戦闘シーンだぜ。下手だぜ…へへへへ…
すんません(´・ω・`)
腹に空いた穴から血が溢れる。
痛みはない。それどころか体を抉られたという感覚がない。
視界に収めた情報でやっと自分の状態を確認できた。それほどまでに今の俺は感覚…五感が鈍っている。
「—————————あ」
…土手っ腹に大穴空いたせいか体が妙に軽い。某有名な格闘マンガの主人公みたいに重りを外したみたいだ。
前方にはあの巨体がいる。その髪は蛇のごとく。その瞳は邪神のごとく。その巨体は神話の再現。そしてそれらを併せ持ってなお、それは美しく…恐ろしい。
『む?…まだ生きているか…生きがよいのか、意地汚いのか…』
ソレは…多田野荒木というひとりの人間に終える存在ではなかった。
アレはただ俺を喰らう者。目の前の食事に殺意を向ける存在はいない。
膨大な魔力がもたらす周囲への音は、まるで腹を鳴らしてるような音に聞こえる。
「意地汚くて結構…俺はもともとそういうもんだ」
『……』
こちらの小言には付き合う気がないのか、ソレは俺に見向きもせず、その
バカッと開かれた大口には髪とは思えない無数の牙が並んでいた。俺ひとり丸々飲み込めるし、一度飲み込まれたら肉片レベルにまでぐちゃぐちゃにされるだろう。まさに骨すら残さず…というやつだ。
『——私は…あなたのこと…そんなに嫌いではないですよ』
『——せめてこの力があなたの助けになるよう…』
バチバチィッッッ!!!!!
回路に波が押し寄せる。
「———
その
『———』
べギャッッッッッッ
目の前で巨大な蛇は細い一本一本の髪に解けていった。
ありえない速度で叩き込まれた
それは俺自身の拳だった。
しかし俺のような人間ひとりの貧弱な拳ではあの蛇には敵わない。
だが…ここにいるのはもうただの人間ではない。
「俺をただの人間だと思わないことだ」
「あんたの前にいるのは…正真正銘…」
「————怪物のなり損ないだぁ!!」
『……小癪な』
初めての会話。そしておそらく最期の会話。
次に会話するとき、その時は…
どちらかが敗北する時だッッッ!!!!
『———!!!!』
『————!!!!』
俺は身をかがめ、突撃の準備に入る。
向こうはこちらに何体もの蛇を送り込んでくる。
俺はただ走り抜けた。俺が手を出さぬとも…
ザシュッッッズバァッッッ!!!!
『人間が…私の前に立つなッ!!!』
ついに本体が眼孔を大きく開き、濃密な魔力砲を射出してくる。
「くっ…無茶苦茶な魔力…!!」
水平に飛び出しつつ、回転を加え回避する。
飛んでくるレーザーのような魔力は、地面にかすっただけで凄まじい爆発を生み出す。爆風で体がバラバラになりそうだが、そもそも胴体に大穴空いてる時点でいつそうなってもおかしくない。
「あ…いや…」
考えた瞬間、背筋に氷柱を突っ込まれたような気分になるが、飛んでくるレーザーに意識を無理やり向け、嫌な想像を振り切る。
『貴様…』
「…ハァ…ハァ…」
ソレの眼前に俺は迫れていた。無我夢中に攻撃を避け続け、歯を食いしばりながら、拳を…
『がァァァァァァぁあぁッッッッッッ!!!!!!』
「なっ!?」
ほとばしる紫の閃光。爆発的な魔力が瞬時に放出され、とっさに腕をクロスにしガードする。
「が…ず…腕が…あああ…あああああああ…!!!!!」
左腕は比較的無事だった。骨が折れ、青く腫れ上がり、肉がぐちゃぐちゃになった左腕を俺を垂らしながら…しかし俺が青ざめた表情で見ていたのは左腕ではなかった。
無い。
無い。
無い。
——右腕は
『お前は…』
右腕がなくなっただけで俺の意識はツギハギだ。汗が止まらず、瞼が閉じれない。
さらに視界に胴体の大穴が入るたびに、ツギハギだった俺の意識をさらに引き裂かれていく。
『…なんだ…』
泣き叫びたい。体の半分近くが消し飛んだ。
もう逃げたい。ここまでやりきったのだ。昔の俺ならできなかった。
『なぜだ…!』
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い———
『
「—————————————————————————————————が、あ…ああ」
俺の足は、気づけば
俺の足は、俺の意思とは裏腹に、前に突き進んでいた。
………いや、違う。俺の体はそんな便利なもんじゃない。
逃げたい。痛い。死にたくなくて、まだ生きていたくて…
それでも…
グシャ…
潰れた左腕の拳を握りしめた。
力を込めただけで、水を含んだスポンジを絞るように、血が大量に吹き出した。
それでも拳を握れたのは、
俺は震えながら、何度も噛み砕きそうになった奥歯を開きながら、その名前を叫んだ。
「メドゥゥゥゥゥゥゥゥサァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッ!!!!!!!!!」
ズシャッッッ…………
ほのかな暖かさが、消えていく。
命が…消えていく。
ピトリと…俺の方に、綺麗な紫色の髪が垂れてきた。さっきまで荒々しくこちらに殺意を向けていた蛇たちはもういない。
刺々しい魔性の指が、俺の顎を撫でながらクイっと上げさせられ、瞳と瞳を合わせさせられる。
美しい。
それだけしか言えない。しかしそれはきっと正しい感性だろう。
『お前は…なんだ?お前は…
「俺は…あなたに………救われない怪物に恋をしただけだ」
だから、今のあなたが、あなたの末路だというのなら、俺はそれに死ぬまで付き合う。
俺は…そう誓った。
『…………おかしな人間だ…』
その時彼女は、
いつかのあなたと同じことを言って…消えていった———
感想指摘待ってます。
”形の失った島“の主 ゴルゴーン…消滅。