「聡美さん、何やってるの?」
その声に振り返ると赤峰刑事がお土産を手に立っていた。
「カフェで人が殺されたんです」
「何だって!?」
お土産を個室にしまった赤峰刑事は聡美と共にカフェへ向かう。
赤峰刑事が警察手帳を船長に提示する。
「ああ、警察の方……」
ホッとした空気になる船長。
「毛利さん、容疑者は?」
「容疑者は被害者と面識のあるこちらの男女三人だ」
小五郎が三人の男女を差し示す。
名前はそれぞれ、
小宮山は青森県警本部の警察官。
浅見はルポライター。
左門字は探偵だ。
彼らは被害者と四人での北海道旅行からの帰りである。
「警視庁の赤峰です」
赤峰刑事が小宮山に言った。
「小宮山です」
小宮山が青森県の警察手帳を提示する。
「被害者の小御門さんの職業は?」
と、聡美。
「弁護士よ」
「弁護士……ですか。お住いはどちらなんでしょう?」
「東京に住んでるって聞いたことがあるわ」
「あいつ、世間では悪徳弁護士などと呼ばれて、相当恨まれてるみたいだった」
そういうのは、浅見だ。
聡美は携帯で警視庁にかけた。
電話口で事情を説明し、志村刑事に繋ぐ。
「おお、工藤くんか! 何の用だ?」
聡美は事の経緯を説明する。
「なるほど。帰りのフェリーでそんなことが。で、何を調べればいいのかな?」
「弁護士の小御門 健介について調べて欲しいのですが」
「小御門 健介? 悪徳弁護士って言われてる、あの?」
「ご存知でしたか」
「世間ではそう言われてるが。私も仕事で何度かお会いしたが、悪徳だなんて嘘だったよ」
「そうですか。とりあえず、過去を洗ってもらえますか? 恐らく、怨恨なので」
「わかった! 任せといてくれ」
電話をしまう聡美。
それからしばらくして、聡美の携帯が鳴る。
「はい」
応答する聡美。
「工藤くん、志村だ」
「ああ、志村刑事」
「小御門を超特急で調べたが、何もなかったよ」
「小御門の家は調べました?」
「今、部下に調べてもらってるが……お、きたきた」
ちょっと待ってくれ──と、受話器の向こうで携帯を確認する志村刑事。
「今、部下からメールが来たんだが、小御門のパソコンに毒物を購入した痕跡が残っていたようだ」
「痕跡ですか。他には?」
「あとは遺書だね。小御門は仕事が嫌になっての自殺だろうな」
「遺書は後ほど確認させてもらうとして……、どうもありがとう」
聡美は電話をしまった。
「みなさん、犯人がわかりましたよ」
聡美が口を開いた。
「なんだって?」
と、赤峰刑事。
「親友を殺した犯人は誰なんですか?」
と、浅見。
「小御門さんは被害者であって、被害者ではなかったのです」
「どういう意味だ?」
「小御門さんは自殺なんですよ」
「自殺?」
「小御門さんの家から遺書と毒物を購入した痕跡が見つかっています。遺書には仕事に疲れを生じ、自殺する旨の文章が書かれていたそうです」
「そ、そんな……」
その場に崩れる小宮山。
「小宮山、小御門のこと好きだったもんな」
「そりゃさぞショックだろうさ……」
三人は一堂に涙を流した。