「そらそらそらそらぁ!」
(ちっ、やっぱ弱点を見抜いたか)
アルフは優の頭部を狙った爪撃のラッシュに加えて時折下半身を狙った足技も繰り出すが、フェイントもない馬鹿正直な攻撃を簡単に喰らう優ではない。アルフの動きを見切り、手すら使わずステップとスウェーだけで的確に回避する。
しかしアルフも先程の優の見切りと動きを見て警戒心を強めており、自分が攻撃しながらも反撃を警戒していつでも反応できるように心を構えているため、一方的に攻撃していながらもなかなか隙を見せない。
(だったら…!)
「!?」
「隙がないなら作るまでだ」とばかりにアルフの猛攻に無理矢理割り込みをかける優。
(そこだ!)
(いっ!?)
そこへアルフの次なる一手が繰り出され、馬鹿正直にひたすら手数で押していたアルフが突如として搦め手を使ってきたのだ。
「埋まりな!!」
「…!!」
砕ける地面。頭部に走る衝撃。歪む視界。
優は自分の意識が遠のいていくのを感じ、アルフはその手応えから明確なダメージを与えたことを確信した。しかし…
「がっ!」
「なっ…」
優は即席の
「はあ…はあ…」
「おまえ……」
A・Mスーツによる筋力と各種耐性に加え、勘の良さと天性の見切りをも兼ね備えた優は正に金城鉄壁と言っても過言ではない防御・回避能力を持っており、攻撃魔法はほぼ意味を成さないため近接格闘以外の攻め手に欠けるアルフは相性の問題で不利と言わざるを得ず、優の唯一の弱点である頭部に狙いを定める以外に勝ち目はない………と思われていた。
しかし、それは正しい答えではなかった。
(くっ…やってみたらメチャクチャいてーじゃねーか…!)
(あの状態から意識を取り戻した!?なんてヤツだ…!)
アルフは今までは意識して素直な攻撃を行なっており、優の頭からフェイントの類いを消し去ったと見るやここぞとばかりにパンチの寸止めからの足払いで優を転ばせつつ同時に足を掴んで跳び上がり、アーチを描くように優を振り回して地面に思い切り叩き付けたのだ。
それに対して優は両手で頭部を守ったものの完全には防ぎ切れずに意識が飛びかける程のダメージを受けてしまい、アルフも確かな手応えを感じて勝利を確信した。
だが優はそのまま倒れ伏せるどころか、自分の足を掴んだアルフの手に蹴りを入れて無理矢理離すとそのまま即座に立ち上がって構えを取ってしまった。
(……けど、おかげでバッチリ目が覚めたぜ!)
(こいつ、舌を…!)
優を仕留めきれなかったこと、そして感じた手応えが思い違いだったことに焦りを見せるアルフであったが、口元を吊り上げる優の口から流れ落ちる真紅の筋がアルフに優の復帰の謎を如実に物語っていた。
舌は人間の身体の中でも触れやすい箇所にある割には多くの神経が集まっているという重要な器官である。それ故に舌に傷を負うと激しい痛みに襲われてしまう。またそうなれば多量の出血や
(できればこのままもう少し休みてーとこだが…)
(でもそれなら…!)
アルフはそれを悟って自分の攻撃は決して間違ってはいなかったと胸を撫で下ろし、むしろ「今こそ攻め時だ」と一気呵成に優を攻め立てるのだった。
アルフの投げはKOF14の大門五郎の超必殺技「渾天落とし」をイメージしました(動作は若干違いますが)。
この技はダウン追撃専用技で、通常だと足払いからは繋がりませんが、足払いでもダウン回避されなかった場合のみ繋がり、この話ではそれを再現した形になっています。