新サクラ大戦 降魔世界大戦 乙女の血は紡がれて 第一部   作:魯竹波

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第三話 親子再会

地下鉄を降り、デパートの松屋の銀座本店の地下の出口から少し歩いたところに大帝国劇場は存在する。

 

「……………三年ぶり…………か。」

 

優一郎の出身中学は海軍兵学校の予備校として名を馳せたさる有名な中学校であり、当時は新宿の近くに存在するそこに通っていた。

 

「そうだよね~。  やっと家族揃って暮らせるね。

16年振りかな?」

 

「そうだね」

 

表玄関から入る。

 

表玄関のエントランスは相変わらず懐かしい感じを漂わせていた。

 

その、昔と相変わらないヴィクトリア調のデザインは世代を超えて愛されている。

 

「ごめん下さーい!」

 

優一郎は大声で叫んでみる。

 

「おかしいな お父様もお母様もいるはずなのに。」

 

すると

 

「はーい。」

 

控えめだが、綺麗な声が聞こえてきた。

 

やがてスタスタと二階へ続く階段から人が降りてきて。

 

「あら、あやねさんでしたか………こちらは?」

 

大人しそうで、おっとりとしている感じの、和服の可愛い女の子が降りてきた。

 

「ああ、昭子ちゃん。 

お父様とお母様は?」

 

「支配人室にいらっしゃると思いますわ」

 

「この子は話していた例の優ちゃんだよ。」

 

「ああ、あやねさんの……………。」

 

「大神優一郎と言います。 よろしくお願いしますね。」

 

優一郎は握手を求め、片手を差し出す。

 

「は、はい…………。よろしくお願いします。」

 

女の子は手を握り返したが、顔が既に赤い。

 

「顔が赤いよ?  大丈夫?」

 

優一郎がつかさず尋ねると

 

「だ、大丈夫………です………。」

 

女の子は顔を一層赤らめた。

 

「昭子ちゃんは男の子に慣れてないから。」

 

「ああ……………そういうことね。

僕も女の子に慣れてないから、同じだよ」

 

「慣れてないって何よ 私がいたじゃないの!」

 

「ほ、ほら?! 肉親はまた違うし…………。」

 

優一郎は慌てて言い返し、

 

(なんか、親近感湧くなぁ…………。

やっぱり女優なだけあって可愛いし。)

 

等と考えていると、

 

「私は九条昭子と申します。 これからよろしくお願いします………。」

 

女の子は返してきた。

 

「よろしく。   昭子さん。」

 

「あ、あ、よ、よろしくお願いします」

 

一層慌てだした。

 

「そんな固くならなくても大丈夫だよ。 

落ち着いて………ね?

多分これから仲良くしていくことになるだろうし。」

 

「は、はい、そうではなく。」

 

「え?」

 

「あの……………あやねさんから聞いていた通り、可愛らしい方だなと思って。」

 

言っちゃったといった風に口に手を当てて昭子は恥ずかしがった。

 

「ええっ?!」

 

意外な言葉に驚く優一郎。

 

(嬉しくないなぁ……………。)

 

「だから…………その、安心しましたということです。」

 

「なるほど……………それはよかった。」

 

ほっと息をついた昭子からは顔から赤さも消えている。

 

「緊張とれたみたいだね よかった。

さて、支配人室はどこかな?」

 

「はい、こちらになりま………」

 

「ところで、優ちゃん」

 

「ん?」

 

(何故だろう 悪い予感がする…………。)

 

優一郎の予感は的中する。

 

 

「昭子ちゃんっておっぱい大きいよね」

 

「……………え?」

 

「な、な、あやねさん?!」

 

優一郎は改めて見てみた

 

(確かに………。)

 

着痩せしたのかどうかは分からないが、間違いなく大きい方だ。

 

「あの、男の子ですから多少は仕方ないと思いますが、見られて心地良いものではありませんわ」

 

その視線に気づいてか眉を顰めて昭子は呟く

 

「な、ご、誤解だからっ!  言われるまで何も気づなかったのにっ!」

 

慌てて訂正するも

 

「悪いことする目はこの目ね!」

 

「理不尽っ!!」

 

あやねの目潰しが飛ぶ。

 

「うう…………あや姉さん酷いよ…………。

あや姉さんが何も言わなけりゃ、僕は何にも気づくことなかったし、こんなことにはならなかったのに。」

 

あやねは我に返ったようで。

 

「優ちゃんはともかく、昭子ちゃんごめん!

つい、慌ててる姿が二人とも可愛くて。

 

さっきの冗談だから、もうしないから、許して? ね?」

 

「その冗談のために僕は酷い目にあったんだけどね………………。」

 

「あやねさんっ!」

 

「ごめんね。 胸をコンプレックスにしてるの知ってたに…………。」

 

「あ、いえ…………その、年頃の男の方と一緒に生活していかねばなりませんから、私の方でも、その…………きちんと向き合いたいと思ってますし、それに、あやねさんには常々、お世話になってますから…………。」

 

「昭子ちゃん…………。」

 

(なんか、置いてけぼりにされてる気がするのは仕方ないか……………。)

 

やり場のなくなった視線をふと、二階に向けると

 

二階の廊下へ続く方からコツコツと歩いてくる音が聞こえてきた。

 

 

「三人とも、無事、仲良くやってるみたいだね。

ひとまず、安心したよ」

 

「父さん!」

 

「久しぶりだな。 優一郎。」

 

二階の廊下から、大神一郎が降りてくるのが優一郎の目に飛び込んできた。

 

 

 

 


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