IS -インフィニット・ストラトス- if 作:人食いムンゴ
一夏と鈴は学園を出て、やってきたのは駅前のファミレス。
よく弾と鈴で集まり目的もなく、このファミレスで喋ってばっかいたときのことを思い出す。
もちろん、セシリアと箒のことも気になるが、もうここまで来てしまったのだ。怒られるのは、覚悟の上だ。
「ご、ご注文を伺います。」
この店員さんもいつもの人だ。いつも緊張した感じでなんかこっちも緊張してくる。
なんというかほっとけない感じ。それに可愛いし。
「あ、このシャキシャキサラダ一つください。ドレッシングはなしでお願いします。あとドリンクバー────」
「────以上ですね。か、かしこまりました。」
お決まりのメニューを店員に伝え、注文を終えると一目散に俺達の前から去っていった。
俺はドリンクバーに飲み物を取りに行くため立ち上がる。
「鈴はメロンソーダでよかったよな?」
「え、あ、うん」
「なら、持って来るから待ってろよ」
ドリンクバーで飲み物を注いで席に戻る。
「ほいよ」
「ありがと」
鈴は言っていた通りにメロンソーダ。俺は緑茶だ。
普段からドリンクバーだからと言ってジュースを飲むことが少ない。
「一夏。アンタ、女の子が前にいるのにあの店員さん見て鼻の下伸びてたでしょ?」
「い、いやそんなことないぞ!」
「どーだか」
凄い観察力だ。冷や汗が出て来る。
「でも、変わってないね、一夏。若いくせに体のことばっかり気にしてるとこ。頼むメニューも一緒だし。」
「あのなあ、若いうちから不摂生してたらいかんのだぞ。クセになるからな。」
「ジジくさいよ」
「う、うっせーな……」
テーブルに頬杖をついてなんだかにやにやとしている鈴は見透かすような目で俺を見てくる。
その視線がなんだか落ち着かなかった。俺のことをわかってるような眼差しは、妙に落ち着かない。
(こんなに可愛かったっけ……?)
最後に見たのが中二の冬。それから一年ちょっとしか経っていないのに、なんだかやかましいだけの印象だったが、今は『女の子らしさ』がそれとなく態度から感じられる。
女友達としてしか認識している部分が大きかったため、この変化は俺の心の男部分を揺さぶった。
「一夏さぁ、やっぱアタシがいないと寂しかった?」
唐突にメロンソーダに刺さっているストローをくるくるとかき混ぜながら上目遣いで俺を見つめる。
「そ、そうだな。やっぱ、久しぶりに会えたから一年ちょっとだったけど懐かしいよ」
見つめられる恥ずかしさから気を紛らわすため、飲みかけのお茶のグラスを飲んで鈴を視界から消す。
「懐かしいとか言っちゃう時点でジジくさい」
「お前なぁ…」
にやにやと笑みを浮かべて一夏をからかう鈴は、いつになく上機嫌で話を続ける。
「……ほらもっとないの?久しぶりに会った幼なじみなんだから、色々と言うことがあるでしょうが」
「急にそんなこと言われてもな。」
ムチャぶりにも程がある。
「例えばさぁ。中国代表候補生とか鈴、すごいな!とか。もっと言ってくれてもいいんじゃない?」
確かに言われてみればそうだ。いままで普通に幼なじみがいきなり、代表候補生として帰ってきたのだ。
久しぶりにあった友達がオリンピックの選手になっていたくらいすごい印象はあってもおかしくない。いや、それ以上かもしれない。
ISは今尚注目されているし、そして国の代表の一人として選ばれている時点でその実力はお墨付きと言っても過言ではないわけだし、並大抵ならぬ努力を重ねてきたに違いない。
「そうだなー。確かにすごいと思うわ」
「なによ。その取って付けたような言い方」
「いやいや、ほんとだって」
「ふん――ならパフェ奢ってくれるならその態度水に流す」
「ったく」
少々渋々気味ながらも指定されたパフェを注文する。
それから話した他愛もない会話。
なんだかあの頃の日常が戻ってきた気がした。