Fate/Zero Son of Sparda 作:K-15
間桐 雁夜は目の前に現れた英霊に息を呑む。
地獄のような苦痛に苛まれた1年、ようやくこの時が訪れた。7人のマスターとサーヴァントが集い行われる聖杯を巡る戦い。聖杯戦争――
万能の願望機と呼ばれる聖杯を求め7人のマスターは互いに殺し合う。
そのマスターの1人である間桐雁夜が望むのは遠坂 桜をこの家から救い出す事。間桐 臓硯の魔の手から開放する事。彼女を救い出す為だけに彼は蟲の苗床となり、地獄のような日々を送った。
魔術師ではない雁夜が短時間でサーヴァントを召喚するには蟲に体を蝕まれるしか方法が見付からない。
自らの命を削り、彼はようやく聖杯戦争のスタートラインに立つ事ができた。
「ハハ……ははは……できた。サーヴァントを召喚できたぞ! グゥッ!? ゲハぁッ、ゲハぁ!」
「ククク、中々に引きの良い奴だ。よもやこのような――」
薄暗い地下室、血で書かれた魔法陣より彼は転生、召喚された。その姿は冷血で何者をも寄せ付けない鋭さがある。オールバックの銀髪に青いロングコート。左手に握る日本刀からは、魔術を心得る者なら誰にでもわかる程の凄まじい魔が感じ取れる。
雁夜は体の内側から襲い来る激痛に地面へと這い蹲り口から血を流す。
臓硯は不敵な笑みを浮かべながら雁夜の事など無視し、召喚されたサーヴァントの元へ近づいて行く。
瞬間、何かが聞こえた。
「うん?」
瞬きをした一瞬だろうか。気が付けば目の前のサーヴァントは鞘から日本刀を抜いていた。見る者を魅了する鋭さと輝きを持つ刀身は、ドス黒い血糊で汚れている。
「グがァァァッ!」
「薄汚い妖魔が。俺の前から消え失せろ」
臓硯の右腕が落ちる。
切断面から流れるのは蟲の体液、防衛本能から即座に体の修復に取り掛かるが、斬られた右腕はそのままに体液の流出も止まらない。
「此奴の……刀は……」
「妖魔と話す舌など持たん」
次の瞬間には臓硯の頭部と胴体が斬り離された。動かなくなった老体に召喚されたサーヴァントの意識は次の人間へ移る。這い蹲りながら血反吐を吐く雁夜だ。
「貴様も妖魔か」
「俺を……殺すのか……」
歩み寄るサーヴァントは握る刀の切っ先を雁夜の首筋に向ける。瀕死の雁夜を殺す事など一瞬。
死すらも覚悟してまぶたを閉じる雁夜。が、皮膚からは血の1滴も流れない。
「どうやら貴様は殺せんらしい。フンッ、不便な体になったものだ」
「お前は……バーサーカー? だが、自我を持っている」
召喚されしはバーサーカークラスのサーヴァント。雁夜はそれを知ると同時にステータスを確認する。そして目を見開いた。これまでに行われた聖杯戦争のセオリーから逸脱する程の強さ。
バーサーカーは狂化によりステータスを底上げするサーヴァント。だが目の前に居るサーヴァントはそんな事をする必要もない程に強かった。
それはセイバーに匹敵する程のステータス、そんなバーサーカーなど例がない。
「ハハハハハハッ! 勝てる、勝てるぞ! この聖杯戦争! お前と一緒なら、俺はこの戦いに勝てる! 桜ちゃんを助けられる! はははははッ」
「貴様、人間か? それとも妖魔か?」
「体はもう……人間とは呼べない。でもここまでしないとダメなんだ。今だけで良い……力が必要なんだ……」
「ほぅ、力か。その選択は間違ってはいない。だが、まだ足りん。そんな事では何も守れない。自分の身さえもな」
バーサーカーは刀を鞘に収める。地面に這い蹲る雁夜は痙攣する腕や足を無理やりにでも動かしてようやく立ち上がった。ようやく正面から見据えるバーサーカーの姿。それはまさしく剣士と呼ぶに相応しい。
「どのみち俺の体は1年と保たない。この戦争に勝ちさえすれば……」
「男、今1度問う。貴様の望みは何だ?」
「この……聖杯戦争に勝つ事だ。そして桜ちゃんを助け出す」
「そうか……良いだろう。貴様の望み、叶えてやる。これは契約だ、悪魔とのな」
「悪魔……」
「悪魔は代償を必要とする。代わりに契約者の願いは叶える。どうする、妖魔? 悪魔との代償は高くつくぞ?」
雁夜は少ない体力で力強く頷いた。そして笑う。乾いた笑いが響き渡る。
「フフフフフッ、悪魔か。良いぞ、バーサーカー。俺の体だろうと、命だろうと持っていけ! 桜ちゃんを守れるのならそれで良い。例え、悪魔に魂を売ってでも!」
マスターである雁夜からその言葉を聞くと、バーサーカーは何も言わず地下室から立ち去る。陽の光の届かぬ地下の階段を進むバーサーカーは入り口の扉に手を掛けると、不意に動きを止めて雁夜に振り返った。
「1つだけ言っておく。俺の事をバーサーカーと呼ぶな」
「なに? どう言う意味だ?」
「俺の名はバージル。2度は言わん」
書きたい所だけを書くのでストーリーはかなりすっ飛ばします。
サクサクっと完結させますので。
明日からは徳島のマチアソビ、ツイッターで適度に報告します。
ご意見、ご感想お待ちしております。