IS -インフィニット・ストラトス- if 作:人食いムンゴ
──昼─────────────────
授業が終わり、お昼の時間になった。
「一夏行くぞ!」
なにやら、急いでいる様子の箒。
「へ?」
「えぇーーい。早くしろ!」
呆気に取られ動かない一夏に対し、今度は箒が、一夏の手ではないが腕を引っ張り慌てて教室を出た。
「あーーーずるい!」
「やられた…。」
「追えーーー!」
遅れを取った女子達も慌てて教室を出て、食堂に向かうが食堂には二人の姿はなかった。
「え!?どこ行ったの!?」
「逃げ足が早い…。」
――昼――1025号室―――――――――――
寮の自室に戻った二人。箒は周りに誰もいないか確認して入って来ないように扉に鍵をかける。
(これ以上、邪魔されてたまるか―――。)
今日は連絡先の交換の件で休み時間には一夏の周りに常に人がおり、近づくに近づけない状況が続いていた。
一夏のやつ、女子に囲まれてデレデレして…
またあの腑抜けた表情だ。
思い出すだけで何故か腹が立ってくる。
「はぁ…はぁ…はぁ…。」
教室から寮まで全力で走り一夏は息が上がっていた。
箒は少しも息が乱れていない。
「…………ちょっと走っただけでその様か。体力がなさすぎるぞ。そんな状態では勝てないぞ!」
嫉妬で生まれた苛立ちをぶつける。こうしなければ、自分の気持ちが押さえきれない。
「わ、悪い。」
「……全く」
何故、私がイライラしなければならないのだ。
全部どれも、これも一夏のせいだ。
「…んで、なんで寮に戻って来たんだよ。昼はどうするんだ」
「…あ、あぁそれはだな…。」
いや、と、とりあえず落ち着け、私───。
このために準備したのだ。このままイライラしていたら雰囲気が台無しになる。
箒は慌てながら、風呂敷に包まれた弁当らしきものを出してきた。
「お、箒が作ったのか!」
一夏は箒から受け取り、ハンカチを広げる。
中から出てきたのはおにぎりであった。
「美味そうだ」
「………。」
早速、おにぎりを手に取り頬張る。
箒は緊張した面持ちで一夏の食べる様子を見つめる。
「うん、うまい。」
具はなにも入ってはいないが、絶妙な塩加減で米の美味しさを引き立てる。
箒はほっと安堵のため息を漏らす。
「箒も食べようぜ。」
おにぎりを差し出す。
「ああ、そうだな。一夏、お茶もあるぞ」
「お、サンキュな────にしても、箒から誘うなんてな。昼飯も作ってくれてたし」
もらったお茶を飲みながら、ちょっとからかう。
「な!?きょ、今日はたまたまお昼を多く作り過ぎてしまっただけだ」
分かりやすい態度──箒のそういうところが───。
「そういうことね」
納得した素振りをみせる一夏
いくつもおかしな点はあるが、せっかく箒が好意でお昼を作ってくれた(本人は違うと言っているが)のでこれ以上は詮索しなかった。
しばらくして一夏は箒の多く作り過ぎたおにぎりを完食した。
「はぁー食べた食べた。」
一夏の様子に満足げな表情を浮かべる箒。
「なぁ箒。今度また多く作り過ぎたら言ってくれよ。箒の昼御飯上手かったから」
「!!!」
「どうした?」
「い、いや、なんでもない。そうか、そうか。また食べてくれるのだな。うんうん」
一夏もこう言ってくれたことだ。今日の件に関しては多めにみてやろう───ふふ。