そして紫さんの言葉通り、人を喰らう為に深淵の宵闇は姿を現す。
逃がしはしない、必ずここで倒さないと……!
大妖怪。
妖怪という存在の中で、特に秀でた力を持つ存在を、畏怖を込めてそう呼ばれる。
メジャーなものでは鬼や天狗なども、大妖怪と呼ばれる存在だ。
ただでさえ人間と妖怪の間には、埋められない地力がある。
それが大妖怪ともなれば、圧倒的なまでの戦力差というものが生まれるだろう。
――けれど、目の前の光景はその概念を真っ向から否定するものだった。
「チィ……!」
舌打ちをしつつ、後退していくルカ。
それを自然な動きで、左右に散りながら追いかける霊夢と魔理沙。
当然その間にも絶え間なく追撃を手は緩めず、魔理沙が放つ星型の魔力弾と霊夢の札や封魔針がルカを襲う。
鋭く、それでいて正確で、しかもその攻撃は
彼女達が問題を解決する際に用いるスペルカードルールが原因なのか、確実に相手を追い詰め命を奪おうとする攻撃が……美しいと思えたのだ。
様々な光を放つ星々の魔法と、赤い軌道を発しながら縦横無尽に飛び交う霊札。
人間と妖怪などという概念など真っ向から吹き飛ばし、互角以上の戦いを見せる2人に、僕は何もできずただ魅了された。
……思い上がりも甚だしい、僕など最初から必要なかったのだ。
霊夢と魔理沙、この2人の前ではどんな妖怪もおいそれとは敵わない。
「ちょっと魔理沙、あんまり周囲に被害を出さないでよ!!」
「わかってるっての、お前だってあちこちに針が刺さりまくってるじゃないか!!」
言い争いをしながらも、2人の意識はルカだけに向けられている。
数多の戦いを駆け抜けてきた歴戦の戦士、見た目はまだ幼さすら残す少女達でも、その力は少女のそれではない。
「な、なんだよ君達……随分と大人気ないじゃないか!!」
「妖怪に掛ける情なんてあると思ってるの?」
「右に同じだ。特にお前みたいな悪党は、許すわけにはいかないさ!!」
終わりは近い、このままの状態が続けばルカの敗北は免れないだろう。
あまりにも呆気ない、けれどあの2人だからこそこのような状況になったのだ。
「封魔陣!!」
「うぉ……っ!?」
霊夢が展開した蒼い輝きを見せる結界の中に、ルカは完全に閉じ込められた。
更に魔理沙が放った束縛魔法により、全身を雁字搦めにされる。
「はい、おしまい」
「ふぅ……結構手ごわかったなコイツ、でもちょっと物足りないかも」
「馬鹿言ってんじゃないわよ、今のコイツは紫達に力の殆どを奪われた状態なのよ? 寧ろその状態でここまで抵抗される方が驚きよ」
言いながら霊夢は、ルカを閉じ込めた結界に更なる霊力を込めていく。
このまま消滅させるつもりだ、また封印では今回のような危険性がある以上、妥当な考えである。
「……いや、参ったね。まさか君達のような子供……それも女なんかにここまで追い詰められるとは思わなかったよ」
「おい、女“なんか”っていうのはどういう意味だ?」
「そのままの意味だよ、小娘」
「お前、自分の立場がわかってるのか?」
暴言に浴びせられ、表情を険しくさせながらルカに迫る魔理沙。
そんな彼女を腕で制しながら、霊夢は結界に霊力を込め続ける。
「おい霊夢、そこまでしなくても大丈夫だろ?」
確かに魔理沙の言う通り、少々過剰とも言える霊夢の行動には違和感を覚えた。
2人の前では防戦一方だったルカの状態は、お世辞にも万全とはいえず呆気なく拘束された。
霊夢の結界の中に閉じ込められ、更に魔理沙の拘束魔法で動きすら封じられているのだ。
それなのに彼女は結界の頑強さを増させる為に霊力を注いでいる、てっきり消滅させる為に霊力を送っていたと思ったのだが……。
「そっちの変な巫女服の子は判ってるみたいだよ、ボクという存在の大きさをね」
「……お前、よくもまあそんな情けない恰好で余裕見せられるよな」
「それは当然だよ、だって慌てる必要なんかないんだから。
最初はそっちの思わぬ連携と力に驚いたし追い詰められたのも確かだ、けど」
それでも、ボクには勝てないさ。
追い詰められている、今にも消滅させられそうとなっているというのに。
ルカは口元に歪んだ笑みを浮かべ、上記の言葉を口にする。
……何か、変だ。
確証はないけれど、このままここに居てはいけないと直感した。
一刻も早くルカを退治する事よりも、形振り構わず逃げた方がいいと己が訴えている。
「……魔理沙、ナナシをお願い」
「は?」
「何かあったら、ソイツを守ってあげて」
視線をルカに向けたままそう告げる霊夢の頬に、冷や汗が伝う。
彼女も、何かを感じ取ったのかもしれない。
もはや一刻の猶予もないと、彼女は懐から札を取り出しルカを消滅させようとして。
「――遊びは終わりだ、小娘共」
世界が、闇に包まれた。
■
「――始まったようね」
里の遙か上空から中を見下ろしていた紫は、ぽつりと呟きを零した。
彼女の視線の先には、少しずつ広がっていく底なし沼のような闇が、映っている。
やがてそれは里の全てを呑み込むだろう、そしてそれに呑まれた者がどんな末路を辿るかなど、紫には判りきった事だった。
「まさか……だが、ルカの力は殆ど失われている筈じゃなかったのか!?」
「どうやら想定外の事態が発生したみたいね、誰の助けを貰ったのか知らないけど……全盛期に近い力を既に取り戻している」
どうやら、霊夢達はルカを本気にさせてしまったようだ。
やはりまだまだ未熟だ、追い詰めたと誤解して相手に猶予を与えるなど二流だというのに。
(まだまだ、霊夢も甘い)
そう思いつつ、紫は里全てを包み込むような結界を展開させた。
「おい紫、何をしているんだ!?」
「何って……ルカの闇が外に漏れないように、閉じ込めただけよ」
「なっ、お前……正気か!? 中に居るナナシ達はどうなる!?」
紫が放った結界から出るには、無理矢理破壊するか彼女に頼んで入口を作る以外の方法はない。
だが当然3人にそんな余裕などないし、何よりも……彼女の結界のせいで、外から助けに行く事もできなくなってしまった。
「妖怪退治は博麗の巫女の務め、これで命を落とすのならそれまでだし、おまけの2人はでしゃばった結果でしかないでしょ?」
「っ、ふざけるなよ紫!!」
見捨てるような発言を聞き、ルーミアは紫に飛び掛かろうとして……後退した。
スキマの中から現れた彼女の式、
「ありがとう、藍」
「いえ、ですが紫様……あのまま放っておけば、里の人間達は」
「そうねえ……このままじゃ全員死んじゃうわねえ」
「紫!!」
何なのだ、彼女のこの態度は。
間違いなく幻想郷の危機だというのに、この賢者はまるで他人事のように傍観するだけ。
そればかりか、まるでルカの助けをするようなこの行動には、ルーミアはもちろん彼女の式である九尾も眉を潜める。
「紫様、霊夢達を助けないのですか?」
「んー……とりあえず、もう少し見てましょうよ」
「いい加減にしろ紫、ルカの力が戻っているのならナナシ達だけじゃ……」
「いいから見ていなさいルーミア、藍も」
ぴしゃりとルーミアの言葉を遮ってから、紫はこれ以上話す事はないと口を閉ざす。
そんな彼女に当然ながら怒りを覚えるルーミアであったが、彼女の結界が展開されてしまった以上、此方からできる事は無事を祈る事だけだった。
(さあナナシ、見せてみなさい。貴方の幻想郷を守りたいという想いが本物なのかどうかを。そして……貴方が本当に“贄”となってくれるのか、私に見せて頂戴)
■
それは、まさしく一瞬の出来事だった。
霊夢がルカに攻撃を仕掛けようとした瞬間、ヤツの身体から霧のように闇が広がったのだ。
いや、あれはもう霧というよりも火山の噴火に近い。
「霊夢、魔理沙!!」
闇の中で2人の名を呼ぶ。
自分の姿すら見えない中で、とにかく安否を確認したくて呼び続けた。
「……くそっ!!」
だが応答はなく、悪い予感ばかりが頭を過ぎる。
もしかしたら、もう2人はルカに襲われて……。
「っ」
馬鹿な考えを一瞬で消し去りながら、右手に光を集めていく。
とにかくまずは視界の確保が最優先だ、とはいえこの闇は普通の暗闇とは違う。
光すらも呑み込むの闇を払うには、太陽の光を持つ八咫烏の力が必要だ。
「消えろっ!!」
右手を大振りに振るい、放たれた光が闇を消し去っていく。
広がり続けていた闇はすぐに消え去り、人里の風景とその場から動いていなかった霊夢と魔理沙の姿が見え。
それと同時に。
無防備になっている霊夢の背後から。
ルカが、自らの闇で作り上げた槍で、彼女を貫こうとしている光景、が。
「れ――――」
半ば無意識のまま、地を蹴った。
……このままでは殺されると、思考が理解するよりも早く身体が動いた。
「え――?」
霊夢がこちらに気づく、背後のルカの存在には気づいていないようだ。
彼女の背中にヤツの槍が迫る、秒を待たずにそれは彼女の華奢な身体など容易に貫き、命を奪う。
――間に合わない。
魔理沙がルカに気づく。
だが遅い、追撃なんてする余裕などなかった。
――止められないと、殺される。
でもそれは無理だ、咄嗟に身体が動いたけど力を出すにはどうしても一呼吸は掛かる。
それでは間に合わない、かといってあれを防ぐ手立ても見つからない。
――いや、それは違う。
彼女を助ける方法はある、単純な話だ。
ルカに攻撃して動きを止める事も、防御する事もできないのなら。
この身を、盾にすればいいだけなのだから。
「あ、ぐぅぅ……っ!!」
「えっ……ちょっと、なんで!?」
すぐ後ろから、驚愕に満ちた霊夢の声が聞こえた。
あまりの衝撃に、受けた腹部がごっそり吹き飛んでしまったように思えた。
……吐血する、まるでポンプのようにせり上がってくる血液を地面に吐き出した。
足はガクガクと震え、今にも崩れて倒れそうになる。
けれどヤツの槍が腹部に刺さっている為に、倒れる事は叶わない。
「あ……」
意識が、薄れていく。
瞼が重い、このまま閉じてしまったらもう二度と目覚められないと判っているのに、どんなに力を入れても少しずつ閉じていこうとする。
「……お前は最後に苦しめて殺そうと思ったのに、馬鹿な奴だよ」
「っ、ぎっ!?」
槍が身体が強引に抜き取られた。
一緒に生きる為に必要なモノも抜かれたのか、身体が前のめりに倒れ、動かせなくなる。
明確な死、何度か体験したからか、それがすぐそこまで迫っていると否が応でも理解する。
「ナナシ!!」
「お前……!」
怒りに任せ、魔理沙がルカに向かって魔力弾を放つ。
その数は三十を越え、逃げ場など与えないかのように広範囲に展開されたが。
「はっ」
ヤツは薄く笑い、その全てを一瞬で消し飛ばした。
「なっ!?」
「これだから人間は単純だ。とはいえ、溜め込んでいた力を出させたのはたいしたもんだよ」
「こいつ……」
変わっていた。
姿形は変わらずとも、確かにルカは今までとはまるで別人のように変貌していた。
溢れ出る妖力の大きさは、僕が感じたどんな妖怪よりも深く、恐ろしい。
痛みで断裂していた思考が鮮明になる程に、今のルカから放たれる力は絶大だった。
「だがここまでだ。人間風情がこのボクに勝てると本気で思っているのか?」
「くっ……」
じりじりと、少しずつ後退していく魔理沙。
彼女は僕なんかより場数を踏んでいる、だからこそわかるのだ。
目の前の存在には、打開策など浮かぶ筈がないと。
「ああ……腹が減った」
ヤツの赤い瞳が、霊夢と魔理沙を見据える。
その奥から見えるのは“捕喰”の色、ヤツは2人を完全に餌として認識していた。
「ぐ、うぅぅ……!」
立ち上がろうと全身に力を込めようとするが、出てくるのは情けない唸り声だけ。
「馬鹿!! 動こうとしないの!!」
「そういう、わけには……いかない」
僕を抱き起こしている霊夢の怒鳴り声を無視しながら、尚も立ち上がろうとする。
だってそうしなければみんな殺される、罪もない里の犠牲者と同じように、ヤツに食われてしまう。
そんな事は認めない、認められるはずがない。
「あ、ぐ、く……」
「だから動かないで!! アンタ、血が沢山……!」
それがなんだ。
血なんて後で八意先生に輸血してもらえばいい、今はそんな事を考える必要なんかない筈だ。
僕がここに来たのは、これ以上の犠牲者を出さない為。
だったら、今みたいに無様に転がっている事なんて許されない。
「何できない、まま、じゃ……」
「……ナナシ」
「ぐ、あ……」
立ち上がれ、立ち上がるんだ!!
立って、アイツを倒す。
借り物の力だけど、唯一僕がヤツに対抗できる八咫烏の力を使って、絶対にヤツを……!
「……なんで、そこまで」
「霊夢……?」
何故だろうか、彼女は僕に得体の知れないものを見るような目を向けている。
すぐそこまでルカが迫っているというのに、霊夢はただ茫然と僕を見つめていた。
「アンタ、このままじゃ死ぬのよ? お腹に穴が開いて血だってたくさん出てるのに、どうしてそこまでして戦おうとするの!?」
「…………ああ」
成る程、確かに彼女の疑問はもっともだ。
身体は死に体、不用意に動けばそれだけ早く死に至る状態だというのに、立ち上がろうとするなんて異常でしかない。
「……戦うと、アイツを倒すと、誓ったから」
「だから、なんで自分を蔑ろにしてまで他人を守ろうとするのよ!? そんなの……ただの偽善じゃない!!」
霊夢の言葉は、罵倒に近かった。
アンタのやっている事は愚かだと、彼女らしい真っ直ぐな言葉。
わかっている、わかってはいるけれど……自分自身が、それを曲げたくないと思っている。
「里のみんなは何も悪くないのに奪われたんだ。大切な人が、家族が、友人が、あんな人の命をなんとも思わないようなヤツに」
「…………」
「僕は、それが許せない。そして今、アイツは霊夢を殺そうとした」
友達を、自分の目の前で殺そうとした。
それでもう、本当に我慢がならなくなったんだと思う。
自分の命とか、全身に走る激痛とか、死ぬかもしれない恐怖とか、そんなものなど微塵も考えなくなるくらいに。
「霊夢も魔理沙も、僕にとって大切な友達の1人だから、だから……守りたいと、思ったから……」
僕が戦う理由など、それだけで充分だ。
戦いたいわけじゃない、戦闘狂じゃあるまいし、平和でつつましい生活が一番だと考えている。
それでも戦おうと思ったのは、守りたい友達や助けたい里の人達が居るから。
「それだけの理由で、アンタは」
「はは……自分でもおかしいって思っているけど、それでも」
そう願ったのなら、貫き通したいと思ったのだ。
記憶を失い、名前を失い、何もわからぬまま幻想郷という世界で生きる事になって。
何もなかったからこそ、自分で決めた事を貫こうと決意した。
「…………そう、アンタってそういう人間なのね」
「えっ、霊夢……?」
何を思ったのか、霊夢は突然驚くぐらい優しい微笑みを向けながら、僕の頭を撫で始めた。
まるで子供を褒めるように、慈しむように、その手は優しく暖かった。
それから彼女は僕の頭から手を離し、立ち上がりながらゆっくりとルカに向かって歩みを進めていく。
「魔理沙、ナナシをお願い」
「お、おう……」
彼女から放たれる気迫に圧倒されたのか、魔理沙は呆気なく道を譲り後退する。
「……アンタの思いは、私が代わりに果たしてあげるわ。だから今は休んで、お願いだから」
「霊夢……」
「アンタの考え方は、馬鹿だと思うわ。でも……同時に尊いと思う」
だから、アンタの決意は絶対に無駄になんかしない。
そう言って、霊夢は真っ向からルカと対峙する。
「なんだ、一斉にかかってこないの?」
「…………」
「それにしても随分と巫女の質も下がったもんだ、そんな屑に守られないといけないとはね」
「…………」
「ぬるま湯に浸かっている分際で、思い上がっているからこうなるんだ。上には上がいるって事を理解できたかい?」
「…………」
嘲笑うルカに対しても、霊夢は無言を貫く。
ただ黙って相手を見つめるその後ろ姿は、小柄な少女のものとは思えない程に大きく、そして恐ろしいと感じた。
味方である彼女から発せられるものは、どこまでも深く冷たい殺意と……怒り、だろうか?
それに気づかないのか、ルカは尚もべらべらと喋り続ける。
そして、いい加減霊夢からの反応がない事につまらなく感じたのか、ルカが口を閉じた瞬間。
「――もう、終わりでいいの?」
静かに、地の底から響き渡るような低い声で、霊夢はそう言った。
「…………」
その姿に、ルカも漸く気がついたのかもしれない。
今の霊夢は、先程までとはまるで違っていた。
雰囲気は勿論、身に纏う力も何もかもが違っておりそして。
「じゃあ――――殺すわ」
風が吹き、霊夢の姿が視界から消えたと思った時には。
「ギッ、ガッ!?」
鈍い打撃音と共に、ルカの口から醜悪な叫び声が放たれた。
……何が起きたのか、一目見ただけでは理解に及ばない。
ただ霊夢がルカと接触するほどに近い距離まで移動しており、対するルカは……顔をまるで鈍器で殴られたかのようにひしゃげさせている。
「コイ――ギィッ!?」
搾り出すようなルカの悲鳴。
とんでもなく鋭い肘鉄が、ヤツの顔面にめり込んだ。
ミシミシという骨が軋む音がここまで響き、しかし霊夢の攻撃は終わらない。
「ふっ――!!」
「ごっ、が、あぁぁっ!?」
掌底、蹴り上げ、踵落とし。
たった一息で三撃、そのどれもが必殺の一撃だと理解できる破壊力の攻撃が、ルカの身体を釣瓶打つ。
あまりにも速く、僕も魔理沙も彼女の動きを目で追う事ができなかった。
「ご、いづううぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
「…………」
ルカの身体から闇が放出され、さすがに危険だと判断したのか霊夢は一度後ろに跳躍して距離をとった。
対するルカの表情は憤怒に溢れ、しかし顔の至る所からは血がとめどなく流れ続けている。
端整だった顔立ちは醜く歪み、おもわず同情してしまう程に凄まじい形相となっていた。
「男前になったじゃない」
「ふざけるなあっ!! お前、自分が何をしたのか」
「それはこっちの台詞よ、覚悟は……できてるんでしょうね?」
ぞわりと、全身が震えた。
それほどまでに今の霊夢の声は恐ろしく、背筋が凍りつく程に冷たかった。
「――さあ、妖怪退治よ。自分のしてきた事を反省する間もなく消滅させてやるわ!!」