正解だ」
聡美は自分の世界に戻る。
考えていても埒が明かない。
聡美は教室を出ていく。
「おい、工藤!」
教師が叫ぶ。
聡美は無視して事務室へ向かう。
事務室には目暮警部がいた。
「聡美くんか。今は授業中じゃないのかね?」
「いいんです。それより、事件の犯人は割れたんですか?」
「いや、まだだ。猫の手も借りたいぐらいだ」
「予告状から指紋は?」
「一切検出されなかったよ」
「そうですか。聞き取りの方は?」
「特に犯人と思しき人物はいなかったよ」
聡美は思い出す。
(そういえば、この前、学校を辞めた先生が二人いたな……。どちらかが犯人か、あるいは……)
「目暮警部、以前、ここで教師をしていた、
目暮警部は高木刑事を通して二人の元教師を呼んだ。
「お久しぶりですね、岸辺先生に黛先生」
「お、お前は!?」
岸辺が聡美を見て驚く。
岸辺は万引きしたところを、聡美に目撃された挙句、警察に通報され、それが学校にも知れ渡り、クビになっていた。
「……………………」
黛は無言だった。
黛は校長の奥方と不倫しているのが発覚、辞職に追いやられている。
「お二人がなぜ呼ばれたのか、わかっておりますな?」
目暮警部が二人に訊ねる。