魔法少女リリカルなのは ~彷徨える妖精~   作:拳を極めし者

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A・Mスーツの秘密なの

「「………」」

 

優の準備運動する様子をチラリと見てからおもむろに顔を合わせるなのはとユーノ。和解はしたものの、優が協力的なことに対する違和感が若干ながら残っているのだ。

 

「で、ユーノ。今はなにすんだ?」

 

訓練メニューによっては優が参加できない場合もあるので、優は準備運動しながらユーノに確認を取る。

 

 

「もう少し魔力弾のコントロールをやります」

「じゃあオレが的になってやる。なのは、お前はオレを狙え」

「え"!?なんでそうなるんですか!?」

「どうせ当てる訓練をやるなら闇雲に撃ったりただの的当てをするよりは考えて動く仮想敵がいた方が実戦的でいい経験になるだろ?」

 

「そういう問題じゃない!」と心の中でツッコミを入れるが、当然ながら優に心の声が届くはずもない。

 

「あ、危ないですよ!」

「心配すんな。当たってやるつもりはねえ」

「それでも万が一当たったら…!」

「…はあ、仕方ねえな。よく見てろ」

 

優は2人の些細な問題にため息を一つ吐きながら自分の腕をまくると、その下からラバースーツとプロテクターで覆われたような腕が現れる。

 

「あ、それってあの時の…」

「おお、覚えてたなら話は早えや。ユーノ」

「はい、なんですか?」

「お前は当然魔力弾のコントロールはできんだろ?」

「まあ、基本ですから人並みには…」

「よし、じゃあ試しにそこから魔力弾でオレの腕を撃ってみろ」

 

優は腕を横に伸ばしながら話を続け…

 

「ほ、本当にいいんですか?」

「いいから言ってんだよ!早く撃て!」

「はい!いきます!」

 

ユーノは優に怒鳴られると、言われるまま人間の握り拳大の魔力の塊を撃ち出した。

 

(お、口だけじゃなかったな)

 

自分で基本と言うだけあってなのはと違い、ユーノの魔力弾は微塵の軌道修正もする必要なくまっすぐに優の右腕を目掛けて飛んで行く。

 

「ふん!」

「「え?」」

 

優もそれを確認すると次の瞬間、A・Mスーツの右腕だけを起動して右の掌で魔力弾を受け止めると、それが霧散するように消え失せた。

 

「な?平気だろ?」

 

噛み合わせた白い歯を見せながら怪しげな笑みを浮かべる優と、またしても呆気にとられてしまう2人だった………が、流石に今度は立ち直るのが早かった。

 

「魔力弾がおみなえさんの右手に衝突したら勝手に弾けた!?」

「い、いや…。弾けたというよりは『分解』されたような…」

「あ~~~それはだな…」

 

あまりにも困惑する2人を見ながら「やっぱり最初に説明しとくべきだったかな」とちょっとばかり反省しつつも、優は今起こった現象について説明を始めた。

 

「このスーツはA・Mスーツって言ってな、筋力を数十倍にしたり他にもいろんな機能があるんだが…」

「「………」」

 

「今のはその機能の一つで、装着者の精神エネルギーでスーツを覆うことでありとあらゆる耐性が付くって機能なんだ。起動してなくてもある程度の耐性はあるんだけどな。

ぶっちゃけるとオレもちょっと説明を聞いただけなんで詳しいことはよくわかんねえ。でもそれは多分魔力でも同じだろうって踏んで試してみたんだが、その読みが当たったって訳だ」

「え……」

「それじゃあ成功するかどうかもわからないのにあんなこと試したんですか!?」

「別にいいじゃねえか。確率が高いからやったんだよ」

「そ、そうは言っても…」

「でもこれでもう納得したよな?」

 

「………なのは」

「まあ、結果的に大丈夫だったんだし…いいんじゃないかな?」

「そ、そう…(これは「慌てて撃ったから非殺傷設定にしてなかったのでもし生身に当たってたらかなり危険でした」なんて言えないな…。あ、まだこれ教えてないから関係ないか)」

(ホントはなのはの映像を見て、サイコブローが魔法と同じように悪霊に効いてたからイケるって思ったんだけどな)

 

釈然としないながらも、自分のミスがうまく隠せたことに安堵するユーノであった。

 

 

 

「…ん?そういえば…」

「なんだ?質問でも思いついたか?」

「質問というか思い出したことなんですけど…」

「歯切れわりいな。早く言えよ」

 

ユーノがなにやら気になることを思い出したらしいが、すぐに言い出さずにモジモジしているので優が催促する。

 

「御神苗さんは昨日、ボクの結界から弾かれずに中に残ってましたよね。それってもしかしてそのスーツのおかげなのかな…って思ったんですよ」

「オレもよくわかんねえけどその可能性は高いだろう。でなけりゃ説明がつかねえしな」

「そうですか。やっぱり構造がすごく気になるスーツですね…」

「あ、そうだ!」

 

ユーノはA・Mスーツの不可思議な機能に興味津々のようだが、なのはは全く別のことに気を取られていた。

 

「おみなえさん、そのスーツの背中に大きいキズありませんでした!?」

「ん?ああ、たしかにあるけど機能性に問題はねえぞ」

「スーツの心配じゃなくて!おみなえさんの背中は大丈夫なんですか!?」

「もうとっくに治ってるよ……って言いてえところだがこればっかりはすぐには治らねえな。でもキズは深くないから大したことはねえ」

 

優はボーマンとの戦いで、精神感応金属製のナイフで背中を斬り付けられて長さ数十センチの傷を負ったが、幸いにも背骨に達するほどではなかったため、そのまま戦闘を続行できた。

そしてA・Mスーツは装着者の意思によって起動する構造のため、仮にスーツの一部が損傷しようとも問題なく本来の性能を発揮できるのだ。

 

「………ユーノくん」

「…さっきのきみの言葉をそのまま返すよ」

「だよねー」

 

優の返答にあきれてユーノへ同意を求めるような視線を送ったが、結果はこれである。


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