Life Will Change   作:白鷺 葵

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【諸注意】
・各シリーズの圧倒的なネタバレ注意。最低でも5のネタバレを把握していないと意味不明になる。次鋒で2罪罰と初代。
・ペルソナオールスターズ。メインは5、設定上の贔屓は初代&2罪罰、書き手の好みはP3P。年代考察はふわっふわのざっくばらん。
・ざっくばらんなダイジェスト形式。
・オリキャラも登場する。設定上、メアリー・スーを連想させるような立ち位置にあるため注意。
 @空本(そらもと) (いたる)⇒ピアスの双子の兄で明智の保護者その1。武器はライフル、物理攻撃は銃身での殴打。詳しくは中で。
 @獅童(しどう) 智明(ともあき)⇒獅童の息子であり明智の異母兄弟だが、何かおかしい。獅童の懐刀的存在で『廃人化』専門のヒットマンと推測される。詳しくは中で。
・歴代キャラクターの救済および魔改造あり。
・一部のキャラクターの扱いが可哀想なことになっている。特に、『普遍的無意識の権化』一同や『悪神』の扱いがどん底なので注意されたし。
・アンチやヘイトの趣旨はないものの、人によってはそれを彷彿とさせる表現になる可能性あり。他にも、胸糞悪い表現があるので注意してほしい。
・ハーメルンに掲載している『運命を切り開くだけの簡単なお仕事』および『ペルソナ3異聞録-.future-』、Pixivの『2周目明智吾郎の災難』および『【一発ネタ】有栖川黎の幼馴染』の設定を下地にし、別方向へ発展させた作品である。
・ジョーカーのみ先天性TS。
 ジョーカー(TS):有栖川(ありすがわ) (れい)⇒御影町にある旧家の跡取り娘。旧家制度は形骸化しているが、地元の名士として有名。身長163cm。
・歴代主人公の名前と設定は以下の通り。達哉以外全員が親戚関係。
 ピアス:空本(そらもと) (わたる)⇒明智の保護者2で、南条コンツェルンにあるペルソナ研究部門の主任。
 罪:周防 達哉⇒珠閒瑠所の刑事。克哉とコンビを組んで活動中。ペルソナ、悪魔、シャドウ関連の事件の調査と処理を行う。舞耶の夫。
 罰:周防 舞耶⇒10代後半~20代後半の若者向け雑誌社に勤める雑誌記者。本業の傍ら、ペルソナ、悪魔、シャドウ関連の事件を追うことも。旧姓:天野舞耶。
 ハム子:荒垣(あらがき) (みこと)⇒月光館学園高校の理事長であり、シャドウワーカーの非常任職員。旧姓:香月(こうづき)(みこと)で、旦那は同校の寮母。
 番長:出雲(いずも) 真実(まさざね)⇒現役大学生で特別調査隊リーダー。恋人は八十稲羽のお天気お姉さんで、ポエムが痛々しいと評判。
・「2罰ボスの外見を見た人間の反応」に関するねつ造設定がある。
・史上最低な(事実上の)プロポーズが出てくるので注意してほしい。
・真や大宅一子が可哀想な目にあっている。
・普遍的無意識とP5ラスボスの間にねつ造設定がある。


やればできるが、最初からできれば苦労しない

 怪盗団の証拠――ボイスレコーダーによる録音だ――と竜司の電話による不用意な発言が原因で、怪盗団である僕たちは新島さんから脅迫される羽目になった。

 怪盗団の正体を黙っている代わりに、彼女はある取引を持ち掛けてきた。“正義を示せ”というお題目の下、対象者の『改心』を依頼してきたのである。

 

 

『……新島さんが『改心』させたい相手って、秀尽学園高校で発生している詐欺や恐喝事件の犯人かい?』

 

『ええ、そうよ。奴自身は図に乗ってマフィアの『ボス』を名乗ってるけど、実際はフィッシング詐欺の元締めらしいの。しかも、子どもばかりを狙っているわ』

 

 

 『察するのが早いわね。まあ、明智くんは昨日の話を聞いていたからでしょうけど』と、新島さんは言った。彼女の双瞼には強い意志がある。“意地でも怪盗団に張り付いて、何かを掴む”のだと覚悟を決めた眼差しだ。

 僕と別れて至さんに送られた彼女は、彼から何を聞かされたのだろう。“至さんが誰かに声をかけると仲間が増える”というジンクスが頭をよぎったが、その推察はまだ口に出せる段階ではないので黙っておくことにした。

 イセカイナビを使うには、対象者の名前と、対象者が自身のパレスを何だと思っているのかを指すキーワードが必要だ。だが、新島さんが知っている情報は、詐欺と恐喝事件の主犯を直接『改心』に繋げるようなものには至らない。

 

 『フィッシング詐欺の元締めに脅された生徒は一斉に口を噤んでしまうため、警察ですら実情が掴めないままよ』――新島さんは堂々と言い切った。

 

 彼女の要求に応えるためには、自称マフィアの『ボス』の名前を調べることから始めなくてはならない。

 新島さんは強い口調で語る。『正義を名乗っているならば、それを示して見せろ』と。

 

 

『奴らは渋谷を根城にして活動している……それだけが頼りの情報。期限は2週間。過ぎれば、すべての証拠を警察と学校に提出する』

 

『……成程、退学および少年院送りを盾にするときたか。新島先輩のやり口も鴨志田先生と大差ないね。脅迫内容だって、股を開くか開かないかだけの違いだ』

 

『黎!! 女性がそんなこと言っちゃいけない!!』

 

 

 新島さんの脅迫に対し、黎は静かな微笑を湛えて返答した。僕は即座にツッコミを入れたが、黎はいい笑顔で、

 

 

『私が股を開く相手は生涯1人だけと決めている。勿論、吾郎だ』

 

『待って! 待って! 何かもう色々と待って!! 嬉しいけどそうじゃなくて、そうなんだけどそうじゃないんだ!!』

 

『た、大変だ! 吾郎がぶっ壊れた!!』

 

『まずいな。収拾がつかんぞ……!』

 

『新島先輩、どうするんですか!? 先輩のせいでトンデモないプロポーズになっちゃったじゃない!!』

 

 

 黎が落とした史上最低な(事実上の)プロポーズに、僕の頭内が爆発した。ここから数分間の記憶はよく思い出せないが、ただひたすら『違う、そうじゃない』、『こんなプロポーズは嫌だ』と訴え続けたことだけは確かだ。

 あんまりにもあんまりな発言に、新島さんは赤面してあんぐりと口を開けていたらしい。彼女は黎の発言に衝撃を受けたようで、言葉にならない悲鳴を上げていたようだ。後から黎に聞いた話では、新島さんは大変困惑していたという。

 僕の記憶がはっきりし始めた頃にはもう、怪盗団の面々も新島さんも死んだ目をしながら疲れ果てた顔をし、黎だけが綺麗な笑みを浮かべていた。何があったのかを聞いたが、黎以外の全員が沈痛そうな面持ちで視線を逸らす。黎含み、誰1人として語ってはくれなかった。

 

 心が折れてしまいそうな面持ちのまま去っていく新島さんの背中を見送った僕たちは、これからどうするかを相談し合った。

 

 班目を『改心』させた僕らは現在、手持無沙汰の状態である。メメントスで小物を狙って『改心』させているだけだ。他に狙うべき候補もいないので、件のヤクザを候補者としてピックアップし、情報収集することになった。

 仲間たちが渋谷で聞き込み調査を行う中、警察関係者や司法関係者にコネのある僕は、頼れる大人たち――聖エルミン学園高校、七姉妹学園高校、月光館学園高校、八十稲羽高校のOBOGや現地在住の面々に連絡して話を聞くことにした。この学校も、東京のヤクザが関わっていると聞いたためだ。

 

 

『秀尽学園高校でも、月光館学園高校(ウチ)と同じような事件が起こってるのね……。しかも、学校がある場所は“元締めがいると思しき東京”か……』

 

『警察から何か、元締めが分かりそうな情報とか入ってない?』

 

『支部の連中はトカゲのしっぽ扱いだったみたいで、元締めが東京のヤクザってことしか分かってなかったみたい。そいつ、支部の連中には“ミズチ”って名乗ってたらしいけど、『恐らく偽名だろう』って』

 

 

 月光館学園高校の若き理事長である荒垣命さんは、僕の問いに対し、悔しさを滲ませた様子で答えてくれた。ついでに、その支部長を薙刀一本で鎮圧したのも命さんなのだという。校内では箝口令が敷かれているが、まことしやかな噂として囁かれているそうだ。恐らく巌戸台および月光館学園高校は今後も安泰であろう。

 

 

『ああ、七姉妹学園高校(セブンス)の事件なら有名になってるぜ? ウチの常連客にも七姉妹学園高校(セブンス)の奴がいるんだが、学生たちが集まって『脅されて困ってる』って相談し合ってる姿を何度か見かけたな。他にも、支部の連中らしき奴らが団体でやって来ては、『“セラ”のノルマが厳しい』って零してた』

 

『“セラ”っていうのは、東京にいると思しき元締めの名前?』

 

『ああ、多分な。けど、達哉の話じゃ『詐欺グループ元締めは、下位グループには決して本名を教えない』って言うらしいぜ? 残念だが“セラ”も偽名だろう』

 

 

 七姉妹学園高校(セブンス)卒の三科雅(旧姓:華小路雅)さんを妻に持つ三科栄吉さんは、渋い顔をして教えてくれた。因みに、春日山高校(カス高)も似たような被害を受けたらしいが、七姉妹学園高校(セブンス)よりは全然マシだったらしい。むしろ、七姉妹学園高校(セブンス)の生徒が春日山高校(カス高)の生徒にバイトを紹介したことが原因による“巻き込まれた二次被害”的なものが多かったようだ。

 元春日山高校(カス高)番長(ヘッド)として、後輩たちが泣かされたことが許せなかったのだろう。栄吉さんは寿司屋営業の傍ら、珠閒瑠市の企業でOLをしているリサさんや刑事である周防兄弟と共同戦線で詐欺グループを撲滅したそうだ。仕事が終わると同時に駅のトイレへ駆け込み、死神番長メイクを施してからの出陣だったという。勿論、彼がぶちのめした相手――詐欺グループ支部長のパンツは脱がされたそうだ。流石は誉れ高きパンツ番長である。……最も、警察が来る前にきちんと穿かせ直したらしいが。

 

 

『八十稲羽高校でも同じような手口の事件が発生したって聞きましたが、その後は? 支部長、捕まったんですよね?』

 

『ああ。捕まえたには捕まえたんだが……そいつ、自殺したんだ』

 

『自殺……!?』

 

『東京にいる元締めの名前は“ホウジョウ”って証言してたが、本名ではないって言ってた矢先だったってのに……』

 

 

 八十稲羽の刑事である堂島さんが沈痛そうな様子で教えてくれた。素直に取り調べに応じていた支部長は、ある日突然自殺したのだという。御影町、珠閒瑠、巌戸台、八十稲羽の高校が狙われた理由を『“一部の連中なら察しが付く”共通点があるらしい』と仄めかした翌日のことだったそうだ。

 犯人が自殺したという幕切れに、各メディアからは非難轟々の嵐が巻き起こった。取り調べが厳しくて自殺したのではないか、という話題が跋扈した。『東京の弁護士が出てきて謝罪と賠償を請求されて大騒ぎになった』と堂島さんがぼやいていたが、その弁護士の名前は獅童の協力者と同姓同名であった。

 それだけではない。周囲からのバッシングにもめげず、各町の警察官――周防兄弟、真田さん、堂島さんが手を組んで黒幕を追いかけたのだが、謎の圧力がかかって捜査が打ち切られてしまったのだ。『上層部が黙って首を振るあたり、圧力をかけた連中はかなりの権力者だろうな』とは堂島さんの談である。

 

 

『秀尽学園高校の事件内容、聞いたよ。アヤセたちの学校……聖エルミン学園高校の手口と一緒だね』

 

『そっちはもう落ち着いたって聞きましたが、どんな情報が流れてますか? 噂レベルでも構わないんですけど』

 

『男子生徒は高額バイトで薬物を運ばされたり、女子生徒は難癖付けられて恐喝されて夜のバイトさせられたりしたっぽい。元締めが東京のヤクザってことしか分からないのは他と一緒だけど、その支部長は個人的に『有栖川家に対する恨みがある』って言ったみたいだよ』

 

 

 『それが、御影町の支部長に任命された理由だって証言したみたい』と、御影町でOLをしている綾瀬さんは付け加えてくれた。因みに、支部長は元締めの名前を“シロガネ”と証言したそうだが、恐らくそれも偽名だろうとのことだ。

 しかも、その支部長も獄中自殺したと言う。思った以上に素直に証言するので、警察が糸口を手にできると期待していた矢先のことだったらしい。今ではもう、その話題を出すことすらタブーになっている様子だ。堂島さんの証言と併せて考えると、やはり圧力がかかったのだろう。

 

 僕が黎たちと別行動している間に、黎の方も色々あったようだ。仲間たち全員で渋谷を回っていたら、何故か新島さんと遭遇したという。新島さんと協力してヤクザを探したが、結局収穫無しで終わったそうだ。

 

 

黎:新島先輩、私の電話番号を惣治郎さんから聞き出してた。

 

吾郎:徹底してるな。流石は冴さんの妹だ。敵に回ると恐ろしいね。

 

黎:でも、お詫びの電話してきたよ。事後報告でごめんなさいって謝ってた。

 

吾郎:お詫び、か。

 

黎:私たちへの風当たりが強いだけで、本当は悪い人じゃないのかもしれないね。

 

 

 黎とチャットをしていて、ふと気づく。佐倉さん呼びだったのが、いつの間にか惣治郎さん呼びへと変わっていた。

 どうやら黎と佐倉さんは良い関係を築けたらしい。このまま、彼が黎の味方になってくれたら嬉しいのだが。

 

 翌日、僕たちはカラオケボックスに集まって情報を出した。怪盗団のメンバーは殆ど情報がなく、僕の情報もターゲットを割り出すには至らない。分かったことは、“被害に合った学校のOBOGにペルソナ使いがおり、その面々を率いていたのが有栖川の関係者である”という繋がりだけだった。

 『素直に自供した犯人が全員自殺している』や『警察の方では捜査が打ち切られた』という話を聞いた面々は、顔を見合わせて渋い顔をする。“司法関係者と繋がりがある人間が、そのマフィアを守ろうとしている”――この事実が、ターゲットが如何に狙いにくい相手であるかを示していた。

 司法関係者が敵に回る/司法関係者から入手できる情報に制限がかかっているとなると、どこから情報を入手するべきか。考え込む面々に対し、僕と黎は目を見合わせた。脳裏に浮かんだのはマスコミ関係者――班目の件で共闘したキスメット出版の記者とカメラマンである。

 

 

『黎』

 

『うん。舞耶ねえなら、記者繋がりで詳しそうな人知ってるかもしれない!』

 

 

 僕と黎の予想は正解だった。舞耶さんに連絡したところ、以前別件で共闘した毎朝新聞の新聞記者を紹介してくれた。

 彼女はバー『にゅうカマー』で待っているという。……待ち合わせ場所は、所謂“オカマバー”であった。

 

 情報収集役として赴いたのは僕、黎、モルガナである。因みに、僕は某メイドの一件で身に纏っていた変装に野暮ったい黒眼鏡を追加して入店した。探偵王子の弟子がオカマバーに入るなんて噂になったら、様々な方面で不利益を被りそうな気がしたためだ。

 

 

「いやー、本当に来るとは思わなかったわー! その勇気に免じて何でも教えてあげるー!」

 

「それじゃあ、舞耶ねえとはどのようなご関係なんですか? 私、舞耶ねえとは親戚で、彼女のことは実の姉みたいに思っているんです」

 

「舞耶とはね、気づいたら腐れ縁になってたのよ。……おかしいわよねー。舞耶たちと会うと、『人間相手に取材をしてたはずなのに、どうしてか悪魔に取材する』羽目になるんだもん。当時は政治部所属だったから、『政治経済の取材してたはずなのに、なんでオカルトの取材やってるんだろ?』って首傾げながら悪魔の写真撮ってたわー……」

 

 

 件の新聞記者――大宅一子さんは遠い目をして天を仰いだ。

 

 ……成程。彼女も舞耶さんと黛さんによる『大変不本意極まりませんでした』系の事件に巻き込まれた被害者らしい。勿論、その一件の記事はボツになったようだ。

 悪魔と対峙して無事に返って来ることは――程度によってだが――どんなペルソナ使いでも難しい。何の力も持っていない生身の一般人で、よく生きていたものだ。

 大宅さんは何も語らなかったし、語りたがらなかった。僕たちも聞きたがらなかった。何ごともなかったかのように、黎が口を開く。

 

 

「それじゃあ、本題に入ります。渋谷の街を牛耳る闇について、教えていただけますか?」

 

「……へぇ。どうして知りたいの?」

 

「その元締めに用があるんです」

 

 

 大宅さんは暫し黙った後、「教えてあげてもいいけど」と言って取引を持ち掛けてきた。彼女は現在、心の怪盗団“サ・ファントム”を追いかけているらしい。元々は『廃人化』事件を追いかけていたのだが、情報が全然手に入らなくて暗礁に乗り上げていたという。

 記者が心の怪盗団というオカルトじみたものを追うとは、大宅さん自らがオカルト方面に足を突っ込んでいくようにしか思えない。「オカルトは懲りたはずでは?」と僕が問えば、大宅さんは乾いた笑みを浮かべながら酒を煽った。……多分、一番泣きたいのは大宅さん本人なのかもしれない。

 

 大宅さんが黎に取引を持ち掛けたのは、舞耶さんから“黎が秀尽学園高校の生徒である”ことを聞いたためだ。

 心の怪盗団事件の発端は鴨志田卓の一件である。そのため、「黎なら心の怪盗団に関する裏話を知っているのでは?」と思ったそうだ。

 嗤えないことに、僕は怪盗団の人間だし、黎は僕たちを束ねる怪盗団のリーダーご本人である。僕たちは思わず顔を見合わせた。

 

 大宅さんは「鴨志田の被害に合っていた生徒を独占取材したい」と言う。誰を紹介するかで、怪盗団の存続を揺るがしかねない事態に陥ってしまいそうだ。どうしようか、と、僕と黎が目で合図をしていたときだった。

 

 

「ミシマを紹介すればいいんじゃないか? アイツは怪盗団の味方だからな」

 

 

 モルガナの助け舟で、大宅さんに紹介する生徒は三島に決定した。大宅さんは上機嫌になり、僕らの交換条件を受け入れてくれた。

 「ワガハイの機転のおかげだ。感謝しろよ」と主張するモルガナには、後で至さん作のマグロステーキを進呈しておこう。

 

 

「……廃人化事件と怪盗団、なんかどっかで繋がってるような気がするんだよなぁ。都合のいい嗅覚なのかなぁ……」

 

 

 ……大宅さんの鋭い嗅覚に、僕はひっそり感嘆する。彼女も敵に回したくないタイプだ。できる限り協力関係を保ちたいものである。

 

 内心身構えていた僕たちの様子を知ってか知らずか、大宅さんはグラスの酒を煽った。

 そうして、真顔で僕たちへと向き直る。彼女はゆっくりと、噛みしめるように、マフィアの名前を口にした。

 

 

「金城潤矢。――キミたちが探しているのは、金城だと思う」

 

 

◇◇◇

 

 

 金城にとって、渋谷は“金を手に入れる銀行”という認識らしい。奴の認知は歪んでおり、渋谷を歩き回る人間はすべてATMだと思っているようだ。珠閒瑠の一件で舞耶さんが言っていた「キャッシュディスペンサー=金づる」という言葉が頭によぎった。

 

 歪んでいるのは人間に対する認知だけではなく、渋谷全体にも及んでいるようだ。その証拠に、鴨志田や班目のパレスを攻略した際、パレス以外の街並みは普通と同じだった。風にあおられた札束が宙を舞う。路肩には倒れたっきり動かないATM人間が転がっていた。マフィアのボスを張るだけあって、パレスの規模も桁違いだ。

 早速僕たちは、金城の庭である渋谷を散策する。だが、渋谷全体から金城という男を探すのは骨が折れるどころの話ではなかった。渋谷の街は広い。話を聞けそうなATM人間はショートしている者が大半で、少し話をしただけで倒れてしまう。彼らは一様に『金城は『足がつかない場所』にいる』と言い、それっきりだ。

 その後パレスを見つけた僕らは茫然とした。金城のパレスは空中に浮かんでいたのである。侵入の手立てがないため、僕たちはその日の探索を切り上げて現実世界へ帰還する。強い疲労感に体を引きずりながら、僕たちは一端家路についた。但し、僕の場合は例外で、黎をルブランまで送るために四軒茶屋へ寄り道することにしたのだが。

 

 一応、これは獅童智明の指示である。『怪盗団関係者に貼り付け』と言われたので、僕はその通りにしているだけだ。

 新島さんからの依頼/脅迫のせいでゆっくりとした時間が過ごせないから、デートの代替にしている訳ではない。断じて。だってモルガナ同伴だし。

 

 

「しかし、正義の証明って難しいな」

 

「今回の件は特にそうだね。警察の動きすら自在に操れる奴がバックにいるんだ。一介の高校生程度がどうにかできるものじゃない」

 

 

 鞄の中に入っていたモルガナが面倒くさそうにため息をつく。僕も素直に同意した。

 怪盗団は今、崖っぷちにいた。同時に僕は知っている。僕らと同じように、新島さんも崖っぷちにいることを。

 窮鼠が猫を噛むように、追いつめられた人間が何をするかなんて分からないのだ。注意を促すに越したことはない。

 

 

「……この前の模試の帰り、新島さんと会ったんだ。酷く思いつめたような顔をしてた。周りからは『どうして事件を解決できないんだ』とか『キミしか頼れる人間がいない』とか責められていて、相当参ってるみたいだ。冴さんも、ここ最近は新島さんに当たり散らしてるって言ってたね」

 

「成程。だから、新島先輩はどこか焦ってる感じがしたんだ」

 

「あの生徒会長も、居場所がないのか……。追いつめられたネズミは何をするか分かったモンじゃねえ。生徒会長が暴走しないように注意しとかないと――」

 

 

 モルガナが言い終わる直前、黎のスマホが鳴り響いた。誰かからメッセージが来たらしい。彼女がそれを確認していたとき、僕のスマホも鳴り響いた。メッセージの差出人は警察キャリア――次期参事官と噂される真田明彦さんからだ。

 

 珠閒瑠市からは周防兄弟、巌戸台からは真田さん、八十稲羽からは堂島さんが、詐欺恐喝グループの元締めを検挙するために合同捜査を行っていた話は耳にしていた。捜査が突如打ち切りになり、以後はタブー扱いにされてしまったことも。

 だが、周防兄弟や真田さんは諦めなかった。警察志望の千枝さんも加わり、無断で捜査を行っているという。堂島さんは別件に駆り出されているため身動きが取れずにいるようで、東京近隣の大学へ進学した千枝さんは彼の代わりに協力を申し出たという。勿論、周囲からのクレームおよび風当たりは酷いようだ。

 それから、『先日僕が探偵組や司法関係者組一同へ提供した情報であり依頼――金城潤矢に関する調査報告を直接伝えたい』ということで、彼らは今、四軒茶屋のルブランに集っているらしい。……何故だろう。佐倉さんが可哀想なことになっていそうな予感がする。

 

 真田さんはプロテインジャンキーだし、千枝さんはよく食べる人だ。周防刑事は甘党だし、達哉さんは甘いものが苦手である。

 後者は警戒しなくても良さそうだが、問題は前者だ。真田さんと千枝さんがフルスロットルしていなければいいのだが。

 

 

「吾郎。大宅さんが、『金城には黒いつながりがあるから、調査を止めた方が賢明だ』ってメッセージくれた」

 

「そっか。こっちも真田さんから連絡入ったんだ。『真田さんたちは今ルブランにいる』って。金城に関する情報を直接手渡したいってさ」

 

「よし。じゃあ、急いでルブランへ帰ろう」

 

 

 家路を急ごうと足を速めた黎の背中を追った僕は、ふと気づいた。

 周防刑事――つまり周防克哉さんは、猫大好きな猫アレルギーである。

 

 

「モルガナ。ルブランにいる刑事さん、猫アレルギーなんだ」

 

「ああそうか。現実のモルガナは猫だから気をつけないと。周防刑事のアレルギーは、一歩間違うと命に係わる系のレベルだったし……」

 

「……了解した。ワガハイ、適当な場所で時間を潰してくる」

 

 

 猫と言われたモルガナは不機嫌そうに眉をひそめたが、該当者のアレルギーが『命に係わる』レベルだと知って、渋々頷いた。黎の鞄から飛び出すと、彼は一足先にルブラン近辺へと駆け抜けていく。本当に足が速い。

 

 数分遅れでルブランに辿り着いた僕たちが扉を開けると、渋い顔をした佐倉さんが僕たちを迎えてくれた。僕らを見て表情を緩ませながらも、客には迷惑そうに視線を向け直す。

 気持ちは分からなくもない。だって、団体席に座っている客がとんでもないのだ。少女はカレーのお代わり4皿目だし、銀髪の年若い刑事はカレーにプロテインをかけている。

 サングラスをかけた刑事はコーヒーにミルクと角砂糖を投入し続けていた。辛うじて普通の客と言えそうなのは、粛々とコーヒーを飲み進める年若い刑事だけなのだから。

 

 

「あ、おかえり吾郎くん! 待ってたよ!」

 

「……カレー4皿お代わりする程待たせてしまってすみません、千枝さん」

 

「今4皿目食べ終わったんだー。ここのカレー、本当においしくてさー!」

 

 

 里中千枝さんはうっとりとした口調でルブランのカレーを絶賛した。女性から褒められるのは嬉しいらしく、佐倉さんがちょっと得意げに笑った。しかし、彼はカレー鍋に視線を向けると、困ったような顔をする。大方、面々の類稀ない食欲によって鍋の中身が大変なことになったのであろう。

 他にもカレーを食べ進めている人物がいる。次期参事官と目される警察キャリア、真田明彦さんだ。真田さんも千枝さん並みにお代わりを繰り返しており、おまけに“特性カレーにプロテインをかけて食べる”という暴挙に出ていた。佐倉さんが眉間に皺を寄せるのは当然であった。

 

 荒垣夫婦の結婚式で、料理にプロテインをかけて荒垣さんに叱られていた男だ。未だジャンキーは治っていないらしい。閑話休題。

 

 

「吾郎くん。例の件に関する調査報告だが――」

 

 

 ようやく自分が飲める味になったらしい。周防刑事はコーヒーを啜ると口を開き、ちらりと黎へ視線を向けた。意味が分からない黎は首を傾げる。

 それを見た周防刑事は、何とも言い難い表情で僕を見返した。……おそらく、僕が黎に何も言っていないことに関して思うところがあるのだろう。

 『もう少し待ってほしい』の意を込めて、僕は小さくかぶりを振って周防刑事を見返した。他の面々と顔を合わせた刑事組と志望者は、僕の意志を汲んでくれた。

 

 

「単刀直入に言う。“件の男”には、キミが追いかけてる“黒幕”が関わってた」

 

「……そうですか」

 

「あと、以前の“画家”にも“黒幕”との繋がりを発見した。金銭的な方面で、な」

 

 

 “件の男”は調査を依頼した金城潤矢、僕が追いかけている黒幕は獅童正義。“画家”である班目一流斎にも獅童との繋がりがあった――これでまた、獅童との因縁が増えた。

 

 

(秀尽学園高校の校長が獅童と繋がっていて、鴨志田の暴挙を野放しにしていた。班目と金城は獅童にとって金の出所……。怪盗団のターゲットに選ばれた3人は、獅童の関係者ばかりだ)

 

 

 1度や2度なら、偶然と言い張れるだろう。だが、3度目となれば最早“故意”としか言いようがない。

 

 怪盗団は“獅童に係わる人間たちをターゲットに()()()()()()()”。自分たちにその気がなくても、何かが意図的に獅童の関係者を狙うよう介入してくる。『奴』は手を変え品を変えて、獅童に至るまでの道筋を作っていた。そんな真似ができるのは人間ではない。『神』と呼ばれる類だ。

 半信半疑だった――そうでなければよいと思っていた予感が的中し、僕は大きく息を吐く。同時に湧き上がってくるのは、実の父に対するささやかな希望(まやかし)だった。“『神』の介入がなければ、獅童は善人のままだったのではないか”なんて、馬鹿なことを夢想する。もしかしたら、僕も認められて愛されるチャンスがあるのではないか、と。

 

 そんなことはない。そんなことはあり得ない。だって、獅童が議員になってから、人を道具のように使い潰すやり方は徹頭徹尾変わっていないのだ。

 政敵も、使えなくなった自分の側近も、気に入らない人間も、僕を身籠った母のことだって容赦なく切り捨ててる。『廃人化』ビジネスが始まる以前から。

 『人が変わったようだった』という噂だって一度も聞いたことがなかった。『五口愛歌と獅童智明(旧姓:五口智明)』に対して愛情を示すこと以外、特に違和感はない。

 

 

「……吾郎。そろそろ、覚悟を決めたらどうだ?」

 

「達哉さん……」

 

 

 コーヒーを飲み干した達哉さんが、静かな面持ちで僕を見つめる。

 僕らと一緒に珠閒瑠を駆け回った“彼”ではないのに、“彼”と同じような面持ちだった。

 

 

「そうだな。何も言われないまま……というのは、辛いぞ」

 

 

 カレーを食べ進めていた真田さんも、沈痛そうな面持ちで頷いた。真田さんは荒垣さんの一件を言っているのだろう。兄弟同然に育った彼らは、荒垣さんのペルソナ暴走事件から大きくすれ違ってしまっていた。それ故に、荒垣さんの戦線復帰に誰よりも喜んだのは真田さんである。

 けれど、また一緒に戦えるという喜びから、真田さんは荒垣さんの違和感に気づけなかった。荒垣さんが天田さんに殺されるために帰ってきたことに気づけなかった。その違和感を察知したときにはもう、荒垣さんは覚悟を決めていたし、天田さんも復讐のために動き出していた。

 荒垣さんは真田さんに対して何も言わなかった。誰にも何も言おうとしなかった。だからこそ、荒垣さんがストレガのタカヤに撃たれるという事件が発生した際、特別活動部の面々は強い衝撃を受けたのだ。それは僕も同じだったし、察していて何もできなかった至さんは殊更辛かっただろう。

 

 僕は黎へ視線を向けた。黎は何も言わないが、僕のことを心配してくれていることが伝わってくる。不安であること以上に、僕を信じて待っていてくれている。

 

 思えば、僕は今まで黎や怪盗団の面々に隠し事ばかりしていた。僕が『改心』させたい相手であり黎の冤罪をでっちあげた犯人――獅童正義が僕の父親であることも、奴の後ろに『神』が蠢いていることも、何も言っていない。

 今回の一件で確証は得た。仲間たちに話さねばならぬと思うのだが、口を開くと言葉が喉に閊えて出てこない。そんな自分の弱さが嫌で、この世から消えてしまいたいとさえ思ってしまう。……いや、本当は、今すぐ消えてしまうべきなのだろう。僕は。

 

 

「黎。僕は――」

 

「吾郎、無理しないで。……顔色悪いよ」

 

 

 半ば真田さんや達哉さんに促されるまま、僕は口を開く。だが、黎によって言葉を塞がれた。

 僕にはそんなつもりはないのだが、周りから心配そうな眼差しを向けられるあたり、相当な顔をしていたのだろう。

 

 

「……ごめん」

 

 

 ――結局僕は、何も言えないままだった。

 

 

 

 

 

 そうして、その日の夜。

 

 

克哉:ルブランからの帰り、黒猫を見かけた。

 

吾郎:アレルギー大丈夫だったんですか!?

 

克哉:不思議なことに、あの黒猫には近づいてもアレルギーが出なくてね。嬉しくてつい2時間ほど戯れてしまったんだ。

 

吾郎:そ、そうですか……。

 

克哉:しかもその猫、喋るんだ! ペルソナも使えるんだ!! アレルギーが出ないで猫と戯れることができるなんて最高だなあ!!

 

達哉:そいつ、黎やお前の名前を連呼してたんだが、知り合いか?

 

 

 降って湧いたようなモルガナの災難に、僕は遠い目をした。

 そういえば僕らは、周防刑事が猫好きだとは伝えていなかったな、と。

 

 

◇◆◆◆

 

 

 ざぷん、と、水の音がした。ゆらゆらと揺蕩う心の海の中で、探していた少女の姿を見つけた。

 青年は朗らかな笑顔を保ったまま、少女に声をかけた。振り返った少女が首を傾げる。

 

 

「秀尽学園高校の校長先生、大変そうだね。このまま事態を収拾できなかったら、あの人クビにされちゃうから必死みたいだよ」

 

 

 青年の言葉を聞いた少女は、びくりと身を震わせた。

 

 

「ヤクザに脅されている生徒も可哀想だ。警察に頼れないから新島さんに相談したのに、新島さんは何も解決できないでいる」

 

 

 少女の名前は新島。名前を呼ばれた彼女は、怯えた顔をしてこちらを見上げる。

 

 

「新島検事、本当に困ってたみたいだ。『キミがいるせいで何事もうまくいかない』って。『明智くんみたいに優秀な子がよかった』って」

 

 

 明智吾郎の名前を出した途端、新島は顔を真っ青にして彼の名前を鸚鵡返しにした。

 金色の双瞼に浮かぶのは、明智吾郎への羨望と怒り。

 

 

「ねえ、いいのかい? ……このままだと、キミは“役立たず”になっちゃうよ?」

 

 

 それは甘美な毒のように、新島の心を侵していく。

 

 

「“役立たず”ってなったら、どこにもいられなくなってしまうね」

 

 

 新島は黒い影を纏い始めた。どこからか、バイクのエンジン音が響き渡る。但し、その音は明らかに正常なものではない。

 できればそのまま大破してくれれば万々歳だが、それでは()()()()()だろう。青年はくつくつと笑った。

 それに、新島の心は強い。“反逆の徒”としての才能と加護のため、青年が施した『暴走』も簡単に解くことができるはずだ。

 

 まあ、元々彼女に施した『暴走』は一時的なものだった。金城の元へ突っ込んでくれれば、正直な話、後はもう()()()()()()()()()()()()

 

 

「役に立ちたいなら、行動しなきゃ」

 

 

 言葉で新島の背を押してやる。黒い影を纏った少女は当てもなく駆け出した。

 その背中が見えなくなるのを見送って、青年は目的を果たしたと言わんばかりに歩き出す。

 

 

「意外と使えるね、ニャルラトホテプ」

 

『――調子に乗るなよ。■■■■■■の端末風情が……!』

 

 

 青年の内側から、不快そうに呻く声が聞こえてきた。

 

 

◆◇◇◇

 

 

「……カネシロの居場所を掴めればいいのね?」

 

 

 僕らからの話を盗み聞きした新島さんは、険しい顔をしたまま問いかけてきた。目が完全に据わっている。

 『新島さんの様子がおかしい』と根回ししていたのが吉と出たようで、全員が嫌な予感を察してくれたらしい。

 

 

「お、おい会長サン! あんた、一体何をするつもりなんだ!?」

 

「だ、駄目だからね!? 変なことされたらこっちが困っちゃうから! 一端落ち着こう!?」

 

「変なこと? 大丈夫よ、カネシロの居場所を掴んでくるだけだもの。むしろ貴方たち怪盗団にとって、メリットのはずでしょう?」

 

 

 竜司と杏が新島さんを止めようとするが、新島さんは不気味な笑みを浮かべながら1人でうんうん頷いている。まるで何かに取り憑かれてしまったかのようだ。

 僕たちが金城のパレスを探し回り、諦めて撤退したその日に何があったのかを察することはできない。だが、その1日で、新島さんのタガが外れてしまったのだろう。

 理知的な生徒会長の様子からは程遠い形相だ。彼女がここまで取り乱す原因は何だろう? 学校関係者から何かを言われたのか、それとも冴さんの八つ当たりか。

 

 青黒い炎が渦巻いているようなオーラを背負った新島さんは、無言のまま黎のスマホを操作した。お互いのスマホを予め通話状態にしておくことで、新島さんが誰かと話している内容が黎に筒抜けになるようにしたらしい。

 

 

「これで下準備は完璧ね」

 

「……まさか、金城の関係者を脅して居場所を聞き出すつもり?」

 

「ばかな! 危険すぎる、考え直せ!」

 

 

 黎の推測に、祐介が慌てて新島さんを説得しようと試みる。だが、新島さんはずんずんと足を進めて行ってしまう。彼女の横顔は非常に鬼気迫っており、“何かを成そう”と足掻いているように感じた。

 祐介だけでなく、杏や竜司も新島さんの行く手を阻もうとした。新島さんはそれらを跳ね除ける勢いで足を進めた。新島さんは「貴方たちだって金城の居場所を知りたいでしょう?」と頑なになっている。

 

 

「新島さん」

 

 

 僕が声をかけた瞬間、新島さんが足を止めてこちらに振り返った。鳶色の瞳は、明らかに、僕に対する敵意で満ちていた。

 

 

「邪魔しないでよ明智くん。私は絶対、貴方なんかに負けない」

 

「……に、新島さん?」

 

「どうして貴方なの? お姉ちゃんに褒められて、認められて、必要とされて……! どうして私じゃないの!?」

 

 

 明らかに様子がおかしくなった新島さんに、慌てて杏が割り込んだ。「に、新島先輩、落ち着いて!!」――彼女の主張は、新島さんに届かない。

 新島さんは僕に対して敵意を剥き出しにする。『冴さんに必要とされているお前が羨ましい』と言わんばかりに、新島さんは僕を睨みつけてきた。

 理性の大部分を削ぎ落したかのように、彼女の双瞼は血走っている。獣のような凶暴な表情に、僕は思わず身を固めた。

 

 脳裏に浮かぶのは、獅童に愛される智明の姿。同じ獅童の息子なのに、全く別の人生を歩む者。

 智明は獅童に望まれて生まれ、僕は獅童から望まれなかった。ただそれだけの違いで、人生は劇的に切り替わる。

 

 

「私は役立たずなんかじゃない! ちゃんと役に立てるんだッ!」

 

 

 叫ぶように言い放った新島さんは杏を乱暴に突き飛ばし、今度こそ振り返らずに駆け出した。僕らは慌てて追いかけたが、渋谷の人混みによって見失ってしまう。

 再び新島さんの姿を見つけたとき、彼女は金城の部下たちによって車に連れ込まれたところだった。黎と新島さんのスマホは通話中で、奴らの会話はきちんと聞こえている。

 

 車のナンバーは祐介が描き止めていた。あの一瞬の間に、彼はナンバープレートを模写したらしい。

 

 

「伊達にクロッキーやっていた訳じゃない!」

 

「そこのタクシー、止まれ! 止まれって言ってんだろ!!」

 

 

 鬼気迫った様子で頷く祐介の横で、竜司がタクシーを留めていた。1台目のタクシーに無視されたため、やや乱暴な方法――タクシーの進路を遮るように飛び出した――である。車のナンバーと新島さんとの通話から聞こえてくる男たちの声を頼りに、僕たちは金城の居場所へ辿り着いた。

 

 

『ちょっと! 女の子相手に寄ってたかって何やってるのよ!?』

 

『あァ!? なんだテメエ!』

 

「ち、千枝さん!?」

 

「急ごう!」

 

 

 丁度そのタイミングで、新島さんとヤクザの会話に割り込んできた人物がいた。僕と黎にとっては聞き覚えのある女性のものだ。刹那、何かを弾き飛ばす音が響き渡る。『ぐぇっ』とヤクザの悲鳴が紛れて消えた。僕はひっそりヤクザへ黙祷する。里中千絵さんは八十稲羽メンバー中、根っからの武闘派のためだ。

 千枝さんは新島さんを救出したが、ヤクザはこれ幸いに“暴力を振るった”と言いがかりをつけて千枝さんを脅そうとする。千枝さんは新島さんを庇いながら怯むことなく反論した。女傑と謳われた巴御前(トモエ)――現在はハラエドノオオカミ――をペルソナとして所持していることは伊達ではない。

 

 だが、金城含んだヤクザどもはグルになり、『新島さんが脅迫し、千枝さんが暴力を振るった』と証言し、2人を揺すろうとしていた。証人は奴らがいる高級クラブの客と従業員全員――数で畳みかけるつもりらしい。

 

 

『……成程。脅迫と傷害未遂、もしくは強姦未遂の現行犯だな。いいタイミングだ』

 

『なんだ貴様!? どこから入って来やがった!?』

 

『周防達哉。珠閒瑠の刑事だ』

 

『同じく周防克哉、警察だ』

 

『同じく真田明彦、警察だ。貴様らを現行犯で逮捕する!』

 

「あ! この前の刑事!!」

 

 

 電話の向こうから響いたのは、聞き覚えのある男性の声だった。モルガナは周防刑事に2時間戯れられたことを思い出したのだろう。露骨に嫌そうな顔をした。

 警察官の出現に、僕と黎以外の怪盗団メンバーが反射的に足を止めた。このまま突っ込めば、自分たちの関係を訊かれ、正体がばれてしまうと思ったのだろう。

 だが、足を止めずに走り続ける僕と黎の姿を見て、「仕方がない」ということで覚悟を決めたらしい。僕たちと一緒に部屋の中へと飛び込んだ。

 

 そこでは周防刑事たちが金城と睨み合っているところだった。千枝さんは新島さんを庇いながらヤクザを見下している。足元には泡を吹いたヤクザやチンピラが転がっていた。

 屍累々の光景に、金城は若干身を縮ませていた。だが、警察よりも金城の方が優位に立っているという確信を持っているのだろう。強気に笑いながら警察官たちを挑発する。

 

 

「もう既に事件は解決扱い。捜査は打ち切られ、御影・珠閒瑠・巌戸台・八十稲羽の合同チームは解散してる……! 『二度と触れるな』って指示だって出たはずだ! テメエらのやってることは完全な命令違反! 上層部がどう判断するか、見ものだな!!」

 

「安心しろ。元々俺たちは、腐りきった上層部との折り合いはよろしくない。左遷やクビが怖くて正義が貫けるか」

 

「まったくだ。でなければ、わざわざ我々だけで捜査を続けたりなどしない」

 

 

 達哉さんは堂々と胸を張って宣言した。隣で頷く周防刑事に至っては、珠閒瑠の事件――当時の大臣・須藤竜蔵の手足として動いていた上司によって捜査妨害を受けた経験がある。その後、件の上司は周防刑事たちの前に立ちはだかり、彼らの手によって倒された。

 

 警察官一同の話を聞いた竜司が「ってことは、この刑事たち、後がヤバイんじゃ……」と漏らす。組織の中にいるはみ出し者が辿る末路は、僕たち怪盗団自身が知っているからだ。子どもより大人の方が風当たりが強いことも予想がつく。

 『ヤクザの元締めに関する捜査が打ち切られた』と言う話を思い出した杏と祐介も、険しい顔で刑事たちを見つめた。だが、嘗て“反逆の徒”として神に挑んだその眼差しは、誰1人として朽ちていない。尊敬した大人たちのままだ。

 

 刑事という地位と警察官という組織から脅しをかけてきた金城の目論見は見事に外れた。「だから何だ」と言わんばかりに金城を見下ろす警察官の眼差しは厳しい。

 本人たちが折れないのなら、警察組織の方面へ圧力をかけることにしたのだろう。金城は部下に命じて、どこかに電話させていた。獅童の息がかかっている協力者だろうか。

 金城が不敵に笑うあたり、電話の向こう側にいる人物は司法関係者であることに予測がつく。でなければ、刑事たちの捜査を強制的に打ち切らせる真似などできない。

 

 僕がそんなことを考えていたときだった。金城は新島さんや僕たち――特に黎へ視線を向けると、下卑た笑みを浮かべた。

 

 

「お前、御影町の旧家出身なんだろ? そんで、この刑事や生徒会長たちと“オトモダチ”なんだってな?」

 

「そうだけど」

 

「お前が金を用意してくれるんなら、全部手打ちにしてやってもいい。ここにいる刑事たちの処分が軽くなるよう根回しするし、この美人生徒会長への請求も300万の半分――150万にして、期限も3か月後にする。どうだ、いい条件だとは思わないか?」

 

「ちょ、ちょっと! 有栖川さんは関係ないでしょう!?」

 

「……分かった。いくら用意すればいい?」

 

 

 黎はちらりと僕らにアイコンタクトしてきた。彼女は最初(ハナ)からこの取引に応じるつもりがない。金城を『改心』させることで踏み倒す気でいるのだ。そのためにはまず、新島さんや周防刑事たちを無事に脱出させることを選択した。

 神妙な顔つきで提案を飲んだ黎に対し、金城は1000万円を要求してきた。支払期限は3週間後である。払えない場合は金城の指定した風俗店で1000万円と利子分を稼ぐことになるそうだ。普通に考えると到底無理な話だが、黎は踏み倒す気満々なので気にもしていない。

 

 最初は真田さんや周防刑事兄弟がぎょっとした顔で黎を見たが、淡々とした黎の様子に「何らかの手段を講じて踏み倒すつもりだ」と察した様子だった。若干表情を引きつらせながらも、神妙な顔を保っていてくれた。

 

 「前払いだからな」とほざいた金城は、大人しく周防刑事と真田さんの拘束を受け入れていた。奴らは最寄りの警察署に連行されるが、獅童の圧力によって即座に釈放されることだろう。金城はそれから3週間、黎の支払いを待ち続けるのだ。その間は警察組も動きを封じられてしまうだろうし、千枝さんも似たような目に合うかもしれない。

 正直胸糞悪い話だが、『改心』さえさせればこちらのモノである。そう言い聞かせていないと、僕が耐えられない。金を稼ぐために黎が体を売る? 獅童のような連中に、黎が滅茶苦茶にされる? ――そんなこと、絶対に嫌だった。これが原因で獅童に目を付けられてしまうと分かっていても、そのために黎を見捨てるなんて真似、できるはずがなかった。

 

 

***

 

 

 周防刑事、真田さんは金城とヤクザ一同を伴い最寄りの警察署へ向かった。

 千枝さんは明日大学で行われる講義に出席するために分かれた後。

 

 

「――本当に、本当にごめんなさい!」

 

 

 「私がバカだった」と、新島さんは頭を下げてきた。「何故あそこまでおかしくなってしまったのか、自分でも分からない」とも。

 

 役に立ちたいと、僕――明智吾郎に負けたくないという気持ちが暴発した結果が、“新島さんの強行”という形で顕現したのだろう。“必用とされるには役に立たねばならない”という意見の帰結は当然のことだし、僕自身にも似たような経験があるから気持ちはよく分かる。

 新島さんの場合は、冴さんから僕と比較された挙句『貴女は役立たず。私の人生の足を引っ張っている』と理不尽に当たり散らされていたらしいのだ。いくら理知的で冷静な新島さんでも、積み重なった痛みに飲み込まれ、耐え切れずに悲鳴を上げてしまうのは当然のことだった。

 ひたすら謝り倒す新島さんだったが、彼女は姉のことを思い出して深々とため息をつく。「これじゃあ、お姉ちゃんにもっと迷惑かけちゃう」――ああそうか。姉を想うからこそ、彼女は“いい子”でいようとしたのだ。姉の人生を守るために、姉の邪魔をしないために。

 

 

「私は子どもだから、負担しかかけなくて……いつも迷惑かけっぱなしで……だから、誰かの役に立ちたかったの」

 

「よく分かんねーけど……子どもだから役に立たないとか、ちょっとおかしいと思うぜ? そーゆーの」

 

 

 「会長サンの言葉が正しければ、俺はどうなるんだよ」と、竜司はバツが悪そうに呟いた。嘗て、彼は義憤に駆られて鴨志田を殴ったことがある。それが暴力事件として取り沙汰され、唯一の肉親である母親に多大な迷惑をかけていた。その経験を思い出し、自身を顧みていたのだろう。

 それでも新島さんは、自分が子どもであることにコンプレックスを抱いていた。“役に立たない子と言われることに対して、強い恐怖と悲しみを抱いていたのだ”と吐露する。その姿は秀尽学園高校の優秀な生徒会長ではなく、どこにでもいる普通の女子高生と変わらない。

 

 

「特に、高巻さんや有栖川さんには酷いことをしてしまったと思ってる」

 

「「えっ?」」

 

「……鴨志田の件、今思えば、学校ぐるみで隠蔽されていたんだわ。私、どこかで違和感に気づいてたのに、何もできなかった……」

 

 

 新島さんは、杏と黎に対して深々と頭を下げた。まさか頭を下げられるとは思わなかったようで、杏があたふたしながら新島さんをフォローする。そうして、彼女は僕へと向き直った。

 

 

「明智くんもごめんなさい! 貴方に八つ当たりしただけじゃなく、有栖川さんを――貴方の大切な人を、2回も危険に巻き込んでしまって……!」

 

「……そりゃあ、色々言いたいことはある。あるけど、何も言えないよ。『どうして自分じゃないんだろう?』って気持ちは僕にも分かるし」

 

「え?」

 

「僕の母親は、“僕を身籠った”という理由で悪い男に捨てられてね。つい最近の話なんだけど、母が亡くなって初めて、僕は実父と会ったんだ」

 

 

 “つい最近、実父と再開した”――初めて聞く僕の話に、黎が目を丸くする。怪盗団の面々も驚いた様子で耳を傾けた。

 あの日のことを思い出すだけで、胸が抉られるような痛みを感じる。鴨志田を『改心』させた後のビュッフェ。

 

 旧姓:五口智明――現在、獅童智明。獅童正義に愛された五口愛歌(おんな)の息子で、獅童に愛される子ども。俺とは違い、望まれて生まれてきた獅童の子どもだ。

 何もかもが正反対。俺が欲しいと願ったものを、奴はすべて持っていた。実父からの愛を、承認を、賞賛を、奴は惜しみなく与えられて生きていた。

 もしも、空本兄弟という保護者や今まで出会った信頼できる大人たち、そうして俺に寄り添ってくれる黎の存在がなかったら、俺は奴を見て何を思ったのだろう。

 

 

「……奴には息子がいたよ。奴に望まれ、奴に愛された子ども。俺と同じ年で、俺と同じ学校に通って、俺とは違って奴のことを『父さん』って呼んでた。呼ぶことが許されてた」

 

「ゴローと同じ年の子ども!? ってことは、ソイツ、はなから“ゴローの母親を弄ぶため”に近づいたってことか!?」

 

「らしいね。母は奴と結婚したくて僕を産んだらしいけど、その可能性は最初から存在しなかったんだ」

 

「なんて最低な奴だ……!」

 

「反吐が出るな」

 

「オンナを何だと思ってるのよ、そいつ!」

 

 

 俺の話を聞いて、モルガナと竜司が憤慨した。祐介は険しい顔で眉間の眉を深め、杏も怒りをあらわにした。黎は心配そうに俺を見つめていた。俺は肩をすくめる。

 

 

「それ見たとき、思ったんだ。『どうして自分じゃないんだろう?』、『アイツと俺の何が違うんだろう?』って。……好きで“望まれない子ども”として生まれたわけじゃねえのに」

 

「吾郎……」

 

「今は平気。立派な保護者がいるし、尊敬する大人がいるし、お前らがいるし、黎もいてくれるから。……みんなをアイツに取られる方が、ずっと嫌だ」

 

 

 そう言った途端、何とも言い難い照れ臭さを感じたのは何故だろう。口元を抑えて咳払いすると、優しく微笑む黎と目が合った。うん、だめだやっぱり照れる。恥ずかしい。本当にどうしよう。

 周りからの生温かい視線が刺さって来る。「ごちそうさまです」だの「また惚気かあ」だの「これで結婚してないんだぜ? 式はまだか?」だのと、疲れ切った声で呟いたのは一体誰だったのだろう。

 そのうちに「惚気の中にさらっと俺らも組み込まれてないか?」「マジ!? え、これ、喜んだ方がいいの!?」等と騒ぐ彼らにツッコミを入れる余裕はなかったし、何も言わないでおくことにした。

 

 さて、次は金城のパレスを攻略しなければなるまい。空に浮かぶ金城のパレスに侵入する方法を考えていた僕らだが、モルガナがハッとしたように声を上げた。

 

 銀行は、“銀行に用がある人間”以外立ち寄らないし、“銀行に用がある人間”以外通す必要はない。

 先程の突撃によって、金城は怪盗団を――特に黎と新島さんを『客』と認識した。

 

 

「ってことは、新島先輩は……」

 

「ああ! 超弩級の大手柄だ!」

 

 

 黎とモルガナがぱああと表情を輝かせて新島さんを見た。無謀な行動だと自信を顧みていた新島さんが目を丸くする。現実世界で発生した出来事のどこに手柄があったのかと、新島さんは困惑した様子で僕たちを見返す。

 多分、これから新島さんにはもっともっと困惑してもらう必要があるだろう。体を張って道を切り開いてくれた新島さんには知る権利があるし、“新島さんのおかげで僕たちが助かった”という証拠も見せてあげたい。

 

 新島さんを金城のパレスに連れて行くか否か。困惑する新島さんを放置して、僕らは早速会議を行う。不安を抱えるものの、結局は全会一致で“新島さんの同行”は決定した。

 

 早速イセカイナビを起動して認知世界へ踏み込む。僕らの格好を見た新島さんがパニックを引き起こしたり、金を吸い込むUFO――もとい、金城のパレスを目の当たりにして放心したりしたが、最終的にはすべてを受け入れてくれた。

 むしろ、素晴らしい頭脳を駆使し、何となくの認識でしかなかったパレスや認知に対して(比較的)きちんとした理屈を付加したあたり、秀尽学園高校が誇る優等生の頭脳は伊達ではない。スカルとパンサーが逆に感心するレベルだった。

 色々話し合ったが、早速僕たちは自分たちの仮説に賭けてみる。ジョーカーと新島さんがUFO銀行に近づいた瞬間、相手側の方から近づいてきた。ゲートを開き、客である2人を誘うように道を作り出す。――計算通りの光景だ。

 

 

「ありがとう、新島先輩! おかげで金城のパレスを攻略することができる」

 

「有栖川さん……」

 

「新島先輩がいなかったら、金城によって苦しんでいる人たちを助けられなかった。弱い立場の人たちを勇気づけることだってできなかったかもしれない。……だから、新島先輩は“役立たず”じゃない。大手柄だよ」

 

「それなら……それならよかった。私の方こそありがとう、有栖川さん――いいえ、ジョーカー……!」

 

 

 誰かに褒められたのが嬉しかったようで、新島さんは感極まったように声を震わせた。

 それを少し離れた場所で見守っていた僕らも、2人の元へ駆け寄る。新島さんの大手柄を褒めながら、僕たちは早速金城の銀行へと乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――いくよヨハンナ! フルスロットル!!」

 

 

 青白い核熱の光を纏ったバイク――ペルソナに跨り、新島さんはシャドウを蹴散らしていく。僕らは唖然とその姿を見つめていた。

 

 文字通り、新島さんの大手柄である。

 ……ここまで手柄を立てるとは予測してはいなかったが。

 

 




魔改造明智、自分にできることと自分が成すべきことを鑑みてモダモダしている模様。その脇で怪しく動く“誰か”の影。どうやらニャラルトホテプ(明らかに不本意っぽい)の力を使って真にちょっかいを出し、大暴走を引き起こさせたようです。
ここから、P5の黒幕と2罪罰のアレにオリジナル要素が付加される模様。P5の完全版が出たら十中八九破綻する系のねつ造設定です。P5ボス原典にいる“対になる存在”が不明という現状だからこそできた暴挙です。ご了承ください。
今回のゲストは警察組――周防兄弟(克哉と達哉)と真田明彦――と、警察志望者――里中千枝です。戦闘には不参加ですが、御影町のOL綾瀬優香、寿司屋板前の三科栄吉、月光館学園高校理事長荒垣命(旧姓:香月命)、八十稲羽の刑事堂島遼太郎もちょっとだけ登場しました。
真に“拙作の魔改造明智”と“真と魔改造明智を比較する(正常じゃない)冴さん”を投入したら多分荒れるだろうなと思ったのと、真の荒れ様に正当性が欲しいなと考えた結果があんなことになりました。あんな感じで『廃人化』担当はちょっかいを出してきます。

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