ソードアート・オンライン 黒と紫の剣舞 作:grasshopper
木綿季side
ボクの家族は皆同じ病を背負っている。
HIVだ。
パパとママはもうとっくに発症していて、ボクと姉ちゃんもそろそろだとボク達の担当の倉橋先生がそう言ってた。
そこで登場したのが今世間を騒がせてるゲーム機《ナーヴギア》だ。
よくわからないけど今までのVRとは違って完全な仮想世界に行けるらしい。
その技術は《フルダイブ》と開発者が称した。
そしてその技術を完全に生かしたゲーム《ソードアート・オンライン》が発売された。
すごい人気らしい。
そしてそのハードとソフトがボクと姉ちゃんの前にある。
どういうことかと倉橋先生に聞くと即答してきた。
VRは医療に役立ち、その方面で研究していたら今の位学はもっと進歩することは間違いないとかどうとか。
そういう訳でなんとか一つずつは揃えることができたそうだ。
そして姉ちゃんが先にプレイしていいよと言ってくれた。
ボクはゲームはたまにするが、やっぱり体を動かすことの方が好きだ。だから仮想世界じゃ活躍できるかもと思っていた。
それに今では体をあまり動かす機会がなくなってきている。それもそうか、ボク、病気だし。
正式サービス当日。
ボクは病院の無菌室のベッドに横たわり、そんなに重量のないヘッドギア型のゲームを細い腕でなんとか持ち上げようとする。
しかし、やっぱり無理だったので先生に手伝ってもらった。
そして、改めて、心の準備をする。
やっぱり楽しみな気持ちがある。
そしてあの言葉を言う。
「リンク・スタート!」
和人side
『和人、いよいよ今日からだね』
「ああ、お前楽しみにしてたもんな」
『そんな僕よりも楽しみだったのはお前だろ』
今俺が電話で話している相手は幼馴染の優志だ。最近家族ともまともに会話をしていない俺が唯一心を打ち明けている人物だ。
俺と優志はベータテスターで、その中でもかなりハイレベルなプレイヤーだった。
ソロでもコンビでもほぼ敵無しだった。
そんな俺達はベータテスト最終日にデュエルをした。あのデュエルの決着がつく前にタイムアップで、HP残量も同じだったのでドローとなり、そのままベータ最終日は終わった。
だから俺の目標はあの浮遊城を完全攻略することともう一つ、あのデュエルの決着を今度こそつけることだ。
『……ぃ、……い、おーい、和人』
「おっ、悪い悪い。で、なんだ?」
『向こう側のどこで合流するかだよ』
「ああ、そうだったな。つってもお前ベータの時と一緒なんだろ。ならどっかで会えるだろ。それにリアルでも連絡取れるんだからな」
『相変わらず、大雑把だな。まあいいよ、それで。あっ!そろそろ時間だ。じゃあ向こう側で』
「ああ、向こう側で」
そう言って俺達は電話をやめた。
ベッドに横になる。
ヘッドギアを被り、あの言葉を発する。
「リンク・スタート!」
すみません、会話が少なかったですね。
次はいよいよキリトとユウキの出会いを書きたいと思います(あとクラインも)。