カンピオーネ! ~女神と共に在る神殺しの魔王~   作:マハニャー

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 どうもー。十七世紀イギリスからやってきました、血塗れメアリの侍従長ですー。

 ハーメルン様では今回が初となります。

 原作のアテナ様が好きすぎて、今回こうして書かせていただきました。

 思いっきり願望込みな作品ですが、どうぞよろしくです。


1 序章

――――カンピオーネは覇者である。

 

 天上の神々を殺戮し、神を神たらしめる至高の力を奪い取るが故に。

 

 

 

 

 ――――カンピオーネは王者である。

 

 神より簒奪した権能を振りかざし、地上の何人からも支配されないが故に。

 

 

 

 

 ――――カンピオーネは魔王である。

 

 地上に生きる全ての人類が、彼らに抗うほどの力を所持できないが故に!

 

 

 

 

【二十一世紀初頭、新たにカンピオーネと確認された日本人についての報告書より抜粋】

 

 極東の島国、日本国より新たな王、カンピオーネが誕生されました。

 その名を、御神幸雅(みかみこうが)。魔術や呪術、果ては武術の知識もほとんど持たない平凡な、しかし今は非凡なる日本の高校生。

 彼が最初に殺害した神は日本神話における太陽神、天照大御神(あまてらすおおみかみ)です。

 天照大御神は、日本に限らずアジアの国々ですさまじいほどの知名度を誇る大女神です。

 日本国を創造したとされる伊邪那岐命より生まれ出でた三貴子の内の一柱。高天原を統べる八百万の神のトップ、日本神話の最高神。

 彼女は太陽を神格化した神であり、豊穣を齎す大地母神的な性格を持ちながら、勇ましく武装するシーンも描かれています。

 御神幸雅が簒奪したのは、この太陽神としての性質。

『天を照らす光』(Of Shining)。グリニッジの賢人会議がそう名付けし権能です。

 

 

 

 

【御神幸雅が第二に殺戮した神について、グリニッジ賢人会議のレポートより抜粋】

 

 これらのことより彼が殺戮した第二の神は、同じく日本神話の最強の武神、建御雷之男神(たけみかづちのおのかみ)と思われる。

 建御雷之男神は名が示すとおり雷神としての性質を持つ。

 御神幸雅が手に入れた第二の権能『猛々しきは雷神哉』(Sword And Thunderbolt)もその性質を如実に表している。

 第一の権能『天を照らす太陽』もあり、先達のカンピオーネ達と肩を並べられるほどのポテンシャルを秘めているとされる。

 未だ若き新たなるカンピオーネ。

しかし、忘れないでいただきたい。

 経験が浅いからと言って弱いなどとは口が裂けても言えないことを。

 彼らカンピオーネは、王である。我ら定命なる人の子は立ちはだかることすら許されない、魔王の一人なのだと。

 

 

 

 

§

 

 

 

 

「…………貴女は、それでいいのかい?」

「……何を言うかと思えば……何だ、それは?」

 

 轟々と燃え上がる炎。満月が照らす荒野。その中で、二人の男女は向かい合っていた。

 

 片方は黒髪黒眼の東洋人。170センチ程度の身長の中肉中背。さしたる特徴もない、平凡な少年だ。

 片方は十三、四歳ぐらいの外見の、素晴らしく美しい少女。吹き抜ける夜風が、肩の辺りまで伸ばした銀髪を揺らしている。

 

 少年の右肩には深い裂傷が刻まれ、左腕に至っては肘から先が存在しない。

 少女の方も満身創痍で、腹には大きな穴が開いている。

 

 二人とも見るからに致命傷である。しかし倒れない。倒れず、己が仇敵をひたと見据えている。

 どちらもその立ち姿に弱々しさはなく、彼らの胸には赫々と燃え滾る炎のような闘志が燻っていた。

 

 それもそうだろう。まつろわぬ神と神殺しの魔王が向かい合えば、そうなるのは必然。運命ですらある。

 

「……まだ。決着は、ついておらぬ……。続けようぞ、神殺し……」

 

 夜を凝縮したような闇色の瞳が爛々と光る。

 

「……分かった。なら、あと一撃だ」

 

 神殺したる少年も、そう強く答えた。

そして始まる。神と神殺しの、渾身の一撃のぶつかり合いが。

 

「我は光。我は太陽。高天原の最上に座す我が、汝に下す詔を聞け! 世に光りあれ、何より尊き至高なる光よ、天上も地上も遍く照らせ!」

 

 少年が口にするのは、日本神話の最高神にして太陽神、天照大御神の聖なる言霊、聖句だ。己が司る太陽に神の言葉を聞かせるための。

 

「アテナの真名において命ずる。闇よ来たれ、陽の恵みを追い散らせ。プロメテウスの火をかき消すがいい! 天の星々と黒き風よ、古の夜を顕わしめよ!」

 

 少女もまた血を吐くように己の聖句を詠う。近隣に臨む町の光を、この世全ての光を消し去るために。

 

 直後、二つのことが同時に起こった。

 

 まず、その場を席捲していた炎が消えた。さらには星の光、街灯、自動車のライト、果ては懐中電灯、ちっぽけな豆電球に至るまで。

 ありとあらゆる人工の光が消え、顕われるは月光すらささぬ真なる闇。

 

 しかし、その深淵なる闇を切り裂くかのように、空に燦然と輝く太陽が顕われた。

煌々と輝く太陽は、今は夜であるにもかかわらず、浮かぶ月を押し退けるように、神々しいまでの光を四方に放つ。

 

「――行くぞ、アテナ。我が命に応え、真なる光を以て神焰となれ! 汝を覆い隠せし闇を斬り裂け!」

「――ゆくぞ、神殺し。暗黒よ! 妾が愛し、妾と共に在りつづけた聖域よ。女王の滅びに立ち会う、忠義の衛士たれ。勅命である!」

 

 二人同時に、あらん限りの呪力を注ぎ込んで被造物に命を下す。

 現れし太陽より放たれるは、万物灼き滅ぼす神焰。それを受け止めるは、一切の光を拒む闇の障壁。

 闇を統べし女神と太陽招きし神殺しの渾身と渾身はせめぎ合い、そして――

 

 

 

 

§

 

 

 

 

「……起きよ、旦那さま。妾が目覚めを招いておるのだ、はよう起きよ」

 

 朝。銀髪に闇色の瞳をした少女――女神アテナは、眠りこける少年の上に馬乗りになって覚醒を促していた。

 

「……ん、ぅぅ……」

 

 しかし少年――カンピオーネ御神幸雅は不明瞭な呻きを漏らすだけで、一向に目覚めようとしなかった。

 もともと幸雅は目覚めが悪いのだ。基本的に携帯のアラームを五分置きに三連続ぐらいで設定して、その三度目でようやく目覚める。

 

 そんな幸雅に、アテナはついに業を煮やしたかのように、

 

「……むぅ。これでも目覚めぬとは良い度胸だ。どれ、ここは一つ……」

 

 言いつつ、アテナは幸雅の唇にそっと己のそれを寄せ――

 

 ――ちゅっ

 

「……ん、んぅ? ――ん、なっ!? アテ、ナ!? 朝から何を……」

「何を言うか、旦那さま。元はと言えば、どれだけ言ってもあなたが目覚めなかったのが悪い」

「え? あ、ああ。起こしに来てくれたのか。ありがとう、僕のために」

 

 朝っぱらからの口付けに仰天していた幸雅だったが、すぐに己の非を悟って頭を下げた。

 アテナは鷹揚に微笑み、

 

「よい。あなたは妾の旦那さまだ。であれば、妻である妾が貴方を眠りの園より引きずり出すのも道理よ。それよりも」

「ん?」

「……妾はあの程度では足りぬ」

 

 上体だけを起こした幸雅の上に馬乗りになったまま、アテナは両腕を広げた。

 すぐに察した幸雅は微笑を浮かべつつ、そっと華奢な肢体を抱き寄せ、胸の中に深く抱きこむ。

 腕の中にある軽く暖かい感触に、無限の愛おしさを抱きながら幸雅は耳元で囁き、

 

「おはよう、アテナ。僕の可愛いお嫁さん――」

「んっ……おはよう、妾の愛しき旦那さま」

 

 もう一度、今度は幸雅の方から唇を重ねた。




 最初の部分は、ほぼパクリです。

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