IS -インフィニット・ストラトス- if   作:人食いムンゴ

28 / 28
4月17日 夕方

ファミレスを後にして、二人は学園へと戻る。

すっかり日は傾き橙色の日が二人を照らす。

 

「ところで約束覚えてる?」

 

突然、鈴から話しかけられる。

 

「約束?いつのだ?」

 

「ほら、中学のときに別れるの時にした大事なやつ……覚えてるよね?」

 

急に顔を伏せて、ちらちらと上目遣いで俺を見る。心なしか恥ずかしそうにしている。

 

「そ、そんなのあったか…?」

 

「あったわよ!」

 

「いきなり言われてもなー。なんで、今するんだよ」

 

「そ、それは、大事なことだから!ちゃんと覚えてるか確認したいじゃん」

 

「うーん」

 

脳内の記憶を辿る。

大事なこと。大事なこと。大事なこと。

別れ際に…。

はっ!?

 

「ま、まさか!?」

 

その一言で鈴は俺の顔を見て期待の眼差しで見つめてくる。

 

 

 

「毎日アタシの豚になってくれる?だっけ?」

 

 

 

 

「は?」

 

 

 

「いやーあのときは全く意味わからなかったけどまさか鈴にそんな趣味があるとは」

 

そういうセリフはセシリアが似合いそうだが、鈴も気が強い性格なので似合わないことはないだろう。

 

蝶の仮面、ちょっと胸が余り気味なボンテージを着用して手には鞭を持っている。

俺は土下座する形で鈴の前に座り、ヒールで背中をグリグリと踏まれる。

 

痛いと言うと無理やり猿ぐつわを口に押し込まれ何も話せなくなり、鈴には為すがまま。

 

うーん。悪くないシチュエーションだ。

 

世の中は、女尊男卑だしそういったプレイも珍しくはないだろう。

 

うんうん。と自分で納得するように頷いていると、

 

 

パァン!

 

「……へ?」

 

いきなり頬をひっぱたかれ、妄想から現実に引き戻されるが、いきなりのことで何が何だかよくわからない。

 

「…………。」

 

 

肩を小刻みに震わせ、期待の眼差しから敵意を向けるような怒りに充ち満ちた眼差しで俺を睨んでいる。しかも、その瞳にはうっすらと涙が浮かんでいて、唇はそれがこぼれないようにきゅっと結ばれていた。

 

「あ、あの鈴。人にはいろんな趣味嗜好があるから俺は悪くないと思うぞ。俺も人生経験で一度は───」

 

その姿を見てすかさず、フォローしたつもりが、

 

「最っっっ低! 女の子との約束をちゃんと覚えてないなんて!」

 

そこから鈴の行動は素早かった。

一夏から逃げるように目の前から消えていった。

 

 

 

「お、おい!鈴!────行っちまったか…。」

 

 

───泣いてた……よなあ。あれ、絶対。

 

 

「……約束。違ったんだろうな…」

 

俺的には一ミリもふざけてないつもりだし、大真面目に答えたつもりだったが、結果的に女の子を怒らせ、泣かせる結果になってしまった。

 

 

突然、一人になったことで孤独感にさいなまれる。

 

 

 

遠くではカラスのカァカァという声が聞こえて、余計に虚しさが増す一方。

 

 

「……帰るか…。」

こうして重い足取りのまま寮へと戻っていった。

 

もちろんこの後、箒とセシリアの二人からこっぴどく叱られ叩かれ、ある意味妄想のお仕置きが現実となるのだった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。