次回は第五か、茶番か…迷っておりまする。
嫉妬。
色欲。
怠惰。
憤怒。
暴食。
強欲。
そして————傲慢。
七つの具現を倒し、ようやく出口への扉が開かれた。廊下は変わらずぼんやりと壁に着いたろうそくの火が照らすのみ。湿気がすごく、雫が壁を伝って降りてくる。
そこを、僕とアヴェンジャーは歩いていた。
「……」
「……」
話すことはない。
なぜなら離さなくともこの先に答えがある。
「———」
廊下にあの少女の死体はなかった。
彼女たちは第七までしか来れなかったのか…それともこの監獄からの脱獄に成功したのか…
少なくともこの廊下で彼女たちは死ぬことはなかったようだ。
「…着いたぞ。ここが最後だ」
「うん」
長い…おそらく距離は今までの廊下と変わらないはずなのに無性にこの廊下を長く感じた。
ギィィィィ………
古びて錆びたような寂しい音を立てながら、最後の扉が開く。
最後に待つのは一体何か…蛇が出るか、鬼が出るか…
「————」
今までと変わらない。あのだだっ広い空間に出る。ドアは閉まると最初からなかったように消えていった。
もう戻れない。あの場所に置いてきた
そして、さっき、今までと変わらない…そういったが、違う点が1つある。
「これが…答え?アヴェンジャー」
「そうだ。これが真実だ」
そこには一色しかなかった。
赤。
赤。
赤。
赤。赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤—————
鼻に付く鉄の匂い。
まとわりつく嫌悪感。
思考が鈍っていくのが実感できる。
一体何人死んだというのか?
ここで何があったのか?
———そして、目の前にはアヴェンジャーではない人影が1つ…
————ジャラ…ジャラ…ジャララ…ガシャン…
空間の中央、
「君は…」
すると、僕の横を通ってアヴェンジャーが
アヴェンジャーは
「……待たせたな。
「————ま…ってた…よ…アヴェンジャぁ…」
彼女はアヴェンジャーを見やると、今度はこっちを向いてくる。
その瞳は絶望を感じさせない。
その顔は、今まで見た死体の顔と同じ形だった…違いがあるとすれば…生きてるか死んでるかくらいだ。
そして…おかしな感覚が脳を刺激する。
まるで…
———まるで、鏡を見ているような…
「やっと…きて…くれたんだね。リツカ」
ー183726943回の真実が語られるー
ー《F/GO》ー
〜????視点〜
『せ、先輩…先輩、先輩!』
『マ、シュ…?』
目を覚ますと、死んだと思っていたマシュがいた。
◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎の宝具を防ぎ、盾を残して完全に消滅したはずの
それが目の前にいる。目が潤んで、息切れを起こしたみたいに喉が痛くなる。
しばらくの間、抱き合ってると少し疲れたようなダ・ヴィンチちゃんがいつもの明るい声で話しかけながら歩いてきた。
『特異点は修復され、人理焼却は防がれた…
だが、』
そこから先を話そうとしたダ・ヴィンチちゃんの顔の様子を見て、先の展開を予想できた。
『レフ・ライノールによる破壊工作で失われた二百名の命。今も冷凍保存中のマスター四十七名。そして…』
『———そして、終局特異点からの未帰還者…一名』
私たちは…今までの特異点で出会った英霊たちの協力によって、魔術王…いや、魔◼︎王◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎、そして◼︎王を倒した。
しかし、そこまで行くのに…私たちカルデアは、
『やあ。◼︎◼︎◼︎ちゃん!疲れてないかい?みかんあるけど…』
『怪我をしたら言ってくれ。こう見えても、カルデアの医療トップだからね。僕は』
『すまない!言い忘れたけど、近くから敵勢反応が…え、もう倒したの?そ、そっかぁ…あはははは…ごめん…』
『すぅ…すぅ…はっ!?しまった寝てた!わっ!◼︎◼︎◼︎ちゃん!見てたのかい!?起こしてくれてもいいじゃないか〜…』
『ごめんね。君とマシュにはとても辛いことをさせている…僕には大したことはできないけど…どうか頼って欲しいんだ』
『それがおまえの間違いだ◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎。
確かにあらゆるものは永遠ではなく、最後には苦しみが待っている。だがそれは、断じて絶望なのではない。限られた生をもって死と断絶に立ち向かうもの。
終わりを知りながら、別れと出会いを繰り返すもの。
……輝かしい、星の瞬きのような刹那の旅路。
———
『———いよいよだな。ボク……いや、ボクたちが最後に見るものはキミの勝利だ。
…カルデアの司令官として指示を出すよ。
キミは人間として魔術王ソロモンを倒した。
あとは魔◼︎王を名乗るあの獣を、ここで討伐しなくてはならない』
『さあ―――行ってきなさい、◼︎◼︎◼︎。
これがキミとマシュが辿り着いた、ただ一つの旅の終わりだ』
ドクター…最後の最後まで、私たちのために共に戦ってくれた、もう一人の貢献者。
サーヴァントでもなく、天才でもなく、なんでもない…私と同じ、
『…先輩。先輩にとって…この旅はどんな旅でしたか?』
『多分…マシュと一緒かな』
一年ぶりに見た外の太陽。
そしてそれに照らされるかわいい後輩の笑顔。
白い雪の斜面がとても美しく…
ああ、私は今、生きているんだ…と、そう感じさせる。
———そこから先は、嵐のようだった。
次々に発見される亜種特異点と呼ばれる、人理焼却時に現れた特異点と同レベルの異変。
そして、それはあの終局特異点から逃げてきた四体の魔神柱が作り出したものだった。
亜種特異点Ⅰ 悪性隔絶魔境 新宿。
亜種特異点Ⅱ 伝承地底世界 アガルタ。
亜種特異点 Ⅳ 禁忌降臨庭園 セイレム。
亜種特異点 EX 深海電脳楽土 SE.RA.PH。
対処に当たれるのは、カルデアに残ったマスター…つまり、私しかいなかった。
はるか上空に投げ出されたり、
男性が酷く扱われる地獄を見たり、
この世のものではあってはならないものに出会ったり、
悲しく儚い絶望に出会ったりもした。
まさしく、それは地獄だったし、みんながいなければ決して乗り越えられなかっただと思う。
そして…
『先輩。ではまた明日…』
『うん。掃除手伝ってくれてありがとね』
いつものように、マシュと別れ、ベットに入り、明日も起こるかも知れない事件に向けて体を休めようとした…
すると…
———コイ…基本世界ノマスターヨ…
『……あ、あれ…ここ…廊下?』
私は廊下で眠っていた。
またいつもの夢か何かだと思ったが、それにしては何か違和感があったのだ。
『…!!…みんな…どこ…?』
繋がりを感じない。サーヴァントと契約してるなら感じるはずの繋がりが…なぜか感じられなかった。
まだほかのサーヴァントならわかる…でも、
『…!?…な、なんで…令呪が…』
さらなる衝撃が駆け巡る。
私の手に、あの見慣れた令呪までもがなくなっていた。
混乱のあまり、頭をぐしゃぐしゃなで回す。
すると…
『フォウ、フォウ!!』
『フォウさん?どちらに…あ…』
『マシュ…フォウ君…』
繋がりが消え、まさかと思ったがそれは杞憂だった。彼女はちゃんといたし、きっとこれは何かの不具合が…
そう…
『あの…
『え?』
意識が、体が硬直した。
だが、この残酷な状況を、脳はひとりでに理解していた。
嘘だ。
『私はレフ・ライノールという。このカルデアでの技術顧問だ』
どんなに否定しても
嘘だ。
『私の名前はオルガマリー・アニムスフィア。貴方達はここでは私の指揮下にあることを忘れないように』
彼女の反応が現状を物語っている。
嘘…だ。
『だ、誰の断りを持って入って来たんだ!ここは僕のサボり場だぞぉ!!』
ここは———
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だッッッッッッ!!!!!
『…せん…ぱい…手を…握ってもらっても…いいですか?』
———
ー《F/GO》ー
〜ぐだ視点〜
「何度も、それが嘘だと思った。でも実際レフが生きていて、カルデアが爆発して、所長が死んで、マシュと私はそのまま第一特異点に向かっていった…」
それは想像を絶する苦痛だと…わかってしまう。
ただの人間に、この事件を二度も体験しろというのは、いくらなんでも苦しすぎる。
しかも、すでに体験しているっていうのが辛い。
それはつまり…その先で自分が何を失い、何と出会い、何に絶望するのかわかってしまうのだ。
1回目はうまくいっても、2回目で失敗するなんてよくある話だ。
今度失敗したら…それで何もかも終わりなのだから…
「そしてね…私はまた、この監獄に来たんだ。そしたら…」
「そこにはアヴェンジャーじゃなくて、
ー《F/GO》ー
〜????視点〜
知らない…
『ハア…ハア…!』
こんな展開を…
『———!!』
私は知らない…見てない…知るわけない…!
サーヴァントがいない私なんて、現れる亡霊にさえ勝てない弱々しい存在だ…
だから走って、走って、逃げて、逃げて——ッッ
『はぁ…はぁ…こ、ここは…』
気づけば私は
そこは今のようにろうそくの光すら無い真っ暗闇だった。
しかし、そんな暗がりに1つの影がいた。
———ジャラ…ジャラ…
『貴方は…?』
暗がりに、今の私と同じように鎖に繋がれたダレカがいた。全身につなぎ目があり、布と布を糸でつなぎ合わせただけのような…まるで…
『———』
『怪我…してるの?』
なぜそう思ったのか…
それは彼のつなぎ目から血のようなものがドロドロと溢れていたからだ。
赤黒い泥が、地面の合間をたどって私の足元に流れてくる。
『————』
その泥が足に当たった瞬間、全身に謎の倦怠感が襲いかかって来た。
膝から体が崩れていく。
足先からの感覚が消えていく。
気づけば下半身は泥に飲まれていき、繋がれた彼を見上げる形になっていた。
故に気がついた。
知りたくなかったような事実に、
『あな…た…顔…なん…で……?』
ー《F/GO》ー
〜ぐだ視点〜
「気がついたら、私はここに繋がれていた。ここから脱出することはできない。多分、予想だけど、私は彼に飲み込まれたんだと思う…」
話だけ聞いて…よくわからなかった。
何より、僕はまだ、何か根本的なナニカをちゃんと聞いてない気がする。
「…そう。結果から言うねリツカ。
———ここは私がやり直しをせざる得なくなった世界線。
…そして、私は2回目の人理修復に失敗し、
———————気づけば、
そ、それ…は…
「そして…そして、183726943回目の私、それが貴方。藤丸 立香」
「私は託した、次の私に。ここを私がでなければ永遠にこの世界は繰り返される。
わたしには…耐えられない。何千、何万回も、所長が、ロマンが、特異点の誰かが……マシュが、死ぬ目に合うのを…わたしには耐えられなかった」
——————————そう、か。
「でも、わたしなんかの魂が183726943回も同じ世界を繰り返して、死んで、また始めるなんて耐えられなかった。その結果、魂どころか、性別、生まれまでズレが生じて……貴方が生まれた」
そうか…これが…
「迷惑だと思う。ありえない事実に腹をたてると思う…でも…わたしには貴方に、願うことしかできない…
お願い…わたしの
僕の生まれた意味だったのなら…
「僕は僕だ…あんたの言うことが本当なら、もう僕とあんたはほぼ他人も同然なんでしょ?」
「……ッッ」
でも、
「まあ…でも…
マシュは、僕の大事な後輩だから…」
やってやるよ。183726943回がなんぼのもんじゃい。
僕の手でマシュを救う。ついでに世界も救ってやる!
「そのために…僕はここを出る…」
「…ではどうするマスター?ここを出れるのは…
はっ…知ってて聞いてるのならこのサーヴァントは本当にいい性格をしている。
「こいよ。来いよアヴェンジャー!変なビリビリなんて捨ててかかって…来いッッ!!」
「クハハハハハハハハハハッッッッッッ!!!!我が往くは恩讐の彼方!」
互いの全力をぶつけ合うッッッッッッ!!!!!
ー《F/GO》ー
〜三人称視点〜
「マシュ…」
「せん…ぱい…」
青年のベットにしがみつくようにして眠っているひとりの少女。マシュ。
それを心配そうに眺めるドクターロマン。そしてレオナルド・ダ・ヴィンチ。
カルデアは、マスター藤丸 立香が昏睡状態に入ってからと言うもの、職員からサーヴァントにまで暗い雰囲気が包んでいた。
多田野 荒木の反応ロスト。
藤丸 立香の長期間の昏睡状態。
これはすなわち、カルデアの、人類の敗北を意味し、残り数ヶ月の最後の時を待つ、さながら処刑を待つ受刑者のようだった。
「…レオナルド。マシュを医務室へ運ぶのを手伝ってくれるか?」
「いいのかい?それは彼女の意思に反することになると思うけど?」
「このままでは体の方が危ない。
…マシュには悪いけど、一旦ぐだ男くんから離れさせよう」
「…そっか。わかった。この天才が作った最高の寝心地を搭載した担架で運んであげよう!!」
ダ・ヴィンチはそういうと、どこからともなく取り出した謎の担架でマシュを寝かせ運び出す。
結果、部屋に残ったのはロマン、そして昏睡中の立香の二人。
「ぐだ男くん…僕は…僕たち大人は君のその強さに甘えてた…君だって人間なんだ…こうなることはわかっていたんだ…ッ
わかっていなければいけなかったんだ…!!」
クマがはっきりと出てる瞳には、ウルウルと涙がたまっていた。
「ごめん…荒木くん…」
先に死んでいったもうひとりのマスターに語りかける。
彼はある意味一番押し潰れても仕方のない人間だった。
相方の立香より圧倒的に足りない才能。
召喚に答えてくれないサーヴァントたち。
それでも彼は前線にたち、カルデアの勝利のために貢献してきた。
「……」
ピク…
「…え」
ロマンの頭に手が置かれる。
撫でられていた。
ここにいるのはたった二人。その手の正体は自然とわかってしまう。
「ありがとう…そう思っていてくれてたんだ…ロマン」
「ぐ、ぐだ男くん?」
「ただいま…って言いたいけど、今はみんなに伝えないとね」
「僕らはまだ、負けてないって!!」
カルデア、再起可能!!
〜????視点〜
「ありがとうリツカ…でも気をつけて」
消えていくアヴェンジャーを膝に乗せながら、彼女は彼が消えていった現実へ目を向ける。
「いつからだったか、何回目からだったか思い出せない…違和感を感じなかったからこそ、思い出せなかった…」
「この事件の真相には
49番目のマスターは、決して存在しなかった」
藤丸 立香。 監獄から帰還!
よくわかんねーよクソが!!という方々のためのコーナー。
一度人理修復を終え、そこから新しい年を迎え、1.5部を始める主人公(女)。
↓
1.5部を終え、査問館たちが来るらしいので色々掃除などを行い就寝。
↓
気がつくと1部プロローグ(´・ω・`)
↓
監獄までなんとか行けた。しかし監獄にはなぜかエドモンがおらず、逃げることしかできなかった。
↓
気がつくと、最深部に来ていた主人公(女)。なぜ第1〜第7の扉が開いてたかは不明。
↓
鎖に繋がれたら青年を発見。人形のような彼のつなぎ目から溢れる泥に飲み込まれ気絶。
↓
目がさめると、今の状況になってた。(拘束)
↓
ぐだ子「もしかして私が彼になったの?ヤダー」
↓
ぐだ子(2回目)「またここかー」プロローグ。
↓
ぐだ子(2回目〜183726942回目)今度の監獄は閉まってたので逃げることもできずに死亡。
↓
183726943回目に目が覚めたのはぐだ子ではなく、GU☆DA☆O(最凶)だった。(しかもやり直しの記憶なし)
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監獄に行くと、なぜかいたアヴェンジャーと合流、そしてようやく一回目のぐだ子とご対面。
↓
アヴェンジャーに勝利。現実に帰還。
↓
第五特異点にいらっしゃーい。
というわけでございます☆
彼はぐだ子(つまり自分)のためでなく、カルデアの職員、ロマン、ダ・ヴィンチ。そしてマシュのために人理修復を目指す。
感想指摘待ってます。