色々と嫌になることが重なってしまい、なかなか筆が進まずに今に至ってしまいましてすみません。一応言い訳を活動報告に書いてます。
現在のところ週一は無理ですが、なんとか定期的に出せるようにしていく所存です。
「おおおおお!」
「ヒョォォ…!」
自分に向かってきた優を迎え撃つアルフは先程の射撃をやめると同時に優に向かって地面を蹴り、黒煙の中で明滅する雷を更に激しく輝かせる。
「飛燕…!」
「!」
優は機先を制するべく、同じく地面を蹴って低空を飛び……
「疾風脚!!」
「…ッガアア!!」
接触するか否かの瞬間、渾身の力でアルフの顔面を蹴り飛ばした。
「いてっ!」
「アアアア!!」
しかしアルフのパワーとスピードは予想と期待を裏切るものだった。A・Mスーツを起動させた状態で全力で蹴り抜いたにも関わらず、優は反動で弾き飛ばされて軽く頭を打ってしまう。
だが流石のアルフと言えどノーダメージというわけにはいかず、その巨躯をよろめかせ、震える身体に鞭打たんばかりに頭を大きく振るわせ、己れを奮い立たせようと咆哮を上げる。
(このヤロー、下手すりゃ以前に戦ったジュエルシードの暴走体なみのパワーだな。しかも顔面蹴り飛ばしたってのにあんまり効いてなさそうな手応え………ってあれは…!)
またダメージを受けたせいか黒煙の薄くなったアルフの姿を見て優は驚愕するが、2秒ほどで黒煙は元通りあの身体を覆い隠してしまい、漆黒の煙の中で双眸から光を放つアルフは間髪入れずに優へ接近戦を仕掛けていった。
「ヒョアッ!」
「ちっ!(さっきの大量の落雷はフェイトじゃなくてこいつの仕業だったみてーだな…!)」
前足の振り下ろし、噛み付き、全身に張り巡らされた雷によるショートレンジの射撃、
更には動きを見せないユーノを警戒しつつ、優を攻め立てながら少しずつ誘導し、自分の射撃の射線上に二人を置いてまとめて掃討しようと企んでいた。
(まだだ…。もっと魔力の制御を…そしてタイミングを…)
ユーノもそれに勘付いてはいたが、優を信じて微塵も気に留めることなく機を窺っている。その間にもユーノへ牽制射撃は飛んできてはいたが、優は意図的に距離を遠ざけるよう誘導しつつ、優からも牽制を行うことでユーノへの集中力を削いで被弾を防いでいた。
そして同じような攻防が続くこと数秒後、その機は訪れた。
「あっ!」
「!!」
優の上擦った声に対して、号砲を聞いて飛び出す短距離走のランナーのように反応したアルフは、不意にユーノへの道が開いたことを察して目の前にいる優を無視しつつ猛然とその道へ飛び出す。
(頼むぞアンドヴァラナウト!)
だがそれは二人の作戦の一環であった。
〜優の作戦説明〜
「じゃあさっきオレを守った魔法はなんでA・Mスーツに触れたのに消えずにオレを助けられたんだ?」
「フローターフィールドのことですね。魔力の密度を上げたんです。たとえ攻撃や防御向きでなくても、魔法によっては魔力を多く注ぎ込めばその分攻撃性能や耐久性を上げることもできるんですよ。
A・Mスーツの場合は不安だったので効果を強めたものを三重にしたんですけど、それぞれ一秒も維持できませんでした」
「……なら密度をもっと上げた硬いのを同時に五つ出せるか?」
「アンドヴァラナウトの力を使えばそれくらいは…」
「よし。んじゃ、それを一部だけ遠くに出すのはどうだ?」
「……コントロールに集中すればなんとか……」
「やっぱり難しいのか?」
「やらないことはないですが、集中している間は多分動けなくなります」
「上等だ、作戦を伝えるぜ…」
〜〜〜〜
作戦の第一段階「敢えてアルフをユーノに向かわせる」は見事成功。作戦に気づかれた様子もなく、アルフは脇目も振らずにユーノを目指している………とは言え、アルフは並みの相手ではなかった。
「ヒャアッ!!」
「!?」
アルフもまた策を練っていたのだ。
優と打ち合いを演じながらも「決め手は魔導師の方にある」と睨んだアルフは一瞬のチャンスをモノにするべく、密かに魔力を練って脚力を最大限に強化しており、そのパワーはユーノまでの距離数十メートルを1秒とかからずに詰められるものであった。
(くっ…!)
ユーノはもともと戦闘向きではない。
優ならば難なく反応して回避や防御どころか反撃のオマケまで入れられるほどの余裕のある時間であったが、ユーノにとっては見えるだけで精一杯。反応はできても身体を大きく動かすほどの猶予はなかったのだ。
つまり、ユーノが選択すべき行動はただ一つ。
「迎撃」のみだ。
〜優の作戦説明2〜
「…で、アルフがお前に向かってきたら、さっきの魔法をアルフの正面に三重で貼って防御しろ」
「え?フローターフィールドでですか?」
「あいつは多分、バリアじゃ簡単に破っちまうだろうし、お前を仕留めるために全力で攻撃してくるはずだから重ねとかねえとあぶねーしな」
「あ、そういえば!…でも御神苗さんはなんでそれを?」
「今思えばなんだが、ユーノの拘束を破ったアレ……ティアの
「また例の魔女の女性ですか…」
「では残りの二枚は?」
「正面に三重で貼ったら…」
〜〜〜〜
「はあっ!!!」
「!!」
予定通りユーノは一瞬にしてフローターフィールドを三重に展開し、防御態勢に入る。アンドヴァラナウトによって強化された三重のそれは、並みのバリア系防御魔法を遥かに上回る防御力だ。
アルフは反撃を覚悟はしていたものの、それがバリアではなく先程の特殊な結界魔法。バリアではないためバリアブレイクのように一瞬で破壊するのは困難だった。
しかしアルフの反応速度はそれをいとも容易く乗り越える。
「ギッ!!」
「…!」
アルフはとっさに身体に纏わせていた雷を一点に集束。それを射出することで貫通力を高め、ユーノの三重の防御を一瞬で破壊したのだ。
これによりユーノの正面はガラ空きとなり、絶好の攻撃チャンスが訪れたアルフは間髪入れずにユーノへ猛然と襲いかかっていく。
その間わずか1秒にも満たないごく短時間。ユーノの命もこれまでかと思われた………が、しかし………
(今だ!!!)
〜優の作戦説明3〜
「…一瞬遅らせて正面にもう一枚貼れ。そうすりゃアルフはそれにぶつかって確実に動きを止められる」
「三枚は破られる前提ですか!?」
「A・Mスーツにも耐性があるくらいのもんが三重ならあいつの攻撃くらい防ぎ切れるはずだ」
「それでも!あとの一枚だって破られるタイミング次第じゃ役に立たないですよ!」
「お前ならできる。オレはそう確信してるぜ」
「(御神苗さん……!!)……わかりました。じゃあ最期の一枚は?」
「『上』だ」
〜〜〜〜
「!?」
動きも取れずに隙だらけのユーノへ襲いかかったはずのアルフは突如として目の前に出現した壁に顔面衝突し、ダメージは無いものの何が起こったのかわからずに一瞬だけ思考が停止してしまう。
「猛虎…!」
「!!?」
同時に頭上から被さる影が一つ。その影は瞬く間に巨大化し、気付いて上を向こうとしたアルフの耳に裂帛の気合いが込められた声が鳴り響いた。
「雷神刹!!!」
「…!!!」
この声と頭部への衝撃と同時に、アルフの意識は断ち切られることとなった。
飛燕疾風脚と猛虎雷神刹はKOFシリーズのキャラである「リョウ・サカザキ」の必殺技です。
前者は山なりの軌道で飛び蹴りを喰らわせる技で、後者も同じく山なりの軌道でジャンプして振り下ろし手刀を打ち込む技です。
本編では説明を省きましたが、猛虎雷神刹は上空に設置したフローターフィールドに向かってワイヤーアンカーを引っ掛けて飛び出し、それを下に向かって蹴って技を喰らわせたことになっています。