IS -インフィニット・ストラトス- if   作:人食いムンゴ

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4月3日 夜

─夜─放課後────────────────

 

「そろそろ帰るか…」

 

ひとまず練習を終える。

辺りはすっかり真っ暗だった。

 

一夏は学園を出ようとした時、

 

「織斑く~~~~ん」

 

後ろから大声で俺の名前を呼んでいる。

聞き覚えのある声だった。

 

後ろを振り向くと上下に豊満な胸を揺らしながら、こちらに駆け寄ってくる山田先生。

 

 

(これはエロい―――。)

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

やっとこさで一夏の前に辿りつく。

息が上がり、前かがみで両ひざに手をあてて呼吸を整えている。

 

 

(息遣いまでエロい―――。)

 

 

「あ、あの…はぁ…はぁ…。」

顔だけ上げる山田先生、顔を上げたことによって一夏の目に飛び込んでくるのは、山田先生の胸の谷間。

 

 

(こ、これは…ヤバい…。)

 

 

思わず釘付けだ。健全な男子であればこれに反応しないわけがない。

 

 

「あ、あの…はぁ…はぁ…寮の部屋が決まりました。」

 

IS学園は全寮制なのだ。生徒はすべて寮で生活を送ることが義務づけられている。これは将来有望なIS操縦者たちを保護するという目的もあるらしいが、一夏は1週間ほど自宅から通うようにと連絡を受けていた。

 

「事情が事情なので、一時的な処置として部屋割りを無理やり変更したそうです。

1ヶ月もすれば個室を用意出来ますから、しばらくは相部屋で我慢してください。

こちらが鍵と部屋の番号です。無くさないようにしてくださいね。」

 

しかし、通えと言われたため荷物は家にある。

取りに帰るためにも、一度家に帰る必要があった。

 

「あのーなら、荷物を取りに自宅に」

 

「その心配もありません。織斑先生が荷物の手配をしたそうなので」

 

「な、なるほど…」

 

用意周到だ。流石と言うべきか。

 

「それじゃあ、よろしくお願いしますね。」

 

一礼して山田先生は、去っていった。

 

 

(……眼福だったな。)

 

 

─夜─放課後────────────

 

1025号室前

 

(ここだな…)

部屋の番号を確認して、ノックをする。

部屋からの反応はない。

 

(いないのか?)

 

一夏は山田先生からもらった鍵をドアノブにさし、回してみるが鍵はかかっていないようだった。

 

「よし、入るか…」

 

ドアを開けてみると、部屋に入ると目に入ったのは、並んだ大きなベッド。

高級感溢れるベッドはそんじょそこらのホテルより断然よい品質が伺えた。

 

 

早速、一夏はベッドに飛び込む。飛び込みたくなったのだ。

 

(すごい……ベッドに吸い込まれていきそうだ。)

 

そう思っていた矢先に、奥の方から声が聞こえてきた。

 

「誰かいるのか?」

 

聞き覚えのある声がした。今回はすごく、嫌な予感がする。

だが、疲れた身体がベッドから動いてくれない。

ベッドが離してくれないのだ。

 

「同室になったものか。こんな格好ですまない。シャワーを使っていた。

私は篠ノ之──────」

 

「……。」

目の前にはバスタオル一枚のまま、現れた幼なじみ。

お互い、黙ったまま時間が流れていく。

 

そして、幾ばくか時間が流れたとき

 

「み、み、みるな!」

顔を真っ赤にする箒。慌ててシャワー室へと戻っていく。

 

「わ、悪い!」

慌てて顔をそらした。

だが、ちらっと見えたその視界では、箒の谷間と横乳が露になっていた。

一夏の心臓をひときわ強く脈打たせる。

 

(ほ、箒の胸が…)

 

 

「な、な、なぜ、お前が、ここに、いる……?」

 

シャワー室からひどく狼狽した声が聞こえてくる。

 

「あ、いや、俺もこの部屋なんだけど――」

 

 

シャワー室からなにやら、ごそごそと音がしている。

現れた幼なじみは剣胴着の姿をしていた。

濡れたままの髪を手早くまとめ、ポニーテールにまとめあげる。

 

「お、お前が私の同居人だというのか?」

 

「ど、どうやらそうらしい。」

 

風呂上りのためか、箒からシャンプーの香りが漂ってくる。

 

 

(いい…匂いだ―――。)

 

 

「どういうつもりだ」

 

「へ?」

 

「どういうつもりだと聞いているっ! 男女七歳にして同衾せず! 常識だ!」

 

しかし、等の一夏は匂いに夢中で全然話が入ってきていない。

 

「あ、いや…なんて…?」

 

「お、お、お前から希望したのか?私と一緒の部屋にしろと……。」

 

「そうだ。」

 

「なに!?」

慌てて木刀を手に取る箒に、慌てて弁解をする。

 

「わ、悪い!冗談だ!冗談。でも箒が一緒の部屋で助かったよ。」

木刀の剣先が目と鼻の先に来ている。一夏は両手を顔の横に上げて降伏の意を示す。

一瞬で冷や汗が噴き出してくる。

 

「どういう意味だ。」

 

さっきまでの照れた箒はいない。鋭い眼光で俺を見ている。

変なことは言えない。

 

「ほ、ほら、同室が見ず知らずの女子より、一番俺をよく知ってる箒のほうがいいよ。」

 

目の前にあった木刀の先の位置がだんだんと下がっていく。

 

「ふん。そのような冗談を軽々しく言うようになったものだな一夏。

この学園に来て浮わついているのではないか?」

 

怒っているようにも見えるがなんとなーく、嬉しそうにも見える。

 

「よ、よし!ならこの部屋の決まりというか……その、なんだ。暮らす上の線引きを決めるぞ。」

 

なにやら、張り切っている様子。

機嫌を取り戻せたようでなによりだ。

俺も死なずに済んだ。

 

それから、箒と話し合いシャワーの時間やら、これからの1週間のことについて話を行った。

 

「まぁ、だいたいこんなもんか。」

 

「そうだな。」

 

「あ、そういえば」

一夏は何か思い出したかのように話し始め、ポケットからスマートフォンを取り出す。

 

「箒の連絡先教えてくれよ」

 

 

「なっ!?」

 

 

「いや、お互いこれから知ってないと何か連絡取りたいときに不便だろ?」

 

「ま、まぁそうだな。」

 

少しあたふたしながら箒はスマートフォンを取り出し、連絡先を交換した。

 

画面の電話帳に『織斑一夏』と表示される。

 

(……一夏の連絡先だ。)

 

いつかは聞こうと思っていたが、なかなか聞くタイミングと勇気が持てなかった。一夏から言ってきてくれたのは箒にとってラッキーであった。

 

 

 

 


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