新サクラ大戦 降魔世界大戦 乙女の血は紡がれて 第一部   作:魯竹波

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第十一話 初の霊子甲冑訓練

昼になると、午後には霊子甲冑の訓練が行われることになっている。

 

 

往年に比べて著しく戦力が損なわれている花組の戦力をいち早く回復させるために賢人機関が大神一郎に命じた方針だった。

 

無論、そのせいで劇に割ける時間が減ったため、大神一郎やさくら達、総合演出を手掛ける面々は苦労することになったが…………。

 

そして、この訓練は1945年に大帝国劇場が大改装された際に地下に新たに導入されたシミュレーションルームで行われる。

(余談だがこの際、潰されたのが薔薇組の部屋である。)

 

「………まさか地下にこんなところがあるなんて」

 

「もはや、何でもアリなところありますよね。」

 

「まあ、秘密機関だしね…………。」

 

「さて、配置についてくれ」

 

大神一郎の声に優一郎が辺りを見回すと

 

「……………成る程ね」

 

固定されて動かない霊子甲冑が何台も部屋の両脇に配置されている。

 

白、桃色、ベージュ、薄紫色と来て、群青と白の二色の機体があった。

 

「あれが、僕の機体ですか?」

 

「ん? あ、ああそうだった説明してなかったな。

済まない。」

 

「いえ、分かりました。 配置につきます。」

 

 

 

 

この訓練用霊子甲冑は固定されているので、階段で登って中に入れた。

 

中に入り、電源らしきレバーを起動させ、手の動力部分に腕を突っ込む。

 

すると、目の前に広がるスクリーンに一気に仮想空間の情景が映し出された。

 

「あ!」

 

同じような霊子甲冑のアバターがスクリーンの三次元仮想空間に何台も出現している。

 

「驚いたかい?  これが今回の訓練の主体となる仮想空間だ。」

 

訓練用霊子甲冑の中に搭載されているスピーカーからそう言う声が聞こえてきた。

 

「凄いですね……………。」

 

 

「さて、それじゃあ始めようか。

今日はまずは脇侍の掃討訓練からはじめて、最後には魔

操機兵・孔雀を倒す実戦訓練を行うとしよう。」

 

「「「了解!!」」」

 

次の瞬間、仮想空間に脇侍のアバターが出現する。

 

「こ、これが脇侍なのか…………。」

 

昨日の降魔が、初めて見た怪物だった優一郎には、無論脇侍は初見だった。

 

そう戸惑っていると、

 

スパスパスパスパと脇侍が相次いで別の霊子甲冑に斬られていく。

 

数から判断するに大神一郎やさくらも参加しているようだった。

 

「何ぼうっとしているんだっ! そんな体たらくで帝都を護れると思っているのか!」

 

叱責が飛ぶ

 

「はっ、はいっ!」

 

慌てて脇侍を斬りにかかる。

 

 

 

「くっ……………慣れないなどうにも。」

 

脇侍の胴を切り裂くという戦法ばかり取ってしまう。

 

(もう少し、首を切るとか、作業効率を上げた方が良いみたいだな。)

 

如何せん、脇侍のアバターの数が多いので、結構体力を消耗してしまう。

 

(……………その点、あとの皆は上手くやっている。

首を狙うなり、目→首だったり。)

 

その次の瞬間

 

「?!」

 

霊子甲冑の中が少し揺れた。

 

画面を見ると脇侍から攻撃を受けていた。

 

被ダメージまで忠実に再現されているためだった。

 

「よくもやったな!! 」

 

腕を切り裂き、次いで首をかっ切る。

 

そしてそのまま、左腕→首を狙う戦法に切り替えていった。

 

右腕で攻撃される前に太刀で首をかっ切っていく。

 

(効率が大分上がったな。)

 

他の霊子甲冑のアバターよりも目に見えて素の攻撃力が高かったので、処理速度が大幅に増加していった。

 

そう考えながら脇侍の掃討を行っていくと程なく脇侍は全滅した。

 

「皆、ご苦労様。 

これから出現させるのは、今日最後の仮想敵:魔操機兵・孔雀だ。

今までは俺たちも参加していたけれど、孔雀に限り、3人で挑んでみてほしい。

指揮は優一郎に任せるから、頑張ってくれ。」

 

そう言うなり、大神一郎は自身の霊子甲冑のアバター、さくら機のアバターを消す。

 

(さて、どうする……………!)

 

優一郎達には瞬時の判断と的確な動きが求められた。

 

魔操機兵:孔雀の片腕には幾つもの射撃口が取り付けられており、遠距離攻撃を得意とする。

 

「わわっ!」

 

今、迷っているこの瞬間にも優一郎機、あやね機、昭子機には的確な射撃によるダメージが与えられていた。

 

「ひとまず、距離を置いたらどうかな?」

 

「そうだね。 

円周上に敵の射程距離から距離を置いた位置を動き回り、うちの1機で敵に一気にケリをつける!」

 

「「了解っ!」」

 

(やはり普通に従ってくれるんだなぁ…………。

結構頼りなさそうな印象を受けているとばかり…………。)

 

優一郎はそう思いながらも、射撃してくる魔操機兵:孔雀から距離を置くため後退する。

 

「敵の射程圏内に入って敵を引きつけ、敵が攻撃してきたら後退する。

この動き、出来るね?」

 

「光武の扱いはあたしたちに一日の長があるし、任せて!」

 

「分かりました。 」

 

3機は射程距離を直径とした円周上に、それぞれが射程圏内に出たり入ったりを繰り返していく。

 

そして徐々に味方同士の霊子甲冑の距離を空けていく。

 

 

「よし、あや姉さんの機体が完全に敵の背後に回り込んだ今だっ!」

 

あやね機が一気に孔雀に接近し、

 

「破邪剣征・桜花流水っ!」

 

孔雀に必殺技を放つ。

 

孔雀は絶妙なタイミングで振り返ったので、孔雀の腕に必殺技が行き、射撃口が破壊された。

 

「トドメだっ!」

 

優一郎はそれを見て一気に跳躍し、

 

「でゃあああっ!」

 

強烈な一撃を叩きつけ、一気に動力部を破壊する。

 

かくして孔雀は完全に無力化され、戦闘は終了した。

 

 

 

「まいったな……………見事だったよ。」

 

戦闘終了直後、大神一郎のそんな声がスピーカーから聞こえてきた。

 

「……………倒したら拙かったのですか?」

 

「倒すのは良かったんだけど、3機で、しかも味方の被害が殆どないというのは予想を遥かに上回る結果だったからね。

驚いたよ。」

 

「ありがとうございます。」

 

「どうだ? これでも君は彼らを見直してはくれないのかい?

麗華くん。」

 

大神一郎は、実は優一郎達の3機が苦戦することを想定しており、麗華に待機させていた。

 

本当は麗華に撃退させ、仲直りのきっかけを作ろうと考えていたが、優一郎達は予想を上回る戦果を上げてしまい、その目論見は完全に崩れてしまっていたのだった。

 

「ああ。  先程は済まなかった。

お前達を、殊に大神優一郎を過小評価していた。 

ごめん」

 

スピーカーから紅蘭の養女・麗華の声がする。

 

彼女は、自分の先程の態度は、優一郎達に過小評価による拒絶と映っていると考えていた。

 

「いやいや。 気にしなくていいよ。

だって一筋縄で行く方が不思議だしね。」

 

優一郎は笑って話す。

 

「そうか…………ありがとう」 

 

訓練用霊子甲冑の中にいる優一郎達からは見えないが、恐らくスピーカーの向こうでは笑っていそうだ。

 

「全く…………次から気をつけてね!」

 

「良かったです……………仲直り出来て。」

 

あやね達も受け入れてくれたようだった。

 

 

 

 


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