IS -インフィニット・ストラトス- if   作:人食いムンゴ

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4月3日 深夜

─深夜──1025号室─────────────

 

ベッドは奥が箒、手前が一夏という並びになった。

幼なじみとはいえ女子がすぐ隣で寝ている。

 

(落ち着かねぇよ──。)

 

ベッドとベッドの間には間仕切りをして意識しないようにしているはずなのだが、なかなか落ち着かず寝る体制を何度も変えていた。

 

 

「……眠れないのか?」

 

隣から小さい声だが聞こえてきた。

 

 

「あぁ、なんか寝れなくて…。」

 

 

今日の出来事(主に山田先生の胸の件や箒の風呂上り姿の件)があってか、モンモンとしてどうも眠れない。

 

 

 

「実は……私もだ……。」

 

 

 

「箒もか」

 

 

さすがに箒はモンモンとして寝れないわけではないだろう――。

 

 

「……そうだ。」

 

 

 

しばらく沈黙が続く。

 

 

 

「……一夏。今日のイギリス代表候補生のこと覚えているか?」

 

「あぁ。もちろん。あのセシリアってやつだろ。」

 

美人なイギリス人。そして、むかつくやつ。

 

 

「あ…ありがとう。」

 

「なんだよ。急にどうしたお礼なんか。」

 

「れ、礼が言えてなかったからな。」

 

私のために怒ってくれて…とは言えてなかった。恥ずかしくて。

だが、一夏は何か察した。

 

 

 

「気にすんなよ。箒は俺が守るって決めてたしな──。」

 

 

 

箒は俺が守る───。

 

箒はその言葉を思い出す。

 

 

 

それは私が小学校の頃だった。

 

私は当時苛められていた。

 

何故私が苛められなければならない。

 

声には出さなかったが、何度もそう思ったことがある。

 

「おーい、男女~。今日は木刀持ってないのかよ~」

 

「……竹刀だ」

 

「へっへ、お前みたいな男女には武器がお似合いだよな~」

 

「……………」

 

「しゃべり方も変だもんな~」

 

三人の男子が取り囲んで私をからかっていた。

私は無視していたが、そうはいかなかった。

 

「あーこいつ男女のくせに可愛くリボンしてやがんのー。 似合わねー。」

 

私のリボンを見てケタケタと笑う三人に、後ろから握り拳を作り、現れた一夏。

 

その気配に男子三人も気付く。今度は一夏が標的となっていた。

 

「なんだよ織斑。お前こいつの味方かよ」

 

「へっへっ、この男女が好きなのか?」

 

「俺知ってるー。こいつら、夫婦なんだよ。お前ら朝からイチャイチャしてるんだろー。んでんで、織斑がこの男女にリボン着けてあげてるんだろー。」

 

「ほんと、笑っちま――ぶごっ!?」

 

殴られ、よろめく一人の男子。

突然の出来事に驚いていた。

 

「どこがおもしろかったって? あいつがリボンしてるだけでおかしいかよ。すげえ似合ってるだろうが。ああ?なんとか言えよボケナス」

 

一夏は倒れた相手を片腕で立たせ、締め上げていた。

 

「お、お前先に殴ったな!せ、先生にいってやるからな!」

 

「こういうときだけ先生に頼んのかよ。勝手に言いたきゃ言えくそ野郎。」

 

それから一夏は三人相手に大立周りをした。

騒ぎを聞き付けた先生に取り押さえられて、喧嘩は終わった。

 

その後、一夏は先に手を出したことで他の三人よりも酷く先生に怒られていた。

私はその様子を見ていた。

手を出す前に話し合いで解決しなきゃダメだ。とか綺麗事を言っていたのはよく覚えている。

そんなこと言う先生だが、私の苛めのことなど見てみぬフリをしていた。

 

男三人の親は所謂モンスターペアレントで先生達も手に終えないものになっていた。

実際、そのせいで担任の先生は何度か変わっていた。

 

次第に誰も私を守る人がいなくなっていった。

苛めっ子の男子三人に逆らえない同級生達。

モンスターペアレント問題に頭を悩める大人達。

苛めっ子三人と苛められている私に関わればろくなことにならない。と

 

そんな状況を見ていたから一夏は先生に言ったのだと思う。

 

「箒は俺が守るって決めたんです───。」と。

 

 

そこからだった気がした。私が一夏を意識するようになったのは。

私自身も一夏だけに負担を掛けたくないと思い、剣道をさらに打ち込んだ。

一夏と共に切磋琢磨してお互いを高めていたあの時は楽しかった。

そんな日常が続くと思っていた。

 

でも、姉さんが―――。

 

 

「なぁ…箒。」

 

 

自分の回想を一夏が止めた。

 

 

「なんだ?」

 

 

「明日からISのことや稽古よろしく頼むぜ。」

 

 

「わかっている。お前が言うから仕方なく付き合ってあげるんだからな。」

 

 

口では嫌々言っているようだが、内心は一夏と過ごす日常が戻ってくると思うと箒は嬉しかった。

 

 

「…そうだな。感謝してるよ箒。」

 

 

それから箒から返事は帰ってこなかった。一夏自身も少し箒と話して気持ちが落ち着いたのか徐々に眠りへと落ちていった。

 

 

 

 


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