ソードアート・オンライン 黒と紫の剣舞   作:grasshopper

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悩む…………。この先の展開に悩む。オリジナルの話入れるか悩む。


8話 ビーター

 キリトside

  ディアベルが死んだ瞬間はボス部屋とは思えない静けさだった。その直後、ソードスキル使用の硬直が治り、暴れ出すイルファング。

「何でや…………。ディアベルはん、リーダーのあんたが、何で最初に」

  ボスのLAを取ろうとしたからだ。

  しかし、口からその言葉が出ず、代わりに俺はキバオウの左肩を掴んだ。

「へたってる場合か!」

「な、なんやと?」

「E隊リーダーのあんたが腑抜けてたら、仲間が死ぬぞ!これからきっと湧くセンチネルの処理はあんたがするんだ!」

「なら、ジブンは1人逃げようちゃうんか⁉︎」

「そんな訳あるかーー

 

 ーーボスのLA取りに行くんだよ」

 

「そう言うと思ったよ」

  ユウキがボソッと呟く。

「行くぞ、ユージオ」

「ああ、わかってる」

  すると、

「ボクも行く!キリトの今のパートナーはボクだからね」

「わたしも行く。パーティーメンバーだから」

  俺は説得するのが無理だとわかっている。それに今はそんな時間はない。

「わかった。頼む」

  俺達は広間の奥に向かって走り出す。しかし、まずは今はこの場を鎮めなければならない。何か短く、強力なひと言はないだろうか。

  するとユウキの隣を走っているアスナが、邪魔だったのかフード付きのローブを体から引き剥がした。

 艶やかなロングヘアをなびかせるアスナの美しさに眼を奪われ、沈黙した。俺はすかさず叫ぶ。

 

 

 ハルトside

「全員、出口方向に10歩下がれ!ボスを囲まなければ、範囲攻撃は来ない!」

 ディアベルから聞いたキリトというプレイヤーが叫ぶ。しかし今はそんなことはどうでもいいと思っている。俺は見とれていた。

 そのキリトというプレイヤーのパーティーメンバーのローブを着ていた女性に。しかし彼らが攻撃を食らう。キリトとユージオが吹っ飛ばされる。もう1人の可愛らしい女の子が2人のもとに駆けつける。しかし、ローブを脱いだプレイヤーはイルファングに向かっている。

  危ない。

 今まで黙って見ていた俺の足が自然に動く。もう1人走ってる人がいる。名はエギル。昨日キバオウを論破した人だ。

「おい、あんた!パリィしてくれ!そしたら俺が腹を斬る!」

「OK!」

  エギルに話しかけ、スムーズに作戦をたてる。

  案の定、栗色の髪のプレイヤーは一撃で死ぬ攻撃を受けそうになっていた。

「オラァ!」

  エギルがそう言いながら、斧を振るう。

「スイッチ!」

  そう言われて俺はソードスキルを食らわし、相手を若干退けさせた。

 

 

 キリトside

  2人が俺達を助けた。エギルという巨漢はともかく、もう1人はディアベルのパーティーメンバーじゃないか。だが、今はどうでもいい。

  俺はPotを飲みながら、エギル達の隊に指示を出す。

「僕が先陣を切る!3人はそれに続いて!」

「ああ!」

「わかった!」

「わかったわ!」

  上からユージオ、俺、ユウキ、アスナだ。

  雑な作戦をたて、ポーションを飲み終わった俺達は走り出す。

  ユージオが1番手で《ホリゾンタル・アーク》を切り込む。硬直に襲われるがイルファングの野太刀を喰らう前に治り、パリィする。

  アスナが流星のごとく《リニアー》をきめる。

「ユウキ!最後、一緒に頼む‼︎」

「了解‼︎」

  ユウキが少し早く斬り込んだ。俺達はV字の軌道を描く片手剣二連撃《バーチカル・アーク》を使い、ダメージを削る。

  後1ドット。

  そうして二連撃目を食らわす。

  イルファングは後方へよろめき、体に無数のヒビが入る。

  《イルファング・ザ・コボルドロード》は硝子片となり、四散する。

 

「お疲れ様」

 

 ユウキが俺にそう言った。終わったのだ。

「見事な指揮だった。そしてそれ以上に見事な剣技だった。コングラチュレーション、この勝利はあんたのもんだ」

「本当に見事だった。俺はカイト。よろしくな。それでLAボーナスはなんだよ」

  エギルとディアベルのパーティーメンバーが言ってきた。

  俺は「いやぁ……」とでも呟き、拳を合わせようとした。

  その瞬間。

「なんでだよ!なんで、ディアベルさんを見殺しにしたんだ」

  ディアベルの仲間が言う。

「おい!やめろ!」

  カイトが止める。

「見殺し?」

  俺は奴の言葉の意味がわからない。

「そうだろ!あんたはボスの技を知ってた!その情報があれば、ディアベルさんは死ななかった!」

  周りが嫌な雰囲気になる。

  すると誰かが。

「こいつ、元ベータテスターだ!だから攻撃パターンとか全部知ってんだ!」

「じゃあ、あの攻略本も嘘だったんだ!アルゴって情報屋が嘘を売りつけだんだ!」

  まずい。このままでは、元テスター達が危うい。どうすればいい。

  刹那。

  俺はアイデアを思いつく。他のテスター達に敵意は向けられないが、俺は闇討ちされるかもしれない。でも、それで、ユージオ達を助けることができるのなら。

「おい、お前……」「お前……」「あなたね……」

  エギル、カイト、アスナが口を開きかける。ユウキは俺の隣にいるまま黙っている。俺は前に出て行き。

「元テスターだって、俺をあんな素人共と一緒にするな。俺はベータテストの時に誰も到達できなかった層に1人で登った」

 これでいいんだ。そう思った瞬間。

「冷たいこと言うなよ、キリト。僕達2人で登った、だろ」

 ユージオはそう言いながら近づいた。

「なんで出てきた」

 俺は小さく言う。

「もし、逆の立場だったら君もこうしただろ」

 ユージオが小さく言う。俺は言い返せない。

「……ありがとう」

 すると周りが「そんなのチートだろ」「チーターだ!チーター!」「ベータのチーターで《ビーター》だ!」等々の声がする。

「いいなそれ、今度から俺達は《ビーター》だ。これからは元テスター如きと一緒にしないでくれ」

 俺はLAボーナスの1つをユージオに送った。

 俺は《コート・オブ・ミッドナイト》を、ユージオは《コート・オブ・スカイブルー》というアイテムを設定した。

「転移門は俺達がアクティベートしといてやる」

 そうして俺達は階段を登り始めた。

 

 

 俺とユージオは螺旋階段を登りきり、第2層への扉を開ける。

 不意に背後から。

「待って!キリト!」

「…………ユウキ」

 ユウキは真っ直ぐに俺の目を見据えて言う。

「言っちゃうんだね」

「ああ、ついてくるな」

 俺の一言で一瞬の沈黙が生まれる。

「それは……ボクの為……なの?」

「……ああ」

「なら、キリトにはついていかない」

 意外にもキッパリ言われた。

「あっ!伝言預かってたんだ」

 急に話題変えたな。

「キリト、ユージオ。エギルさんが『また一緒に攻略しよう』だってさ。キバオウさんもなんか言ってたけど忘れちゃった。あとカイトが『いつかデュエルしようぜ』だって」

 キバオウ忘れられたのかよ。ドンマイ。

「あとはアスナが『目指す場所にいけるように強くなるから』だってさ」

 皆色んな事を考えているんだな。

「それとボクからだけどさ」

「ん?」

「またいつかコンビ、組もうね」

 ユウキは微笑みを浮かべながら言った。俺はこの一言に救われた様に思えた。

 そしてユウキは階段を戻って行った。

 今のを黙って見ていたユージオが口を開いた。

「キリト……今すぐユウキとコンビ組んでもいいんだよ」

「…………いや、……俺と組むと迷惑かけるから」

「キリトはそうやって逃げるんだね」

「はぁ?」

「好きなんでしょ、ユウキの事」

「はぁ⁉︎」

 俺は顔を真っ赤にした。俺達は言い合いをしながら、ゲートまで向かった。

 




すみません!大分駆け足です!

次回 第9話「月夜」

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