魔法少女リリカルなのは ~彷徨える妖精~   作:拳を極めし者

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始まりの合図なの?

〈ユーノ!なのは!どうだ!?〉

 

ユーノはこの世界に来て以来、全てのジュエルシードが眠っていると思われるここ海鳴市及びその周辺を毎日探査している。

当然ながら1日で全域を調べることは不可能である。そして調べた場所にジュエルシードがあったとしても調べるタイミングによっては反応が無い場合もあるため、数日かけて全域を調べ終えても再び一から探査をやり直すという気の遠くなるような作業を繰り返しているのだ。

 

〈こっちはダメです!〉

〈わたしも同じく!〉

〈ちっ、空振りか…!〉

 

そうしてやっと久々に見つかったジュエルシードのエネルギー反応であったが、あまりにも反応が微弱かつ広域であったが故に正確な位置を特定できなかったため、反応のあった場所をなのはとユーノの2人で手分けして探していたという訳だ。

ちなみに優はなにをしているのかというと、ジュエルシードを探す手段を持っていないため、なのはかユーノのいずれかジュエルシードを見つけた方へ向かうために中心部で待機している。

 

〈仕方ない、今度は旋回しながら少しずつ中心部に向かおう〉

〈うん、わかった!〉

 

中心部より正反対の方向へ向かっていた2人は、範囲内ギリギリの距離から互いに同方向へ旋回しつつ中心部に向かって探索範囲を狭める作戦を敢行した。

 

〈オレは探せねえからあんまり強くは言えねえが……場所が場所だ。急いでくれよ〉

〈〈はい!〉〉

 

反応のあった場所はなんと市街地。こんな人口密集地でジュエルシードが暴走すれば被害は甚大なものとなってしまう。故に今回ばかりはなにがあろうと絶対に暴走させてはならないのだ。

 

 

 

☆☆☆☆

ここ海鳴市の中でも一際目立つ、高層ビルの立ち入り禁止エリアである屋上に佇む2つの人影。

 

「ほんとに大丈夫かい?確実にこの範囲内にあるって言ってもかなりの広さだ。あんまり無理しちゃ…」

 

1人は人間であって人間でない、獣であって獣でない、人間の体格に獣の耳・牙・爪・尻尾、の生物……。人間に例えるならば成人相当の背丈の女性だ。

 

「平気だよ。わたし、強いんだから」

 

もう1人は、優となのはの因縁の相手となった金髪の少女だ。

 

「はあ………。あたしは気が乗らないんだけど、仕方ないねぇ」

「…うん。ありがとう、アルフ」

「それじゃ、いってみようかぁ!!」

 

アルフと呼ばれた女性はそう言って手の平と拳を突き合わせて気合いを入れると、飛行魔法で少女の目からは見えなくなるほど高く上昇し、全身から黒煙のような雲を放出し始めた。

 

「………」

 

少女はその様子を一言も発することなく見届けてから右手に握ったウコンバサラを頭上に掲げると、ウコンバサラの頭部が破裂音と共に発光する。

☆☆☆☆

 

〈〈!?〉〉

(ん?この気配は…)

 

旋回を初めてから中心部までの距離の3分の1ほどを進んだタイミングで、優の身に覚えのある気配の出現と共に天候が急変。薄ら寒い風が黒雲を高速で運ぶと、街を覆う黒雲の中から不気味な鳴き声と共に無数の光の筋が迸る。

 

〈いけない!〉

〈おいユーノ!あの雷雲がなんだってんだ!?〉

〈広域封時結界、展開!!!〉

 

空を見て青ざめたユーノは優の質問を無視して即座にアンドヴァラナウトの力で結界魔法を発動し、街全体を覆い尽くした。ユーノが自分の言葉を無視するほどの焦りを見せたものの、結界を張ったことで一安心しかけた優だったが……

 

〈気を付けてください!!「上から」来ます!!〉

〈上!?〉

 

ユーノが怒声さながらの大声での警告で優が空を見上げた次の瞬間、空が目映い輝きに包まれた。

 


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