IS -インフィニット・ストラトス- if   作:人食いムンゴ

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4月17日 朝 その2

「久しぶりだな!鈴!」

 

「久しぶりね。一夏。」

 

鈴はふっと小さく笑みを漏らすと、トレードマークのツインテールが軽く左右に揺れた。

 

感動の再開!というわけにもいかず、鈴の背後から近づく大きな影。

一夏は姿を見て鈴の方へ向かうのをやめた。

 

「おい」

 

「なによ!?」

 

バシンッ!

 

聞き返した鈴に痛烈な出席簿アタックが入った。

察しの通り鬼教官登場である。

 

「もうSHRの時間だ。教室に戻れ」

 

「ち、千冬さん……」

 

「織斑先生と呼べ馬鹿物。さっさと戻れ、そして入り口を塞ぐな。邪魔だ」

 

「す、すみません……」

 

ドアから離れ、千冬姉とは距離を取る。

完全にビビってるな。あれ。

 

「またあとで来るからね! 逃げないでよ、一夏!」

 

なんで俺が逃げるんだよ。

 

「さっさと戻れ」

 

「は、はいっ!」

 

2組へ向かって猛ダッシュ。なんか悪役がやられたときの『覚えてろよー!』みたいな感じだな。

しかし、鈴は変わらなかった。

それがなんか安心した気持ちになった。

 

「っていうか鈴、IS操縦者だったのか…。」

 

ここ一年全くといっていいほど連絡がなかったので、鈴の状況がわからなかった。

 

初めて知ったわ。こっちに来るなら連絡くらい来れればよかったのに。……サプライズのつもりか?

 

「……一夏、今のは誰だ? 知り合いか? えらく親しそうだったな?」

 

「い、一夏さん!? あの子とはどういう関係で――」

 

「席に着け、馬鹿ども」

 

千冬姉の出席簿が火を噴いた。次々と繰り出される出席簿アタックの乱舞。見事の早業で千冬姉が馬鹿と言った人物を全員沈める。

 

お見事。

 

しかしなんでまたこう知り合いとばっかり再会するんだろうな。しかも今度は鈴。

これでファースト、セカンドの幼なじみが揃った。サードはいないけど。

 

これは賑やかさが増しそうだな。

いい意味でも悪い意味でも。

 

そんな風に一夏は思いながら、今日も1日ISの授業と訓練が始まるのだった。

 

───授業中────────────

 

 

(さっきの女子は何なのだ……一夏とずいぶん親しそうに見えたが……)

 

朝の一件が気になって、箒はなかなか授業に集中できないでいた。

 

(それに、一夏はまるで――)

 

まるで、幼なじみと再会したかのような反応だった。

――ムカッ。

 

(幼なじみは私だろう……!)

 

こみ上げてくる怒りをどうにか抑えている。

 

(しかし、まあ、冷静に考えてみればたいしたことではない。 何せ、自分は一夏と同じ部屋。一昨日の夜もそうだったように、ふたりきりの時間はいつでも作れるのだから。)

 

そう思うと次第に落ち着きを取り戻してきた。

 

(しょうがないやつだ。またISのことを教えてやるか)

 

ふふんと上機嫌で腕を組む。自分に自信がすっかりなくなっていたが一夏が下着を取っていたことやらなんやらで、自分に対して興味があるということがわかったことや、一昨日一緒に出掛けたことで自分に自信を取り戻していた。

 

(今日の放課後はまた特訓だな)

 

うんうんとひとり頷く箒。その表情はどこか楽しげでさえあった。

 

そんな浮かれた箒をよそに黒いオーラを放っている人物が一人。

このとき箒はその存在に気づいていなかったのだった。

そして、もう一人も同じく…。

 

──同時刻──────────────

 

(なんなんですの、さっきの方は!)

 

いやに一夏と親しげな様子だった女子にセシリアは気になって気になってしょうがなかった。ただでさえ、現時点で箒という最大のライバルがいるのに、これ以上競争相手が増えたら気が気ではない。

 

しかも、人間関係――一夏との距離においてはさっきの女子の方がリードしている。

 

(それはズルですわ! 正々堂々と勝負なさい!)

 

普段なら何ごとに負けない自信はあるのだが、なにせ男子を取り合いするなど初めてのことで、思うように状況が進まない。その事実にセシリアがじれているのだった。

 

(それにしても、あの方も代表候補生――)

 

確かに、ここIS学園には代表候補生が20数名在籍している。

けれど、一年では4人しかいなかったはずだった。しかも、専用機持ちは一夏を抜かせば2人。かなり大きなリードポイントのはずだった。セシリアのアドバンテージでもあったはずなのに……

 

(しかも専用機持ちって言っていましたわね……)

 

最悪である。そのアドバンテージもなくなってしまった。

 

(い、インチキですわ!)

 

しかし、今更そんなことを言ってもしょうがない。

 

(なんとかイニシアチブを取らなくては───)

 

しかも箒や鈴を大きく突き放すほどのものがないと意味がない。

 

(ISの模擬戦だけでは足りませんわ。もっとなにか、こう決定打になるような――)

 

 

そんな頭がお留守になっている二人に鬼教官が声をかける。

 

「篠ノ之、オルコット。そんなに私の授業が退屈か?」

 

 

ビクッ!

 

ガクガク…。

 

バシーン!

 

またも繰り出される出席簿アタック。何度繰り出されても頑丈で痛むことはなさそうだ。

 

(一夏!お前のせいだぞ)

 

(一夏さんも一夏さんですわ!人の気持ちを弄んで)

 

二人とも叩かれた頭を抑えながら一夏を睨みつける。

 

((この女たらし!))

 

 

(うぅー。な、なんだ今のは…)

一瞬、寒気が全身を覆う一夏だった。

 

 

 

 


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