新サクラ大戦 降魔世界大戦 乙女の血は紡がれて 第一部   作:魯竹波

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第一話 新たなる風は 帝都に 

1952年 4月

 

 

「……………………。」

 

(どうして、こうなったんだ……………。)

 

大神優一郎は、身の回りの一式を持って東京駅にいた。

 

(1年繰り越しで卒業させられるなんて思いもよらなかったよ!

何考えてんのかな……………海軍の上層部は

 

たかだか、あの蒸気甲冑で先輩方を抑えて首位に立った程度で…………。

蒸気甲冑よりも重要な単元は沢山あるというのに……!!)

 

 

 

ーーーーー(回想開始)ーーーーーーー

 

 

 

 

 

優一郎と菊原は上級生が乱れて戦っている場所に辿り着いた。

 

「さぁって!  殺りますか!」

 

「待って菊原っ 今の君から人を殺しかねない殺気を感じる!」

 

「まーまー。  普段から先輩方には理不尽な目にも遭わされてるだろ?

今、仕返ししないでいつ仕返しするんだよ~? え~?」

 

「まー、それも、そっか。

大人しくしてるよりはそっちのが面白そうだしね!」

 

動力部の馬力を一気に跳ね上げ、乱戦に飛び込む。

 

「はあっ!」

 

「でやっ!」

 

武器を叩き落とし、蒸気甲冑の腕を破壊し、頭の部分に強烈な一撃を叩き込み、或いは切り裂いて中の操縦者が剥き出しにした。

 

「う、う、うわぁああああ」

 

「な、なんで、あの機体が、動いているんだぁっ!!」

 

「それよりも、何故、あの二人は動かせるんだよっ!」

 

「あ、あり得んっ!」

 

海軍の最上級生は悉く敗れていく。

 

 

 

 

 

 

気づけば、残ったのは優一郎と菊原のみとなった。

 

「流石、優一郎だな。

はじめて、コイツはヤバいと悟った男だ。

 

士官学校入学時から今まで、それは変わらない!」

 

「それはこっちの台詞でもあるんだよ!

行かせて貰うっ!」

 

「「でゃああああっ!」」

 

二人は刃を交える。

 

 

 

両者は互いに譲らない。

 

そして、そんな中で、二人はある異変に気づいていた。

 

((この、甲冑には、妙な癖がある………!!))

 

前にも人が使っていたから、当然、癖はある。

 

しかし、この癖は、それとは一味違う。

 

 

それは

 

((ある技の型を異様にしたがるのは、一体………?))

 

優一郎が乗る機体は霊子甲冑・光武二式の大神機。 菊原の乗る機体は霊子甲冑・光武二式のさくら機である。

 

それぞれの必殺技を、それぞれの霊子甲冑は覚え込んでいた。

 

((やはり、覚え込まれている技がある。

ここは、身を任せて……………打つ!))

 

二人はほぼ同時に、それぞれの必殺技を相手に叩きつけようとする

 

 

 

(出、出ない…………?)

 

破邪の血を引かない菊原は必殺技を繰り出すことが出来ないのに対し。

 

(な、何だこれぇ!)

 

優一郎は妙な力を、蒸気甲冑全体に感じていた。

 

そして、刀の先端に青白い気が迸るや。

 

次の瞬間には、その気は一気に莫大な力へと変化していき、強烈な一撃となって、菊原の乗る蒸気甲冑に振り下ろされた。

 

 

 

「ふぅ…………って、大丈夫かな? 菊原っ!」

 

優一郎が菊原の蒸気甲冑をこじあけると、菊原は蒸気甲冑の中で既に気絶していた。

 

「おいっ!  しっかりしてくれっ!  菊原ぁぁああっ!」

 

直後、そう叫んだ優一郎の背中を叩く人がいた。

 

「合格や 優一郎はん!  

はっきり言うて、期待以上や!

 

これで、大神はんに吉報を届けられる!」

 

振り向くと、白衣を着た眼鏡の中年の女性が優一郎の背後に立っていた。

 

「こ、紅蘭………さん? 」

 

その女性こそ、かつて帝国華撃団・花組の一員であった、李紅蘭その人である。

 

「ウチのこと、覚えてはったんか?

大した記憶力や。

 

にしても、えろう大きゅうなったなぁ! ウチもわが事のように嬉しいわぁ」

 

紅蘭は優一郎を目を細めて見つめる。

 

「は、はい…………。

ところで、紅蘭さん、合格……………とは?」

 

「とりあえず、これ、読んでや。」

 

紅蘭は優一郎にある紙を渡す。

 

「……………辞令?」

 

海軍士官学校の卒業生は、辞令を受けて配属先に派遣される。

 

封を破り、中を改めると

 

「………………は??」

 

中には

 

「以下の者、1名を大帝国劇場・帝国華撃団花組に配属するものとする

 

少尉・大神優一郎

 

大日本帝国海軍大臣 鈴木敏太郎」

 

と書いてある。

 

「ち、ちょっと紅蘭さん?  僕はまだ卒業もしていないで………」

 

「政府の上の方のお偉いさんが、優一郎はんを1年早く卒業させることを決定しはってな。

 

大神はんに、優一郎はんの実力を試してこい言われて。

ウチの眼鏡に適う実力を有しているかどうか、帝国華撃団の戦力になり得るか確認さしてもろうたんや。」

 

「そ、そんなの、アリなんですか?」

 

「んなこと、ウチに聞かれても困るわ。

まあ、適わんようなら、この辞令破り捨てるようにも言われてはったけどな。」

 

「なにそれぇええええっ!」

 

こうして、大神優一郎は海軍を1年繰り越しで卒業させられ、銀座・大帝国劇場勤務を命ぜられたのである。

 

 

ーーーーーーー(回想終了)ーーーーーーーー

 

(でも、まあ、父さん母さんも帝都東京にいるし、何よりも米田のお爺ちゃんのゆかりの場所、大帝国劇場に勤務となったのは、嬉しいかな~。

 

だけど、大帝国劇場勤務って、何するんだろう?

帝国華撃団花組って、そもそも何?

 

秘密組織ということ、蒸気甲冑に乗らされること、その蒸気甲冑が一般人には載れない特殊な代物であること。

 

これ以外はまるで謎なんだよね…………。

 

 

しかも、大帝国劇場勤務となれば、女優さんとかとも話をすることになるんだろうな。

女性苦手なのに…………。)

 

 

とにかく、そう考えながら歩いていると

 

(さ、殺気かっ?)

 

突如、背後に妙な気配を感じた。

 

(頭が、危険信号を発している…………ようなこの感じ

まさか……………。)

 

「あ、いたいた~♪ 元気だった~?」

 

(な、なんでいるの………??

ねぇ……………。)

 

 

 

視線の先には

 

「優ちゃん。 久しぶり。」

 

彼の姉:大神あやねがいた。

 

 

 

 

 




大神あやね 1934年8月7日生まれ
身長162センチ、体重46キロ
実は大神夫妻の子ではないが、本人や優一郎はその事実を知らない。
大河双葉に養育され、武術に加えて、掃除洗濯や料理など、家事と呼ばれる代物で出来ないものはない。
女学生風の袴(〝ハイカラさんが通る〟みたいなアレで、真宮寺さくらの袴よりも地味)を着用している。

実は優一郎の女性が苦手なのは彼女のせいだったりする。

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