IS -インフィニット・ストラトス- if   作:人食いムンゴ

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4月14日 放課後

――食堂―――――――――

 

「というわけでっ! 織斑くんクラス代表決定おめでとう!」

 

「おめでと~!」

 

ぱん、ぱんぱーん。

 

次々とクラッカーが乱射される。

飛び交う紙テープ、というより何発か俺に向かって発射されているので、目の前が紙テープのカーテンで覆われ視界が遮られる。

 

(み、見えねぇ。)

 

場所は寮の食堂、一組のメンバーは全員揃っていた。

各自飲み物を手にワイワイと盛り上がっている。

 

ちらりと壁を見ると、そこにはデカデカと『織斑一夏クラス代表就任パーティー』と書いた紙がかけてある。

いろいろとデコレーションも施してあり華やかだ。女子高生らしい。

 

しかし、すごい人数だ。

ゆうにクラスメイトの人数は明らかに超えている。

 

「いやー、これでクラス対抗戦も盛り上がるねえ」

 

「ほんとほんと」

 

「ラッキーだったよねー。同じクラスになれて」

 

「ほんとほんと」

 

この『ほんとほんと』と言って相槌を打っている女子生徒は二組の生徒だ。

そんな感じで、1組以外のクラスメイトもこのパーティに参加している。

 

(あれだけ、広い食堂もこれだけの人数がいると狭く感じるな…。)

 

「織斑くーん楽しんでる?」

 

クラスの女子から声をかけられる。

 

「流石にまだ始まったばっかりだから何とも言えないけど、楽しむ気ではいるよ」

 

「そうそう。主賓が盛り上がってくれないとねー

いろいろ催しもあるから楽しんでー♪」

 

「あぁありがとう」

 

そう主賓は俺だ。俺が楽しまなくては、せっかく開いてくれた主催者のメンバーに申し訳ない。

 

「人気者だな、一夏」

 

「そんな不機嫌な顔すんなって」

 

「ふん」

箒は鼻を鳴らしてお茶を飲む。

 

「はいはーい、新聞部でーす。話題の新入生、織斑一夏君に特別インタビューをしに来ました~!」

 

オーと一同盛り上がる。

 

「あ、私は二年の黛薫子。よろしくね。新聞部副部長やってまーす。はいこれ名刺」

 

美しい黒髪ロングにぱっちりとした大きな黒目の持ち主で眼鏡と声が特徴的。

渡された名刺を見ると、どうやら二年生で整備科に所属しているようだ。

 

「ではではずばり織斑君!クラス代表になった感想を、どうぞ!」

 

ボイスレコーダーをずずいっと俺に向け、無邪気な子供のように瞳を輝かせている。

 

「えーと……」

 

いきなり言われてもなぁ。うーん。

 

「まあ、なんというか、がんばります」

 

「えー。もっといいコメントちょうだいよ~。俺に触るとヤケドするぜ、とか。」

 

「そんな恥ずかしいコメント言えませんよ」

 

「そう?───たまに大胆なことしてるじゃん。ならまあ、適当にねつ造しておくからいいとして」

 

おそらく、セシリアに抱きついた件であろう。それに関しては否定は出来ない。でも、仮にもメディアを扱ってる人間なんだから嘘はダメだろ…。

 

「ああ、セシリアちゃんもコメントちょうだい」

 

「わたくし、こういったコメントはあまり好きではありませんが、仕方ないですわね」

 

とか言いながら満更でもないご様子。

心なしかいつもより髪のセットに気合いが入っているよつな気もするし、セシリアから漂ってくる香りもいつもと違う。

 

「コホン。ではまず、どうしてわたくしがクラス代表を辞退したかというと、それはつまり――」

 

「ああ、長そうだからいいや。写真だけちょうだい」

 

「さ、最後まで聞きなさい!」

 

コントみたいだな。

そのやり取りに思わず口元を緩める。

 

「いいよ、適当にねつ造しておくから。よし、織斑君に惚れたからってことにしよう」

 

「なっ、な、ななっ……!?」

 

ボッと赤くなるセシリア。

激しく動揺している。

 

可愛い。

 

「おや、そのご様子だと」

 

ニヤっとした表情を浮かべながら、セシリアとの距離を近づけた。

 

「そ、それは…。」

ちょっと困った様子のセシリアを助太刀するつもりで、黛さんに話を進めるように促す。

 

「ま、まぁまぁ黛さん。それより写真撮るんじゃないんですか?」

 

「あ、そうね。はいはい、とりあえずふたり並んでね。写真撮るから」

 

「「えっ?」」

 

ハモる俺の声とセシリアの声。

俺はてっきりセシリアだけ撮るのかと思って驚いたが、セシリアの方は喜色を露にした表情をしていた。

 

「注目の専用機持ちだからねー。並んでツーショットもらうよー。」

 

モジモジとし始めたセシリアは、ちらちらと俺を見てくる。

 

「あの、撮った写真は当然いただけますわよね?」

 

「そりゃもちろん」

 

「でしたら今すぐ着替えて――」

 

「時間かかるからダメ。はい、さっさと並ぶ」

 

戻ろうとするセシリアを強引に連れ戻して、俺と肩を並べる。俺の目から見てセシリアは左の位置にいる。

その距離は身体1つ分もない距離。距離の近さからかセシリアの方から上品な香りが漂ってくる。

ちょっと軽く鼻で深呼吸をして、香りを楽しむ。

 

(……いい匂い。)

 

すると突然、セシリアが俺の左腕に腕を絡めてきた 。

セシリア自身が俺に寄りかかってきたため、より密着度合いが増す。

その密着に伴って布越しから伝わってくる柔らかい感触。

 

(む、胸…)

 

突然のことで少し戸惑ったが、このまま流れに身を任せて俺はこの感触に浸ろう。

しかし、そんな俺達の様子を見て周りがざわつき始めた。

 

「な、なにをしている!」

 

(怒るな。箒。この時間を楽しませてくれ…。)

 

「おお!いい感じに決まってるから撮るよー。35×51÷24は~?」

 

「え? えっと……2?」

 

「ぶー、74・375でしたー」

(なんじゃそりゃ…)

 

パシャッとカメラのシャッターが切られる瞬間に、一組の全メンバーが撮影の瞬間に俺とセシリアの周りに集結していた。あ、ちゃっかり箒もいる。

 

「あ、あなたたちねえっ!」

 

二人きりの感じが邪魔されて怒ってるんだろうな。

 

「まーまーまー」

 

「セシリアだけ抜け駆けはないでしょー」

 

「クラスの思い出になっていいじゃん」

 

「ねー」

 

「十分いい思いしてるじゃーん」

 

口々にセシリアを丸め込むようなことを言っている。

 

「う、ぐ……」

 

苦虫をかみつぶしたような顔をしているセシリアを、クラスメイトはにやにやとした顔で眺めていた。

 

ははは…。

 

ともあれ、この『織斑一夏クラス代表就任パーティー』は10時過ぎまで続いた。


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