シャドウサーヴァントから始まる人理救済   作:ドリーム

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察しのいい方は色々気づく回だと思われ…


待て、しかして希望せよ

〜???視点〜

 

ピチョン…

 

水の滴る音が聞こえる。

ぼんやり見える光はロウソクの炎か。

じめっぽい空気に内側に着ているインナーがひっついて気持ち悪い。しかし、そこはひんやりとしていて、背中に鳥肌が立ってしまった。

石造りの床に大の字で寝ていたせいか、身体中が軋む。しかし現状を把握するには体に鞭を入れて立ち上がるしかない。

私はとにかく立ち上がり、その空間の全貌を視界に収め…

 

 

『ここ…どこ?』

 

こう言うしかなかった。

 

 

 

 

 

 

ひょんなことから私を助けてくれた黒いコートを着たサーヴァント。

クラスはアヴェンジャー。聞いたことのあるようなないような…

ある時、彼はある青年の昔話をしてくれた。

 

悪を知らないその船乗りの青年は、恋人(メルセデス)と約束された希望に溢れた未来を、友人や権力者たちに裏切られ、イフの監獄塔に幽閉された。

 

しかし彼は持ち前の鋼の意思で、自身を陥れた存在と、自分を救ってくれた老人(ファリア神父)を嵌めた存在に復讐すべく老人の死体と入れ替わり、石造りの地獄(シャトー・ディフ)を脱獄し、『モンテクリスト伯爵』と名乗り復讐を開始した。

 

その青年の名前はエドモン・ダンテス。悪に疎かった故に、貶められた鋼の意思を持って恩讐の彼方を駆けぬけた復讐鬼。

 

『それがあなたの名前なの?』

『…◼︎◼︎。その男は全てを奪われた男の名だ。ここにいるのは俺を陥れた者を全て地獄に引きずり落とすために脱獄した復讐者!』

 

黒いマントを羽織った色白のサーヴァントは私の目の前でそう高らかに言い放った。

 

『思い出すだけで笑いがこみ上げる!我が真名を告げた時の奴らの表情!!クハハ!クハハハハハハハハハハッッッッッッ!!!!!』

『己が忘れ去っていた悪業の帰還を前にした絶望!!』

『あれこそが復讐の本懐!

正当なる報復の極みなる!!』

 

邪悪な笑みを浮かべ、『奴ら』を笑い、引きずり落とす。存在。

 

そして…

 

『俺は…お前のファリア神父になるつもりはない』

 

『え?』

 

 

()()()()()()()()()()

その手が私の心臓()を抉った。

 

 

 

 

 

 

 

————私は生きていた。

 

 

 

目の前で、(憤怒)彼女(傲慢)が対峙している。

 

『全ての人間を救おうとは…随分“傲慢”じゃないか!!』

 

『私は…一切の害ある者を…赦しはしないッッッ!!!!』

 

一緒にいたか弱い女性は、傲慢の大罪を背負って現れた。

真ある憤怒か?目覚めた傲慢か?

 

『ククク…メルセデスめ…救うなどと…()()()()()()()()()()()()

 

全身の傷が開かれ、ドバドバと蛇口から出る水のように血が吹き出す彼。

 

私は彼女が消える前に施した処置に感謝しつつ、ヘンテコな足取りで彼に歩み寄る。

 

『アヴェンジャー』

『……俺も…なりたかった。ファリア神父のように、お前のような…希望を持って突き進む存在を導ける存在に…』

『うん。私…ここまで来れたよ』

『…お前は俺にそうやって微笑むか…マスター』

 

アヴェンジャーは私の体を扉の方へ突き飛ばす。

 

 

『◼︎◼︎◼︎◼︎!我が共犯者よ!…クハハハハハハハハハハ!魔術王はお前をここに閉じ込めただけで満足したようだが…それは大きな誤算だったな!』

 

 

『絶望に押しつぶされようと、希望を持って突き進むお前なら…必ず世界を救えるだろう!!』

 

意識が朦朧としてくる。

だから最後に彼の名前(クラス)を叫ぶ。

 

『————アヴェンジャー!!』

 

 

彼はこちらに顔を向けた。

 

その笑いは何に対してか?

 

その眼差しは誰を見ているのか?

 

彼の言う誤算とは?

 

『ク…クハハハハハハハハハハ!!!!!そう!我こそは永遠の復讐者!

よくわかってるじゃないか。我が共犯者、我がマスター!!』

 

 

 

『再会を望むか?ならばオレはこう言おう。

 

 

 

 

 

 

————待て、しかして希望せよ』

 

 

彼はそう言い、私の意識は浮上していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー《F/GO》ー

 

 

 

〜ぐだ視点〜

 

「ハァ…あー…がぁ…ウップ…気持ち悪い…」

「リツカさん?大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫だ…ちょっと気分が悪い…だけ…ギグガ…」

 

第4の扉を目前に、再びノイズとともに現れる謎の記憶。

自分のものではない。だってあれは少女だった。俺は男だし…しかし…

 

メルセデスは傲慢の具現?

アヴェンジャーは俺を殺そうとする?

…そしてここは…魔術王…?とか言うのが俺を閉じ込めるために用意した空間?

 

落ち着け…素数を数えろ…1、2、3、5…違う…1は素数じゃない。

…いまはまだ結論を出す時じゃない。この記憶は間違いなく俺…あーじゃなくて僕に語りかけている(つい素にもどってしまったゼェ…)

この監獄塔には間違いなくナニカある。

それを見つけなければ…

 

「マスター。第4の扉だ。開けるぞ」

「…うん。そうして…メルセデスは後ろに」

 

いまはとにかくここを突破することを考える…しかないな!!

 

 

重く、重く…扉はゆっくりと開かれる———

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘーイ!マスター!お迎えに来たフランス出身の魔王ジャンヌ=V=ダル・マイケル二世・ク…改め…ジャンヌデース!!」

「うん。いつも通りのキチガイっぷりをありがとう。ある意味感動したよ」

 

———そこには見慣れたキチガイがいた。

 

いつもの旗を振り回しながら、その可憐な姿をキチガイエネルギーで汚しまくって俺たちの前に第4の大罪人が現れる。

 

っておい。ここはノーマルジャンヌの出番でしょ。くず男キチガイ教育はジャンヌの座にまで響いているのですか?

 

「……」

 

隣のアヴェンジャーはジャンヌの帰国子女風の挨拶を聞いたや否や、ワナワナ震え始めた。ていうかバチバチ痛い痛い。

 

「おい…あれはなんだ」

「何って…ジャンヌだよ?」

「フランスの?」

「うん」

「聖処女?」

「うん」

「あれが?」

「うん」

「…嘘をつくな藤丸立香!!あれのどこが!?俺の知ってるジャンヌ・ダルクとは大幅に違う!!」

「どこからどう見てもジャンヌ」

「違う…いや見た目はそうだが違う!違う!違う!違う!!!」

 

凄まじいスピードで首を横に振り回すアヴェンジャー。

なんかキャラ崩壊しているが、まあいい。

 

「ジャンヌ…なんだよね?僕と契約した…」

「もちのろん!ちなみにこれは朗報なんですが、私なんと…この下…水着です」

「誰得だ」

「ジル得」

「確かにな」

 

相変わらずロングスカートは犯罪的な部位で開いており、動きやすさ優先とはいえそれはやりすぎだろう。見る気なくても水着見えるわ。

 

「あー…おほん。話戻していいですか?スキップしたりしない?」

「お前は何を言っているんだ」

「こほんこほん…マスター。私はあなたを救いに来ました。それが世界のため、あなたのため。何より…友のために」

 

ジャンヌはわざとらしく咳をすると、急に聖女モードに戻り、意味深なワードを吐き出した。

友?くず男?あー、僕がこんなところにいるからか?

 

「あーうん。大丈夫。アヴェンジャーと一緒にここを出ようとしてたから…」

「残念だがマスター。あの扉を開けるには部屋の主を倒さねばならん。つまりあのヘンテコ聖女を倒すしかない!クハハハハハハハハハハ!!!!」

「リツカさん…彼…いつもより笑ってます」

「なんか知らないけどアヴェンジャーはジャンヌを知ってるらしいけど、うちのジャンヌ…見ての通りキチガイだから…」

 

まあ、ふつうの彼女を知ってる人間からすれば、ある意味耐えられないだろう。最初の頃のダブルジルもそうだった。

セイバーの方まで目ん玉飛び出す始末だったしね。

 

「———アヴェンジャー…そうですか。あなたは…」

「……」

 

 

ジャンヌは旗を持ち替え、構える。

それは普段ふざけてるキチガイ女からは想像もできない…まさに聖女の姿。

慈愛に満ちた瞳に、もはや迷いはなかった。

 

「なら…私はマスターと…そしてあなたも救いましょう。()()()()()()()()()

「違う……違う!違う!違う!違う!違う!!!!

それは復讐の果てに己が悪性を捨てた男の名だ!!ここにいるには復讐の鬼…」

 

彼の周りに黒い魔力が唸り、まとわりついていく。バチバチと放電した魔力が、空間を満たしていく。

そういえば始めてみる。彼の一対一の戦いを。

 

 

 

 

 

「アヴェンジャーである!!」

 

 

 

 

—————!!!!!!

 

 

 

旗と拳が混じり合う。

 

 

ー《F/GO》ー

 

 

 

 

〜くず視点〜

 

 

出口が見える。

直感だが、この『形を失った島』の脱出は、海からは不可能。

なら逆に島の中心では?と思ったが、よくよく考えればここは魔術王が作った空間。それを維持するためにはなんらかの楔が必要な筈だ。

つまり…この島には主がいる。そしてそれを倒さねばここの脱出は不可能。

 

「ここ…だな」

 

黒い、塗りつぶされた石畳を歩く。

歩くたびに体にあのどんよりとした風がまとわりついてくるが…

 

—————…

 

それが気にならなくなるほどの“異常”が、俺の体を通り過ぎていく。

それは濃密な魔力。通常ではありえないレベルの邪気をまとったその魔力が、風にのって漂ってくる。

膨大な魔力に、吐き気が俺の体を蝕むが、俺は拳を握りしめてそれに耐える。

 

「ぐぅ…かぁ…おえ…」

 

口の中が乾く。俺は吐き気を我慢するために口を開き、惨めったらしく舌を出している。

閉じていても余計に気持ち悪くなってしまいそうで、つい真逆の行動を取っていた。

 

———眼が痛い…

 

———眼が痛い…

 

———熱くて…眼だけに火がついてそうな…

 

石造りの門を抜ける。膨大な魔力はそこで嵐のように渦巻いていた。

 

———眼が痛い…

 

———眼が裂ける…

 

———まるで…眼にゆっくりナイフで切れ目を入れてるみたいだ…

 

俺はフードを脱ぎ、鎖を呼び出す。鎖は俺の意思に忠実に現れ、俺の周囲を警戒する。

(彼女)は、変わらず俺のそばにいた。その手には大きな鎌が握られている。

俺はそれが直感でだが、その正体を知る。

 

『ハルペー』

英雄ペルセウスが、女怪ゴルゴーンの首を切り取る際に使用した鎌のような剣のような不死殺しの武器。

それを(彼女)が握っているのだというからとんだ皮肉である。

 

俺は前進する。

眼球がさっきからむちゃくちゃ痛いが、いまは止まってる場合ではない。足を進めるごとに嵐が俺の目の前に迫る。

恐怖はない。そもそもそんなの感じる必要はない。彼女の意思を感じる。俺だけのサーヴァントの意思を。それを考えるだけで、恐怖を感じる必要は皆無となった。

 

 

…だがある一つの不安がある。それは…

 

 

 

 

 

 

この眼の痛みが、ただのイタミで済むのかどうか…

 

 

 

右足が嵐に入り込んでいく。

 

 

 

 

———俺はそれが不安でしょうがない。

 

 

 

俺の体は嵐に飲み込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『———獲物か』

 

 

瞬間、俺は魂レベルでぶっ飛んでいく。

 

———そこにいたのは邪悪だった。

 

鋭利なナニカが俺の腹に穴を開けたらしい。しかし幸いなことにアドレナリンでも走っているのか、痛みを感じず、意外と意識がはっきりしてたし、衝撃で吐き気が少し治った。

 

———人にとっての悪であり。

 

だから()()()()()()をハッキリと確認できた。

 

———こちらに向けられるのはただの食欲。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———ああ…これがあなたの末路ですか?

 

「なら俺は…それに全力で()()()()()

 

あなたがどんな姿で、どんな末路を辿ろうと…俺を知らないあなたに会おうと…

 

 

 

 

 

 

絶対に、この気持ち()は曲げないから!!

 




くず男の相手は誰かって?
セリフで察してくださいお願いしますなんでも(ry

ていうかぐだーずどっちも吐きかけててんだよね(白目)

今週の奴ら

「「オロロロロロロロロロロロロ…」」

感想指摘待ってます。

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