IS -インフィニット・ストラトス- if 作:人食いムンゴ
──フラワーパーク──────
入場してから目に入ったのは視界全体に広がるチューリップ畑、赤、白、黄色、ピンクの色彩鮮やかな色を咲かせて俺達を迎えてくれた。
「キレイだな。」
立ち止まってその光景をゆっくり楽しむ。周りにいる人達もこのチューリップ畑を写真を撮って楽しんでいる様子だった。
「ああ、そうだな」
「えぇ、お屋敷にいたころに咲いていたチューリップのことを思い出しますわ」
「なんか規模が凄そうだな」
「そうでもありませんわ。ここの半分くらいの敷地でチューリップは庭で咲いていたくらいですから。
他にもいろいろな花も咲かせていましてよ」
お、おぉ、半分でも十分だと思うが…。やっぱり、専用の庭師とかいるんだろう。でないとそれだけ大きい規模を手入れ出きるわけがない。
セシリアのお嬢様っぷりにはいつも驚くばかりだ。
「す、すごいな」
「私のところも盆栽くらいはあるぞ」
盆栽を悪く言うつもりはないが、セシリアのインパクトのある話を聞いた後だと、どうしてもこじんまりとした話に聞こえてしまう。
「ぼ、盆栽もいいよな…ははは」
思わず愛想笑いで返すことしか出来なかった。
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お昼時、一夏達はシートを広げて満開の桜の木の下で昼食の準備をしていた。
ちょうど桜の木が満開という時期もあってか、あちこちでシートを広げ花見を楽しんでいる客も大勢いる。
さて、全員にコップに飲み物をついだところで、俺が乾杯の音頭を取る。
まぁ言い出しっぺなのは俺だからな。
「え〜、本日はお日柄も良く、お集まりいただきありがとうございます。ここで、乾杯の音頭を……」
「あ〜もう!一夏!なんだか堅苦しいぞ」
俺の挨拶が堅すぎるとさっそく箒からツッコミが入る。
堅苦しいってお前が言うのか…。
「ビシッと決まるようなセリフをお願い致しますわ」
セシリアからも注文が。
そう言われてもな。俺だってこういうのは慣れてない。
そんなとき、黛さんに言われたときのことを思い出す。
『俺に触るとヤケドするぜ。』みたいなキザなセリフを言えってことなのか? なら。
「オホン」
咳払いして、気持ちと喉を整える。そして、
「この美しい桜と君の瞳に乾杯……」
「!!」
「はぅ!」
乾杯?といったものの誰も飲み物を飲もうとはしない。
「………。」
(少し格好つけて言ってみたが、正直言った後から恥ずかしくなってきた。)
と一夏は赤面して黙り混み。
「………。」
(な、なんだ今のは…。まるで心臓に矢が突き刺さったかのような感覚だったぞ)
と箒も赤面して黙り混み。
「………。」
(このセシリア・オルコット。胸の高ぶりとドキドキが止まりませんわ)
とセシリアも赤面して黙り混んで、異様な雰囲気の中、花見が始まるのだった。
「ほ、ほら飯食べようぜ!なっ!」
「そ、そうだな」
「そ、そうですわね。」
そしてセシリアと箒は俺が用意した弁当をさっそく開ける。セシリアに関しては何やら驚いてる様子だ。
「これは一夏さんが作ったのですか?」
「ああ、そうだ」
「素晴らしいですわ」
目が輝いている。人ってこんなに目が輝やくもんなんだな。
これくらいの料理ならほとんど毎日作っていたようなもんだから造作もなかった。
箸を手に取り口に頬張る。
うん。我ながら美味いと思う。
それから、ちょっとした桜に纏わる過去について一夏が話していく。
「桜っていうと道場の近くにあった桜の木も思い出すよな」
「あぁあそこの桜の木も綺麗だったな」
「んで、俺が桜の木に登ってたりしてたら毛虫にやられて全身が酷いことに」
「あれほど私はやめておけと言ったのに、お前は勝手に登っていったんだろ」
「桜の花を渡しかったんだよ──箒も渡したとき喜んでたじゃん」
そう、箒にいつもリボンだから俺がたまには違うの付けてみようぜとか言って取った桜の花を髪に刺した記憶がある。
「ふん。そんな昔のこと覚えていないな」
しらばっくれる箒。どうみてもその顔は覚えているけど恥ずかしいから知らないふりをしておこうという感じ。
「それになんか箒って桜のイメージするし」
「ど、どういう意味だ。」
「い、いやなんというかこう艶やかな美しさ、清楚な雰囲気という感じ。」
「そ、そうか。一夏は私をそういう風にみているのだな」
上機嫌で何度も頷いている。よほど嬉しかったようだ。
「わ、わたくしはどういったイメージですか?」
セシリアも聞いてくる。
「そうだなー。セシリアは菫だな。特に紫の菫」
「す、菫ですか。」
「そうだなー。こう、可憐で華やかさがある感じかなー」
「もう、一夏さんったら冗談が上手いんですから」
こちらも上機嫌の様子。
(でも、今のイメージって完全に某シミュレーションゲームに出てくる二人のイメージなんだよなー。)
何かとぶつかり合う二人でも、なんだかんだ信頼関係が構築してるような気がする。
喧嘩するほど仲がいいとも言うしな。
そんな風に思っているとヒラヒラと落ちてきた桜の花びら。思わず上を見上げる俺。
満開の桜がそこにある。
何かと忙しく毎日を過ごしている俺達。
でも、桜の季節だけは、誰もが足を止めて、今この瞬間しか味わえない花の美しさを心に焼きつける。
桜は一瞬しか咲かない。
儚いからこそ美しい、一瞬で消えてしまうからこそ、人は「今この瞬間の美しさ」を心に深く刻みたいと思うのかもしれない。
「なにをぼーっとしている」
「そうですわ。一夏さん」
「悪い悪い」
それから三人は、ジュースを飲みながら話を進め親睦を深めていった。
そこには、普段のしがらみを忘れた三人の姿があった。
◼️ifルートが解放されました。
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