新サクラ大戦 降魔世界大戦 乙女の血は紡がれて 第一部   作:魯竹波

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結婚した後、大神さんは体が動かなくなった設定




第七話 か、体が勝手に…………(1)

 

な、何ですか、それ…………」

 

「あたし達独特のカーテンコールです。

勝ったら必ずやるのが、伝統なんですよ」

 

「…………………。」

 

「微妙そうだな…………。

 

そうだ。 俺達は帝劇に戻るけど、お前はどうする?」

 

大神一郎が優一郎に尋ねた。

 

「もうしばらく、久々の帝都を満喫しようと思います。」

 

「それがいいな。

守っていかねばならない帝都の空気を、より感じるいい機会だからね。

 

だけど、夕食までに帝劇に戻ってきてくれ」

 

「分かりました。  ありがとうございます。」

 

優一郎はその場を立ち去った。

 

(ふぅ……………つくづく、凄い組織に配属されたな

帝国華撃団花組…………か。)

 

今日見た光景はまさしく帝国華撃団花組の活動。

 

だが、それはまさに夢物語…………子供の好むヒーローの世界だった。

 

(現実とは到底思えないけど…………現実なんだよなぁ…………。)

 

期待の気持ちが大きい一方、やはり現実に頭が追いついていないのは否めない。

 

「けど、直に人々を守れる、素晴らしい仕事には変わりないし、頑張ろうじゃないか。

それに、何より、兵学校や海軍じゃ決してやらないようなこの仕事は、必ず後々の糧になるはずだ。」

 

そう割り切ることで、切り替えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

大帝国劇場に帰還して夕食を摂った後、優一郎は本日の主役ということで、2番目に風呂に入ることを許されたため、風呂に入った。

 

「懐かしいなぁ…………。 こんなに小さかったっけ。」

 

中学校の時以来の大帝国劇場の風呂ということで、つくづく考えさせられるものがあった。

 

「それだけ、僕が大きくなったってことか」

 

もう少し、物思いに耽っていたかったが、如何せん時間が遅いので、早く風呂から上がることにした。

 

頭と躰を洗い、歯を磨いて、体をお湯で流して、体を拭いて出る。

 

 

 

 

鏡の前に向かうと、優一郎は自分の、母親似の顔と対峙する。

 

(つくづく、父さんには似ない顔だよな。

もう少し、似てくれれば大人っぽさが増して良いのになぁ…………。)

 

そう思いながら更衣室を後にする。

 

 

 

 

 

 

「上がりました。」

 

風呂場では、司令の大神一郎を除く全員が皿洗いをしていた。

 

「分かったわ。 次は私が入るから、皆、後は頼むわね」

 

「「ごゆっくり~」」

 

マリアが風呂場へと消えていった。

 

 

 

「…………じゃあ、僕も手伝うよ」

 

優一郎は袖をまくる。

 

「優一郎さんは今日の主役ですし…………」

 

さくらが止めに入るも。

 

「いやいや。 皆が苦労してやってるのに、僕がやらないってのも、変だし。」

 

「正直、助かるよ。  ありがと」

 

「気にしないで。 」

 

優一郎も皿洗いに加わる。

 

 

 

「…………上手いですね。」

 

「まあ、この辺りは、鍛えられたからね。 誰かさんに。」

 

「いや、あたしなんだけど。」

 

「そうだよ。 あや姉さんに鍛えられたんだ。

自分でやってけるようにって。」

 

「そうだったのですか…………。

羨ましいです…………。」

 

「う、羨ましい…………??」

 

「あ、いえ。 私には弟いないので。

そういうのって何か憧れてしまうんです。」

 

「あ~。 成る程ね。

独りっ子?」

 

「一応、妹が独り…………。」

 

「妹か~。  うちのあや姉さんは、姉だけどある部分妹みたいなところもあるかr…………ぃだだだっ」

 

「誰が、妹なのかな~?  誰が?」

 

「ご、ごめんなさ……あっ 痛いですぅ。」

 

「本当、可愛らしい表情を浮かべますね。」

 

昭子はどこか恍惚とした表情を浮かべた。

 

「でしょ~。  堪らないのこれが。」

 

あやねも笑って返す。

 

 

 

 

 

「……………何やってるのかしら?」

 

「「「ご、ごめんなさいっ!!」」」

 

優一郎弄りは、トイレに立ったさくらが戻ってくるまで続いた。

 

 

 

こうして

 

「さて、もう終わりそうだね。

僕も部屋に戻るよ。」

 

優一郎は部屋に戻っていった。

 

「ありがとうね。 優ちゃん。

昭子ちゃんもそのお皿拭いたら、終わりだね。

終わったら、お風呂行こうかなぁ………。

 

もう一踏ん張り頑張ろ!」

 

「はいっ」

 

 

去り間際、そんな声が聞こえてきた。

 

 

 

「本当、2人は仲が良いなぁ…………ただ、二人して可愛いとか言ってくるのは、ちょっとなぁ………」

 

そう愚痴りながら、優一郎が階段を登ろうとすると。

 

「お疲れ様。 皿洗い、手伝ったそうだな。」

 

「父さん」

 

大神一郎が話しかけてきた。

 

「僕は部屋に戻って休もうかなと思っていたのですが、父さんはどちらに?」

 

「ちょっとマリアに用があってね。

どこにいるか、分かるかい?」

 

「風呂から出たみたいですけど、ちょっと分からないですね……スミマセン」

 

「あ、いや、良いんだ。  おやすみ」

 

「お休みなさい。」

 

(あ、そうだ。  寝る前に御手洗行っておこ………。)

 

優一郎は御手洗にいった。

 

 

 

 

「さて、寝るかな…………ん?」 

 

廊下に何か落ちている。

 

「これは……………あや姉さんの………全く………。」

 

それはあやねの髪留めだった。

 

いつぞやの誕生日に優一郎が買ってあげたもので、あやねもそれを肌身離さず持っていた。

 

(仕方ない…………持っていってやるか…………。)

 

そう考えてしまったのが、後に恥ずかしい目に遭わされることに繋がるとは、優一郎には思いもよらないことであった。

 

 

 

 

 

更衣室のドアの向こう側から、風呂に入ってる時の、独特のくぐもった声が聞こえてくる。

 

あやねと昭子のそれに間違いは無い。

 

「よし。  2人は風呂に入っているな…………鉢合わせなんてしようものなら……………」

 

(おっと、震えが止まらないぞ…………っ。)

 

どうにか、震えを止めると

 

「よし、今だっ……………」

 

キキィ………とドアを開け、中に侵入する。

 

 

 

 

「よし、この帯に挿しておけば、大丈ぶ………!?」

 

髪留めを帯に挿した次の瞬間、ふと、足があらぬ方向に動く。

 

(風呂場の方…………まずいっ)

 

慌てて下にうつ伏せになる。

 

(手は無事だ……………手は。

ならば匍匐前進で…………。)

 

 

 

「よし、後は一瞬だけ立って扉を…………。」

 

だが、その瞬間

 

体の主導権が足に奪われてしまった。

 

手も思い通りに動かない。

 

「あっ、  ま、まずいっ  か、体が、体が勝手にっ~!!」

 

 

 

 

 

「え、え!? ゆ、優ちゃん?!」

 

「え、な、何かあったんですか?」

 

「助けて~。  躰が勝手に動いたんだ~。

とにかく、風呂場の扉を絶対に開けないで!」

 

「…………わ、わかった!」

 

「………………き」

 

昭子は混乱していた。

 

「き?」

 

そして、我に返ったようで  

 

「きゃあああああああっ!」

 

 

 

 

 

 

「何かあったのかっ!」

 

つかさず、大神一郎が駆けつけてきた。

 

「?!  お、お前………」

 

「た、助けて下さい…………。

体が勝手に動いたんです。」

 

「何かあったんですか?! 

………はぁ。」

 

「司令の子供なだけはありますね……………。」

 

次いで入ってきたさくらとマリアもただただ呆れるばかりだった。

 

 

 

 

 

優一郎は、風呂場の扉に手をかけた状態で見つかり、そしてそのまま救助された。

 

無論、風呂場の先に広がる桃源き………桃源郷の如き光景は見ていない。

 

「………こ、これは、不可抗力ですよね……?」

 

「何言ってるんですか…………きちんと罰を受けてくださいね?」

 

「…………………。」

 

「世の中、そう容易く許されるほど、甘くないですよ

大体、何故更衣室に入ったの?」

 

「……………あや姉さんの髪留めを拾ったからこっそりと戻そうとして。」

 

「ふふ…………何とも少尉らしいではないですか。

さくら、止めてあげたら?」

 

「マリアさん、止めないで下さい。

……………さて、どう化粧しようかな。」

 

(け、化粧っ?!  じ、冗談じゃないっ!!)

 

「け、化粧って言ったよね今っ!?」

 

「…………可愛く成長してくれて、嬉しいです。」

 

 

 

「うぎゃああああああっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「やだぁ~!  かわいいっ!」

 

「本当、持ち帰りたいくらいですっ…………うふふふふふ。」

 

「ち、ちょっと昭子ちゃん?!

いくら優ちゃんの女装姿が可愛いからって、興奮しすぎで流石に目が怖いよ?!」

 

「本当に、母親似だな………。 お前は」

 

「良く似合ってるわ」

 

「若い頃のあたしにそっくりで、やりがいがあったわ。」

 

 

 

「殺せっ 殺してくれ~っ!」

 

こうして、女装させられてしまった優一郎。

 

地獄の様な一晩を過ごしたのはいうまでもない。

 

 

 

 

 

 




次回予告

「……………私より弱い奴は、隊長として認められない。
命を預けるに足りないからだ。」

浅草から帰ってきた隊員は、なんとあの人の娘だった!

だけど強い反面、心も岩のように頑なで…………。

次回「狼のように孤独な少女」 

桜吹雪は照和に烈しく吹きすさぶ。

  


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