「もうやめて!!」
「「!?」」
思いもよらなかった第三者の介入。その叫声により二人は先程の興奮が嘘のように消え去って互いに冷静さを取り戻すと互いに顔を見合わせるが、気まずさからすぐさま視線を逸らした。
「おみなえさん」
「なんだよ。今はこの野郎と話…」
「わたしの話を聞いてください」
「…ちっ」
優はなのはの介入を押し退けてユーノとの話し合いを進めようとするがなのはの眼力に思わず口を閉ざし、なのはは震えながらも優の目を見つめて口を開く。
「おみなえさんがわたしのことを心配してくれてるからこそユーノくんに冷たく当たってるのはわかりました。それにはわたしも感謝してます」
「………」
「でも…それでもわたしは思うんです」
「………」
「ユーノくんは責任を果たそうとしてボロボロになるまでがんばりました。事後承諾みたいな形ですけど、わたしに協力を求めた時もすごく申し訳なさそうにしてました。
それにわたしがなんとかしなくちゃユーノくんはきっともっとひどいケガをするまで…ううん、もしかしたら命が危なくなるまで一人でがんばろうとしちゃうんじゃないかって…。だからわたしはユーノくんを助けてあげたいと思ったんです」
「…!」
優は一言も言葉を発しないが、口を真一文字に結びながらギリッと強く歯噛みする。
「さっにも言ったけどもう一回言います。わたしを心配してくれるのはうれしいし、感謝もしてます。でもユーノくんも充分すぎるくらいがんばってくれました。
わたしはそんなユーノくんのために…わたしの大好きな人たちを守るために危ないのをわかった上で手伝おうって決めました!これはわたしが選んだ道なんです!だから全部ユーノくんが悪いような言い方はよくないと思います!」
「全部悪いなんて言ってねえだろ!」
「ひっ!」
「あ…」
思わず声を荒げてしまう優。なのはは恐怖で声を上げてしまい、優も子供に感情的になってしまった事を密かに猛省する。
「とにかく!オレはこいつにもっと優先順位と効率を考えろって言ってるだけだ!」
「だ、だからってそんな言い方したら誰だって傷つくし素直に聞き入れられませんよ!」
「ぐっ…!」
優はスプリガンの仕事では必ずと言っていいほど自分より年上の成人と接触するが、仕事柄舐められてはいけないということと生来の強気な性格が影響して、本人はほとんど意識していないが極々一部の者以外には口も態度も極めて悪い。それが今のこの場でも遺憾無く発揮されているという訳だ。
自分でも薄々勘付いてはいたが、いざ指摘されると弱化心に刺さるものがあって言葉に詰まってしまったのだ。
「それにわたしはユーノくんにやらされてるんじゃありません!自分で手伝いたいと思ったから手伝ったって言ってるじゃないですか!」
「オレでさえちょっと苦戦したのにてめーになにができんだよ!」
優のこれは当然の意見だ。
史上最強の戦闘服を身に纏い、卑怯も外道も無く命のやり取りが行われる裏の世界でそれらを打ち破ってきた優が、(直前の戦いで受けたダメージがあったとは言え)苦戦するほどのバケモノをどこにでもいる普通の小学生がどうしようというのか?
このように質問すれば10人中10人が「なにもできる訳がない」と考えるだろう………とはいえ、ユーノの話によるとなのはは既にジュエルシードの封印に成功しているという。
ジュエルシードを封印できると言うならば「普通」というカテゴリーからは外れることになってしまうが、それでも子供が相手取るにはあまりにも相手である。
故になのはがなにを言おうが苦しい言い訳にしかならない。そのような先入観もあって優は敢えて自分を納得させられる答えなど出るはずもない質問をしたのだ。
「おみなえさんよりもっと確実に封印できます!」
「………」
ところが……
「おみなえさんよりもっと確実に封印できます!」
「……ん?」
予想の斜め上を第一宇宙速度でぶっ飛ばす答えが飛び出してきた。
大事なことなので2回言いました。