・各シリーズの圧倒的なネタバレ注意。最低でも5のネタバレを把握していないと意味不明になる。次鋒で2罪罰と初代。
・ペルソナオールスターズ。メインは5、設定上の贔屓は初代&2罪罰、書き手の好みはP3P。年代考察はふわっふわのざっくばらん。
・ざっくばらんなダイジェスト形式。
・歴代キャラクターの救済および魔改造あり。
・一部のキャラクターの扱いが可哀想なことになっている。特に、『普遍的無意識の権化』一同や『悪神』の扱いがどん底なので注意されたし。
・アンチやヘイトの趣旨はないものの、人によってはそれを彷彿とさせる表現になる可能性あり。他にも、胸糞悪い表現があるので注意してほしい。
・ハーメルンに掲載している『運命を切り開くだけの簡単なお仕事』および『ペルソナ3異聞録-.future-』、Pixivの『2周目明智吾郎の災難』および『【一発ネタ】有栖川黎の幼馴染』の設定を下地にし、別方向へ発展させた作品である。
・ジョーカーのみ先天性TS。
ジョーカー(TS):
・他版権ネタやオリジナル要素が大量に含まれているので注意してほしい。
・本編読破後推奨。
・本編読破後推奨。
・本編読後の余韻がぶち壊しになりかねないので注意してほしい(重要)
・本編読後の余韻がぶち壊しになりかねないので注意してほしい(重要)
・本編読後の余韻がぶち壊しになりかねないので注意してほしい(重要)
・メタい。
・不謹慎系のギャグ(重要)
・不謹慎系のギャグ(重要)
・不謹慎系のギャグ(重要)
・R-15(重要)
・R-15(重要)
・R-15(重要)
「【ジョーカー】から聞いた話を纏めたら、双葉がこんなゲーム作ってくれたよ」
黎はそう言って、PCゲーム用のディスクを差し出した。パッケージには――いつの間に隠し撮りしていたんだろうか――俺の写真が使われている。
ゲームのタイトルは『成仏タワーバトル』。手書きで雑に記されていた。精魂尽き果てた筆跡だった。
「タイトルからしてクッソ適当なゲームだな」
「『またガメオペラ』との二択でこっちにしたって言ってた」
手短な雑談を済ませた後、黎はPCにディスクをセットした。程なくしてゲームは起動し、軽快な音楽と共にタイトル画面が表示される。
「私や【ジョーカー】個人としてはR-18でも良かったんだけど、私の書いたテキストを読んだ双葉がコーヒー吐き続けたから全編R-15にせざるを得なくなっちゃった」
「今、俺の隣にいた【クロウ】が顔を真っ赤にして【ジョーカー】に突っかかってったよ」
【クロウ】は年甲斐もなく喚き散らしている。彼の生前が童貞だったのか、すべてを極め尽くした童帝だったのか、本命に対してのみ童貞だったのかは分からない。だが、顔を真っ赤にしてド派手に狼狽する姿は、どの道“童貞”以外の何物でもなかった。
黎に勧められた俺は、早速テキストを読み進めてみた。黎/【ジョーカー】をモデルにした主人公が、獅童をモデルにしたハゲに冤罪を着せられたことから物語が始まるようだ。俺も【クロウ】も、その経緯はきちんと熟知している。
「主人公の選択肢によっては、冤罪の黒幕に“ピー(どぎつい年齢指定系単語が乱舞しているため中略)”される描写もあるよ」
「手首切ってくる」
「まあ待て」
―― 穢い血筋は絶やさないとな ――
―― 落ち着け ――
カミソリ片手に飛び出そうとした俺/銃をこめかみに当てた【クロウ】は、黎/【ジョーカー】によって拘束された。俺たちはそのままPC画面の前へと連行される。
初っ端から“冤罪の黒幕に純潔を踏み躙られる”ルートがあるということは、どこかの【ジョーカー】が“それ”を経験したことを意味しているのだろう。この時点で、俺のメンタルは既に崩壊待ったなしである。『今すぐ獅童と一緒に無理心中しなくては』という脅迫概念に駆られるのは当然であった。
なんとなく、俺は【クロウ】に視線を向けた。【クロウ】の目は死んでいた。口には出していないが、物理的な意味で死にたいという気配が漂っている。モデルになった人物との関係上、この事実を掴んでしまった攻略対象がどのような行動に出るのか――俺には……否、
「こんなのってないよ。あんまりだよ……」
「因みに、選択肢次第では攻略対象から“ピー(どぎつい年齢指定系単語が乱舞しているため中略)”されるルートもあるよ」
「こんなのってないよ! あんまりだよ!!」
どの道、“後から真実を知った攻略対象が、冤罪事件の黒幕と無理心中を図りに行く”END一択である。俺は頭を抱えて泣いた。
丁度そのタイミングで、テロップが挿入される。『このゲームは、攻略対象を絶望と破滅の運命から救い出すのが目的です』と出てきた。
冒頭のルートや黎の発言からして、ものすごく嫌な予感しかしない。もしかしなくとも――俺がそう思ったのと、攻略対象が登場したのはほぼ同時だった。
「攻略対象、俺じゃん……」
写真をそのまま使ったんじゃないかと言いたくなるくらい、攻略対象の顔立ちや髪型は俺と一致していた。黎は「ああそうそう」と――夕食のメニューを話すような――、なんとでもないような口調で言葉を続ける。
「先に言っておくと、このゲーム、死に覚えと周回コンプ前提だから」
「
「主人公の死亡率の方が若干上かな。むしろ、
「最早苦行なんですけど……」
ハッピーエンド以外の字面が、たいへんヤベェことになっている。すべてにおいて嫌な予感しかしない。俺は【クロウ】に視線を向けた。【奴】は身に覚えがあるようで、顔を真っ青にしてブツブツと呟いている。
試しに、俺は攻略対象に対して素っ気ない選択肢を選んでみた。一瞬で場面が飛び、主人公は攻略対象に撃ち殺されてDEADENDになった。急展開過ぎて置いてけぼりである。開始数分でゲームオーバーとかヤバくないだろうか。
何度かやってみたが、開始数分でゲームオーバーになるのはキツい。それを初っ端から2桁台繰り返すのは辛い。
ED後にフローチャートを辿って場面と選択肢に戻る機能が無ければ、多分俺は発狂してPCを投げ捨てていたことだろう。
主人公が死ぬか、攻略対象が死ぬかの2者択一。現時点で多いのは、主人公が攻略対象によって殺されるEDだ。
「黎はこのゲームクリアしたの?」
「勿論。全ED回収したし、周回要素も全部埋めた。冤罪を着せた黒幕に“ピー(どぎつい年齢指定系単語が乱舞しているため中略)”された上でのトゥルーハッピーエンドは圧巻の感動だったなぁ」
「こんなにクソゲーなのに!? 俺この時点で投げ出しそうなんだけど!?」
主人公銃殺EDを60回近く見せられて疲れてきた俺に、黎はなんてことないようにさらっと告げる。
彼女がそう言いきれてしまえたのは、彼女の心の側面として顕現した【ジョーカー】の経験があったからかもしれない。【ジョーカー】たちはずっと、“明智吾郎が生き残る未来”を求めて蝶を飛ばし続けていたのだから。俺は【ジョーカー】たちの一途さに感嘆しながら選択肢を選んだ。
結果、今度は“ヤンデレと化した主人公が攻略対象を拉致監禁し、冤罪の黒幕(=攻略対象の実父)を攻略対象の目の前で殺害する”EDになってた。俺は思わず画面とテキストを3回読み返して頭を抱えた。【クロウ】は死んだ魚みたいな目をして天を仰いでいた。
「主人公がやべー奴になるなんて聞いてないし!」
「攻略対象がやべー奴化したEDの方が多いから、全然大したことないよ。主人公だって、攻略対象のことが大好きなだけだ」
―― お前にだけは、こんな風になってほしくなかった……! ――
―― 【クロウ】は我儘だなあ。監禁EDの数、主人公側より攻略対象側の方が圧倒的に多いのに ――
次は“主人公が仲間を捨て、攻略対象と共に認知世界の暗殺者となり、汚い大人たちへ鉄槌を降す”EDになった。俺たちは泣いた。
誰からも必要とされ、自分がいなくとも生きていけるはずの主人公が自分を選んでくれたのは確かに嬉しい。けれど、でも、やっぱり違う。
そんなことを考えていたら、後日談らしきテキストが表示された。“ある日、主人公が家に帰ると、攻略対象が殺害されていた”という。
直後、黒服たちが家へ押し込んできて、主人公も殺害された。死の間際、主人公は“自分たちを恐れた裏社会の人間たちから邪魔者と判断された”ことを悟る。
伸ばした手は攻略対象に届くことなく、冷たいフローリングに落ちた。そこで暗転し、件の世界線は終わりを告げる。
「裏社会とずぶずぶに関係を持っていたことと、暗殺者として積極的に動き過ぎた弊害だろうね。そういうのと手を切れないとこのEDになる」
「妙にリアルなんだけど……」
「攻略対象側の視点で、死ぬ順番を入れ替えたEDもあるよ。後日談パートの最初の選択肢で3番目を選んでごらん」
黎に言われたとおりにしてみた。後日談の視点が攻略対象の物に変わる。
愛する人が自分と同じところへ墜ちてきたことへの薄暗い歓喜と、憧れの権化だった正義の味方に人殺しをさせている罪悪感を抱えながら、攻略対象は幸福を享受していた。同時に、ずっと恐れていた。愛する人にそこまでさせたことに報いるための対価を、自分はきちんと支払えているのかと。
それ故に、攻略対象は、主人公が無残に殺された姿を目の当たりにして愕然とする。まだ何もできていないと叫びながら、これから手渡したかった対価の数や未来のことを夢想しながら、彼は主人公へ手を伸ばす。死ぬ間際、彼は自分の傲慢さに自嘲しながら、死体になった主人公に謝罪した。“あのとき、自分が諦めていればよかった”と。
「これで隠し要素の1つを回収できた」
「恩恵とかあるの?」
「ゲーム全体の難易度が上昇する」
「クソ要素じゃねーか!!」
「クソじゃない。トゥルーED解禁の条件が1つ達成されるよ」
「2時間ぶっ続けでプレイしてこの成果かよ……」
完全クリアの道は遠かった。遠すぎた。そもそもクリアできるのか、させる気があるのかと怒りたくなる。
そこまで考えた
“どんな形でもいいから、【クロウ】が生きる未来を手に入れたい”と、【ジョーカー】たちが必死になって足掻いた結果なのだ。
「……【ジョーカー】たちは凄いな」
「吾郎?」
「禄でもない目に合っても、【クロウ】のことを諦めないんだから。……俺、この時点でもう、投げ出してしまいそうなのに」
「それ程、【クロウ】のことが大切だったんだよ」
黎も【ジョーカー】も、当たり前みたいに言いきった。諦めて崩れ落ちてしまってもおかしくないし、誰もそれを責めやしない。俺たちだって、俺たちを諦めた【ジョーカー】を責めるつもりはない。むしろ、ここまでされると、「諦めていい」と言いたくなる程の痛々しさがあった。
彼女たちが諦めなかったから、俺も【クロウ】も、当たり前のように幸福を享受できている。正義の義賊・怪盗団の仲間として徹頭徹尾駆け抜けることができたし、愛する人と生きる未来を勝ち取ることができた。紡いできた出会いや旅路の中で、託したモノや託されたモノがある。それを背負って進む道は、これからも続くのだ。
「休憩入れようか?」
「……そうする」
俺がゲームの完全クリアを目標として定めたことを察知したのか、黎は時計を指さして問いかけてきた。俺も頷き返す。
どれ程時間が過ぎ去ろうと、現時点では【ゲームは始まったばかりだ】としか言えない。
【ジョーカー】たちの旅路を少しでも知りたくて、俺と【クロウ】はPCの前に立つのだ。
***
――ゲームを始めて、どれ程の時間が経過しただろう。
タイトル画面に、【トゥルーハッピーエンドを掴むためのシナリオが解禁されました】というテロップが出たとき、俺たちはガッツポーズを取っていた。総プレイ時間は既に70時間を超している。
禄でもないエンディングをいくつも見てきた。主人公が銃殺されるエンディングも、攻略対象が主人公を監禁するエンディングも、2人揃って冤罪の黒幕に飼い殺しにされるエンディングも見た。
“悪神と取引した主人公を見ていられなくなった攻略対象が、主人公と無理心中する”エンディングを見たときは発狂したくなった。テキストを読む限り、主人公は最早、悪神の端末として人格と性格を再構成されただけの人形に成り下がっていたためだ。
相思相愛だというのに、どうして回り道してばかりなのだろう。どうして幸せになれないのだろう。お互いがお互いを愛しているのに、すれ違いすぎて頭がおかしくなりそうだ。特に、“主人公が冤罪の黒幕に“ピー(どぎつい年齢指定系単語が乱舞しているため中略)”されたルートは地獄絵図になる。
恋人関係成立後、早い段階で攻略対象が真相を掴んでしまった場合、奴は主人公からどんどん距離を取り始めるのだ。放置すればアウトなのは勿論、距離の詰め方を間違えると、主人公による攻略対象監禁ED・攻略対象が冤罪の黒幕と無理心中するEND・攻略対象が冤罪の黒幕によって葬られるENDに転がってしまいかねない。
「――あれ?」
トゥルーハッピーエンドの序文は、攻略対象が何者かと契約を交わしたシーンから始まった。短いプロローグはすぐに終わり、主人公視点の物語が始まる。今までのルートと違い、攻略対象と主人公の関係性が大きく変わっていた。
6月に出会って読み合い勝負をしていた宿命の相手は、幼馴染兼最愛の恋人として人生を謳歌していた。だが、攻略対象は常に、怪異事件に巻き込まれてきたらしい。――そこまで読んで、俺はすべてを理解する。
真ルートは、俺と黎が駆け抜けたあの1年間をモデルにしたものだ。
「実はここからが本番でね」
勇んでプレイを初め、開始数分で“攻略対象が不審死”ED――時期的に、俺がメメントスでヤクザに殺されかかったときだと思われる――を迎えた俺に、黎はにっこり笑って話を続けた。
「選択肢1つ間違うと、即座に攻略対象が死ぬEDになるから」
「分岐につき、選択肢10個ぐらい表示されてるんだけど!?」
***
総プレイ時間150時間を突破。やっとこさ辿りついたトゥルーハッピーエンドは、いつか見た黄昏と朝焼けを思い出させた。
幸せそうに手を取り合う主人公と攻略対象の1枚絵は非常に美しく、旅の終わりに相応しい大団円である。
攻略対象が不審死するEDを何度も見た。主人公側からは何故死んだのか分からないが、攻略対象のモデルだった俺たち側から見れば「ああ、あのときはこうだったな」と理解できてしまう。冤罪の黒幕と自分の関係を説明できなかった攻略対象が無茶をして無理心中したり、無茶をしても太刀打ちできずに葬り去られるEDもあった。
特に、金城をモデルにした敵キャラが出てきた時期は、冤罪の黒幕と無理心中or冤罪の黒幕に葬り去られるEDが多かったように思う。相手側が話してくれるまで待ち続け、且つ、一定以上の好感度を稼いでいないとすぐ死にに行くから面倒くさいことこの上なかった。――それが自分であることを棚上げした上で。
金城を超えて以降、冴さんをモデルにしたキャラクターが絡む時期になったときは、主人公死亡EDか攻略対象死亡EDのどちらに転がるかで大変な思いをした。適切な協力者を得つつ、ニャルラトホテプをモデルにしたキャラクターの愉悦ポイントを稼がないと、11月の大勝負を乗り越えられなかったためだ。
―― 主人公が“婚約指輪を買って手渡す”選択しないと死ぬって、ほぼ【俺】のせいじゃねえか……! ――
……とまあ、身に覚えのある出来事を思い返した結果、攻略の糸口になったこともあったか。
「感想は?」
「まごうことなきクソゲーだったな」
過程と結果を鑑みても、俺にはそうとしか思えなかった。双葉が『成仏タワーバトル』と雑にタイトルを付けた理由が分かった気がする。
主人公と攻略対象の死体を積み上げて、やっと手にした幸福な結末――そういう意味では、何も間違っちゃいない。ぴったりのタイトルだった。
できることなら、もう二度と遊びたくない代物だ。1度クリアすればもうお腹いっぱいである。俺は大仰にため息をつき、PCをシャットダウンした。
視界の端を、見覚えのある蝶が横切ったような気がした。
◆◆◆
「【ジョーカー】から聞いた話を纏めたら、双葉がこんなゲーム作ってくれたよ」
黎はそう言って、PCゲーム用のディスクを差し出した。パッケージには――いつの間に隠し撮りしていたんだろうか――俺の写真が使われている。
ゲームのタイトルは『またガメオペラ』と、手書きで雑に記されていた。精魂尽き果てた筆跡だった。
「タイトルからしてクッソ適当なゲームだな」
「『成仏タワーバトル』との二択でこっちにしたって言ってた」
手短な雑談を済ませた後、黎はPCにディスクをセットした。程なくしてゲームは起動し、軽快な音楽と共にタイトル画面が表示される。
「私や【ジョーカー】個人としてはR-18でも良かったんだけどね」
「何が起きたの?」
「私の書いたテキストを読んだ双葉と、テストプレイしたかすみがコーヒー吐き続けたから全編R-15にせざるを得なくなっちゃった」
「今、俺の隣にいた【クロウ】が顔を真っ赤にして【ジョーカー】に突っかかってったよ」
ふと思うところがあって書き上げた短編。【ジョーカー】以外がやったら心折れそうなクソゲーをプレイする吾郎のお話でした。P5Rの内容次第では、また何か始められたらいいなと考えています。
最近、「『Life will Change』の派生系話を書きたい」という衝動にかられます。“P5Rの発売を待ち、P5R要素を組み込む”べきか、“このままP5下地で書いてしまう”べきかでちょっと思案中。
アイオーン(ヤルダバオトの製作者)の絡み具合によっては、後者で発車しても書き直しを始める可能性があります。……うずうずしすぎて、かえって「色々辛い」ことがありましてね。書けないとフラストレーション溜まるので、発散しないと落ち着かないんです。