「………!」
「きゃっ!」
「!?」
目が覚めた途端、飛び起きて立ち上がる優。
辺りを見回してなのはの横に座っているユーノを発見すると間髪入れずにその方向へ踏み込み、なのはを突き飛ばすとユーノ目掛けてサッカーボールキックを繰り出した。
「おみなえさん!いきなりなに…」
「下がってろ!そいつはただのフェレットじゃねえ!」
「!!」
ユーノは間一髪それを飛び退いて回避。そして…
「ちっ…!」
「キュー…!」
優と距離を取ると鋭い目付きで優を睨み付けた。
「おみなえさん!なんでそんなこと…」
「そいつの前足見てみろ!その指輪だ!」
「それってさっき言ってた…。えーと、あんど…」
「アンドヴァラナウトだ!」
ユーノが前足に身に付けているその黄金色の指輪。魚の意匠が入っていること以外はなんの変哲もない普通の指輪だ。
「それがどうしたっていうんですか?」
「その指輪はな!持ち主に莫大な力を与え、強力な魔術用の触媒にもなる指輪なんだ!」
「…!!」
優がユーノを睨み返しながらそう言うと、表情に乏しい動物である筈のユーノが動揺したかのように顔を上げてビクッと震えた。
「それにだ。てめー、人の知恵…つーか意思があるな?」
「え?」
「!!?」
瞬間、なのはとユーノ二人の時が止まった。
「その様子だとお前もわかってたみたいだな、なのは」
「え…あ…そ、その…わたしは…」
「………」
なのははひたすらうろたえ、ユーノは俯いたままピクリとも動かなくなる。
「じゃあ、説明してもらおうか」
「ど、どうして…。わたし、なにも言ってないのに…」
「 ………昨日、化け物と戦う前に強力な結界が張られた」
優はユーノを無視し、なのはに向き直りながら説明を始めた。
「その結界はなんの準備も無しに一人で、一瞬でできるような簡単なもんじゃねえ。一人でやったら何日かかるかわかったもんじゃねえし、人数が多くてもあれ程複雑な結界だと時間をかけて段階を踏んでやらなきゃならねえから狙って閉じ込めるには対象を足止めする必要がある」
「「………」」
「でもあの化け物は束縛の形跡もなく自由に動き回ってたから、間違いなく足止めはされてねえ。しかもあの暴れっぷりを見るに動き始めてからほとんど時間は経ってねえ。…ってことはあの場には化け物を止める準備がなかったってことになり、誰かが即席であの結界を張ったことになる。さっきも言ったが、はっきり言って魔術師が何人いようがなんの準備もなしに即席であんなとんでもねえ結界を張るなんざ不可能だ………がその指輪があれば話は別だ」
「「………」」
「魔術に必要なあらゆる要素がその指輪には秘められてるんだ……って言ってもそれがあれば誰でもすげえ事ができるわけじゃねえ。魔術を使うには相応の知識や技術、力が必要だ。
ただの動物が身に付けてもなにもできねえはずなのに、そいつはさっき指輪を使ってオレを気絶させる何かを放った。だからそいつは魔術に必要なスキルを持ってるってことになる」
「「………」」
「で、さっきの話と合わせてまとめると魔術師が幻覚見せてるか、変身してるか、フェレットに魔術師の霊が取り憑いてるってとこだな。
そして昨日オレの頭の中に話しかけてきたのも化け物を結界で閉じ込めたのもお前だ。当たってるだろ?フェレット」
説明を終えた優は再びユーノに振り向き、話し掛ける。それに対するユーノは……
「どうして…」
「え!?」
「ふん…」
「どうしてボクのことやこの指輪のことをそこまで詳しく…」
「やっとしゃべる気になったか」
「ユーノくん!しゃべっちゃ…」
「いいんだ、なのは。この人にはもう隠してもムダだよ」
静かに顔を上げたユーノは観念して警戒を解き、優と話し合う覚悟を決めるのだった。
ユーノくんがオーパーツ使いになってしまいました(笑)