魔法少女リリカルなのは ~彷徨える妖精~   作:拳を極めし者

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わたしの秘密なの

「………」

「……マジかよ」

 

優のつぶやきで我に帰ったなのはは「やってしまった」といった表情で顔を背ける。

 

「なんでお前は一人でそんなことしようとしたんだ?」

「………」

 

なのはは顔を背けたまま口を開こうとはしないが、優は構わず話を続ける。

 

「お前、まさかあの化け物のことを知ってるのか?」

「………言えません」

(やっぱり知ってんじゃねえか。…でもここまで頑なとなると…)

 

なのはの性格上、これ程危険な案件に対してここまで頑なに情報開示を拒むとなると、なんらかの使命感や責任感を感じているか自分でなければ成し得ないなにかをやろうとしているのだろう。

それを察した優は……

 

「お前が話したがらないなら聞くつもりはねえ………けど忠告はしとくぜ」

「………」

「あの化け物はまだいるはずだ」

「………はい、わたしも…そう思います…」

 

優が戦った悪霊は優との戦いで確実に消滅したが、倒す直前に断末魔の叫声を上げていた。これは生物では霊感の強い者のみ聞き取れる声で、その声はまるで野生動物が仲間を呼ぶ際の遠吠えのように優には聞こえたのだ。

もしその推測が当たっていればあの類の悪霊はまだ他にいることになり、そうなればまたこの地域の人間が危険に晒される可能性が高い。当然そんな事態は必ず避けなければならない。

そう考えた優は悪霊の出やすい夜間になのはがいつも一人で出かけているのか確認を取り、もしそうであれば危険なのでやめさせようとしたのだ。

悪霊はA・Mスーツを装着し、武装した優でさえ手こずる敵だ。

並みの人間では…と言うよりサイコブローのような霊体への攻撃手段を持たない者であれば、士郎のような達人でさえも(時間稼ぎなどはできても)勝ち目はゼロと言っていい。況してや達人ですらないただの子供など論外だ。

そこで優は……

 

「でもそれはオレが片付けてやるから安心しろ」

「…!!」

「オレならあの化け物を一人でも余裕で倒せるからいいが、お前じゃ命がいくつあっても足りねえぞ」

「………」

 

なのはの無謀な行動に釘を刺し、自分に任せるよう言い聞かせる。

優は強がってはいるものの、実のところは生命すら危ぶまれる程の苦戦を強いられた末の勝利ではあったが、それはボーマンとの戦闘で受けたダメージと体力の消耗によるハンディキャップが大きかったためだ。

今は体力が回復し、傷の具合も悪くない。そしてその一戦で悪霊の大まかな行動パターンと戦闘能力は把握できたので、次からは先日ほどの苦戦はしないという自信が今の優にはある。数少ない問題としては手榴弾が2個しかないことくらいだが、使わずに倒す方法も考えてあるので然程(さほど)問題にはならない。

 

だが……

 

「でも……お……って………」

「ん?」

「おみなえさんだって…化け物にふきとばされて…いっぱい叩かれて…ボロボロになってたじゃないですか…!」

「なっ…お前、見てたのか!?」

 

頭を抱えたくなる事実。なのはは優の戦闘の一部始終を見ていたのだ。

こうなっては簡単にごまかすことはできない。優は言いくるめる計画が台無しになり、思わず感情的になってしまう。

 

「いや、そんなことはどうでもいい!」

「よくありません!知ってしまった見ないふりなんてできませんよ!」

「うるせえ!とにかくアレを倒せるのはオレだけだ!お前は引っ込んでろ!」

「引きません!」

「じゃあお前になにができるってんだ!」

「わたしにだってできることはあります!それなのにただおみなえさんだけが傷つくのを見てるだけなんてイヤなんです!」

「てめえ…いい加減に…!」

 

こうなってはただの水掛論、売り言葉に買い言葉。二人はひたすら平行線のままだ。

このままでは二人の仲が険悪になってしまうのは想像に難くない。そんな危機を迎えていた二人の間に偶然にも(?)割って入る者が現れた。それは……

 

「ゆ、ユーノくん!?」

「…はあ」

 

道場の戸を開けて現れたのは、ユーノと呼ばれたなんとも可愛らしいフェレット。あまりの唐突な珍客に優の熱はすっかりと冷めてしまった。

 

「か、勝手に入ってきちゃダメだよ!」

「おい、今は大事な話をしてんだ。さっさとそいつを部屋から出し………」

「…おみなえさん、どうしたんですか?」

 

ユーノを締め出すようなのはに言おうとした優の言葉が突然途切れる。ユーノを抱え上げたなのはが気になって振り向くと、そこには口を真一文字に結び、脂汗をかきながらユーノを凝視する優の姿があった。

 

「………」

「な、なんで怖い顔して黙って…」

「ちょっと貸せ!」

「きゃっ!」

「キュー!」

 

優が強引にユーノをなのはから引き剥がす。ユーノは嫌がって暴れるが、優はそれを抑え込んでユーノの右前足を見つめる。

 

「やっぱり…アンドヴァラナウト…!」

 

そこには人間の指にスッポリと収まりそうな大きさの、魚の意匠の入った黄金色の指輪がはめられていた。

 

「あ、あんど…?」

「ふん!」

「ギャー!」

 

それを確認した途端、目の色を変えて指輪を取り外そうとする優。ユーノは先程とは比べものにならない程に暴れ出し、全力で優から逃げようとする。

 

「ギャー!」

「やめてください!いやがってるじゃないですか!」

「うるせー!そんなこと知るか!」

 

なのはの制止も振り切ってようやく指輪に手を掛けた…と思われた瞬間だった。

 

「ギッ!」

「ぶっ!?」

「え?」

 

指輪が光ると優の頭が突然見えない()()()に弾かれて吹き飛び、道場の壁に激突。そのいきおいでそのまま壁に頭をぶつけて意識を失ってしまった。




やっとユーノくんの本格参加&オーパーツを出せました!
ここからリリカルなのは本編にもスプリガン要素が絡んでいきます。

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