ソードアート・オンライン 黒と紫の剣舞 作:grasshopper
キリトside
俺は一度だけ流れ星を見たことがある。家で自分の部屋の窓から見た。その時した願い事は『ゲームでレアアイテムが出ますように』だった。
そして俺とユウキはダンジョンの中で流れ星を見た。と言ってもそれは、プレイヤーの使ったソードスキルだったのだが。その技の名前は細剣カテゴリの基本技《リニアー》だ。あのような正確な《リニアー》は始めて見た。
最初は俺は元ベータテスターかと思ったが、今では違うと確信している。なぜならーー
「今のはオーバーキルすぎるよ、お姉さん」
ユウキーーーー!なぜ行った‼︎
あのフェンサー(細剣使い)さんのために言うのならいいのだが、この状況だと、俺は必ず呼ばれる。ていうか『お姉さん』て、なんで女性だとわかったんだ。こんな時に限ってユージオがいない。
「おーい!キリトー!」
ユウキが呼んだ。
「はぁ」
思わずため息を漏らす。やっぱりか。俺コミュ障なんだよな。
「なんだよユウキ」
「フェンサーさんにオーバーキルの説明してあげて」
「自分が話しかけたんだから、自分で言えよな。俺説明下手なんだよ。まあ、ユウキが俺以上に説明下手なのは重々承知してるんだけどな」
「何さそれ!」
「っつう訳で、オーバーキルの説明だったか。オーバーキルはまんまで『殺しすぎ』っていう意味で過剰なダメージを与えることだ」
「過剰で何が悪いの?」
ここで冷たく言い返されれば引き下がるのだが、明らかに疑問形なため、俺は続ける。
「悪くはないけど、ソードスキルを使いすぎると精神的疲労が早くくる。帰りもあるんだし、あんまりしない方がいい」
「それなら大丈夫。私帰らないから」
は?
色々聞きたいことがあるぞ。睡眠は恐らく安全地帯でとっているのだろうがーー
「ポーションは?」
ユウキが俺の代わりに聞いた。
「攻撃を受けなければ、必要ない」
「そのレイピアの耐久値がきれたらどうするんだ?」
俺が聞く。
「同じのを五本買ってある」
「お姉さん、死ぬよ」
ユウキが聞く。
「どうせ皆死ぬんだわ。遅かれ早かれ死ぬのなら、このゲームには負けたくない。だから私のことは放っておい………」
そこでフェンサーさんは倒れた。
俺とユウキは取り敢えず安全帯に運ぶことにした。
「余計なことを」
数十分後、細剣使いは目を覚ましてそう言った。
ここで『一緒にゲームクリアを目指そう!』などと言ったら恐らく逆効果だ。
「別にあんたを助けた訳じゃない。あんたのマップデータが惜しかっただけだ」
ユウキは何も言わない。
「じゃあ持っていけば」
フェンサーさんは自分のマップデータを羊皮紙に写し、俺の足許に放った。
「私はこれで」
「待って!」
ユウキが声を出す。
「あなたもこのゲームクリアをするためにダンジョンにもぐってたんだよね。ならさ、今日行われる初めての攻略会議に参加しない?」
フェンサーさんは悩んだようだが了承した。
「ボクはユウキ!宜しくね」
続いてフェンサーさんが名乗ろうとするのだが、俺には聞こえない距離で名前を言う。
まぁ、いっか。
俺達は会議が行われる《トールバーナ》の噴水広場にきている。
俺はユウキ達には先に行かせて、ある人に会いに行く。そこには二人の人物がいた。
「お前もここにいたのか、ユージオ」
「まぁ同じ件だからね」
そうしてもう一人の人物が声を出す。
「遅いゾ。キー坊」
「悪い悪い」
今の声の主は《情報屋》のアルゴ。通称《鼠》。
「それで今はどれくらいになってるんですか、アルゴさん?」
「そう焦るなヨ、ユジ坊」
「『ユジ坊』より『ユー坊』の方がいいんじゃないか?」
「そしたら、ユウちゃんと区別がつきにくいダロ」
俺とアルゴが話から脱線する。
「話戻すよ。それでアルゴさん、どうなりましたか?」
俺達はアルゴを通して《アニールブレード》を買い取りたいプレイヤーとやり取りをしている。
「二人とも二万九千八百コルまで引き上げるそーダ」
「ニーキュッパときたか」
「と言うか両方とも同じってことは同一人物何なんですか?」
「クライアントの名前を知りたいんなら五百コルダナ」
どうせ向こう側が引き上げるんだろうな。
「因みにユジ坊の方は名前を聞いても五百コル以上引き上げないそーダ」
ん?何が目的がわからないぞ。取り敢えず俺達の戦力を落としたいのはわかるがそこから先がわからない。
「取り敢えず売らないけど名前を教えてください」
ユージオはそう言ってウィンドウを開き、コルを払う準備をした。
「了解ダ。名前はハルト。今日会議を開くディアベルの仲間だソーダ」
「聞かない名前ですね。ありがとうございます」
「それでキー坊はどうする?」
「俺は今はいいよ」
「じゃあ僕達は会議に行きますね」
ユージオがそう言って俺達はアルゴと別れ広場へ向かった。
広場に着くとユウキがフェンサーさんと話していた。それもかなり仲良く。周りの男性プレイヤーどもがニヤニヤしながら見てるな。
「あの人誰?」
「ああ。今日ダンジョンで会ったんだ」
俺達はユウキ達より少し離れたところに座る。
すると広場の中央に青い髪の人が出てきた。この日の為に染めてきたのならお疲れ様だな。それに女性が二人だけとは不快だろう。何より青い髪で来ても、それ以上にゲームの住人の様な奴が他にいるのは悔しいだろう。その人物は俺の隣にいるのだが。
「それじゃあ、そろそろ始めさせてもらいたいと思います。俺はディアベル!職業は気持ち的に《ナイト》やってます!」
すると周りからは「ホントは《勇者》って言いたいんだろ!」等々の声が聞こえてくる。
ユージオは恐らく前にいると思われるハルトというプレイヤーを大方の検討をつけようとしていた。
ようやく声が消え、再開されようとした時、とあるサボテン頭がでかい声で言った。
「ちょお待ってんか!わいはキバオウっちゅうもんや!こん中にビギナーに詫び入れなあかん奴おらんとちゃうか⁉︎」
「キバオウさん。あなたが言う『詫びを入れなければならない奴』は元ベータテスターでいいのかな?」
「そうや。コルもアイテムも情報も全部提供して土下座せん限り、パーティーとして命は預かれんし、預けれん!」
あたりが静まる。そこで一人の肌が黒く、巨漢のプレイヤーが手を挙げて立ち上がった。
「発言いいか?オレはエギル。キバオウさん、あんたはこの無料配布攻略本をもらったか?」
ん?無料配布?アルゴにやられたな。
「も、もろたで」
「これを配布しているのは元テスターだ。つまり情報はあったんだ。それなのに死んだのはこのデスゲームを他のゲームと同じようにプレイしたからだ」
キバオウとか言うサボテン頭は言い返せなくなり、元の位置に座る。エギルとやらも座っていた所に戻っていく。
「エギルさんの言う通りだ。それに元テスターがいなくなって攻略が失敗したら意味ないだろ」
場が悪い空気から最初の軽い空気に戻る。
「と言うわけで続けさせてもらうけど、まずはパーティーを組んでくれないか?」
まずい!
今この場にいるのは四十六人、基本は一つのパーティーで七人だから、四人余る………。
「ユージオ!」
「キリト!」
俺達は同士に言った。
「早く誰かみつけねーと」
しかし、時すでに遅し。
他の人はサラリとパーティーを組んだようだ。
すると。
「おーい。キリト!ユージオ!パーティー組もうよ!」
そう言われて移動する。
「誘われなかったのかユウキ?」
「ううん。色んな人から誘われたよ。けど断った」
凄いな美少女は。
「というわけだから宜しく!」
こうして俺達はパーティーを組んだ。フェンサーさんも一緒で名前はアスナのようだ。
「それ、美味いよな」
一人ベンチで黒パンを食べていたアスナというプレイヤーに話しかけた。
「本当にそうおもってるの?」
「うん。一手間加えるけどね」
ユウキが言った。俺はウィンドウからあるアイテムをオブジェクト化する。
「パンに使ってみろよ」
オブジェクト化したのはクリームが入っている小瓶だ。フェンサーさんは恐る恐る使い、口に運ぶ。
「お、美味しい」
「だよねー」
ユウキが相槌を打つ。
そして食べ終わり、一息ついた後。
「ねえねえ、もう名前言ってもいいと思うんだけど。ていうかキリト達はどうせわかってるでしょ」
「まあな」
「えっ!」
驚くフェンサーさん。やっぱりパーティー組むの初めてか。
「視界の右下になんか書いてない?それが俺らの名前だけど」
するとフェンサーさんがじっと目を凝らす。
「…………キリト…………ユージオ……。これがあなた達の名前?」
「ああ。俺がキリトだ。ユージオはさっきいた奴だよ」
「今いいないけど。明日あたりにちゃんと紹介するよ」
ユージオが何故またいないかというとハルトというプレイヤーと接触するそうだ。
ユージオside
僕はアルゴさんにコルを払って教えてもらったハルトというプレイヤーに接触していた。
「あなたがハルトですね」
「敬語はなくていいよ。ここはゲームの中だし歳も近いみたいだし」
「じゃあ宜しく、ハルト」
「ああ、宜しくなユージオ」
僕は本題に入る。
「僕の《アニールブレード》を買い取りたい目的を教えてくれないか」
アスナ、ハルトの登場ですね。次はどうしよう………。次回予告をどうぞ。
キリト達の部屋のお風呂でアスナが入浴⁉︎そしてキリトの剣を狙う者は。
そして時はボス戦。《イルファング・ザ・コボルドロード》との戦いは…………。
次回7話「獣人の王」