魔法少女リリカルなのは ~彷徨える妖精~   作:拳を極めし者

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「魔法」の使い手なの?

「魔法!!!?」

「「?」」

 

優の世界で言う魔法とは、魔術の上位にあたる超高等術式である。世の理すらも超越するものもあるという魔術など足元にも及ばない程に圧倒的で強力無比な力を持つ魔法は、強力であるが故に魔術よりも条件や制約が非常に厳しく、それを行える者が限られている。

 

(そういやさっきも魔法って言ってたな…。話の流れでスルーしたまま忘れてたぜ。たが…!)

 

魔法は物理的な存在ではないが、人知を超えた力を行使できるという意味では魔法そのものがオーパーツと言ってもいいだろう。そのような恐ろしく強大な力をただの一個人が入手し、(あまつさ)え行使するなど天地がひっくり返ってもあり得ないことなのだ。

 

「ウソつくんじゃねえ!魔法を使える奴なんか裏の歴史上でも数十人しかいねえんだぞ!」

 

裏の歴史上ですら稀な「魔法」の使い手は、優の場合は名前だけなら記憶しているが実際に魔法を見たのは1人だけ。何を隠そう以前にも説明したあのヘウンリー・バレスだ。

彼は魔術の中でも著しく人道に反し蔑視される「呪術」に手を染めた「呪術師」と呼ばれている。そんな彼はとある事情から人間そのものを強く憎むようになった結果として魔道に入門し、その過程で「バベルの塔」と表裏を成すもう一つのバベルの塔…「混乱の塔(リバースバベル)」の存在を知った。

彼はそこに眠っていた「混乱の魔法陣」の発動によって「混沌(カオス)(この世の法則に左右されない圧倒的な力。隠語では『魔王パズス』と呼ばれる)」を呼び出し、人間の「人格を構成する要素(記憶・思想・価値観等)」を全て消し去り、それらを「無からの再生」によって思うままに作り変えて自分の理想の世界を生み出そうとしたのだ。

 

混乱の魔法陣を発動させるには、新鮮な血液によって完成する六芒星及び触媒となる新鮮な死体(生け贄)、大量の人間の魂を必要とする。

この魔法は捧げる魂の数によって効果範囲が増減し、地球全体に効力を発揮するには数万人分の魂が必要となる。ヘウンリー・バレスは戦争多発地帯の国から数年かけてそれだけの魂を集めたと言うわけだ。

 

「ウソじゃありません!」

「ウソに決まってんだろ!魔法は魔術なんかよりはるかに…」

「ユーノくんにもらった『これ』で使えるようになったんです!」

「?」

 

なのははそう言うと、首にかけていた首飾りの丸く赤い宝石を掌に乗せて差し出した。

 

「それが魔法の源だと?他になにもいらねえのか?」

「いりません。これだけです」

「へっ、信じられねえな」

 

優が信じられないのも無理はない。魔法の発動は本来「魔法陣」「外部からの莫大なエネルギー」「その他特殊な条件」が必要だ。

それら全ての準備を完了するのには長い時間を要する場合が殆どで、長いものになると優に100年を超えるものすらある。ここまで来ると世代を跨がなければ不可能な時間だ。

 

「じゃあ今から証拠を見せます。ユーノくん、()()()()よろしくね」

「う、うん!任せて!」

「!!!?」

 

魔法を使えるという証拠を今から見せる…。それはすなわち今ここで魔法を使って見せるということだ。

それがどんな魔法か分からないが、魔法である以上はどんな悲劇が引き起こされてもおかしくない。

 

「ま、待て!こんな場所でなんの魔法を使う気だ!?」

「変身するだけです」

「へ?」

「遮断結界展開!」

 

なのはは一言そう言うとユーノが結界を展開。同時になのはが宝石を両手で握り締めながらなにやら呟き始めた。

 

「風は空に…星は天に…」

(な、なんだ?なのはの気配が…)

 

優はなのはの気配が異様なものに変わっていくのを感じる。

 

「不屈の(こころ)はこの胸に…!」

(宝石からも()()()が…!)

 

更に何故か宝石からもなのはと同質の怪しげな気配を感じ取った。そして……

 

「レイジングハート!セーーーーットアーーーーップ!!」

「!?」

 

なのはが桜色の光に包まれたかと思われた瞬間、その光が弾けてなのはが再び姿を現した。




魔法の設定はスプリガンには無いオリジナル設定です。

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