ルイズと動く図書館   作:アウトウォーズ

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6/20 話の流れを、大幅に変えました。大変恐縮です。



第9話 東方の異端審問官

ルイズは思わず唖然として、恥ずかしそうに話すレイナールを見つめた。

 

「……えっ?何これ、どういう事?」

 

「いや、その……君さえ良ければミス・ノーレッジを、紹介して貰えないかと思ってね?」

 

おいおい、何だこれは?レイナールは、パチュリーに一目惚れでもしたのか?

だとしたらその眼鏡は、交換をオススメ……いや、確かに見た目は悪くないので、それは問題ないのか。

 

置いてけぼりを食ったルイズを他所に、レイナールと同じクラスの生徒……その中の男の子達ばかりが、一斉に声を上げ始めた。

 

「よく言ったぞレイナール、その通りだ!トリステイン男子は、女性と見れば声を掛けずにはいられないんだ!」

 

「そうだそうだ!」

 

「あ、アンタ達!私に散々ゼロだゼロだ言っておいて、何でパチュリーのことだけそんな女の子扱いするのよ?!」

 

「はぁ?!おい、待ってくれ!キミには自覚無いのかね?!」

 

ルイズは思わず、ギーシュ、ギムリ、ヴィリエの3人に顔を向けた。何が一体、どうなっているのかと。

何で、隣のクラスではパチュリーのファンクラブみたいなのが出来上がっているのか?

 

確かに?

そりゃ、見た目はいい。

 

けれどもその中身は、かなりオッカナイのだ。ビックリ箱的な恐ろしさなので、傍目には微笑ましく見えるのかもしれないが……そこは実際に経験してみるといい。心臓がいくらあっても足りないんだぞ?

 

だが……この点に関して、ギーシュ達は全く異なる意見を持っていた様だ。

 

「いや……、その、大変言い難いんだがね?冷静に聞いてくれたまえよ、ミス・ヴァリエール。」

 

「おいよせギーシュ、殺されるぞ?」

 

「……こういう所がモテないんだよな、我等がピンクさんは……」

 

「ええい、キミ達もよさんか!中身をよく知らない立場からすると、ミス・ノーレッジは一度は声をかけてみたくなる存在なんだよ。誰かと違って、年上的な落ち着きがあるからね。」

 

「誰かって……ああ、モンモランシーのこと?アンタ、また怒られちゃうわよ?まあ、黙っててあげるけど。」

 

ルイズは全く、気がついていなかった。

それどころか、全く筋違いな勘違いをしていた。

 

「ねえ、パチュリー。」

 

「何よ?」

 

「これは一体、どういう事なのよ?何で、隣のクラスの男の子達がみんな、洗脳されている訳?貴女一体、いつの間にそんな事したの。」

 

「藪から棒に、何なのよ。私はそんな、益のないことしないわよ。」

 

あればやるのかよ?!というか、出来るのか?!

是非ともやめて欲しい。

ギーシュ達男子は、三人揃って顔を見合わせて頷きあった。

 

「絶対無理だ。」

 

「ギーシュ、キミは確か、全ての女性の云々言っていたな。彼女はどうなんだ?イケないのか?」

 

「無茶言わないでくれ。ボクは薔薇だ、レイナールの様な勇者になった覚えはないよ。それに今、ふと気になった事があるのだが……」

 

ギーシュは青白い顔をして、友人2人の顔を見つめた。

そのあまりの憔悴ぶりに、空気が重くなる。

 

「そもそも……ミス・ノーレッジは何故、ミス・ノーレッジ何だい ?」

 

「頭大丈夫かキミは?」

 

「い、いや……そうか、その可能性があるのか……ヴィリエ、察しが悪いな。そもそも彼女がフェイスチェンジを使っている可能性は、否定できないんだぞ?もし、魔法が解けた瞬間に中から……」

 

「……年老いた醜女が現れたりするのかね?だからどうだというんだ。そもそも現時点でボクには、彼女を可愛い女性として見れないよ。」

 

「そこだよ、問題は。」

 

そこで、ギーシュは思い切り暗い顔をして告げた。

 

「そもそもボクは、あの外見と言動で女の子と判断した訳だが……実は男でしたという可能性も否定できないじゃないか。実際、彼女は自分を女性と称した事は一度もない。」

 

「流石にそれは、考えすぎだと思うよ。」

 

「同感だ。やはり浅はかだな、キミは。」

 

ヴァリエもそう言って余裕の構えを見せたが、3人の空気は重いままだった。流石にそれはない、と思いつつも……一旦変な方向に向かい始めた想像は止められないからである。

 

この空気に責任を感じたギーシュは、フウとため息をついた。

ニヤリと笑ってみせる。

思ってもない事を言おうとしているので、妙にぎこちないのは愛嬌というものだろう。

 

「ハッ、このボクとした事が、想像に怯えるとは情けないな!もしもそんなことになったら、ボクが口説きに行ってみせようじゃあないか!それなら君達も安心して……………ち、チョット待ちたまえ!何だいその顔は?!コレはジョークだ、軽口の類だよ?!」

 

「……な、何てこった。モンモランシーとくっついて、大人しくなったと思っていたが……まさかそんな、アブノーマルな方向に進んでいたなんて!」

 

「ギムリ、呑気な事を言ってる場合かね?こうも堂々と性癖を暴露したんだ、最早躊躇わんだろうよ。そろそろ、ケツに気をつけた方がいいぞ。」

 

「な、何でキミは他人事なんだよ?!そんなのオカシイだろ?!」

 

「ギーシュの格好を見たまえ、女性的な発想に基づいてる服装だろう?つまりは自分よりも男性的で、荒々しい男を求めているんだ、キミはそのギーシュの求める理想にピッタリ当て嵌まって………すまん、もはや吐きそうだ。」

 

「お、おい!言うだけ言っといてそれはないだろ!それにこんな所で吐いたら、介抱と称してギーシュに掘られてしまうぞ?!」

 

「き、キミ達は一体何を話しているんだ?!そっちの薔薇と勘違いするのはやめてくれたまえ、心外だ!不愉快だよ!」

 

「き、キミがそれを言うかね?!前々から、その格好はチョットどうかしてると思っていたんだ!まさか同性愛者だったとは……ミス・ノーレッジが男だという事に期待をかける程とは、業が深すぎると思わんのかね、キミは‼︎」

 

「だからそうなったらもうどうしようもないなって、そういうジョークを飛ばしただけだろう?!」

 

「き、キミが言うと洒落にならんのだよ!今のも全部含めて、誤魔化している様にしか……」

 

「こ、こっちが下手に出てれば言いたい放題言ってくれるじゃないか!このギーシュ・ド・グラモン、好色家の誹りは甘んじて受け入れても、男色家の謂れだけは断じて受け入れんぞ!」

 

「こ、好色家って………勝手に僕等を情夫扱いしないで貰えるかな?!何だいそれは?!」

 

「お、おい!ボクを含めるなギムリ!痴話喧嘩なら、向こうでやってくれ!本当に気持ち悪いんだ!」

 

「だからそうじゃないって言ってるだろうが!いい加減に……」

 

目を覚ませ、と言おうとして。

凄んで一歩歩み寄ったギーシュに、ヴィリエとギムリは揃って杖を抜いた。

 

「「よ、寄るな、あっち行け!」」

 

「……き、キミ達という奴らは……どうやら、痛い目を見なくては分からん様だね?」

 

「や、やめろ、フザケルナ!同性に犯されて喜ぶ趣味はないんだよ!」

 

「どうしてもというなら実力で排除するぞ、ギーシュ!」

 

「よかろう、二人ともオモテに出たまえ。」

 

「わ、悪いがその手には乗らないぞ!キミの前を歩いて、尻を振る趣味はないからな!」

 

「……どうやらキミ達は、ボクを本気で怒らせてしまった様だよ?」

 

ギーシュ・ド・グラモンほか三人組が誤解を解き合うには、暫しの時間を必要とした。彼等はゾロゾロと、杖を向けあったままヴェストリの広場に向かっていった。

 

 

 

そしてその頃。

 

ルイズはカンッカンになっていた。

 

「じゃ、じゃあ何よ?!私は魔法だけじゃなく……す、すすす、素の魅力でパチュリーに負けてるわけ?!アンタら全員、この子にホの字なの?!」

 

「ち、違うよ!ボクは、ミス・ノーレッジがあらぬ噂を立てられているんじゃないかと心配になって…」

 

「…はっ、何を今更なことを。これだから女子力ゼロのルイズは困るな。」

 

「どどどど、どこを見てモノ言ってんのよ!人と話すときは相手の目を見なさいと、ご両親に教わらなかったの?!」

 

レイナールをはじめ、みんながみんなこんな調子であった。

ルイズはため息をつくと、腰に手を当ててパチュリーの前に立ち塞がった。

 

「ダメダメ!そんな、下心だらけの人たちを、ウチの子に近づけるわけにはいかないわ!」

 

「ねえ、ルイズ。」

 

そのときの事だった。

パチュリーがなんとも面倒臭そうな顔をして、こちらに問いかけてきた。

 

「要するにこの子達は、私とつがいたいのよね?」

 

「……あのね、そんな言い方しないでよ。レイナールを見なさい、可哀想に。顔を赤らめちゃってるじゃない。」

 

「私は別にいいのよ?学術的に興味あるし。」

 

「全く良くないわよ!何を言ってるか、分かっているの?!歩けもしない人に出来る事じゃあないんだから!」

 

ルイズにしてみればコレは、カトレア姉様が突如として誰でもいいから床を共にしたいと言った様にも聞こえた。何が良くないって、身体だ。ルイズも詳しいことは知らないが、虚弱な人に出来る事ではないというくらい知っているのだ。

 

「貴女、男女が一緒に寝るとどうなるか知らないでしょう?!メイドから聞いた話だと私の母様ですら、まる2日起き上がれなくなったそうよ?それ程の重労働らしいんだから、貴女に出来る訳ないでしょうが!」

 

「……うわぁ、さすがはヴァリエールの現当主は違うわね。ウチの両親が色事で何にも出来なかっただけあるわ。付け入る隙がゼロじゃない。」

 

「夫婦円満で、何より。」

 

「い、異邦人は黙ってなさいよ!この、女王エイリアンめ!」

 

「それじゃあ、トリステイン王国のルイズさん?貴女は具体的に、その重労働の中身を知っているのかしら?」

 

「ハッ!どれだけ過酷な苦行くらいかは承知の上よ!ウチの母様も時折、それを言われるだけで青くなって父様に反論出来なくなるんだから!」

 

「ハイハイ、全く無知だという事は分かったわ。」

 

「ご馳走様。」

 

「な、何ですってぇ?!」

 

いつの間にやら近寄って来ていたキュルケとタバサが声を掛けてきたので、ルイズは顔を真っ赤にして反論した。

吠えただけに終わってしまったが。

 

「はじめから代役を立てるつもりだから、その点は心配無用よ。」

 

その様に言ったパチュリーは、摩訶不思議な作業をし始めた。

次々と何やら良く分からないものを召喚しては、どんどん錬金して行き……最終的に、自分と同じ背丈のゴーレムを作ってしまったのである。

 

ルイズは出来上がったものを見て、感動の溜息を漏らした。

 

「……パ、パチュリーが立ってる……」

 

そう。

このパチュリー型ゴーレムは、地面に両足をつけている。

まさかまさかの、二足歩行が可能に見えるのだ。

本人の身体スペックを知るルイズからすると、コレは途轍もない光景であった。

 

しかし……だからこそ、何やら危険な存在に見えてならない。何しろ生成の過程で、見た事もない書物がそのゴーレムの体内に収まったのを目撃したのだ。

絶対何か、良からぬ機能が付随している。

 

その前に、だ。

ルイズはそもそも論を説く事にした。

 

「あのね、多分みんなが求めているのはコレではないわよ?」

 

「何で?性能については、折紙付きよ。カーマ・スートラの性技を覚えこませてあるから。」

 

ルイズは目眩がしてきて、両足を踏ん張った。

やはり悠長に理想論を説いている場合ではなかったという事か。

 

「カルマとか正義って……一気にキナ臭くなったじゃない!一体何なのよ、その無駄に宗教じみた響きは!」

 

「こちら風に言えば、東方の三大性典の一つね。」

 

「さ、三大聖典に書かれている正義を教え込んだの?!聖戦でもおっ始める気?!ドンだけ物騒な機能を詰め込んだのよ?!」

 

「基本的には、88手とかの基礎的な技術だけよ?私も途中までしか読んでないから、詳しい事を知りたければその子に直接聞いて。身体で教えてくれる筈よ。」

 

「は、はちじゅ……って、このゴーレムは、体術のスペシャリストか何かなの?」

 

「まあ、体術と言えば体術なのかしら?寝技中心だけど……ああ、立ち技もあるらしいわね。」

 

「死角なしって事じゃない……まあ、接近戦が専門というのが救いかしら。みんなで一斉にかかれば、何とかなりそうね。」

 

「複数を相手取ることくらいは、想定済よ。他にも、相手を喜ばせる機能が盛りだくさんなんだから。」

 

ダメだこりゃ。

 

この瞬間、ルイズは機敏に動いた。

大きく息を吸うと、これまでの会話から得られた結論を、大声で発表したのである。

 

「み、みんな下がって!このゴーレムは、打撃戦から絞め技までこなす、東方の異端審問官だと判明したわ‼︎近寄っちゃダメよ?!」

 

この一言で、周囲は騒然となった。

 

「ルイズ、貴女何か勘違いしてるわよ。この子はそもそも、愛玩用なんだから。」

 

「そ、それは見た目だけでしょうが!頭の中は、ロマリアの聖騎士団みたいな事になってるんでしょう?!話し合いの余地無さそうじゃない!」

 

「……性騎士団って、何なのその下品な連中は。世も末ね。」

 

「あ、貴女が今作ったコレこそがアルマゲドンみたいなモンでしょーが!さっさと土に還しなさいよ!」

 

「せっかく作ったのに?」

 

「あ、あなたが作ったからこそ不安なんじゃない!」

 

「……まぁ、どうしても壊したいと言うならば、やってみれば?」

 

「い、言ったわね?後悔しないでよ、南無三!」

 

危機感を募らせていたルイズはその瞬間、一気に念力をフル出力で発動した。

五指を開いた右手を勢い良く突き出して、ゴーレムを突き飛ばしてやったのだ。

 

その結果はもう、凄い事になった。

パチュリー型ゴーレムは食堂の端の壁まで一気に吹き飛ぶと、そのまま磔にされてしまったのである。誰がどう見ても、エア・ハンマーに匹敵する威力があった。

 

実際、異邦人二人娘の評価も概ね高いものだった。まあ、この二人の場合は力量的な意味でも学生の範疇にないのである。

 

「ルイズもやるじゃない。最早、コモンマジックとは言えないわよね、アレは。タバサ、貴女はどう見るのかしら?」

 

「ラインメイジに匹敵する。圧力の掛け方を一点に絞れば、片腕くらいはイケた。」

 

「そこまで?けどまぁ……念力だけでコレなんだから、私達もウカウカして居られないわよね。」

 

「真に恐ろしいのは、これで全く応えてないゴーレムの耐久力。」

 

「おかしな話よね、愛玩用のプレゼントでそこまでタフに作ってあるというのも。」

 

「チラッと見えた素材が、草や根っこ、繊維系ばかりだった。単純な衝撃は無効化される。」

 

「あら、流石に目の付け所が違うわね。しっかしまあ……そこまで頑丈に作ってあるとは、異常性愛者にも対応できるという事よね?そういうのは、チョット勘弁だわ……」

 

ルイズはゴーレムをそのまま押し潰すつもりで、念力をかけ続けていた。

しかし……タバサの解説に象徴される様に、吹き飛ぶ以上の効果は全く得られなかった。

 

「な、何で壊れないのよぉ……‼︎」

 

「身体が資本なお仕事だから。頑丈に作るのは、当然でしょう?」

 

「くっそぅ……何でそんな無駄なことを……って、男子!アンタ達もボサッと見てないで、手伝いなさいよ!このゴーレムをぶっ壊さないと、安心して眠れないわよ!」

 

「い、いや……そうは言ってもだね。女性に暴力を振るう訳には……」

 

「こ、こんなタフな女は居ないわよ!パチュリ ーの話を聞いてなかったの?複数のメイジを相手取って聖典の正義を断行する、イカレたゴーレムなのよ?!」

 

「どーやら狂ってはいないそうよ?」

 

「だ、だったら尚のことタチが悪いわよ!完っ全なサイコパスじゃない!何でこんなものを……って、さっきっから何なのよ、ツェルプストー!」

 

その頃。

タバサとキュルケはパチュリーに詳しい話を聞き、概要を掴んでいた。キュルケに至っては、ケラケラと盛大な笑い声を上げていた。

 

「アーーッハッハ!アンタ達、昨日からずっとこんな調子なの?!全っ然、話が噛み合ってないじゃない!」

 

「……茶番。」

 

ルイズはいい加減に疲れて来て、念力を一時緩めてしまった。

その瞬間。

 

「あ……」

 

パチュリー型ゴーレムは、逃げ出してしまった。

その際の身のこなしが、これまた妙な色気があって困る。

 

しかしルイズは、未だに独り相撲を続けていた。無駄な危機感を発揮して、キュルケに詰め寄っている。

 

「どどどどーすんのよ!アンタが余計なこと言うから、逃げちゃったじゃない!どう責任とるのよ!」

 

「いやいや。最早コレは、放っておいて楽しむべきでしょう?」

 

「は、話になんないわね、この享楽主義者は!パチュリー!もう、あんな物騒なのはサッサと解体しちゃってよ!」

 

当の本人は、あからさまにエーーッという表情をしていたが。

ふと、何かを思いついてボソリと告げた。

 

「成る程、現状で壊せないものを壊すのは、貴女への丁度良い訓練になりそうね。」

 

ルイズの心配をよそに、パチュリーはそんな発想に至っていた。

 

そして。

 

「あら、壊しちゃっていいの?」

 

キュルケが舌舐めずりしてそうな顔で尋ねて来た。

パチュリーはオヤという顔をして彼女を見つめ……

 

「貴女はルイズと違って、少々出来そうね。火に特化し過ぎているみたいだけど。」

 

「あったり前でしょう?こーんなおチビと比べられるなんて、全く心外だわ!」

 

「こ、こここ、この女はぁ〜〜〜‼︎」

 

パチュリーはそうして、キュルケにはあくまでルイズを手伝うという事で許可を出した。

これを聞いたルイズは、危機感は何処へやら喜色満面な笑みを浮かべた。

 

「ヨッシ!それじゃあ貴女は、私の部下という事ね?!キリキリ働きなさいよ?!」

 

「……貴女は本当に、おめでたいわね。私はお手伝いをするのよ?過程ではなく、結果を手伝う事に終始させて頂くわ。」

 

「ど、どういう事よ!」

 

「早い者勝ちという事よ。」

 

そう言うと、キュルケはフライの呪文を唱えて一目散にその場から飛び去った。

行き先の検討ならついていた。ルイズと違って全体に目が行き届いていたキュルケには、パチュリー型ゴーレムがギーシュ達の元へと向かったと検討をつけていた。

 

ルイズはただ単に、ムカッ腹だけを立ててキュルケの後を追った。

 

「ま、待ちなさいよコラー!」

 

ちなみにルイズは、徒歩だ。

いや、この場合はダッシュか。

下手に飛ぶよりも、念力で自らを押した方が速いと思ったのだ。

 

タバサはそんな、親友とその仇敵の姿を見送ると、そそくさとその場を後にした。ポテポテと歩きながら、事の顛末を見届けようと考えていた。

キュルケが向かったのだ、最終的には必ず無力化されるだろう。

 

しかし。

タバサはあのゴーレムのもう一つの特徴を、的確に見抜いていた。アレは、痛みを感じないどころかそれを喜んでいた。

そうなると意外にも、風のトライアングルであるタバサは攻撃手段が限られてしまうのである。

 

ヒット&アウェイを得意とし、火力よりもテクニックで攻めるタバサには、痛みを感じないどころかそれを求めてくる相手は非常に部が悪い。

そろそろ本格的に火の系統を鍛え上げないと、イザというときに手詰まりになるかもしれない。

おまけにパチュリーの言っていた、「相手を喜ばせる他の機能」がどんなものか、非常に気になるところである。

 

そんなことを考えていたタバサは、背後から掛けられた次の一言に、足を止めそうになった。

 

「ところで貴女は、王族か何かなの?」

 

 

 

 






以前よりも無理があるところもありますが……これで精一杯です。ギムリとヴィリエの口調が変ですが、どうか悪しからず。オンディーヌ隊の戦力アップだと思って、許して頂けると幸いです。

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