「だったら本当にお前が戦えるのか見せてもらおうじゃねえか」
ここまで来たら頭ごなしに否定することもできない。そこで優は…
「おみなえさん、それって…!」
「勘違いすんなよ。飽くまでもお前が実戦で役に立つかどうかを見るだけだ」
なのはの実力を見極めようと決めた優はさっそく予定を立て始める。
「でもここじゃなにも見せられませんけど…」
「お前ら、当然訓練くらいするよな?」
「はい。今日からユーノくんに色々教えてもらいます」
「よし、じゃあその訓練を見せてもらうぜ。今日は何時からどこでやるんだ?」
「はい、お昼ご飯を食べてから近くの山の中で……」
この話し合いのあと優は結局竹刀を振るうことはなく、家に戻ると昼食までなのはと再び98UMでの対戦に戻り、今回は二人とも勝負が単調にならないよう最初は好きなキャラ、次はルーレットでチーム構成をランダムと交互に繰り返した。
その結果、戦績は20戦9勝11敗。
普段は運の強い優であったがこの日は何故かとても弱くなっており、逆になのははいつもより運が強く、ランダム対戦は優の全敗であった。
さすがの優も低ランクのキャラを何度も引いては強キャラのいるチームに勝つのは容易ではなかったという訳だ。
「裏ビリーとチャンと裏テリーでクラウザーと庵と影二にどうやって勝てってんだよ…」
「ま、まあランダムでしたし?クラウザー以外は無駄でしたし?運の無駄遣いでしたし?」
「ああ、クラウザー一人でオーバーキルだったもんな…」
(あ、なぐさめが逆効果…)
しかも最後の一戦は優が性能最弱クラス三人のチーム、逆になのはが最強クラス三人のチームというスーパーハンデマッチとなった。その戦力差は某Z戦士がナ○パに挑むが如く絶望的だ。
ちなみになのはは何回か大門を当てたのに優は結局ジョーを一度も当てられなかったとさ。
午後一時を過ぎると「なのはに街を案内してもらう」と言って高町家を出てさっそく山へ向かい、ユーノが半径100メートル程の結界を展開する。
「これでいくら派手に暴れても大丈夫です」
「この結界内の音も光も外に漏れないってことか?」
「それだけじゃありません。この場所に近付く生物の意識から結界内全ての存在を認識できなくして無意識に立ち去らせます。昨日の結界もこの認識阻害と閉鎖の2つを組み合わせて張ったものなんですよ」
「なん…だと…」
「本当は封時結界を張れたら良かったんですけど、それはまだ修行中なので確実なやり方で行きました」
(どっちにしてもすげーよ!)
ただでさえ高難度の結界を易々と張っただけでなく、もっと高難度である結界の合成まで成し遂げたと言うユーノ。優はユーノのあまりの天才ぶりに開いた口が塞がらなかった。
「じゃあ始める前に魔法の基礎から教えるよ、なのは」
「はい!よろしくお願いします!」
「なあ」
さっそくユーノの魔法講義が始まった…と思いきやそこへ優の横槍が入る。
「はい、なんですか?」
「オレは魔法使えねえけど後学のために聞いてていいか?」
「どうぞ。でも御神苗さんも使おうと思えば多分使えると思いますよ」
「ん?なんでそう思うんだ?」
「御神苗さんは昨日、ボクの助けを求める声が聞こえてたんですよね?」
「ああ」
「あれは念話って言って、魔導師…延いては魔力を持つ人じゃないと聞こえないものなんですよ。あの時の念話は誰にでも聞こえるようにしてましたけど、届ける相手を絞ることもできます」
「じゃあオレは魔力があるってことか」
「はい。その魔力があるっていうことは魔法を使える土台があるっていうことですから、あとは魔法の基礎を覚えれば大丈夫だと思います」
「そっか。まあ、話半分に聞いとくぜ」
意外や意外、なんと優にも魔法の素質がある事が判明。しかし優本人は乗り気ではなく、あまり興味がなさそうだ。
「でも念話ってのは便利だな。それくらいはできるようにしてえな」
「そういうことならなのはの訓練のあとに教えますよ」
「おう、じゃああとで頼むぜ」
無線機もなしに即座に意思の疎通が可能になれば、作戦行動の精度は格段に上がる。それ故に「これだけはできるようにしなければならない」と優は判断した。
雑談も終わったところでついに優にとって未知の領域である「魔法」の秘密に迫る時間…ユーノの魔法講座が始まる。