「おみなえさんよりもっと確実に封印できます!」
「……ん?」
言葉の意味が分からない。何を言っているのか理解できない。そこで優はなのはの言葉の裏を測り、一つの結論に達した。
(もしかしてオレより強いって言いたいのか?)
優は自分の事を過大評価したことはないが、それでも普通の人間の兵士やサイボーグの部隊、獣人が相手でも装備を整えさえすれば単独でもまず負けることはないと自負しており、実際にそう言った結果を出している。
そんな事実もあり、戦闘経験が無いどころかまともな武器すら持たない小学生が自分より強いなどとは到底思えなかった。
「「………」」
互いが黙り込んでいる中、優はなのはの発言の意図を探る。
なのはは「困っている人を見たら放っておけない」という典型的なお人好しだ。正に「義を見て為さざるは勇無きなり」を体現した性格と言えよう。
ユーノのジュエルシード集めを手助けしようとしているのも、昨晩になのはを逃してジュエルシードから飛び出した悪霊と戦っていた優の元へ戻ってきたのもそのためだろう。
そこまではいい、そこまでは。問題はジュエルシード集めに適した能力を持っているかどうかである。
ジュエルシード集めに最も必要なのは、悪霊をジュエルシードの中に再封印する力、悪霊の依り代であるジュエルシードを破壊する力、悪霊を直接滅ぼす力のいずれか。これを持っていなければどれだけ強かろうがなんの意味もない。戦えば無限のスタミナに押されていずれ力尽き、敗北するのみとなるからだ。
次に重要なのが戦闘能力。生きて目的を達成するためには欠かせない能力だ。
強ければ己の身だけでなく仲間の身や何も知らない一般人の身も守れる。
また悪霊は実体の無い霊体であるものの物理的干渉は可能なので、霊体を飛び散らせて時間を稼ぐことができる。そうでなくとも最低限己の身を守る程度の力が無ければ話にならない。
そして最後は「逃さない」こと。悪霊は常に暴れ回る凶暴で危険な存在だ。速攻で倒せれば特に気にするものではないが、それが叶わずもし取り逃がしてしまえば被害は瞬く間に拡大してしまうだろう。それだけは絶対に防がなければならない。
ここで再びなのはの話に戻ろう。なのはは特に殺傷性のある武器を持っている訳でもなく、父親が父親だけにあの剣術は習っている可能性はあるが、ほぼ間違いなく士郎程の腕は無い。
ならばどうやってこの危険な事に関わろうとしているのか?
(…そうだ、そういえば…)
ここで優は一つの予想が浮かんだ。
「ユーノ」
「はい!なんでしょうか!」
「そんなにビビられるとけっこうヘコむんだが…」
「あ、す、すみません。では改めて…ボクになにか?」
「お前、やっぱりなのはに『なにか』したのか?」
「……はい」
やはりなのははユーノによって戦う術を手に入れていたようだ。それならばなのはの強気も合点がいく………が、その力がどのようなものか分からない以上は素直に認めるわけにはいかない。
そこで優は………
「…じゃあなのはも魔術が使えるってことか?」
「はい…」
その力について追求をしたところ、これもまた予想通りの答えだった……と思いきや……
「やっぱりな。そんなことだろうと……」
「あ、間違えた!使えるのは魔法です!」
「わかったわかった、魔法だろ魔ほ…」
優はこれ以上聞くのは面倒に思って軽く流そうとするが……
「魔法!!!?」
「「え?」」
予想もできなかった答えに思わず声を上げて食い付いてきた。