Life Will Change   作:白鷺 葵

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【諸注意】
・各シリーズの圧倒的なネタバレ注意。最低でも5のネタバレを把握していないと意味不明になる。次鋒で2罪罰と初代。
・ペルソナオールスターズ。メインは5、設定上の贔屓は初代&2罪罰、書き手の好みはP3P。年代考察はふわっふわのざっくばらん。
・ざっくばらんなダイジェスト形式。
・オリキャラも登場する。設定上、メアリー・スーを連想させるような立ち位置にあるため注意。
 @空本(そらもと) (いたる)⇒ピアスの双子の兄で明智の保護者その1。武器はライフル、物理攻撃は銃身での殴打。詳しくは中で。
 @獅童(しどう) 智明(ともあき)⇒獅童の息子であり明智の異母兄弟だが、何かおかしい。獅童の懐刀的存在で『廃人化』専門のヒットマンと推測される。詳しくは中で。
・歴代キャラクターの救済および魔改造あり。
・一部のキャラクターの扱いが可哀想なことになっている。特に、『普遍的無意識の権化』一同や『悪神』の扱いがどん底なので注意されたし。
・アンチやヘイトの趣旨はないものの、人によってはそれを彷彿とさせる表現になる可能性あり。他にも、胸糞悪い表現があるので注意してほしい。
・ハーメルンに掲載している『運命を切り開くだけの簡単なお仕事』および『ペルソナ3異聞録-.future-』、Pixivの『2周目明智吾郎の災難』および『【一発ネタ】有栖川黎の幼馴染』の設定を下地にし、別方向へ発展させた作品である。
・ジョーカーのみ先天性TS。
 ジョーカー(TS):有栖川(ありすがわ) (れい)⇒御影町にある旧家の跡取り娘。旧家制度は形骸化しているが、地元の名士として有名。身長163cm。
・歴代主人公の名前と設定は以下の通り。達哉以外全員が親戚関係。
 ピアス:空本(そらもと) (わたる)⇒明智の保護者2で、南条コンツェルンにあるペルソナ研究部門の主任。
 罪:周防 達哉⇒珠閒瑠所の刑事。克哉とコンビを組んで活動中。ペルソナ、悪魔、シャドウ関連の事件の調査と処理を行う。舞耶の夫。
 罰:周防 舞耶⇒10代後半~20代後半の若者向け雑誌社に勤める雑誌記者。本業の傍ら、ペルソナ、悪魔、シャドウ関連の事件を追うことも。旧姓:天野舞耶。
 ハム子:荒垣(あらがき) (みこと)⇒月光館学園高校の理事長であり、シャドウワーカーの非常任職員。旧姓:香月(こうづき)(みこと)で、旦那は同校の寮母。
 番長:出雲(いずも) 真実(まさざね)⇒現役大学生で特別調査隊リーダー。恋人は八十稲羽のお天気お姉さんで、ポエムが痛々しいと評判。
・敵陣営に登場人物追加。
 @神取鷹久⇒女神異聞録ペルソナ、ペルソナ2罰に登場した敵ペルソナ使い。御影町で発生した“セベク・スキャンダル”で航たちに敗北して死亡後、珠閒瑠市で生き返り、須藤竜蔵の部下として舞耶たちと敵対するが敗北。崩壊する海底洞窟に残り、死亡した。ニャラルトホテプの『駒』として魅入られているため眼球がない。この作品では獅童正義および獅童智明陣営として参戦。明智吾郎の生存を見届けた後、獅童パレスの機関室に取り残される。
・「2罰ボスの外見を見た人間の反応」に関するねつ造設定がある。
・普遍的無意識とP5ラスボスの間にねつ造設定がある。
・『改心』と『廃人化』に関するねつ造設定がある。
・春の婚約者に関するねつ造設定と魔改造がある。因みに、拙作の彼はいい人で、春と両想い。
・魔改造明智にオリジナルペルソナが解禁。
・R-15。
・獅童の外道具合が原作以上。下品、且つ、下種な発言をするため注意。


あんたの罪を終わらせる!

 ――その日、八十稲羽近辺にある拘置所は大騒ぎだった。

 

 全国の公共電波――主にテレビやラジオ系列が――何者かにジャックされたらしい。東京で騒ぎになっている怪盗団の仕業らしく、囚人よりも看守関係者に落ち着きがない。

 男は拘置所の囚人であった。2012年に発生した八十稲羽連続殺人事件の“人間側の加害者”であり、テレビの中の殺人者であり、ペルソナという異形の力を行使する存在である。

 それ故に、囚人は分かっていたのだ。怪盗団を名乗るガキども――ペルソナ使いたちが大きなことを企てており、電波ジャックはそのために必用な布石であるということを。

 

 放送の中で怪盗団は『『廃人化』や精神暴走事件を起こした真犯人は現職大臣の獅童正義であり、奴は怪盗団に罪を擦り付けた』と発言していた。獅童正義と言えば、最近台頭してきた次期総理大臣候補である。本拠地にしている東京だけでなく、全国で人気が急上昇していた政治家であった。

 囚人にとって、政治がらみの話題は馬鹿馬鹿しいことである。奴らが何をしようが、世の中がクソであることは変わりないからだ。元・刑事として、政治家の汚職が絡んだ事件を追いかけたことは何度もある。将来有望と謳われた政治家が口に出すことも悍ましいことをやらかしていた――なんてことは、別に珍しいことではない。

 

 おそらくは、現在有名になっている獅童正義も何かヤバいものに手を出していることだろう――わずかな期間でも、刑事をしていた人間として養ってきた勘がこんな形で的中するとは思わなんだ。男はひっそりと口元を抑えた。

 

 

「あのマセガキ、やりやがった……!」

 

 

 愉快すぎて笑いが止まらない。八十稲羽連続殺人事件を起こした際、あの町で出会ったマセガキの姿を思い浮かべる。

 奴は当時中学生。保護者と一緒に死体を発見したことがきっかけで、八十稲羽連続殺人事件を追いかけていたマセガキであった。

 

 

(あれから数年後、真実くんから『マセガキが東京の高校に進学した』って話題が出たな。それからまた数年経って奴が探偵として表舞台に立ち、それから暫くした後に“怪盗団”というワードが世間から注目を浴びるようになった……)

 

 

 物好きな看守――どこかで会ったことのあるような気がする人物で、ペルソナ能力に目覚めた前後に会ったガソリンスタンドの店員とそっくりだった――が逐一情報を仕入れて話してくれたため、マセガキのことは嫌でもよく知っている。囚人が「興味がないからやめろ」と言っても、それを無視してニコニコ笑顔で話して聞かせるためだった。

 マセガキの恋人が冤罪を着せられ、奴はその汚名を雪ぐために戦い始めた。探偵として表舞台に立ったのもその一環らしい。その話題を耳にしたとき、看守が『また、世界の命運をかけた戦いが始まるんだな』とぼやいたことが忘れられなかった。囚人が宿したペルソナが、何かの予兆を察知して身じろぎしたためだ。

 怪盗団というワードが有名になったのは、それから暫く後のことだった。最初は看守が教えてくれた情報で、次は拘置所内の噂話で、その話題を耳にすることが増えた。一時期は怪盗団を持て囃すようになり、10月の一件であっという間にみんな掌を返した。今となっては、怪盗団の威信も地に落ちている。

 

 

『次はあの子たちの番だな。キミが一番苦手なタイプであるにも関わらず、絶対に目を離すことができない子がいただろう?』

 

 

 今年の3月に看守がそう言ったとき、囚人は漠然と理解した。

 

 顔を合わせればネチネチびーびーと低レベルな言い争いを繰り広げたあの子どもが、今度は友人である出雲真実や自分と同じ力を手にしたのだと。

 奴の保護者が言っていた『『神』と戦う宿命を背負わされた』のだと――マセガキが送るであろうこの1年が()()()()()()()()()()()と直感した。

 

 

(その結果が、これか)

 

 

 高校の教師、美術界の重鎮、性質の悪いヤクザ、国際サイバー犯罪組織、ブラック企業の社長――怪盗団はそいつらが裏に抱えていた欲望を暴き、悉く『改心』させてきた。

 その手段が、八十稲羽連続殺人犯たる自分や自分とやり合った特別捜査隊の(当時)高校生一同、およびクソガキの保護者が有する力絡みであることは察していたのだ。

 

 囚人は確信していた。“この事件には件のマセガキも関わっており、彼の関係者たちは人殺しなんて真似は絶対しない”と。だからこそ、10月の一件を目の当たりにしたときは“怪盗団は誰かに嵌められたのだ”と直感した。それが、『神』が与えた試練であることも。

 今の自分では、それを主張することはできなかった。代わりに出来たことと言えば、怪盗団が打つであろう起死回生の策が成功して欲しいと祈ったことと、先日夢の中で出会った情けない顔したクソガキを叱咤激励し、マガツイザナギを奴の恋人に貸し出したことくらいだ。

 貸し出したと言っても、囚人の中からマガツイザナギがいなくなった訳ではない。自分は今でもペルソナ使いであるし、特殊な条件下になれば普段通り召喚することが可能だ。何故本人に貸し出さなかったのかと訊かれれば、「アイツにこき使われるのだけは絶対に嫌だったから」の一点である。

 

 

(俺のペルソナ、役立ってくれればいいけど)

 

 

 マガツイザナギはある意味で囚人とイコールだから、きっとうまくやれるはずだ。囚人には、囚人だけしか知らない強い確証があった。

 相手がどう思っていたかは察しているが、囚人にとってあの子どもは“思わず注視してしまうくらいには気にかけていた相手”であった。

 

 文句なしの100点満点な優等生。性根は誰よりも清廉潔白で汚点を許さぬ正義感の強い子ども。

 

 けれど、その子どもは聡明だった。聡明だったが故に、己が一番汚れていると気づいていた。そんな自分を赦すことができず、完璧な人間であろうと己を律していた。

 保護者や先輩の役に立ちたいと強く願い、そのためだったら危ない橋も平然と渡る度胸と思い切りの良さを持っていた。そうでなければ存在する価値がないとさえ言いそうな程に。

 人に気に入られるための有効打を知っている。それを計算し、効果的に利用できる――なんて恐ろしい子どもなのだと思った。けどそれ以上に、脆そうな子どもだとも思った。

 

 

(あんなに張りつめてたのに、今じゃあ怪盗団として義賊家業に精を出してるんだろ? 真実くんと同じように、沢山の仲間に囲まれながら……)

 

 

 『久々に会った彼は、婚約者や友人に囲まれて元気そうだった』――真実の手紙に書かれていた内容を思い出す。東京で行われた八十稲羽物産展の写真が同封されており、クソガキとその仲間たちが映った写真も同封されていた。年相応に笑うクソガキの姿を見て内心安堵したのは秘密である。コイツこんな顔もするんだ、なんて思ったことも。

 怪盗団の電波ジャックの話題を聞かされたとき、彼らの戦いが大一番を迎えようとしているのだということは察していた。今回のターゲットは現職大臣――もとい、総理大臣に1番近い男、獅童正義。怪盗団を嵌めた張本人と思しき人物である。自分の世代も大概だったが、今世代はやたらとセンセーショナルな話題に事欠かないらしい。

 

 

「本当、近頃のガキはよくやるよなぁ」

 

「どうかしたのか?」

 

「いいや、何でもありませんよ」

 

 

 変わり者の看守の問いかけに、囚人――足立徹は笑みを浮かべて首を振る。

 

 

(この一件が片付いた頃に、クソガキに手紙でも書いてみようかな)

 

 

 どうせ暴言合戦にしかならないと理解していながら、そんなことを考えた。自分の手紙を受け取るクソガキの嫌そうな顔が浮かんで、足立は笑う。

 こちらの囚人ライフはそれなりに楽しい。不自由だけど、それなりに上手くやっている。おそらくは、クソガキもそうなのだろう。

 自分の手紙を受け取る相手が無事であるようにと願いながら、今日も足立徹の囚人ライフは続いていくのだ。娑婆に出る日が来るまでは。

 

 

 

 ――ああ、世の中そんなに悪くない。

 

 

◆◆◆

 

 

「怪盗団の逮捕に関わっていた全関係者を拘束しろ! 重要参考人としてだ!」

 

「シャドウワーカーの元締めである桐条財閥のトップと連絡が取れないだって!? 行先は!? ええい、なら組織全体を――」

 

「月光館学園高校の理事長が東京に来ているはずだ。明日は教育関係者のシンポジウムがあるからな。奴は組織の非常勤職員の中で一番地位が高い。そいつも拘束して情報を――」

 

「月光館学園高校の寮母も拘束しろ。奴もシャドウワーカーに所属していたはずだ。……寮にいない!? 田舎へ帰省? 奴は孤児だ、田舎なんてあるわけがないだろう!!」

 

「南条コンツェルンの次期当主と、特殊研究部門の調査員と連絡がつかないだと!? 調査員の弟である研究者はいるんだろ? なんとかして行先を聞きだすんだ! ……は? 寝ぼけて話にならない? お、おい、どうした!? おーい!?」

 

 

◆◆◆

 

 

「おい、智明と連絡は取れないのか!? 今まで連絡がつかないなんてことは一度もなかったのに、どうして……」

 

「獅童大臣! 彼からのものと思しき置手紙が……!」

 

「なんだと!? 見せろ!」

 

 

 焦った様子の部下から手紙をひったくり、獅童は文面に目を通す。息子が残した手紙を読まない父親などいない。

 丁寧に書かれた文字は、他の誰でもない獅童の息子・智明のモノだった。

 

 智明は明智吾郎の正体が異母弟であることに気づき、怪盗団からこちら側に引き入れようとしていた。だが、奴は怪盗団のリーダーとして活動しており、今回の大捕り物で捕まってみせることで、智明の誘いを蹴ったという。弟と一緒に暮らすことを夢見た智明の優しさをふいにした。

 裏切り者の末路は死。神条に任せればいいと言った獅童に対し『自ら幕引きを』と言って笑った息子の痛々しい表情を、どうしても忘れられなかった。智明はどんな気持ちで、奴を手にかけたのだろう。明智吾郎を片付けた後、智明は時折寂しそうな表情を見せるようになった。

 だが、ここ数日はピリピリした表情を見せるようになった気がする。もしかしたら、智明は自分の失敗に気づいたのかもしれない。あの放送のような爆弾が、獅童に降り注ぐと察知して、その責任に心を痛めていたのだ。獅童のために打開策を思案していたのだろう。

 

 手紙には自分のミスに気づいたこと、明智吾郎が生きていること、ヤツの恋人――有栖川黎――や恋人の関係者にも共謀罪の疑いがあること、ルブランの家宅捜索および喫茶店のマスターである佐倉惣治郎や、事件の担当検事である新島冴を重要参考人として取り調べるよう根回しをしておいたこと等が記されていた。

 

 

「『父さんの『改心』を阻止し、今度こそ怪盗団の息の根を止めてくる。父さんの息子として、命を賭して責任を果たす』だと……!? まさかあいつ、1人で……」

 

 

 今すぐ智明を追いかけたかったのだが、獅童には智明と同じ力――認知世界への干渉能力――はない。

 もう1人である神条に連絡を取ろうとしたが、奴の名前を出すとみな口を揃えて「そんな人間はいない」と言い張る。

 

 神条を呼びだせないとなれば、獅童が取れる方法はたった1つしかない。

 

 

(智明……)

 

 

 愛する女の忘れ形見の無事を祈る。『改心』を防ぐ方法が分からない今、自分ができることはそれだけだった。

 智明を死なせてしまったら、愛歌に何と詫びればいいのか。妻になるはずだった女性の顔を思い浮かべる。

 年のせいか、多忙な日々のせいか、愛した女の面持ちは、おぼろげながらにしか思い出せなかった。

 

 

◆◇◇◇

 

 

 フタバ砲と名付けられた予告状――公共電波の完全ジャックは見事に成功し、民衆たちの興味関心を惹くことはできた。後は獅童本人が、この電波ジャックに対して何らかのアクションを返せば予告状の効果が発現する。

 レスポンスはすぐに行われた。先程の電波ジャックに対し、獅童が会見を開いたのである。奴は『命を賭けて戦う所存である』と語った。あの反応からして、予告状は成功したらしい。獅童の表面上は冷静だが、中身は大荒れのはずだ。

 

 国会議事堂には多くの報道陣や野次馬一同が詰めかけていた。その中には大宅と三島がいて驚いたが、2人は怪盗団の活躍を信じてくれているようだ。

 きっと、この東京――あるいは世界の何処かで、俺たちを信じてくれる人たちがいる。黎と絆を育んだ人々や、俺が今まで出会った人々が。

 少ないファンでも大事にする――それが怪盗団のポリシーだった。彼らからの声援を背負い、国会議事堂の箱舟へと乗り込んだ。

 

 

「さあ、人間の黒幕との最終決戦だ。一気に行くよ!」

 

「了解!」

 

 

 ジョーカーの言葉通り、僕たちは早速本会議場に乗り込む。相変らずがらんどうとしていたが、議長席には見覚えのある男が佇んでいた。

 

 シャドウ獅童。今回のパレス攻略では、僕たちの前には一切姿を現さなかったパレスの主が、満を持して姿を現したのだ。壇上に佇む獅童を下から取り囲むようにして向かい合う。

 獅童は現実と変わらぬ格好をしていた。他のパレスの主は最初から城主の格好をしていたことを考えると、やはり獅童は他の連中と別格らしい。鋭い眼差しで僕たちを見下す。

 僕らの力の出所を怪しんだが、奴は「文句があるなら聞いてやろう」と笑った。そんな中、獅童は僕に視線を向け、忌々しそうに睨みつけてきた。

 

 

「お前の正体には、最初から気が付いていたよ。あの女の面影があったからな」

 

「……そうかよ」

 

 

 母さんのことを平然と“あの女”呼ばわりした獅童に対し、複雑な感情が湧き上がってくる。怒りであり、悲しみであり、寂しさ。

 この事態は予期していたことであり、けれども心の何処かでは、ギリギリまで嘘であってほしいと願い続けていたことだった。

 

 

「貴様が近づいてきた理由にも察しがついていた。大方、あの女の復讐のため、私を嵌めるつもりだったんだろう?」

 

「自分の息子が父親に会いに来たとは考えなかったのか?」

 

「あり得んよ。お前の目を見ればすぐに分かる」

 

 

 「実際にそうだったろう?」――獅童は得意満面の笑みを浮かべた。実際に“父親に会いに来た”わけではなかったので、僕は閉口する。

 

 

「お前が裏切ることは最初から予見していたからな。智明のスケープゴートに仕立て上げた後、折を見て消すつもりだった」

 

 

 ――そんなこと分かり切っていた。こいつが俺のことを何とも思っていないことも、『駒』として使い潰すつもりだったことも、早い段階で気づいてた。

 でも、それを直接真正面から突き付けられるのは、やっぱり辛い。今この瞬間ですら、僕は父親に愛されたいと願っていた。父を慕ってやまない子どもの姿に気づいてた。

 

 同時にそれは“明智吾郎”にも言えることで、“彼”は表情を歪ませていた。苦しそうに、悔しそうに、辛そうに歯噛みする。塞がりかけていた傷を無理矢理開かれたような痛みは、けれどすぐに和らぐこととなった。僕の隣にいたジョーカーが、当たり前のように僕の手を握ったからだ。

 力強く輝く灰銀の瞳は「大丈夫」と伝えてくれる。明智吾郎という存在をすくってくれる。ふらふらとよろめいたり、立ち止まりそうになったり、道を踏み外しかける度に、この手を引っ張り上げてくれた。隣にいてくれた。それがどれ程救いだったか。僕は苦笑した後、同じように指を絡めて力を籠める。

 “明智吾郎”に視線を向ければ――手は握っていないものの――同じようにして“ジョーカー”が“彼”の傍らに寄り添っていた。“彼”も俺と同じように、決意を込めて獅童をにらみつける。そこにはもう迷いは存在しない。()()()がそう思ったのと、仲間たちが怒りをあらわにしたのは同時だった。

 

 

「ふざけんな! クロウはお前の実の息子だろ!? どうしてそんなことができる!!」

 

 

 父親に関してあまりいい思い出がないスカルですら、獅童のような外道は規格外だったのだろう。

 最も、怒りに燃える彼の双瞼は、獅童のような下種の思考回路など理解したくないと叫んでいた。

 

 

「お前のような腐った外道でも、クロウにとってはただ1人の肉親だった。貴様に罪を問う彼の気持ちなど、分かろうともしないのだろうな……!」

 

 

 嘗て、自分の父親的存在であった班目を『改心』させたフォックスも息巻く。同じ痛みを抱える僕のために怒る彼の眼差しは鋭い。

 

 

「アンタ、本当に最低よ! 彼のことを何だと思ってるの!!」

 

 

 パンサーも怒りをあらわにした。奴とあまり縁のない彼女でさえこうなら、関係者の怒りは計り知れないだろう。

 

 

「わたしの大切な仲間をコケにしただけじゃない。お母さんの研究を奪って、命まで奪った……!」

 

「自分の利益のために好き放題して、人を何だと思っているの! 私のお父様まで巻き込んで、身代わりに殺そうとして……絶対に許さない!」

 

 

 ナビやノワールも、獅童に罪を突きつける。彼女たちの大切な家族は、獅童の身勝手な物差しによって滅茶苦茶にされたのだ。

 ナビの母親である一色さんは認知訶学のせいで殺されたし、ノワールの父親である奥村社長はスケープゴートにされかかっている。

 彼女たちの怒りや憤りを真正面からぶつけられても、獅童は一切揺らぐ様子を見せない。更に腹立たしいことに、奴は開き直った。

 

 「改革のためには犠牲がつきもの」――涼しい顔をして獅童は語る。民衆を愚か者と断じた獅童は、自分を優秀な人間とみなしているらしい。自分が民衆を導くのだと言って憚らない。足立とは違う方面の傲慢である。やっぱり手紙を書くのをやめようかな、なんて考えた。

 

 コイツのどこが優秀なのだろう。認知世界に干渉することができるペルソナ使いの助けがなければ、獅童はここまで地位を盤石にすることなどできなかったはずだ。

 獅童は一度、スキャンダルで窮地に立たされたことがある。けど、奴のスキャンダルを追求しようとした人間が亡くなったことで、それは有耶無耶になった。

 

 

「『廃人化』の力を有する智明がいなければ、アンタはここまで大きくなれなかったはずだろ。アンタはあいつも利用して――」

 

「貴様のような出来損ないが、私の息子を語るな!」

 

 

 僕が智明の名前を出した途端、獅童は激高した。僕は一瞬目を丸くする。奴は本気で、智明を大切にしているのだと理解した。父親として息子のことを心配していると。

 佐倉さんが分析した内容――智明も駒としか見ていない――とは違う結果に面食らう。“自分が望んだ子ども”だから、あそこまで怒ることができるのだろうか。

 

 

「あの子があの力を得たのも、『神』が私に期待しているからだ。私たち親子だから有用に使えたんだ」

 

「……その様子じゃ、自分に力を与えた『神』が如何なるものかなんて考えたこともないんだろうね」

 

「何だと?」

 

「そうやって調子に乗った連中は、軒並み“自ら破滅する”か“『神』によって破滅させられる”かの2択だったよ」

 

 

 自信満々に言い切る獅童に対し、ジョーカーは冷ややかな目を向けた。一瞬、獅童がピクリと眉を動かす。あの様子からだと、奴は本気で「自分は『神』から期待されている」と信じていたらしい。だが、すぐに奴は不敵に笑い返した。

 

 

「それは貴様らだとて同じことだろう。お前たちが行ってきた『改心』とやらは、民衆を熱狂させ、暴走させただけではないかね?」

 

「何を勝手な! 真っ当なやり方じゃ勝てない負け犬が、汚い手を使ってのし上がっただけだろ!?」

 

「貴方なんかに、人の上に立つ元首の資格はない。人々を道具のように扱い、罪の階段を上って成り上がった犯罪者が」

 

「一握りの犠牲者の命と、国家そのものの命。比べるまでもなかろう?」

 

 

 フォックスとクイーンが反論する。獅童はそれすら鼻で笑った。

 

 

「己の幸福以外は『自己責任』という名の他力本願。そんな愚民どもの願いを叶えてやるんだ。それが『神』に選ばれた、この私にしか成せない『世直し』だ」

 

「……『神』、ね。本気でそう信じて語っているならば、おめでたい。須藤竜蔵の二番煎じにならなきゃいいな」

 

「何……?」

 

「お前にとっての俺がそうだったように、『神』にとってのお前もまた“幾らでも替えの効く『駒』”の1つでしかないってことだ」

 

「――ふん、バカなことを」

 

 

 その自信はどこから来るのだろう。僕は正直、獅童の目は節穴なのではないかと心配になってきた。わざと須藤竜蔵の名前を出してみれば、奴の話は何となく知っていたのだろう。獅童は物凄く嫌そうな顔をした。

 須藤は表向き、“カルトに傾倒してテロを企てた”ことになっている。『御前』――もとい、ニャルラトホテプの化身を信仰し、奴の命令に従って動いた結果であった。珠閒瑠市の鳴海区が崩壊した事実も、須藤と新世塾によるテロ行為が原因ということにされていた。

 獅童は別に『神』を信仰している訳ではないが、“『神』が自分に力を貸している”と解釈している点においては須藤竜蔵の二番煎じだと言えるだろう。獅童もまた、『神』にとっては幾らでも替えの効く『駒』でしかないのだ。

 

 勿論、僕の指摘は獅童にとって腹立たしい話題でしかない。不愉快そうに眉をひそめた後、「奴と一緒にするな」と切り捨てた。

 ノワールとパンサーが憤る。特にパンサーは、「アンタみたいな奴が総理になることなんて誰も望んでいない」と叫ぶ。

 

 

「望んでない? ならば、何故私が選ばれた? 何故私に総理の椅子が明け渡された?」

 

 

 獅童は不敵に笑いながら語り出す。

 

 

「今や誰もが地道な努力を否定し、抜け駆けや一攫千金ばかり闇雲に追いかけている。だから、私が最強国家を樹立してやるんだよ。誰にもひれ伏さず、揺るぎない最強国家だ」

 

「何が最強国家だ! 犯罪者の作る犯罪国家の間違いだろっ!」

 

「貴様を放っておくわけにはいかないな。日本の恥さらしだ。その狂った心、奪い取ってやる」

 

 

 スカルとフォックスが身構える。勿論、身構えたのは2人だけじゃない。僕ら全員が獅童と対峙していた。奴は僕らに「配下になれ」と言ってきたが、そんなの満場一致でお断りである。地位や名誉が欲しくて怪盗団をしていた訳じゃないのだから。

 獅童は僕ら全員を見下して鼻を鳴らす。「愚民は愚民か」と嗤った後、怪盗団を排除すると宣言した。次の瞬間、誰もいなかった議会席に沢山の議員――しかも全員同じ顔だ――が割れんばかりの拍手を獅童に贈る。いきなり現れた認知存在たちに困惑したが、奴らはすぐに消えてしまった。

 次の瞬間、奴を乗せた壇上が上昇し始める。本会議場が変形し始めたのだ。――おそらく、獅童が僕たち怪盗団を迎え撃つに相応しい場所へ変わるのだろう。達磨の左目に墨が入る。どうすればいいのか分からずにいる面々を引っ張るようにして、僕は変形していく台座に飛び乗った。

 

 ここを飛び移れば、獅童の待つ壇上まで辿り着けるだろう。僕の意図を察したフォックスが飛び移る。仲間たちもそれに続いて、壇上へと移動した。

 紅白に彩られた木目のステージには、でかでかと必勝の文字が書かれている。「どんだけ勝ちたいんだよ」と獅童に文句を言おうとしたとき、奴は既にもっと高い所にいた。

 

 金色の人間たちが四つん這いになって重なる。さながら、獅童のために道を作っているみたいだった。獅童は彼らの背中を当たり前のように踏みつけながら、どんどん高みへ――金色の人間たちが造り上げた化け物の背負う玉座に向かった。階段を上る度、奴の身体が変貌していく。

 

 

「――さあ、速やかに死に給え。私の最強国家に、賊はいらぬ」

 

 

 獅童がパレスの主としての姿を取り戻す。顔を物々しい仮面で覆い、数多の勲章をつけた式典の衣装に身を包んでいる。背中には、クロウの怪盗装束同様赤いマントがはためいた

 奴が腕を組んだ瞬間、黄金の獅子が吼えた。民衆たちを“自分の思うがままに動かせる『駒』”と認識しているが故に、こんな化け物を使役できるのだ。

 

 

「ウチのリーダーとクロウが世話になった礼だ!」

 

「お前の罪、ここで全部終わらせてやる! 年貢の納め時だ、獅童正義!!」

 

「間違った大人は命懸けで止める……それが怪盗団だ!」

 

 

 スカルが啖呵を切る。僕もそれに続いて突剣を引き抜いた。ナビも頷き、プロメテウスを顕現してサポートを開始した。

 

 獅童の使役する獅子が僕らに襲い掛かって来る。奴は高らかに宣戦布告した。うっかり乗っかってしまった面々が獅子に攻撃し、ダメージをそのまま喰らってしまう。どうやら獅子は物理攻撃を反射するらしい。ノワールが状態異常を、モナやパンサーが回復術を使って体勢を立て直した。

 得意な状態異常と自分の耐性の組み合わせが嫌らしい。ここは属性攻撃を中心に攻めることになる。正直、男性陣は物理>属性攻撃のため、有効打を与えにくい部分がある。物理が得意な面々はサポートに回り、属性攻撃が得意な面々が次々と攻撃を叩きこんでいく。

 特に、属性ブースタとハイブースタ、コンセントレイト持ちのジョーカー、パンサーが主体になっていた。僕もカウを顕現し、コンセントレイトからインフェルノで獅子を焼き払った。奴は物理攻撃を得意としており、全体攻撃を主体にして攻撃を仕掛けてきた。

 

 

「っ……強いぞ、コイツ……! 回復を怠らず、属性攻撃を主体に攻めろ!」

 

「宣戦布告で激怒状態にならないよう気を付けて! 誰かが激怒状態になったら即刻治療すること!」

 

 

 ナビとクイーンの指示に従いながら、僕らは一進一退の攻防を演じ続ける。獅子も馬鹿ではないようで、マカラカーンを使って属性攻撃を弾こうとした。

 勿論、対策はしている。ジョーカーがペルソナを顕現し、マカラカーンの無効化を行った。守りを失った獅子に属性攻撃が降り注いだ。

 

 獅子は高らかに吼えると、力を貯め始めた。大抵こういうときは防御を固めておくのが得策である。僕らが衝撃に備えたのと、獅子が腕を振るったのは同時だった。防御を固めていたとしても、痛いものは痛い。

 

 

「ほいっとな! ――オマエら、まだ倒れんじゃねえぞ!」

 

「言われなくとも!」

 

 

 モナの顕現したゾロがメシアライザーを使い、僕らの傷を癒してくれた。フォックスを皮切りに、僕らも反撃する。

 それぞれの属性攻撃魔法を叩きこんでいくうちに、獅子の身体がぐらりと傾いた。どうやら効いているらしい。

 

 

「貴様ら……私に歯向かうことの意味、わかっているだろうな!?」

 

「わかりたくもないし!」

 

「ならば果てるがいい! 私に挑んだ愚行……あの世で悔いていろ!」

 

「お前がな! 但し、テメェが悔いるのはこの世でだ!」

 

「――何?」

 

「そう易々とあの世に逝かせて堪るかよ! 母さんに詫びさせるよりも前に、アンタにやらせなきゃいけないことは沢山あるんだ!!」

 

 

 獅童の言葉に対し、ナビと僕が反論する。次の瞬間、獅子が大地を蹴って飛びあがった。黒い闇が溢れ、獅子の姿が変貌する。次に現れたのは、羽を生やした獅子だった。変わったのは姿だけではなく、使う技や能力も変化したという。先程の戦術はもう使えない。

 獅子は属性攻撃を得意としており、属性攻撃を反射するようになっていた。次は物理攻撃が主体な面々が飛び出していく。どうやら獅子の使う属性攻撃の順番には法則があるらしい。それに合わせて防御しつつ、物理攻撃を叩きこんだ。時にはマカラカーンを使って攻撃を無効化して食い下がる。

 一通り属性攻撃を叩きこんだ獅子は咆哮すると、口からブレスを吐き出した。降り注ぐ光弾が僕らに襲い掛かる。光にやられたせいか、眩暈に見舞われた。どうやら眩暈に見舞われたのは僕だけではないらしく、ノワールが回復術を使ってくれたようだ。

 

 獅童が使役する羽の生えた獅子と、一進一退の攻防が続く。獅童の取り巻き、および民衆に関する歪んだ認知によって生まれ落ちた異形は、普通のシャドウとは桁違いだ。

 

 多分、この化け物の出所は獅童が子飼いにしている『駒』の戦闘力なのだろう。戦闘と言っても、腕っぷしだけがすべてではない。奴がVIPに選んでいた人間たち――政治家、旧華族、IT社長、ヤクザ――や、保身のために処分しようとした人間たち――秀尽学園高校の校長、特捜部長――らのように、権力やその分野のプロとしての実力そのものだ。

 奴は人間としての彼らではなく、“獅童正義の味方”としての力を欲した。人格なんて考慮しないし、ましてや人命なんて尊重していない。その結果が、獅童の思うがままに動かされる“黄金の獅子の化け物”だ。獅童正義の為だけに、持ちうるすべてを使って外敵を排除する獣。けれど、それが人由来の認知である限り、いずれ限界はやって来る。

 

 

「ここまで、やるとは……!」

 

 

 僕の予想通り、獅童の操る獣たちにも疲労の色が滲む。

 

 人由来の認知を使った異形たちには限界があることは、奥村社長のパレスで把握済みだ。彼の場合は物量重視で、社員1人1人をロボ兵隊として怪盗団に差し向けてきた。

 奥村社長とは違い、獅童は自分のシンパどもの力を束ねて強大な化け物を生み出した。奴の場合は質を重視している。長期戦はどちらにとっても辛いものだ。

 

 

「何故抵抗をやめない!? 私の目指す国家は、大衆の幸福の具現だと言うのに!」

 

「……大衆の幸福、ねぇ。そういうのはまず、箱舟の外に広がる地獄を見てから言おうか?」

 

 

 ジョーカーが真面目な顔して問いかけた。彼女の言うとおり、奴のパレス――箱庭の外は散々なことになっている。沈没した東京の街並みが広がっているのだ。

 あんな環境で人が生活できるとは思えない。“獅童の箱舟に乗れない大半の人間は、地獄のような世界で生活し、死んでいけ”ということに他ならなかった。

 地獄の光景を見つめながら、自らは絢爛豪華な箱舟の船長として悠々自適に過ごす……そんな人間が日本の舵取りを行った場合、大衆の幸福とは程遠い場所に辿り着きそうだ。

 

 獅童が舌打ちしたのと、獣が高く飛びあがって姿を変えたのはほぼ同時。次の姿は、最早獣とは無関係な物体だった。嘗て双葉のパレスを攻略したときに見たフォルム――ピラミッドが姿を現す。但しこのピラミッドは、多くの民衆たちによって造り上げられたものだ。

 ピラミッドの最上部に位置する玉座に、獅童は当たり前のように座っている。奴は不敵に笑いながら「理想のためには個の犠牲は必用なのだ」と語った。少量である個の犠牲だって、塵も積もれば山となるのだ。それを積み重ねた果てに顕現した形がピラミッドだとしたら――もう、擁護なんてできやしない。

 

 

「クイーン!」

 

「さっきとは攻撃方法が変わるわ! 万能物理攻撃を駆使するから、防壁による反射は通じないみたい。回復と強化を怠らないで!」

 

 

 ジョーカーがアナライズを求めれば、クイーンがナビから渡された情報を分析する。万能物理属性による攻撃は、耐性も弱点も関係なしにダメージが通る厄介な技だ。ダウンを奪われないとはいえ、連発されると辛いものがある。回復が得意な面々は援護に専念してもらい、攻撃が得意な面々がピラミッドに高威力の技を叩きこむ。

 

 降り注ぐ砲撃を防御したり、躱したりしながら、僕らは次々と攻撃を叩きこんでいく。獅子の時とは違い、防御属性に関して注意する必要がなくなったのが功を制したのだろう。先程より早いペースで、化け物に疲弊の色が見えてきた。

 だが、奴らの闘志はまだ折れていない。化け物は突如力を貯め始める。異変を察知したナビが防御するよう警告する。僕らは即座に指示に従う。次の瞬間、膨大なエネルギーが僕らに向かって発射された。それはステージ全体――ひいては箱舟全体を揺らす。

 防御が間に合わなかったら、全員が消し飛ばされていただろう。モナのゾロがメシアライザーを使って治療してくれたおかげで傷は癒えた。ピラミッドは再び砲撃を繰り出してくる。だが、明らかな疲弊の色は隠しきれない。

 

 攻めに転じて攻撃を叩きこんだ果てに、ついに化け物にも限界が訪れる。突如ピラミッドが大きく震えた後、それが姿を変化させた。獅子は呻き声を上げながら崩れ落ちた。それを見た獅童は舌打ちし、獅子の腹を蹴る。奴に忠実な化け物はふらつきながらも体を起こした。

 獅子は高らかに咆哮する。次の瞬間、獅子の身体が赤黒く光る闇に包まれた。顕現したのは、美しい羽を広げた天使。人が組み上がることで出来上がった矛と盾を掲げ、俺たちに襲い掛かって来る。先程と違い、奴には一切の疲労がない。ノワールとパンサーが目を剥く。

 

 

「そんな!?」

 

「ウソでしょ!?」

 

「これが私の力。愚民どもを自在に操る力だ!」

 

 

 天使の上部に出来上がった王冠が、獅童の玉座だった。奴は高らかに笑い、愚民によって造られた天使に命令を下そうとして――次の瞬間、天使の顔面部分が吹き飛んだ。顔面より上の部分――獅童の玉座はそのまま地面へ落下する。

 玉座に座っていた獅童は即座に受け身を取って態勢を整えたが、天使の方は別だった。冠、もとい玉座から指示を出す相手を失ったためか、明らかに体勢が揺らぐ。人間の中には形を保っていられなくて、そのまま落下していく者もいた。

 

 

「「――ペルソナァッ!」」

 

 

 男女の声が重なった。銃声とガラスが割れるような音が響き渡り、2つの影が顕現する。

 片や、双子星の片割れであるカストール。片や、死神の権化であるタナトス。

 前者は物理攻撃の破壊力に物を言わせ、後者は容赦なく冥府の扉を開いた。

 

 カストールの攻撃によって弾き落とされた人間ごと、天使を模した化け物が冥府の扉に引きずり込まれていく。死の摂理が相手なのだ。逃げられるはずもない。

 天使を形作る人間たちが失われたことと、2体の攻撃が決定打となったのだろう。ついに、獅童が造り上げた化け物が地面に叩き付けられて動かなくなった。

 

 先程のペルソナには覚えがある。巌戸台で発生した“影時間を失くす戦い”で見たペルソナたちだ。だが、カストールとタナトスが並んだ現場は見たことがない。その光景が奇跡であることを知っていた僕は、思わず2人の名前を呼んでいた。

 

 

「命さん、荒垣さん!」

 

「お待たせ吾郎くん! 助太刀に来たよ!」

 

「おい待て命! こんのはねっ返りが……!」

 

 

 パンツスーツに身を包んだ女性――荒垣命(旧姓:香月命)さんと、コートとニット帽を着込んだ男性――荒垣真次郎さんがこちらに駆け寄って来た。前者は身長の1.5倍ほどある長さの薙刀を握り締め、後者はノワールより2回りほど大きい――どちらかと言えば鈍器に近い大きさの――斧を軽々担いでいる。

 乱入したのは荒垣夫婦だけではない。薄く硝煙漂うライフルを担いだ至さん、くたびれた白衣とワイシャツを着た航さん、ライダースーツを身に纏った南条さん、シャドウワーカーとしての戦闘衣装を身に纏った美鶴さんが、獅童の用意した決戦場へと躍り出た。誰も彼もが剣呑な面持ちで指導を睨んだ。

 

 獅童は大きく目を見開いた。どうやら、獅童は怪盗団確保のために召集されたペルソナ使いたちも重要参考人として拘束していたらしい。

 今、僕たちの援軍に駆けつけてくれた大人たちも、漏れなく対象内だったようだ。「怪盗団の仲間であるという証拠を得た」と吐き捨てた。

 至さんたちを一瞥した獅童はちらりと化け物へ視線を向ける。無数の人間によって造り上げられた獅子は、もう動くことはなかった。

 

 

「使えん愚民どもめっ!」

 

「彼らに戦わせておいて、なんてことを……!」

 

「負けたときだけ愚民のせいってか!? 民衆をそんな風に扱う、テメーのどこが指導者なんだよ!」

 

「……獅童正義。やはり貴様には、日本の未来を語る資格はない」

 

 

 獅童が吐き捨てると同時に、獅子の姿が溶けて消えた。心無い言葉に美鶴さんが憤り、スカルが的確なツッコミを入れ、南条さんは確証を得たと言わんばかりに頷く。

 民衆を操作しておいて、民衆が思った通りに動かないとこの始末とは。苦戦はしたが、戦えない程ではなかったのが救いか。

 

 奴が造り上げた化け物を束ねるために使った人柱の数は、明らかに怪盗団やここに集ったペルソナ使いたちの人数より多いはずだ。それなのに、化け物の力は僕たちに及ばない。

 

 自分の敗因を「怪盗団や協力者であるペルソナ使いの数がそれなりに揃っていたから」だと語るあたり、獅童の目は節穴なのではなかろうか。

 「自分は決してミスを犯さない」と大層なことを語っていたが、分析能力に重大な欠陥が見られる。クイーン以下の分析力でよくここまで来れたものだ。

 

 

「こいつらを束ねているのが、貴様か……」

 

 

 獅童はジョーカーに一瞥くれると、つかつかと歩み寄って来る。

 

 

「感動の再会ね?」

 

「敵を潰すときは、今度からもっと確実を期すんだな」

 

 

 パンサーとフォックスが痛烈な嫌味を返した。2人の指摘はあながち間違いではない。

 ナビも畳みかけるようにして「おまえに今度はねーけどな」と言い放った。

 

 俺は反射的にジョーカーを庇うようにして前に踏み出した。彼女も獅童を睨みつける。――そこで、獅童はジョーカーの姿に何かを思い出したようだ。今更になって、奴は“ジョーカーと自分の間には深い因縁がある”ことを察したらしい。

 

 

「久しぶりだね。覚えてる?」

 

 

 それを見聞きしたジョーカーはドミノマスクを外す。晒されたのは、有栖川黎の端正な顔立ちであった。

 力強く凛とした佇まい。平時だったら見惚れていたであろう。脱線しかけた思考回路を戻し、改めて獅童を睨む。

 

 

「テメェがコイツを仕留め損なったのは、1度目じゃねえってことだ!」

 

「……まさか、裁判まで起こしといて『今思い出しました』とか言うんじゃねえよな……?」

 

「ふざけるな! こっちはずっと、犯人を忘れたことなんて一度もなかったってのに……! アンタみたいな奴に太刀打ちできなかったこと事態が黒歴史だったくらいよ!」

 

「冤罪をでっちあげてまで嵌めた相手のことを『覚えてない』なんて……心底、人を何とも思っていないのね」

 

 

 スカルが息巻く。反応の鈍い獅童の様子から、荒垣さんが目を丸くした。彼は恐る恐ると言った調子で獅童に問いかけたが、命さんが怒りを滲ませる方が早かった。クイーンに至っては呆れ果ててしまうレベルだ。

 ここでようやく、獅童は“目の前にいる少女こそが、自分が『気に喰わない』という理由で冤罪を着せ、人生を破滅させてやろうとした相手”――有栖川黎であることを思い出したらしい。奴の頭はスカスカではないか。

 獅童が自分のことを思い出したと察した黎は、鋭い眼差しを絶やさぬままドミノマスクを付け直す。怪盗団のリーダーであるジョーカーとして、『改心』させるべきターゲットである獅童を睨みつけた。対して、獅童はくつくつと嗤う。

 

 奴の眼差しはジョーカーだけでなく、彼女を庇うようにして立つ僕の方にも向けられていた。

 

 

「そうか、あのときのガキがな。しかも……成程。そういうことか」

 

「……何が言いたい?」

 

「こいつは興味深い巡り合わせだな。私とあの女の息子が、私に逆らい拒絶したクソガキと“出来上がっていた”とは!」

 

 

 僕の問いに対し、獅童は面白い玩具を見つけた子どものように笑った。

 この光景が愉快で仕方がないと言わんばかりに。

 

 

「なあ明智。この女の抱き心地はどうだった?」

 

「――は?」

 

 

 ――コイツは何を言っているのだろう。

 

 頭をぶん殴られたような衝撃。

 思考回路が吹き飛んだような感覚。

 

 

「何を呆けている? 抱いたんだろう? 私を拒絶し、お高く留まったこのガキを。こいつを組み敷いて、すべてを暴き立てて、貪るように犯したんだろう?」

 

 

 理解が追い付かない。

 意味が分からない。

 むしろ分かりたくなんかない。

 

 

「どのように啼いた? どのようによがり狂った? お前はどのような手段を用いて、どんな風にして、このガキを(オンナ)()としたんだ?」

 

 

 だってそれは。

 獅童の発言は。

 

 

「まあ、お前の顔を見る限り、造作もないことだったのだろうな。私があの女を弄んだときのように、簡単にできただろう」

 

 

 俺が黎と触れ合えるようになるまでの長い葛藤を。

 俺と黎が愛し合い、積み重ねてきた幸せな夜を。

 

 奴を愛した俺の母や、俺の婚約者である有栖川黎を、侮辱していることに他ならない――!!

 

 

「ああ、そういう意味では、お前も私の子どもだな。『流石は我が息子』と言ったところか!」

 

「――黙れェェッ!!」

 

 

 これ以上何も聞きたくなかった。何も言わせたくなかった。

 

 許さない。絶対に許さない。

 コイツだけは、この男だけは!!

 

 

「消し飛ばせ、ロキ!!」

 

―― 獅童ォォォォォォォッ!! ――

 

 

 俺はロキ――怒り心頭の“明智吾郎”を顕現し、獅童に向かって容赦なくレーヴァテインを打ち放った。獅童は不敵な笑みを浮かべて渾身の一撃を受け止める。奴のマントが衝撃波によって大きく翻った。

 獅童には傷1つ付いていない。息を飲んだ俺に対し、お返しだと言わんばかりに拳を叩きこまれた。重い一撃による衝撃と痛みに見舞われた俺の身体は、糸の切れた人形のように呆気なく崩れ落ちた。

 咳き込みながらもどうにか体を起こす。労るように背中をさする手に気づけば、ジョーカーが俺の傍に寄り添ってくれていた。“明智吾郎”の隣にも“ジョーカー”が寄り添う。俺たちを庇うように前に出た空本兄弟も、獅童を睨みつけた。

 

 

「この腐れ外道が……ッ! 吾郎が今までどんな気持ちでいたか、お前に分かるか!? お前のような父親を持った吾郎がどれ程苦しんできたか! 今まで散々傷つけて、苦しめて、追いつめてもまだ足りないというのか!?」

 

「最初は母親ごと捨てて、以後は音信不通の無関心で放置して、アンタの犯罪を目の当たりにさせて、終いには愛する女を実父が手籠めにしようとしたことを知らされて、この子は辛い思いしてきたんだよ。その上、今更息子呼ばわりだァ? 神経が図太いにも程があるだろ」

 

 

 怒りを剥き出しにする航さんが息巻く。至さんは能面みたいな顔をしながらも、言葉の端端に憤怒を滲ませている。

 大事な人たちに、これ以上心配をかけたくない。その一心で俺がようやく息を整えたとき、獅童は愉快そうに笑った。

 

 

「我が愚息が世話になったな。養育費として、一生遊んで暮らせる程の金をやろう。……ああ、それとも、地位の方がいいか?」

 

「そんな頭で次期国家元首だと? 笑わせる。国の舵取り以前の問題だな」

 

「人を見る目がないな。至が地位や名誉如きに心を奪われる人間に見えるなら、貴様の目は節穴の極みだ。獅童」

 

「美鶴ちゃんと南条くんの言う通りだ。病院行け病院。つーか、迷惑だからやめてくんねぇ? 吾郎はウチの子なんだから」

 

 

 呆れ果てた様子の美鶴さんと南条さんが額に手を当てる。至さんもそれに同意し、獅童を冷ややかに見つめた。獅童は忌々し気に舌打ちする。

 

 

「……成程。ゴミはゴミに似たのだな。その反抗的な目、そこにいる明智やガキどもとそっくりだ」

 

「ありがとうよ。保護者としては最高の褒め言葉だ」

 

「本当にな!」

 

 

 至さんは皮肉げに笑い、航さんは吐き捨てるようにして同意した。2人の話を聞いた獅童は、俺が何のために近づいてきたかの真意を理解したらしい。

 「女の復讐のためというのは間違いではなかったな」なんて笑いながら、俺やジョーカーが今まで行ってきた努力を「無駄」だと切り捨てた。

 力ある者が活躍するためには、少数の愚民は犠牲になっても仕方がない――光と影の対比を語る獅童の姿は、持論が正しいと盲目的に信じている様子だった。

 

 

「貴方が殺してきた人は、死んで当然の人だったと言いたいの……!?」

 

「……そんな調子で、今までずっと殺してきたってのかよ……!」

 

 

 ノワールが驚愕し、荒垣さんが心底信じられないと言いたげに獅童を見つめる。特に荒垣さんは、過失致死で天田さんの母親を死なせてしまった過去があった。

 

 不本意に人の命を踏みにじってしまったことを、天田さんの人生を滅茶苦茶にしてしまったことを、荒垣さんは強く悔いていた。予測不可能回避不可能な事故だという事実よりも、命を奪ってしまったということを重く受け止めていた。罪を償うために制御剤にも手を出して、自分の寿命を著しく潰して、復讐者の為に死ぬ準備までしていた人だ。

 けれど、荒垣さんは天田さんに配慮していた。人の命を奪ってしまった荒垣さん自身が苦しんだのだから、天田さんもきっと苦しむだろうと予期したが故に。11歳の子どもが自分と同じ苦しみを背負い、自分のようになってしまうという未来予想図は耐えられなかったのだろう。自分は殺されても当然だが、自分以外の人間が業を背負うことを嫌った人だ。

 

 だからこそ、荒垣さんは獅童の思考回路を理解できるはずがない。受け入れられるはずがない。

 人1人を死なせてしまったことを深く悔いた男に、蟻を踏み潰すようにして数多の命を奪った挙句正当化した外道など。

 獅童の言動に賛同できないのはパンサーと命さんも同じようで、剣呑な面持ちで獅童を睨みつけた。

 

 

「完全に狂ってる……」

 

「本当にどうかしてるよ。人の命を何だと思ってるの!?」

 

 

 命さんの憤り具合は半端なものではない。彼女は両親と死に別れたことを皮切りに、『死』や『命』というワードに縁深い旅路を歩むこととなった。

 その旅路で得た“命のこたえ”を得た命さんは、『死』や『命』ときちんと向き合いながら生きている。故に、『命』を粗末に扱い、悪戯に『死』を振り撒く獅童が許せないのだ。

 

 

「貴様ら愚民がそれを理解できるとは思っていない」

 

 

 不意に、上空から声が響いた。見上げれば、達磨の描かれた横断幕の上部に佇む人影の姿。

 つい先日戦った獅童の『駒』にして、『廃人化』と精神暴走の実行犯――獅童智明が、そこから壇上へと着地した。

 息子の姿を見た獅童は明らかに動揺した。だが、智明は獅童のことなど歯牙にもかけず、淡々と言葉を紡ぐ。

 

 

「人間は導き手を欲する生き物だ。怠惰こそが人間の本質。統一する者がいてこそ、人間の願いは叶う。それを、“我が主”に代わって()が証明しよう」

 

「そうだ、智明。()()が証明してみせよう。――貴様ら怪盗団を、叩き潰すことでな……!」

 

 

 俺は智明の様子に違和感を覚えたが、それよりも先に、獅童が不敵に笑う方が早かった。息子が来たことで勢いを取り戻したらしい。

 

 獅童はマントを翻す。次の瞬間、奴は上半身を惜しげもなく晒していた。服の下には鍛え抜かれた筋肉が潜んでいたらしい。獅童の認知から考慮すると、“奴は箱舟の船長に相応しくあるよう、自らの研鑽を欠かさず行っていた”ということになる。結果、あのような姿を取ることができたのだろう。

 俺の予感は間違っていなかったようで、ナビが「あのムキムキはハッタリじゃないよ!」と警告してきた。愚民どもの力を借りずとも、自分で叩きのめすという意志を示している。対して智明はシャドウを召喚すると、それらを一つに合体させて強力なバケモノを顕現した。奴はバケモノを俺たちへと嗾ける。

 

 だが、バケモノの進路を阻むようにして、大人たちが飛び出した。次々とペルソナを顕現し、バケモノと智明へ攻撃を仕掛ける。智明への敵意を察知したバケモノは、即座に智明を守るように動く。

 至さんのナイトゴーンドが、航さんのヴィシュヌが、命さんのタナトスが、荒垣さんのカストールが、南条さんのヤマオカさんが、美鶴さんのアルテミシアが、バケモノに躍りかかった。

 

 

「明智くん! こちらは我々に任せろ!」

 

「吾郎、お嬢! ――決着、付けて来い!」

 

 

 南条さんと至さんが振り返って微笑んだ。命さんと荒垣さんも不敵に笑う。2人の双瞼は優しく瞬いていた。

 

 

「思いっきりぶん殴って来なよ! 今まで酷い目に合わされたんだから、数発殴るくらい許してもらえるって! そうじゃなきゃ不公平よ!」

 

「吾郎、黎。――怪盗団、死ぬんじゃねえぞ」

 

 

 バケモノを使役していた智明も、大人たちの実力を察知したらしい。忌々し気に舌打ちし、ペルソナを顕現した。

 赤と青を纏った黒羽の大天使が降り立ち、数多の光が降り注ぐ。それを遮るようにして、冷気と風が吹き荒れた。

 

 

「小癪な……!」

 

「外道が何か言っているようだな。……まあ、俺たちには関係ない話だろうが」

 

「フフ、仰る通りだ。悪鬼外道に情けは不要。――処刑する!」

 

 

 航さんは無表情で吐き捨てると、即座に剣を構えて駆け出した。美鶴さんも不敵に微笑みながら突剣を引き抜いて彼の後に続く。

 

 ――俺の尊敬する大人たちなら、任せられる。俺はそう信じることができた。

 

 

「クロウ、立てる?」

 

「勿論。戦えるさ」

 

 

 心配そうにこちらを覗き込むジョーカーに笑い返し、立ち上がる。凄まじいオーラを身に纏った獅童は、ファイティングポーズで俺たちと対峙していた。

 

 長かった。長い間、俺は獅童正義を追ってきた。のたうち回りたくなるほど苦しい夜を超えて、愛する人や大切な仲間と共に、どこかの世界で抱いた後悔や祈りの権化も連れて、ようやくここまで来れたのだ。

 すべては奴の罪を終わらせるため。愛する人――ジョーカー/有栖川黎に着せられた冤罪という汚名を雪ぐため。そうして、愛する人や尊敬できる大人、大切な仲間たちと一緒に生きる明日を手に入れるために。

 

 

「――行こう、みんな」

 

「おう!」

「ああ!」

「うん!」

「ええ!」

 

 

 ジョーカーの音頭と共に、俺たち全員が得物を構えて駆け出した。

 日本の未来を、俺たちの明日を決めるための戦いが、幕を開ける。

 

 




魔改造明智の獅童パレス攻略、VS獅童の第1段階目です。今回は区切りがいいのでここまで。智明に関することをもっと多く描写したかったのですが、奴が本性を晒すのは展開的にもう少し後なのでお預けと相成りました。
次回は獅童第2形態戦、および獅童との決着までになる予定。今回は南条圭、桐条美鶴、P3P主人公♀と荒垣真次郎の夫婦、魔改造明智の保護者達がゲスト参戦。財閥トップは獅童のやり口に、荒垣夫婦は命を踏み躙っても悪びれる様子のない獅童に、魔改造明智の保護者は獅童の態度に怒りそうだと思った次第です。
拙作P5主人公は女の子なので、その影響もあってか獅童の下種&腐れド外道度合いが上昇しました。結果、魔改造明智と保護者達の逆鱗に触れた模様。次回辺りに、魔改造明智が発散のため暴れる予定となっています。“明智吾郎”の怒りも天元突破状態なのでどうなることやら。
獅童は原作明智を馬鹿にしていましたけど、獅童にだってお粗末な部分はあるんですよね。一色さんの研究データをきちんと管理していて、特に『改心』に関わりそうなワードをピックアップしていれば、予告状が出た時点で手を打つことができたはずなんですよ。思い切りの良さはあったのだから、もう少し早ければ……。
怪盗団が有名になっていく中で、『改心』のカラクリに気づけるチャンスは幾らでもあったはずです。特に10月末~11月半ばは原作明智を怪盗団の元に張り付かせている訳だから、原作明智から『改心』のメカニズムを聞かされていたでしょう。その時点で一色さんのデータを見直していれば、『改心』を防ぐ方法を発見できた可能性があります。
……そう考えると、「完璧主義者で頭は切れても、肝心要の大一番でしくじる」という点は親子の遺伝だったのかも。うわあ、嫌な遺伝だなぁ(遠い目)

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