IS -インフィニット・ストラトス- if   作:人食いムンゴ

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クラスメイトは全員女
4月3日 朝


──朝──IS学園前───

 

桜が咲きほこるこの出会いと別れの季節にとある学園の前で佇む一人の青年。

 

「ここか───。」

 

織斑一夏、15歳。今年からIS学園に入学することになった高校一年生。

彼は訳あってISと呼ばれる女性しか動かせない代物を起動させたことにより、唯一の男子としてこの学園に通うことになったのだった。

 

(女子校の中に男子が一人だけとかハーレム過ぎる───。

あんなことやーこんなこともームフ、ムフフフフフ…)

 

どんな妄想しているかは割愛。

 

胸を踊らせながら学園に足を踏み入れ、自分がこれから通うことになる教室 1-1に向かう

 

教室に向かう道中、学園唯一の男子とあってか好奇な目で見られている。

また、教室について周りを見ても女子、女子、女子。

 

(予想以上にすごい光景だ…。)

 

席につき、ふとの外の方を見ると、身覚えのある幼なじみがそこにいた。

 

「箒!」

長い黒髪でポニーテールをしている彼女は篠ノ之箒。

久々に再開した彼女に思わず、名前を口に出してしまう一夏。

 

その声と言葉に反応し、彼女は一夏の方に目を向ける。

 

「……。」

 

黙って彼を見た直後に、すぐに彼女は目をそらした。

 

篠ノ之箒───昔一夏が通っていた剣術道場の子。髪型は今も昔も変わらずポニーテール。肩下まである黒い髪を結ったリボンが緑色をしており、大和撫子といった雰囲気を漂わせる。

 

思わず、立ち上がり箒の前に行く。

 

「久しぶりだな箒ー。元気だったか?」

 

「……。」

 

黙ったままで目も合わせてくれず、教室では一夏のことでざわついている。

 

「……あのー」

 

「……。」

 

「……もしかして、俺が誰か忘れた?」

 

「そんなこと!……ナイ」

バン!っと勢いよく立ち上がる箒。最後の語尾の方はゴニョゴニョとしてはっきりとは聞こえなかったが、おそらく自分のことは覚えてくれているようだった。

 

「よかった。やっと話してくれた。一瞬心配したぜ。」

 

「あ、いや……。」

ばつが悪そうにして黙りこんでしまう箒。

 

「箒と合うのは何年ぶりだ。9歳のときに転校したから…えぇーと」

 

「……クネン」

 

「?」

 

「六年ぶりだ!」

 

「そうだったな。しかし、六年ぶりか早いもんだよなぁー。」

 

一夏は思わず成長した幼なじみの体を眺めた。

身長は平均的な女子のそれだが、長年剣道で培った体はどこか長身を思わせる。

そして、胸がデカイ。

よくそこまで育ったものだと感心できる。

 

「───どこを見ている。」

生まれつきの不機嫌そうに見える目がより一層、鋭さを増して一夏を睨みつける。

 

「あ、いや、これは───。」

胸を見ていたなんて、言えるわけがない。

 

────と、突然。

スパァン!と後ろから勢いよく、頭をはたかれる。

 

「いつまで話している馬鹿者。今はSHRの時間だ。早く座らんか。」

 

はたかれた後ろを見ると狼を思わさせる目付きでこちらを見る一人の女性がいた。

黒のスーツにタイトスカート、すらりとした長身、よく鍛えられているがけして過肉厚ではないボディライン。

一夏がよく知っている人物だ。

 

「ち、千冬姉!」

 

スパァン!とまた勢いよく、頭をはたかれる。

 

「学園では織斑先生と呼べ。」

 

「……はい、織斑先生」

 

――と、このやりとりで姉弟なのが教室中にバレたため、クラスの騒がしさが増す。

 

「え……? 織斑くんって、あの千冬様の弟……?」

 

「それじゃあ、世界で唯一男で『IS』を使えるっていうのも、それが関係して……」

 

「ああっ、いいなぁっ。代わってほしいなぁっ」

 

騒がしくなった教室に千冬は渇を入れる。

 

「静かにしろ!」

その一声で静まりかえる教室。凄まじい覇気が目に見えて伝わってくる。

 

「また、後でな箒。」

小さい声で声をかけて、自分の席についた。

 

 

「諸君、私が担任の織斑千冬だ。

君たち新人を1年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。

出来ない者には出来るまで指導してやる。

私の仕事は弱冠15歳を16歳までに鍛え抜くことだ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」

 

千冬の自己紹介が終わったその直後黄色声援がまた、クラスに飛び交う。

 

千冬は呆れる形で、キャッキャッ騒ぐ女子達を見ていた。

 

(やっぱ…すごい人気だな…。)

 

そんな熱気に包まれた教室の雰囲気に圧倒されていると、教室の端で待機していた先生らしき人がうろたえながら自己紹介を始める。

 

「あ、あのーはじめまして皆さん副担任の山田真耶です。よろしくお願いいたします。」

 

身長はやや低めで、生徒のそれとほとんど変わらない。

かけている黒縁眼鏡もやや大きめなのか、若干ずれている。

しかも服はサイズが合っていないのか全体的にだぼっとしていて、ますます本人が小さくみえる。

そのわりに、胸部の主張だけが凄まじい。もはや、圧巻というべきか。

 

(これが……ロリ巨乳……ゴクリ)

 

思わず山田先生のスタイル(主に胸)に鼻の下が伸びていると全身で悪寒を感じた。

殺気を感じる左を恐る恐る顔を向けて見ると、どす黒いオーラを纏いこちらを睨み付ける幼なじみがいた。

 

 

(ま、まずい……。)

 

 

 

────────────────────

 

(終わった──────。)

一限目の授業が終了した。

全く授業がわからないまま、進んでおり頭はパンク寸前だった。

 

(全然わからん……。)

一夏自身はそう頭は悪くない、よく言えば平均的だがなんせ超エリートな学校でISに関しての専門用語も一限目の授業からバンバン出てくる。

周りはスラスラとノートに書き留めていた。明らかに初っぱなから遅れを感じる。

 

(大丈夫なのか……。俺)

思わずぐったりして机に突っ伏していると目の前に感じる人の気配。

 

「あ…。」

顔を上げるとそこにいるのは仁王立ちした幼なじみ。

 

「こ、これはどうも…。」

今度は一夏がバツが悪そうに黙りこんでしまう。

 

「なんだ、あのSHR時の腑抜けた顔は!」

バン!と怒気が混じりながら一夏の机を叩く箒。

あまりの勢いで叩いているため、机が壊れてしまいそうだ。

 

「いや、まぁ、その」

山田先生を見ていたときのことを言っているのであろう。しょーがない男なんだから、気になるものは気になる。

 

「なんだ!?はっきり言え」

 

「いや、はっきり言ったら箒、怒るだろ」

 

もう、既に怒っているが…。あえて言わないでおく。

 

「ふん。」

 

すっかり機嫌を損ねてしまった箒。こうなってはなかなか機嫌を取り戻すのは難しい。

なので、一夏は別の話題をふってみる。

 

「そう言えば、箒。剣道全国大会優勝したんだっけ。すごいよな。」

 

「な、なぜそれを知っている。どこで見た!」

 

「新聞で見たんだよ。」

 

「なんで、新聞なんか見るんだ!」

 

いや、それはむちゃくちゃだろ──。と心の中で突っ込む。たまに箒はこういうところがあるから面白いと思う。

 

「それにあの頃と髪型が一緒なんだな。リボンも緑で一緒だ。懐かしいなぁ───。」

 

そう言ってちょんちょんと一夏は自分の頭を指さすと、そっぽを向いていながらも箒は急に長いポニーテールを弄りだした。

 

「よ、よく覚えているものだな……」

 

「まぁな。伊達に幼なじみ長くやってないぜ。」

 

「…………」

 

そう言った瞬間、妙に顔が赤くなる。

なんだか照れているのが、伺えた。

 

するとクラスメイトの一人がそんな二人の関係が気になったのか、思わず声をかける。

 

「あのー織斑君と篠ノ之さんってもしかして付き合ってるの?」

 

 

「「へっ!?」」

思わず素っ頓狂な声を出す箒と一夏

 

「こいつとつ、つ、つ、付き合ってなどいない!た、ただの幼なじみだ!」

 

顔を赤くして慌てる箒。

その様子は否定していても、端から見れば嘘のようにしか見えない。

 

「って言ってるけど、そうなの織斑君?」

 

 

「箒の言うとおりだぜ。」

一夏が否定することで周りも納得し、安心するが、箒のその慌てっぷりで誰もが箒が一夏のことをどう思っているかすぐに察した。

 

 

「よかったー。てっきり出来てるのかと思った。」

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

チャイムが鳴り、慌ただしかった休憩時間も終わる。

そして、箒は逃げるように自分の席へと戻っていったのであった。

 

───────────────────

 

 

時間が少し経って三限目の授業中に思い出したかのように千冬が言う。

 

「ああ、そうだ。授業中すまない。今度行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」

 

クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席などと千冬が説明を行っていく。

 

「まあ、クラス長だな。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点でたいした差はないが、競争は向上心を生む。一度決まると一年間変更はないからそのつもりで」

 

ざわざわと教室が色めき立つ。自分は面倒なことはごめんなので、頬杖をつき決まるのを待つためボーッとしていた。

 

「はいっ。織斑くんを推薦します!」

 

「私もそれが良いと思いますー」

 

「お、俺!?」

ついびっくりした顔で立ち上がる一夏

 

「では候補者は織斑一夏……他にはいないか?自薦他薦は問わないぞ」

 

普通、入ってきたばかりの経験浅い男子に押し付けるような仕事じゃないと思うんだけど?

しかも、初日からアホ丸だして到底、クラス代表なんて勤まるわけがない。

現に二時間目の授業も全くわからず、山田先生に全部わかりませんと発言して大恥をかいた。

 

「ちょっと、待った俺は…」

 

振り向くと『彼ならきっとなんとかしてくれる』という無責任かつ勝手な期待を込めた眼差しが一斉射撃している。

 

うわぁ……最悪じゃん。

 

「織斑。席に着け、邪魔だ。さて、他にはいないのか?いないならこいつで決まりだぞ」

 

自分の意思はいったいどこへやら…

 

「だから、ちょっ、ちょっと待った!俺はそんなのやらな──────」

 

「自薦他薦は問わないと言った。他薦されたものに拒否権などない。選ばれた以上は覚悟をしろ」

 

「い、いやでも──」

 

すると、とある人物が怒りを露にする。

 

「待ってください!納得がいきませんわ!」

 

バンっと机を叩いて立ち上がったのは、地毛の金髪が鮮やかな女子だった。白人特有の透き通ったブルーの瞳が、ややつり上がった状態で俺を見ている。 わずかにロールがかった髪はいかにも高貴なオーラを出していた。

 

 

(うわー。すっげぇ美人。)

 

 

「そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!イギリス代表候補生ともあろうこのわたくし、セシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

そして、矛先は一夏へと変わる。

 

「大体、あなた。ISについて何も知らないくせに、よくノコノコとこの学園に入れましたわね。唯一男でISを操縦できると聞いていましたから、少しくらい知的さを感じさせるかと思っていましたけど、とんだ期待はずれですわね」

 

実際、入試のテストも形式的に受けたが成績的には言うまでもなくぶっちぎりの最下位。点数にすると0点。ISの勉強をしてこなかったため当然といえば当然の結果なのだが…。

 

 

「俺に何か期待されても困るんだが……。」

 

 

「そのような方にクラス代表を勤めさせるなど言語道断ですわ。実力、そして、入試首席の優秀さから行けばこのわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります!わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」

 

 

ワーワーと興奮冷めやらぬ─────というか、ますますエンジンが暖まってきたセシリアは怒涛の剣幕で言葉を荒げる。

 

「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で──

 

セシリアは止まらない。止まらなかった。止まる気配すら感じられなかった。

最終的にはもはや愚痴のようにしか聞こえない。

 

こいつを誰か止めてやってくれ───。

 

クラスメイトの大半がそう思っている中で一夏が動き出した。

 

「おい!いい加減しろよ!聞いてりゃ散々好き勝手言いやがって──。代表だが、なんだが知らないけど、それがそんなにもえらいのかよ。」

 

「おい、一夏やめておけ」

荒げる一夏を止めようとする箒。だが、一夏の怒りは収まることがなかった。

 

「箒。俺だけならまだしも箒や他の関係ないやつのことまでバカにしてるんだぜ。もう、黙ってられるかよ。」

 

そう、一夏はそういうやつだ。バカっぽいところもあるがこういうところは男っぽいというか正義感のある熱い人間。

箒自身も自分が男女などと言われ男子に集団でからかわれていたときに一夏が助けてくれたことを思い出した。

 

 

「このわたくしに刃向かうというのですね。いいでしょう。なら、わたくしはあなたに決闘を申し込みます。」

 

 

「おう。いいぜ。四の五の言うよりわかりやすい」

 

「言っておきますけど、わざと負けたりしたらわたくしの小間使い──いえ、奴隷にしますわよ」

 

「侮るなよ。真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいない」

 

「そう?何にせよちょうどいいですわ。イギリス代表候補生のこのわたくし、セシリア・オルコットの実力を示すまたとない機会ですわね!」

 

イギリス代表候補生の部分を強く主調し、一夏を指差すセシリア。

 

「さて、話はまとまったな。それでは勝負は一週間後の月曜日。放課後、第三アリーナで行う。織斑とオルコットはそれぞれ用意をしておくように。それでは授業を始める」

 

ぱんっと手を打って千冬が話を締める。

 

(もう、ここまで言ったからにはさすがに引けない。)

 

やるからには全力でやると心に決める一夏。

最も、この決闘はクラス代表を決めると戦いなのだが、そのことに関してはすっかり忘れている様子であった。

 

 


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