新サクラ大戦 降魔世界大戦 乙女の血は紡がれて 第一部   作:魯竹波

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第九話 最初の壁

「そうですけど……………紅蘭さん

何でわざわざ爆発させるんですか?」

 

「何言うてはりますの優一郎はん。

発明は爆発や言うし。」

 

「………………。」

 

「うちの母が申し訳ない。

ところで、お前達が、新しい花組の面々か?」

 

「はい。 貴方が、浅草に出向していたという?」

 

「ああ。 劉麗華という。

ここにいる母さん…………李紅蘭の養女だ。」

 

「なるほど…………紅蘭さんに養女が…………。

僕は大神支配人の息子、優一郎です。

よろしくお願い致しますね。 麗華さん。」

 

「……………お前が?」

 

「はい。」

 

「……………司令には似ていないんだな。」

 

「母親似なもので。」

 

「……………はぁ。

駄目だな。  これは。」

 

 

「……………え?」

 

「司令からは〝確かに17才とはいえ時期尚早とはいえ、俺を超える素質を秘めている可能性がある〟と言われていた。

しかし、いくらなんでも、子供過ぎる。

命を預ける気にはなれない。」

 

「………………。」

 

「ちょっと、初対面で何言ってるのあんた!」

 

あやねが突っかかる。

 

「なんだお前は」

 

「いくらなんでも、会って早々、その言い草はないんじゃない!?」

 

「そ、それに実力もまだ分からない内からそれを言うのはあんまりです!」

 

あやねと昭子がフォローに入る。

 

「成る程。 それもそうだな。

じゃあ、見せて貰うぞ その〝実力〟って奴をな」

 

「…………いいよ。

どの道、話していたところで埒があかないだろうし。」

 

優一郎は穏やかな表情を崩さないながらも、怒気を孕んだ口調で呟いた。

 

「ちょっと、ええ加減にせんかい麗華はん!

なして、なしてアンタは早々、和を乱すようなことをするんや!」

 

堪らず紅蘭が口を挟む。

 

「止めないでやってくれないか 紅蘭」

 

いつの間にか来ていた大神一郎が口を挟む。

 

「大神はん」

 

「端から上手く纏まれという方が無理だと、そう思わないのかい?

もう少し、様子をみようじゃないか」

 

「………………。」

 

 

 

 

 

 

「得物は何を?」

 

「中国拳法をやっているから、要らない。」

 

「それなら、僕も使わない方が良さそうだ。」

 

「………………手加減ではなさそうだな。」

 

「そうだね。 木刀なんて使った日には、蹴られて両断されて終わりだからね!」

 

空手の蹴りを入れにかかる。

 

「ほぅ。  良い筋だな。」

 

「黙って集中したら!」

 

次いで次の攻撃に移る。

 

 

「……………。」

 

太極拳の単鞭の型を基とした構えで捌いていく麗華。

 

「……………そんな物か。

得物は剣みたいだし、体術から察するに聞いていたよりは大したことなさそうだな」

 

(誘われたっ!!)

 

「しまっ…………!!」

 

蹴りを避けるため、攻撃を中止して大きく後ろに飛び退くも。

 

「顔ががら空きになってるな」

 

顔面に強烈な一撃が叩き込まれた。

 

「くっ…………。」

 

歯を食いしばって、優一郎は地面に転がる。

 

「優ちゃん!」

 

「優一郎さんっ!」

 

あやねと昭子が駆けよる。

 

「まだ8割くらいしか、本気出してないぞ」

 

「いくらなんでも、加減ってものがあるでしょう!!」

 

「そうだよ あんたね!」

 

「煩い。  とにかく、ソイツに命を預ける気はない。

司令。

ソイツに命を預けるくらいなら、私は出ないぞ」

 

麗華は大神一郎とさくらの元に駆け寄り、そう呟いた。

 

「戻って来て早々悪いですけど、それならあなたは出撃しなくて結構です」

 

「?!  さくらさん?」

 

「いくら、麗華さんが強かろうと、和を乱すようでは却って作戦に支障が出て迷惑です。

そもそも、麗華さん以外実戦経験が浅いことくらい、あらかじめ伝えておいた筈ですよ?」

 

「………………。 わ、私は…………。」

 

「それに、優一郎さんに思うところがあるなら、話し合えば良いじゃない。

何故、苛立ちを他人にぶつけようとするの?」

 

「………………チッ。

なら、良いだろう  そのお遊びに来てるような連中を率いてせいぜい足搔くといい。」

 

麗華は去って行った。

 

「麗華はん!」

 

紅蘭はそれを追いかけていく。

 

 

 

 

「優一郎さん、怪我はない?」 

 

優一郎はさくらに起こされた。

 

「は、はい………大丈夫です。

ところで、何故あの子は…………。」

 

「ああ。 彼女は男嫌いですから。

過去のことがあるから、今に始まったことじゃないけど、まさか優一郎さんにまで拒絶反応を示すとは思わなかったわ。」

 

「僕にまでってどう言う意味ですか??」

 

ジト目で見つめる優一郎。

 

「優一郎さんがあたし似ってことです。」

 

「くそっ!  よくも童顔って言ってくれたなっ!」

 

「2人はそんな優一郎さんを気に入ってるみたいですよ。」

 

「な、何言ってるんですか支配人っ!?」

 

「優ちゃん可愛いもんね~。」

 

「う、嬉しくないよ……………。」

 

 

「さて、3人とも。 朝食を摂ったら台本を配るから、よろしく頼む。

時間がないので、舞台の上で早速台詞の読み合わせに入るぞ。」

 

黙って見ていた大神一郎が口を開いた。

 

「「「はーい」」」

 

(って……………台本?!  何故僕にまで?!)

 

「ち、ちょっと待ってくださいっ!

何故僕にまで?!」

 

「あれ、言ってなかったかい?

優一郎にも舞台に出て貰うって」

 

「あれ、黒子に台詞なんてあるんですか?

そもそも、黒子は月組の仕事ですよね」

 

「お前には、女装して舞台に立って貰うぞ。」

 

「?!  き、聞いてないですよっ!

それに、アメリカやフランスならまだしも、日本でそれは通用しませんって!!」

 

「大丈夫ですよ 精一杯女らしく化粧しますし、昨日のアレだって、似合っていたもの。」

 

「あ?  バれるだろ。 んなの!!」

 

「やった~!  演技はあたしたちでフォローするから、よろしく!」

 

「乙女組出身なので、大船に乗った気でいて下さい。」

 

「………………チッ。

仕方ないなっ」

 

 

こうして、優一郎は女装して舞台に立たされることになってしまうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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