「どうした人間!さっきよりだいぶ鈍いんじゃないかい!?」
「こ…の…!」
地面を蹴って突進からのラッシュ、跳び上がって自重・落下速度・重力を加えた振り下ろすような蹴り、空中を飛び回って四方八方からの一撃離脱。アルフはA・Mスーツで無効化されることなぞ何処吹く風と優の身体に絶え間無く打撃を打ち込んでいく。そして時折織り交ぜる
優は目が覚めたとはいえダメージがキレイさっぱり消えたわけではなく、
(…なのに仕留めきれない!なんてしぶとい…!)
必死な優とは裏腹に、アルフはこのようにダメージを受けて動きの悪くなった優を自慢の格闘戦で仕留めきれないことに焦りを募らせていた。
(…できれば使いたくなかったが、こうなりゃ…!)
劣勢を覆す手段はこれしかない、とこの瞬間までは封印していた
「ちぃっ!」
「!?」
突如鳴り響く破裂音。音は1回だけではなく、2回連続で2人の耳を叩く。
(痛ったぁ〜!)
(あぶねえあぶねえ……つーかこれで貫通しねーのかよ)
直後に互いに距離を取ると再び睨み合いとなる。
アルフの両腿からは血が滴り、優は頰から血を流しながらも涼しい顔をしているが、アルフのそれを見て緊張感を高める。
「…そういやこの世界の人間はそういう武器を使うんだったね」
「そういうことだ。悪く思うなよ」
そのように言う優の左手にはいつの間にか拳銃が握られていた。優はアルフの爪撃を受ける瞬間、アルフの
「はっ!ちょうどいいハンデさ!」
「そうかよ!」
「だからもっと見せてみな!!」
「!?」
優に吠えるアルフはダメージを受けて怯むどころか逆に気分を高揚させて弾丸を筋肉の収縮で押し出し、足のダメージなど無いかのように一足飛びで急接近し、大振りの爪撃を繰り出す。
複数の重なった金属音と共に駆け抜け、突進の勢いを止めるべく踏ん張りを効かせて両足で地面を削ってブレーキをかけると間髪入れずに優へ振り返る。
「やっぱりいろんな武器を使わないとあたしには敵わないってわかったみたいだね!」
「このヤロー…!」
対して優の手には今度は精神感応金属製ファイティングナイフが握られていた。
優は足にダメージを受けたアルフを見て「これで地上での機動力は落ちる」と踏んでいたせいでアルフの一足飛びに反応が遅れて拳銃では狙いが付けられなかったため、咄嗟に拳銃を捨ててナイフで間一髪防御に成功したという訳だ。
「もっとだ!もっと見せてみろ!!」
「
誰もが知っている…いわゆる常識の一つに「手負いの獣は凶暴で危険」と言うものがある。
手傷を負った動物は、その状態で敵対すると自分の命を守るべく必死の抵抗で時折信じ難い力を発揮すると言うものだ。アルフの場合は手負い故の抵抗というよりは単なる闘争本能の昂りではあるが、ダメージを受けた結果の暴走という意味では共通点があるのだ。
目を血走らせながら迫るアルフは正に悪魔の如き形相。
優は先程のダメージによる身体の不調に加え、次第に強くなるアルフの圧力と気迫に押し込まれていくのだった。