岸波白野の転生物語【まじこい編】【完結】   作:雷鳥

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ちょっとオチに悩みましたがこのような感じで纏めました。



【七夕祭りの終わり】

 集合場所に戻ると、なんか一部の者達が酷い有様になっていた。

 例えばキャップ達だが、男性陣が物凄い青い顔で蹲り、モロなんかはガクトに力無く寄り掛かって気絶しているんじゃないかって感じの焦燥感漂う表情でぐったりとしている。

 

 更に視線を逆側に移せば、大和と冬馬がそれぞれ座り込み、『あれは地球の食べ物じゃない』と言って青い顔をしていた。

 

「一体何があったんだ?」

 

 準が全員の気持ちを代弁したかのように発する。いやホント、この数時間に一体何があった?

 

「マルギッテ、椎名さん、何があったの?」

 

「ユキ、何があったんだ?」

 

 とりあえず自分はキャップ達の事情を、準は大和達の事情を聞くためにそれぞれ無事な人達に事情を尋ねる。

 

「椎名京が麻婆丼を出す出店に行き、そこで出された麻婆丼を食べてこうなった。好奇心は猫をも殺す。優季も覚えておくと良いでしょう」

 

「こんなに美味しいのに」

 

 椎名さんは使い捨ての白い丼に盛られた麻婆を食べながら幸せそうな表情で呟く。確か椎名さんは超が付くほどの激辛好きと言っていたから、きっと相当辛いのだろう。

 

「僕達の方はヤマトとトーマが項羽先輩が興味本位で買った金星たこ焼を食べたらこうなったの」

 

「凄かったぞ。二人共錐揉みしながら宙を舞ったからな」

 

 あの遠めに人垣の向こうで何か影がチラチラと空に跳ぶのが見えていたけど、あれ全部人間だったのか。

 それにして金星料理に錐揉みって、生前食べたエリザの料理を思い出すなぁ。もっとも、センチメンタルな感情よりも満腹感と恐怖が襲ってくるあたり、彼女の料理はいまだに自分の心に大きな衝撃を残しているようだ。

 

 さて、少々渡し辛い状況だが、渡すなら今だよな。

 

「はーい、全員注目。今からプレゼントを配ります」

 

 背負っていたリュックを地面に降ろして全員に聞こえるように声を掛ける。

 

「何々食べ物?」

 

「あれだけ食べてまだ食べるのか犬?」

 

 一子の言葉にクリスが呆れたように呟く。

 

「残念ながら違うよ。それじゃあ百代から順番に配るな……はい」

 

 リュックから百代と書かれたストラップ型の厄除けの御守りを取り出して手渡す。

 

「ふむ。不思議な力を感じるな。温かくて心地いい」

 

「水上体育祭で手に入れた水晶に、自分の気を込めて作った厄除けの御守りだ。百代は来年には旅に出るって言うし、良かったら身に着けてくれ。効果は保障するからさ」

 

「そうか……ありがとう優季。使わせて貰うよ」

 

 頬を赤くしながら百代は手渡した御守りを嬉しそうに受け取って握り締める。

 

「次はキャップ……」

 

 百代の次に一子達風間ファミリーに御守りを手渡して行く。

 

「おう。サンキュー、ユウ」

 

「ああ。ありがとうユウ」

 

「モロはまだダウン中だから俺様が預かっとくぜ。サンキューなユウ」

 

「ありがとうユウ!」

 

「感謝する」

 

「あ、あ、ありがとうございます!」

 

「ついにオラは神力と霊力を手に居れた!」

 

「ん。貰っておく」

 

 ファミリーのみんなの笑顔に満足しながら次に葵ファミリーの方へ振り返る。

 

「次は小雪な」

 

「わーい! ありがとうユーキ!」

 

 小雪に御守りを手渡すと、物凄い笑顔で抱きしめられた。嬉しいけど人目があるので少し恥かしい。あと何故か一部の者達から殺気を感じた。な、なぜ?

 

「えっと小雪、嬉しいのは分ったから放して」

 

「ちぇ~」

 

 残念そうに呟きながらそれでもちゃんと離れてくれた小雪に苦笑と共にお礼を述べて、冬馬と準の分を取り出して手渡す。

 

「二人共いつもありがとうな」

 

「いいえ。優季君と出会えて僕は楽しいですよ」

 

「これからもよろしくな。いつか礼は返すぜ」

 

 いつもの感謝を述べると二人共少し照れくさそうに笑いながら受け取ってくれた。

 次に義経、弁慶、与一、清楚姉さん、項羽姉さんの分を取り出す。因みに清楚姉さんと項羽姉さんの物は一つのストラップの裏表に二つの名前を入れてあり、水晶を二つ取り付けている。

 

「ありがとうお兄ちゃん! 義経はこれを家宝にする!」

 

「いや使ってくれ。御守りなのに後生大事に仕舞われたら意味が無い」

 

「私もありがたく貰うよ。ありがとうユウ兄」

 

「この小さな浄化の光が、俺の道を僅かに照らす。感謝するぜ兄貴」

 

「ふふ。ありがとうユウ君。私達だけ特別仕様ね」

 

「流石は優季だ。感謝するぞ!」

 

 身内には概ね好評なようで何よりだ。さて、最後は……。

 

「えっと、マルギッテさんの分もあるんだけど……」

 

「受け取ると思いますか?」

 

 ですよねー。これから戦うって相手からの贈り物なんて普通貰わないよなぁ。

 

「じゃあ決闘が終わったら結果に関係なく受け取って下さい。マルギッテさんも友達には違いないんですから」

 

「……ええ。それならば」

 

 マルギッテさんは少し照れたように顔を赤らめながら、複雑そうな顔をして頷いた。

 

 ただ、決闘の後に渡せる元気があればいいけど。

 

 間違いなく死闘となるであろう彼女との決闘に、心の中で溜息を吐きつつ途中までみんなと一緒に帰る。

 

「そう言えば今年は晴れたから織姫と彦星は会えるわね」

 

 不意に清楚姉さんが夜空に輝く天の川を眺めながらそんな事を呟いた。

 

「確か二人共働き者だったけど、夫婦になって毎日イチャラブして働かなくなったせいで引き離されたんだったか?」

 

 百代がその呟きを拾う。いや間違っていないがイチャラブって……。

 

「器の小さい神様だよなぁ」

 

「だが仕事をしないのはよくないよ島津君」

 

「というより、『公私』共にしっかりしましょう。って教訓のような逸話だし、仕方ないだろう」

 

 ガクトがモロを背負いながら、やれやれといった感じに首を振り、ガクトの言葉に義経と大和がそれぞれの考えを伝える。

 

「でも現実だったら私ならやってられないな。一年に一回しか逢えないのにその間仕事しろとか」

 

「僕も~」

 

「その辺は人によって考え方が違って面白いな」

 

 弁慶も天の川を眺めながら答え。その答えに小雪が賛同し、そんな二人を面白そうに準が眺める。

 

「因みに彦星と織姫はお互い相手に一目惚れし、お見合い後すぐに結婚している訳ですが、優季君は一目惚れ等をしたことはありますか?」

 

「おお、ユウの好みか、恋愛は興味ないが、それは俺も興味あるな!」

 

 おお? 何で急に話題がこっちに?

 

 冬馬の突然の話題振りに軽く首を傾げるが、別に渋るような内容でもないのでキャップ同様興味津々の顔をするみんなに答える。

 

「う~ん。一目惚れって外見を一目見て好きになるってことだよな? それはないかな。個人的に外見は清潔感のある相手なら特にそれ以外では拘りは無いし」

 

「まぁ兄貴は外見より内面重視だよな。ラノベの好きなキャラも、毎回外見が著しく違うし」

 

「じゃあどんな相手が好みなんだい? オラに素直にゲロっちまいな」

 

 自分の答えに与一が納得したように頷き。松風、というか由紀江ちゃんが物凄い興味津々といった顔で尋ねてくる。やっぱり女の子はこういう恋ばなが好きなのだろうか?

 

「う~ん。頑張っている子か、自分をしっかり持っている子なんかは好みかな」

 

 生前好きになった相手や、自分がすぐに好意を持つ異性のタイプを冷静に分析するとこのタイプになると思う。

 

 例えば前者ならラニ、凛、桜。後者ならセイバー、キャスター、女性の頃だとアーチャーもこっちに含まれるな。

 

 ギルガメッシュは男女共に記憶を辿っても恋愛って感じじゃないんだよなぁ。多分しっくりくるのは後腐れの無い気心知れた旅仲間、だろうか。彼となら苦労は多いだろうが飽きない旅が出来そうな気がする。苦労は多いだろうが!! 大事だから二回言っておく。

 

「あとは他人を思い遣れる人は尊敬するかな」

 

「なるほど。それが優季のタイプか……なら、私も可能性あるか……」

 

 百代が真剣な表情で呟く。可能性ってなんだ? まさかAUOよろしく、その理不尽なパワーで夏休み中に修行の旅に連れて行く、なんて可能性は勘弁して欲しいぞ。

 

「そう言えば、みんな休み明けテストだけど、どんな感じだ?」

 

 とりあえず話題を逸らす。このまま続けると話題の標的にされそうな気がするし。

 

「す~す~」

 

「お姉様が判り易いくらいの狸寝入りを発揮している!」

 

「つうかテストの話題は禁句だろ。空気読んでくれよユウ」

 

「いや、少しは勉強しろ二人共。百代にいたっては三年だろ」

 

 狸寝入りする百代と悲痛な表情をするガクトに注意する。

 

「確かに今年は義経達の転入でみんなやる気だからな、いつもよりも成績優秀者が出るから平均点も上がると思う」

 

「そういう優季はどうなんだ?」

 

「忙しいけどちゃんと毎日決めた時間は勉強しているよ。『凡俗であるのなら数をこなせ。才能が無いのなら自信をつけよ』って、教えられたからね」

 

 なんだかんだでギルガメッシュのこの教えは的を射ている。才能が無い人間が強くなる為には欠かせない教えだ。

 

「おお、つまり努力を怠るなってことね!」

 

「教え自体はまぁいいが、なんかすんげー上から目線だな」

 

 一子が感銘を受けた顔をし、準は納得しながらも渋い表情になる。まぁ準の気持も分かるが、実際に偉い人からの教えなのでこちらからはなんとも言えない。

 

「まあ実際天才の友人が言った言葉だからね。とりあえずS落ちだけは避けられるように努力してる」

 

「優季は相変わらずウチの妹に負けず劣らずの努力馬鹿だなぁ」

 

「ありがとう。褒め言葉だ」

 

 百代の呆れを含んだ言葉に満面のドヤ顔を反す。が、すぐに百代のいい笑顔でのアイアンクローで頭を締め付けられて顔を歪ませる。

 

「ぐあああ超痛い!!」

 

「なんかお前のドヤ顔はムカつく! 痛みで記憶した内容を忘れてしまえ!」

 

 百代の理不尽な苛立ちを受け止めながら、七夕祭りの最後は自分の悲鳴と共に幕を閉じた。

 




という訳で七夕イベント終了です。色々考えていたのですが、ちょとモチベーションが上がらなかったので、あっさり目に終わらせました。
次回以降はマルさんイベント、つまり決闘に入ります。テスト期間のイベントも考えていたのですが、モチベーションを優先してスルーします!


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