IS -インフィニット・ストラトス- if 作:人食いムンゴ
―夕方―放課後――――――――――――――
剣道場
「うぉおおおおおおおお!」
威勢のいい声が道場に響く。ギャラリーは満員で、一夏と箒の稽古の様子を見つめていた。
だが、威勢がいいのは声だけで見事に惨敗の記録を重ねていく。
「織斑くんてさぁ」
「結構弱い?」
「ISほんとに動かせるのかなぁー」
ひそひそと聞こえるギャラリーの落胆した声。
負けを重ねるたびに徐々にギャラリーの数も減っている。それは一夏も感じていた。
だが、気にしてはいない。
ひたすら、目の前の相手に集中して打ち込んだ。
稽古を初めてから1時間半の折り返しで、箒は面具を外す。
それを見て一夏も面具を外す。
「ふぅ──。」
もう、周りを囲んでいたギャラリーはすっかり誰もいなくなり静かな剣道場になっている。
「一夏…少し休憩しよう。」
「ああ、の、喉がカラカラだ。」
道場の端に持たれるように移動し、座り込む一夏
「ほら、スポーツドリンクだ」
箒から渡されたスポーツドリンクを一気に飲み干す。
気がつけばすっかり日は傾きかけており、壁の少し高い位置にある小さい窓から夕日の光が差し込んでいた。
「やっぱ、箒は強いな――。」
「お前が弱くなっただけだ。」
箒は正座をして休息をとっている。
夕日の光が微かに箒を照らしているその姿はすごく絵になる。
何か打ち込む姿は男女問わず格好いいと一夏は思う。
───まだまだ箒には当分勝てないな。
今の俺じゃ誰かを守ることなんて───。
いや、こんなところで────。
「……時間はある。」
「そうだな。よっと」
一夏は立ち上がり、面具を着け準備する。
「さぁ、稽古再開だ。」
竹刀を構える箒。準備は万端だ。
「ああ」
───へこたれるわけにはいかないんだ。
気持ちを高めて稽古を再開させる。
それから、稽古はみっちりと行った。
――夜――1025号室―――――――――――
「今日も疲れたー」
一夏はくたくたで、またベッドに飛び込んでいた。
その子供っぽいところに箒は思わず笑みを浮かべた。
「いい稽古になったな。」
初日ながらも稽古終盤の方では一夏自身も動きが変わってきていた。
これなら、本番までにはましになるかもしれない。
「なぁ箒、ISのこと────。」
ピローン♪
話を遮るように枕元近くに置いてあった一夏のスマホから通知音で新着メッセージを知らせる。
見るとメッセージの未読が100件以上と、とんでもない数のメッセージがきていた。
「げっ……。」
絶句して固まっている状況に箒がどうしたと覗いてきた。
「さすが人気者だな」
わざと嫌味っぽく言っているのだろう。
「くっ、他人事だと思って……。」
元はと言えば箒が───。いや、箒のせいにしてはいけない。男、織斑一夏。ここは頑張ってメッセージを見て返信しなければならない。
これは宿題だ。義務だ。
「頑張れよ一夏。」
そうして、着替えを持って風呂場へと消えていく。
「…………。」
とりあえず、メッセージを見てみる。
ほとんどのメッセージが自己紹介の内容のようだ。
ご丁寧に自分の一番盛れたであろう自撮り写真を、貼ってくれている人もいる。確かに可愛い。
全部、覚えなきゃいけないのか───。
それから一夏が睡眠にありつけたのは夜中の2時頃だったと言う。