超速い慇懃無礼な従者   作:技巧ナイフ。

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やはり自分には話をまとめるという能力がない……。
というわけで、今回も話がほとんど進みません。


第23話 ファーストコンタクト

 日常の中、突如襲いかかってきた少女。その狙いがルミアだと思ったらグレンだった。そのグレンは蹴り転がされ、彼を蹴り転がした本人に手を引かれて走っている。

 

 そんな目まぐるしく変わる状況で、1番最初に我へと帰ったルミアは自分の手を引く信一に叫ぶ。

 

「シンくん、あの子魔術競技祭で私が変身してた子だよ!」

 

「……はい?」

 

「みぎゃ!」

 

 ルミアの声に、信一は急ブレーキ。一緒に走っていたシスティーナは対応できず、猫みたいな声を出して彼の背中にぶつかった。

 

「ほら、私が親衛隊に狙われてたからグレン先生と一緒に変身してた子。覚えてない?」

 

「あぁ〜……そう言われてみれば確かに」

 

 ということは、あの時ルミアを守ってくれていた1人でもあるということだろう。何故かグレンに斬りかかっていたが、些末な問題だ。

 なので、こっそりと3人でさっきの場所に戻ることにした。一応信一を先頭に、まだ争ってても対応できるように刀を布袋から出して。

 

 心なしか石畳の床や壁に傷が増えてるような気がするが、とりあえず争いは終わっていたらしい。

 

「お・ま・え・は〜!何のつもりだ!なんだ!?最近は俺に斬りかかるのがトレンドなのか!?」

 

 早朝、システィーナに淫らな事をしてると誤解されて信一に斬りかかられ、登校時間には少女に斬りかかられ……午前中に別々の生徒から2度も斬りかかられる教師は、世界広しといえどグレンくらいだろう。

 

 怒鳴るグレンの顔を少女は不思議そうに首を傾げて見ている。

 

「……挨拶?」

 

「これのどこが挨拶だ!殺す気か!」

 

「でもアルベルトが久し振りに会う戦友にはこうしろって」

 

「んなわけあるかぁ!」

 

 ———グリグリグリグリ

 

 グレンの両拳が少女の側頭部を抉る。

 

「痛い」

 

 少女は棒読みで抗議するが、グレンの手が止まる気配はない。

 

「あ……あのー……先生……」

 

 茶番を繰り広げる2人にルミアが控え目な声で呼び掛ける。それでやっと信一達に気付いたグレンは一旦少女を離し、事情の説明を始めた。

 

「こいつがさっきルミアの言っていた編入生のリィエルだ。表向きは……だがな。3人とも面識はあるんだっけか?」

 

「は、はい……私は……」

 

「あ、そうだ!魔術競技祭の……!」

 

 システィーナも思い出したらしく、手をポンと打った。

 

 だが、この信一は黙ってこの少女———リィエルを見ている。少し聞き逃すには不穏と思える部分がグレンの言葉にあったからだ。

 

「先生、表向きというのは?」

 

「あぁ。なんでも帝国政府がルミアを正式に警護することを決定したらしくてな。で、帝国宮廷魔導士団に所属するこいつが派遣されたらしい」

 

「この子が宮廷魔導士団……ですか?」

 

 編入生として来たからには自分達と同年代、小柄なので下手すると年下の可能性すらある。そんな少女が父親やグレンの同僚というのはほのかに信じ難いが、しかしさきほどの動きを見ると納得もできてしまう。

 

 なにはともあれ、このリィエルがルミアの護衛を担当するらしい。どうせ来るなら父親が来て欲しかったが彼も忙しいのだろうと納得して、信一は友好的な笑みを浮かべて手を差し出す。

 

「フィーベル家の従者、朝比奈信一です」

 

「朝比奈……?」

 

「あ、俺の父さんは朝比奈零。リィエルの同僚だよ」

 

「零の……息子……っ!」

 

 突如リィエルはガタガタと震え始めた。この反応、グレンに初めて自身の名前を告げた時の反応と同じだ。

 

「ぐ、グレン。シンイチは大丈夫な人?3時間一刀一槍耐久レースとかしない人?」

 

「あぁ、こいつは比較的安全な奴だ……白猫とルミアに手を出さなければ」

 

 グレンとリィエルは遠い目をして自分の父親についてなにやら言っている。

 

 というか、宮廷魔導士団での父親の評判がかなり気になるところだ。同僚にここまで怯えられるなど、一体なにをしているのだろうか?いつかパワハラで訴えられるんじゃないかと不安になってきた。

 

「あはは……よろしくね、リィエル。貴女が来てくれるなんて心強いよ」

 

 いつまで経っても遠くを見続ける彼女に、護衛対象のはずであるルミアが挨拶をする。それにハッと帰ってきたリィエルは小さな胸を張って自信満々に応えた。

 

「ん……任せて———グレンはわたしが守る」

 

 これにはルミアもポカン。唖然とした面持ちになる。

 

「俺じゃねぇよ!守るのはこっち!ルミア!!」

 

「……なんで?わたしはグレンを守りたい」

 

「そんなワガママ通るかあぁぁぁぁぁ!!」

 

 またもグレンは両拳でリィエルを挟み上げ、上下左右にシェイク。痛い痛いと棒読みで喚く彼女を眺め、心強い味方であるはずなのに不安感だけが募っていくのはきっと……信一の勘違いではないだろう。

 

 

 

 

 

「本日から新しくお前らの学友となるリィエル=レイフォードだ。まぁ、仲良くしてやってくれ」

 

 二組の生徒達の前にリィエルが立つと、学生らしく新しいクラスメイトに色めき立つ。

 

「おぉ……」

 

「……か、可憐だ」

 

「うわぁ、綺麗な髪……」

 

「なんだかお人形さんみたいな子ね……」

 

 感想は様々だが、奇しくも4人目のものが的確にリィエルの特徴を捉えていた。

 

 小柄で童顔、しかもほとんど表情が変わらず無駄な身じろぎもしない。だが相貌は非常に端麗であり、この国では珍しい青色の髪がどこか非現実っぽく見えてしまう。人形のように映るのは頷ける話だ。

 

「め、滅茶苦茶可愛い子だよなぁ……」

 

「つーかこのクラスの女子、全体的にレベル高過ぎだろ……」

 

 元々少なくはなかったが、リィエルの編入でさらに男子生徒は二組になれたことを神に感謝する者が増えたようだ。

 

「男子ってホント馬鹿よね」

 

「あはは……お嬢様派はごくごく少数ですからね」

 

 そんな男子生徒をシスティーナはとっても冷ややかな目で睥睨していた。

 

 二組どころかこの学院は主に『優しい貴女が大好きです!』のルミア派と『高飛車ながらもそこがいい!』のウェンディ派に二分される。最近は『小動物みたいで守ってあげたい』リン派や、逆に『お姉さんに甘えたい!』のテレサ派も勢力を伸ばしてきている。

 そんな中、システィーナ派は驚くほど少ない。というかほぼいない。理由としては、やはり性格がきついところだろうか。

 

 実質4派閥ある中極めて珍しい少数の無所属もいたのだが、その無所属が今、Show me your smile?(笑顔を見せて?)のリィエル派になった瞬間であった。

 

「だいたい、性格なんて持って生まれたものじゃない」

 

「でも性格だけじゃないと思いますよ、お嬢様の場合」

 

「他に何かあるの?」

 

「胸に手を当ててよく考えてみてください」

 

 そう言われ、素直に胸へと手を当てて考え出すシスティーナ。行動面では非常に素直なので、どこか可愛らしい。彼女の様子をルミアと一緒に微笑ましく思う信一を他所に、システィーナは首を傾げるだけだ。

 

「わかりませんか?」

 

「……わからない。何か他にいけないところがあるの?」

 

 なんでわからないのだろうか。聡明な彼女ならここまでやれば分かるはずだが。

 

「お嬢様は胸が小さいんで……痛い!」

 

 ゴチンッと拳骨が1つ。信一の頭にめり込んだ。

 

「胸に手を当てろってそういう意味か!」

 

 顔を真っ赤にして憤慨するシスティーナ。頭を抑え、ルミアに撫でてもらっている信一。自身の派閥を宣言しまくる男子一同。

 

 もはや教室はてんやわんやのお祭り騒ぎと化していた。

 

「お前らも新しい仲間のことは気になるだろうし、まずはリィエルち自己紹介でもしてもらおうか。つーわけで、リィエル」

 

 なんかほっとくと派閥争いで魔導兵団戦が始まるかもしれないと考えたグレンは肘で小突いてリィエルに自己紹介をさせようとする。

 だが、クラス中の視線が集まっても知ったことかとリィエルは沈黙を貫くだけで何も言わない」

 

「あの……自己紹介してくれませんかね?」

 

「……なんで?わたしのこと紹介してどうするの?」

 

「いいからやれ!頼むから!定番なんだよ、こういう場合!」

 

「……そう。わかった」

 

 微かに頷き、リィエルは一歩前に出る。

 

「……リィエル=レイフォード」

 

 そして一言、そう呟いて終わった。

 

 即座にグレンはリィエルの頭を掴んでガクガクと前後にシェイク。やめて〜と棒読みで喚くリィエルにグレンはコソコソと耳打ちをする。

 それに頷き、改めて彼女は自己紹介を始めた。

 

「……将来わたしは?帝国軍の入隊を目指して?……え、なに?魔術を学ぶ為にこの学院にやってきた…ということになった?出身地はえっとイテリア地方……?年齢はたぶん15歳。趣味は……読書?……グレン、これでいいの?」

 

 これだけ疑問符の多い自己紹介も珍しい。

 

「とまぁ、リィエル=レイフォードさんでした!」

 

 だがこれ以上追求されてもグレンの精神が摩耗するだけなので、かなり強引にその場を締める。しかし彼は忘れていた。編入生の自己紹介が終わった後に待ち受けているものを。

 

「1つだけ、よろしいでしょうか?」

 

 質問タイムだ。

 

 ウェンディがリィエルに質問をしようと挙手。凄くやめて欲しそうな顔をしてるグレンなど見向きもしていない。

 

「差し障りなければ教えていただきたいのですけど。貴女、イテリア地方から来たって仰りましたが、ご家族の方はどうされているんですの?」

 

「……家族?……兄が…いた……けどれ

 

 この質問に、ずっと乏しかったリィエルの表情が少し動いた。それを敏感に感じ取ったのか、グレンが彼女の前に出てウェンディに手のひらを向ける。

 

「すまん。家族に関する質問だけは避けてやって欲しい」

 

 珍しく深刻な顔で告げるグレンに、ウェンディもその意味を察したようだ。

 

 

(そっか……リィエル、家族いないんだ)

 

 これに、信一は少しシンパシーを感じた。母親を殺し、妹は昏睡状態。全てとは言わないまでも、彼女の境遇は自分に似ているようである。

 それに兄がいたと言った。その言葉のせいで、一瞬だけリィエルが妹の信夏に重なって見えてしまった。

 

(バカバカしい)

 

 一時の気の迷いであることは分かっている。いくら重なって見えたからといっても、彼女はルミアの護衛。戦う側の人間であり、守るべき存在ではない。

 

 それに、実を言うと信一はあまりリィエルの事を快く思ってはいなかった。確かに自分では実力が圧倒的に不足しているし、ルミアを守ってくれる人が増えるのは嬉しい事だ。しかし、リィエルが護衛に向いているとは思えない。

 

 信一も人の事は言えないが、リィエルは往来で当たり前のように剣を振るった。どう見ても常識が欠落しているのではないか。これでは護衛として一緒に居なければならないルミアの居場所も無くなってしまうかもしれない。護衛が護衛対象の評判を落とすなど、本末転倒ここに極まりだ。

 

「……まぁ、それならそれで使いようはあるか」

 

 無機質とも表現できるような笑みを浮かべて小さく呟く。

 

 従者としても一個人としても、信一は家族の幸せを最優先としている。その為なら……いや、その為じゃなくとも人を殺す事に何も感じないのだ。だったら何の躊躇いもなく使い潰せるだろう。

 

「ん?シンくん、何か言った?」

 

「いえ、なんでもありませんよ」

 

 クラスの喧騒を楽しそうに眺めてルミアにいつも通りの優しそうな微笑みで言葉を返し、信一も思考を切る。

 

 なにやらリィエルが爆弾発言をしたらしく、男子生徒は全力でグレンに向けて手袋を投擲していた。そこに派閥は関係なく、あるのはモテない男達の妬み嫉み、そして爆発してほしいという願い。

 

「……?」

 

 様々な思惑が渦巻く教室の中、その中心であるリィエルだけは不思議そうにぼんやりとしていた。

 

 

 

 

 

「《雷精の紫電よ》!」

 

 システィーナの凜とした声が魔術競技場に響く。

 

 グレンと男子の間で手袋や魔術が飛び交ったせいで本日の授業予定が大幅に狂い、急遽内容がされた。というのも、皆と一緒に体を動かせばリィエルか早くクラスに馴染めるのではないかというグレンの配慮の結果でもある。

 

 そして行われているのが魔術の実践授業。【ショック・ボルト】で遠くに設置されたゴーレムの頭、胸、両足、両腕の六ヶ所を撃ち抜くものだ。

 

 今撃ったシスティーナの紫電はしっかり全てに命中。学年主席は伊達ではない。

 

「凄いよシスティ!6発撃って、全部の的に当たったね!」

 

「さすがです、お嬢様」

 

 ルミアと信一は自分の事のように喜び、惜しみない賞賛を送る。やはり家族の成績が良いのは誇らしいのだ。

 

 ちなみにルミアの成績は6発中3発命中。ごくごく平均的な数字だった。

 

「やるな、白猫。この距離で全弾命中は普通にすげぇぞ」

 

 いつもは口喧嘩ばかりしているグレンも、素直に感心していた。褒め言葉を言いながら、手元のボードに結果を書き込んでいく。これは成績にも反映されるらしい。

 

「次、信一」

 

「はい」

 

 名前を呼ばれ、信一が前に出る。

 

「シンくん、ファイト!」

 

「頑張って!」

 

 2人の声援に笑顔で応え、目標のゴーレムを見据える。

 

 ここはやはり、2人に良いところを見せたい。基本魔術の授業では基本的にポンコツなのだ。一節詠唱はほとんどできず、三節でしっかり詠唱しても起動しないことなど珍しくもない。

 

 しかし、【ショック・ボルト】だけは違う。なにせ天才のシスティーナに会う前から習得し、彼女に教えたのも信一自身だ。【ショック・ボルト】だけなら、最高学年の四年次生にだって負ける気がしない。

 そもそも四年次生になると、【ショック・ボルト】を使った勝負など鼻で笑うレベルだがそこは考えないでおく。

 

 すぅっと深呼吸を1つ。それから———クルッ

 

 ゴーレムに背を向ける。自分を後ろから見守っていたクラスメイトの顔が一瞬怪訝なものになるがそれに構わず指先だけをゴーレム向け、

 

「《雷精の紫電よ》——《(ふぅ)》——《(みぃ)》——《(よぉ)》——《(いつ)》——《(むぅ)》ッ!」

 

 独特の発音で【ショック・ボルト】を連続起動(ラピッド・ファイア)。六閃の紫電はゴーレムへと殺到する。

 

 信一が唯一できる連続起動(ラピッド・ファイア)。しかも六連射。これには、クラスメイト全員が唖然としていた。

 

「ん?」

 

 眼鏡をかけた少年———ギイブルがゴーレムを見て首を傾げる。確かに今のは凄かったが、ゴーレムに空いた穴は頭にある1つだけ。それ以外はどこにも命中していなかった。

 

「六分の一、か?」

 

「よく見てごらん、ギイブル」

 

 さすがに後ろを向いて全弾命中は【ショック・ボルト】()()は神ってる男、朝比奈信一にも無理だったのかと考える。

 

 だがおかしい。確かに信一の【ショック・ボルト】は全てゴーレムに向かっていった。にも関わらず頭の穴以外、周辺に着弾跡がない。

 

「まさか……っ!?」

 

 ギイブルの顔が驚愕に染まる。彼と同じ考えに至った者も多く、グレンも含めクラスのほとんどが目を見開いて信一を見ていた。

 

「うん———6発全部同じ場所に撃ち込んだ」

 

 なんてことないように言う信一だが、これはまさに神業。的を見ず、連続起動(ラピッド・ファイア)で寸分違わず同じ場所を射抜くなど、学生レベルでできることではない。

 

「すげぇな!」

 

 途端、クラスメイトから拍手喝采と賞賛の嵐。それは少しこそばゆいが、心地良いのも確かだ。プライドの高いギイブルやウェンディも、これには勝てないと半ばヤケクソ気味に手を叩いている。

 

「信一」

 

 しかし、クラスの反応とは対称的にグレンの声はちょっと震えている。何かと思い彼の顔を見ると、同情の念を貼り付けていた。

 

 それで信一も自分がやらかした事に気付く。声を震わせながら、一応最後の希望に縋る気持ちで尋ねる事にする。

 

「な、なんですか?」

 

「お前、六分の一な」

 

 どれだけの神業を披露しようと、撃ち抜いた的は1つだけ。悲しい事に、信一は唯一高得点を出せる【ショック・ボルト】で平均以下を叩き出したのだった。

 

「ちくしょう!」

 

「「「「 アホだ…… 」」」」

 

 さきほどまでの尊敬に満ちた顔はどこへやら。クラスメイトの視線は信じられないアホを見るようなものに変わっていた。

 

「よし、次はリィエル」

 

「……ん」

 

 一応技術だけは凄かったので、おまけで信一の横に3と書いてやりながらリィエルの名前を呼ぶ。

 その瞬間、クラスの興味は無駄な神業を披露した信一から彼女へと移る。皆、新しい仲間の実力に興味津々といった様子だ。

 

「お手並み拝見、ですね」

 

 帝国軍のエリートであるリィエル。彼女の実力がこんな学生レベルのテストで測れるとは到底思えないが、一端でも知ることができれば良いだろう。

 隣で見ているシスティーナも、宮廷魔導士団の実力を生で見れるとあってワクワクした表情を隠せないでいる。

 

「《雷精よ・紫電の衝撃以て・撃ち倒せ》」

 

 棒立ちから筋肉だけで上げた左腕、そこから放たれる三節詠唱の【ショック・ボルト】はゴーレムよりも大きく右に逸れて外れた。

 

(冗談でしょ……?)

 

 表情がほとんど変わらないので本気かどうかはわからないが、少なくとも今の一射はこのクラスの中で一番ひどいものだ。

 

 続く二射、さらに三射もゴーレムに掠る気配すらない。もしかしたら実力を隠しているのかとも思ったが、それならばもう少し的に寄せる努力をするだろう。

 

 そしてそのまま、とうとうラスト1発まで来てしまった。クラスメイトも子どもを応援するような優しい視線と声援を投げかけている。

 

「信一、今のって……」

 

「たぶんあれがリィエルの本気だと思いますよ」

 

 リィエルの素性を知るシスティーナは顔を引攣らせながら小声で尋ねてきた。彼女もリィエルが実力を隠していると思っている……というより思いたいようだ。ルミアすら若干苦笑いになっているし。

 

 そんなクラスの皆とは別の意味でリィエルを見守る3人の先で、彼女はグレンにぼそぼそと呟いている。それから2人が何かやりとりをした後、リィエルは再びゴーレムへと向き直った。

 

「頑張れー、まだ最後の1発があるぞー」

 

「最後まで諦めるなよー」

 

 クラス中の生暖かい声援を受けながら、リィエルは呪文を唱える。

 

「《万象に希う・我が腕に・剛毅なる刃を》」

 

 ———バチィッ

 

 彼女が地面に手をつく。次の瞬間、リィエルの手に大剣が出現。それを力強く握り、驚愕の視線の中、

 

「いいいいいやぁあああああ———ッ!」

 

 裂帛の気合いと共にゴーレムへ向けて投擲した。

 

 縦回転で飛んでいく大剣はまさに嵐そのもの。風を斬り裂きながらゴーレムに迫り、そして———ドゴゥッ!

 重たい音を響かせてゴーレムの胴へと突き刺さり、それでも余りある衝撃が四散させた。

 

「……ん。六分の六」

 

「たぶん違う」

 

 どこか得意気に腰へ手を当てて宣言するリィエルへ、信一は誰にも聞こえない声でつっこむ。

 はたして、二組とリィエルのファーストコンタクトは盛大な失敗に終わったのだった。

 

 








はい、いかがでしたでしょうか?オリ主はアホ、はっきり分かんだね!

次の話を書いたら、オリジナルでシスティちゃん&ルミアちゃんと水着を買いに行く話でも書こうと思っています。
彼氏じゃなくても美少女と一緒に水着を買いに行けるのは、やはり家族だけでしょうから。

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