IS -インフィニット・ストラトス- if 作:人食いムンゴ
翌日、寝不足のまま迎える朝のSHR。
あり得ないことが起きていた。
寝不足で幻覚が見えているのか。
そう思ったが、このクラスの盛り上がりは違うと気付かせてくれる。
「では、一年一組代表は織斑一夏くんに決定です。あ、一繋がりでいい感じですね!」
山田先生は嬉々として喋っている。
そしてクラスの女子も大いに盛り上がっている。
一方で暗い顔をしている一夏。寝不足も、あってか余計に暗く見える。
「先生、質問です」
「はい、織斑くん」
相変わらず爆乳な山田先生。
その胸のカップは───じゃなくて
「…俺は昨日の試合に負けたんですが、なんでクラス代表になってるんでしょうか?」
「それは――」
「それはわたくしが辞退したからですわ!」
山田先生が言う前に、がたんと立ち上がり、早速腰に手を当てるポーズを見せるセシリア。
え、 なんで…?
なんで辞退してんだ?
しかも、なんか妙にテンション高いというか明らかに態度が違う。
なんだこの違和感は…。
「まあ、勝負はあなたの負けでしたが、しかしそれは考えてみれば当然のこと。なにせわたくしセシリア・オルコットが相手だったのですから。それは仕方のないことですわ」
あのとき斬ればよかったか…?
「それで、まあ、わたくしも大人げなく怒ったことを反省と怪我をさせたことにお詫びにと思い」
めっちゃありがた迷惑すぎる…。
出来ればそのお詫びは別の形でして欲しかった。
「“一夏さん”にクラス代表を譲ることにしましたわ。やはりIS操縦には実戦が何よりの糧。クラス代表ともなれば戦いには事欠きませんもの」
ん? んんん!? 今俺のこと名前で呼んだ?
「いやあ、セシリアわかってるね!」
「そうだよねー。せっかく世界で唯一の男子がいるんだから、同じクラスになった以上持ち上げないとねー」
次々とセシリアの心変わりに賛同するクラスメイト
「私たちは貴重な経験を積める。他のクラスの子に情報が売れる。写真も売れる。
一粒で三度おいしいね、織斑くんは」
おい。もしや昨日の原因は…。
「そ、それでですわね」
コホンと咳払いをして、あごに手を当てるセシリア。
「わたくしのように優秀かつエレガント、華麗にしてパーフェクトな人間がIS操縦を教えて差し上げれば、それはもうみるみるうちに成長を遂げ――」
バン! 机を叩く音が響く。
勢いよく立ち上がったのは箒だった。
お、胸が揺れた。
「あいにくだが、一夏の教官は足りている。私が、直接頼まれたからな」
『私が』を特別強調した箒は、異様に殺気立っている瞳でセシリアを睨んだ。
けれどセシリアは正面から受け止めて、視線を返している。それどころかちょっと誇らしげに。
「あら、あなたはISランクCの篠ノ之さん。Aのわたくしに何かご用かしら?」
「ら、ランクは関係ない! 頼まれたのは私だ。い、一夏がどうしてもと懇願するからだ」
いや、懇願してお願いしたけど…。それは昨日までの話のつもりやったんやけど
とも言えるような雰囲気でもなく、なにやら、張り合っている。これが、女同士の戦いというやつか…。
違和感を一番感じるのはセシリアの雰囲気。
この前とは違い、敵意を見せている感じではない。(箒以外)
「座れ、馬鹿ども」
すたすたと歩いていってセシリア、箒の頭をばしんと叩いた千冬姉が低い声で告げる。
「お前たちのランクなどゴミだ。私からしたらどれも平等にひよっこだ。まだ殻も破れていない段階で優劣を付けようとするな」
流石、モンド・グロッソ覇者の発言と言える。
さすがのセシリアも千冬姉に言われては反論の余地がないらしい。何か言いたそうな顔をしていたが、結局言葉を飲み込んだ。
「代表候補生でも一から勉強してもらうと前に言っただろう。くだらん揉め事は十代の特権だが、あいにく今は私の管轄時間だ。自重しろ」
いやはや、こちらも相変わらずな感じで…。家の様子からじゃ考えられ────。
「織斑、今、余計なことを考えなかったか?」
「いえ!」
「ならいい───クラス代表は織斑一夏。異存はないな」
はーいとクラス女子全員が返事をした。
まいったなー。結局、強制なんだな。
ガクッと肩を落として頭をポリポリとかいていた。